パッキャオvsメイウェザーの世紀の一戦から5年だって。WOWOWがパッキャオ特集やるらしいけど、あの試合に総額300億の価値はあった?

パッキャオvsメイウェザーの世紀の一戦から5年だって。WOWOWがパッキャオ特集やるらしいけど、あの試合に総額300億の価値はあった?

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「世紀の一戦」と銘打たれた2015年5月のマニー・パッキャオvsフロイド・メイウェザーJr.戦からちょうど5年が過ぎたらしい。


2020年5月4日のWOWOWエキサイトマッチで「マニー・パッキャオ特集」がO.A.されると聞いて調べたところ、確かにその通り。
 
「アジアの英雄パッキャオ特集!」
 
当時の熱狂は僕も覚えていて、両者のファイトマネーが総額250億円とも300億円とも言われるスケール感に純粋にワクワクした記憶がある。


どうやらこの試合はWBC/WBAスーパー/WBO世界ウェルター級タイトルの3団体統一戦として開催されたとのことだが、正直そんなことはどうでもいい。
 
「この両者が対決したらどうなる?」
「今の勢いならパッキャオじゃない?」
「いいや、メイウェザーが捌ききるはず」
「というか、やるの? やらないの?」
 
さまざまな憶測や展望が何年にもわたって語られ、多くの方が諦めかけた段階でようやく実現した一戦。
遅きに失した感もあるが、とにかく僕が知る中でもトップクラスの盛り上がりだった。
 
 
WOWOWが何週間も前から特集を組んでこの試合を盛り上げたり、これまでのビッグマッチと比べても力の入れようは段違い。メガマッチどころか“ギガマッチ”と呼んでも差し支えないほどの熱量である。

 
で、結果は大方の予想通り。
終始ポイントゲームに徹したメイウェザーがパッキャオの前進を捌ききっての判定勝利。試合後半には客席からブーイングも聞かれるなど、“世紀の一戦”と呼ぶには何とも物足りない試合となってしまった。
 
 
とまあそんな感じなのだが、あの熱狂(?)から5年を迎えるとのことで、今回改めてパッキャオvsメイウェザー戦を観直してみた次第である。
 
内山高志は僕が心底カッチョいいと思った選手。中間距離でかなうヤツは誰もいないんじゃない?
 

拮抗したいい試合だった。4Rに左を効かせたところがパッキャオの最大のチャンスだったかな

まず試合を通して思ったのが、この試合はかなり拮抗しているということ。
 
結果はメイウェザーの3-0(116-112、116-112、118-110)の判定勝利だが、両者にそこまでの差はない。当然メイウェザーに余裕などあるはずもなく、1R〜12Rの終了間際まで集中力を切らさずパッキャオの猛攻を捌ききったのは文句なしにお見事だった。
 
また試合のペースも中盤5、6Rくらいまではほぼ互角。前に出るパッキャオと受けるメイウェザー、どちらに流れが転んでもおかしくない展開と言っていい。
 
 
実際、4Rにメイウェザーはパッキャオの左ストレートで明らかなグラつきを見せている。
 
4R1分半過ぎ。
リング中央からじりじりとプレッシャーをかけるパッキャオ。
対するメイウェザーは得意のL字で距離をキープしつつ、パッキャオの動き出しを狙う。
 
そして、メイウェザーが左を出すと同時にパッキャオがヘッドスリップ。
パンチの戻り際に鋭く踏み込み、メイウェザーの顔面に左ストレートをねじ込む!!
 
この1発でメイウェザーがたたらを踏んで後退し、ロープを背にしてガードを固める。
それを見たパッキャオが一気にギアを上げ、前に出て連打を浴びせる流れ。
 
メイウェザーのガードを突き破れないと判断したか、後半に体力を温存したか。あの局面でパッキャオが連打を止め、サッと距離をとってしまったのは非常に残念だった。
 
あれ以降メイウェザーは奥足重心をわずかに強め、よりディフェンシブに傾倒していく。結果論だが、パッキャオにとってはあそこが最大のチャンスだったなと。
 
低調なメイウェザーvsローガン・ポール。想定していた中で一番無難で望まない展開だった。メイウェザーにとっても痛い結果じゃない?
 

メイウェザーにはまったく余裕はなかった。凄まじい集中力でパッキャオの猛攻に耐えきった

上体を左右に振りながら前に出るパッキャオに対し、鋭いジャブで出足を止めるメイウェザー。
 
常に一定の距離を保ち、パッキャオの踏み込みの瞬間を狙って右を顔面に。
 
また、パッキャオが左の戻りに合わせて前に出れば、その瞬間にスウェーとバックステップで距離をとる。もしくはクリンチで動きを封じる。コーナーに詰まれば左フックを引っ掛けてサイドに回る。
 
4Rに左を効かされて以降、メイウェザーは常にパッキャオの射程の半歩外をキープし、リーチ差、体格差を活かしてポイントを重ねていく。出足を封じられ、前で勝負されると苦しくなるパッキャオの弱点をうまくついた作戦である。
 
 
だが、それでもメイウェザーに余裕があったわけではない。
 
左を出さなければパッキャオの前進は止まらないが、左を出せばカウンターの左が飛んでくる。
また、コーナーに詰まれば必然的にパッキャオの連打が発動するため、極力リングの中央で対峙し続ける必要がある。
 
連打とプレスを両立しつつ、遠い位置から一足飛びで距離を詰めるパッキャオの圧力にさらされ、気を抜く暇はまったくない。
 
“ディフェンシブに徹したメイウェザー劇場”
“予想通り過ぎる結末”
などと言われていたが、改めて観直してみると全然そんなことはない。
メイウェザーが自身の持ちネタを全部使い、凄まじい集中力を発揮してパッキャオの猛攻に耐えきった熱戦というヤツ。
 
選手としてのブローナーには何の期待もないけど、ブローナーという生き物には少し興味がある。約2年ぶりの復帰戦でサンティアゴに勝利
 

あの試合に総額300億円の価値があったか。僕の知り合いはあの試合以降、二度と戻ってこなかったけど…

で、表題の件。
あの試合に総額300億の価値があったかについてだが、これはマジで微妙なところ。
 
試合後に「こういう試合は開始のゴングが鳴るまでがおもしろい」とおっしゃる人もいれば「メイウェザー劇場に満足した」とおっしゃる人もいた。
もちろん「退屈だった」「これで300億とか、ないわ〜」とおっしゃる方がたくさんいたことも事実。
 
 
僕個人の感想を申し上げると、実はかなり楽しかった
 
両者の間に流れる緊張感は真剣での斬り合いを想起させ、12Rを通して目が離せない。呼吸をするのも忘れるというか、達人同士のヒリヒリするような駆け引きに痺れまくった記憶がある。
 
以前、この試合を「世紀の凡戦」などと言ったりもしたかもしれないが、当時はこの試合をクソほど堪能できたというのが本音である。
 
それだけに試合後のWOWOWエキサイトマッチの解説者のコメントや世間の反応がちょっと意外だった。
 
「え? そうなんだ」
「僕はめちゃくちゃよかったんだけど、そんなことないのね」
みたいな。
 
確かジョー小泉の感想は「予想通りではあったけど、期待外れな部分もある」といった内容で、村田諒太に関しては「録画でもう一度観たいとは思わない」とかなりと辛辣だったような……。
 
亀田興毅は「あの観衆の中であの試合をするのはすごい」「心臓に毛が生えてる」とメイウェザーを絶賛しつつ「試合はおもしろくないけど」的なオチだったとか。
 
 
とは言え、正直に申し上げて諸々の意見はめちゃくちゃ理解できる。
 
「世紀の一戦」
「両者のファイトマネー300億円」
などの触れ込みで散々煽った結果、この試合は普段ボクシングを観ない層にまで浸透した。
 
僕の周りでも、これまで一度もボクシングの話をしたことがなかった人間がメイウェザーとパッキャオの名前を口にしていたことにはめちゃくちゃ驚かされた。
そして、彼らはあの試合以降、二度とボクシング観戦に戻ってきていない……
 
 
まあ、要はそういうことなのだろうと。
決してあの試合がつまらないとは思わないが、あの試合を「これぞボクシング!!」と言う気にならないのも確か。
 
普段ボクシングを観ない人に「メイウェザーが左フックを引っ掛けてサイドに回った」「連打の一瞬の合間を突いて右をヒットした」と力説しても喜んでくれるとは思えない。
 
また、あの試合にはモハメド・アリvsジョー・フレイジャー戦のようなドラマチックな逆転劇もなければ、井上尚弥vsノニト・ドネア戦のように両者が自分の得意分野で真っ向勝負するエキサイティングさもない。
 
“世紀の一戦”などと銘打たなければメイウェザーのベストバウトに数えてもいいくらいの好試合だが、残念ながらこの試合の位置付けはそうじゃない。
 
メイウェザーベストバウト3選。プリティからマネーへ。金の亡者のL字ガードと左ジャブ
 
「This is BOXING!!」を魅せるべき試合で、クッソ渋い技巧戦を披露してしまったのが一番の要因だろうと。「メイウェザーの試合なんだからそりゃそうなるでしょ」といくら喚こうが、知らない人にとってはどうでもいいことですからね。
 
 
300億の価値があったかについては人それぞれの意見があっていいとは思うが、僕の知り合いが二度とボクシング観戦に戻ってこないことが一つの答えではあるかな……。
 
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