見どころ満載の拳四朗vsガニガン・ロペス。思った以上におもしろかった試合。拳四朗が大接戦を制して初戴冠【結果・感想】

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対応力イメージ
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2017年5月20日に東京・有明コロシアムで行われた拳四朗vsガニガン・ロペスの一戦。WBC世界L・フライ級王者ガニガン・ロペスに、同級4位の拳四朗が挑んだ試合である。
 
結果は大接戦の末に2-0(115-113、115-113、114-114)で拳四朗が勝利。キャリア10戦目で初の王座奪取に成功した。
 
サウスポーのロペスに対し、距離をとって対峙する拳四朗。
得意のフットワークといきなりの右がロペスの顔面をとらえるが、なかなか決定的なシーンは作れず。
対するロペスも中盤から拳四朗の動きに対応し、真正面からの打ち合いに持ち込む。だが、こちらもはっきりとしたダメージを与えるまでには至らない。
 
「近藤明広がリピネッツを圧倒しながら惜敗。試合は支配してたけど、手数とヒット数がまったく足りず。やってしまいましたなぁ」
 
ともに明確なリードを奪えず、一進一退の展開で迎えた最終ラウンド。両者最後の力を振り絞って打ち合い、お互い一歩も引かずに終了のゴングが鳴る。
 
何とか2-0の判定で拳四朗が勝利を挙げたが、どちらに転んでもおかしくない好試合だったと言えるのではないだろうか。
 
「比嘉が半病人エルナンデスを5回ダウンさせてTKO勝利!! パーフェクトレコードで世界初奪還」
 

楽しみにしていた拳四朗vsガニガン・ロペス。でも、しょっぱい試合になる可能性もあった?

拳四朗vsガニガン・ロペス。
個人的にちょっと楽しみにしていた試合である。
 
予想記事でも申し上げたように、僕はこれまで拳四朗の試合をあまり観たことがなかった。
なので、この一戦に向けて過去の試合をいくつか眺めたところ、なかなかい選手だなと思った次第である。
 
「拳四朗vsガニガン・ロペス戦を予想してみる。拳四朗勝利が大方の予想みたいだけど、ガニガン・ロペスもいい選手」
 
ただ、プロ入り後初のサウスポーということで、抜群の距離感と得意の左がどれだけ機能するかという懸念があったことも確かである。
 
 
そして相手のガニガン・ロペスについては、可もなく不可もなく。
手数と出入りのサウスポーではあるが、オーソドックスを若干苦手としているのではないか?
対サウスポーの試合で見せていた動きがオーソドックス相手だと一気に陰る。手数が減り、どちらかというと待ちのスタイルで、持ち味の突進も影をひそめてしまう。
 
「ジャーボンティ・デービス体重超過ww フォンセカにKO勝利もさっそくネタキャラ化。尾川が防衛戦キャンセル? ええやん別に」
 
サウスポーとの対戦が初めての拳四朗と、オーソドックスが苦手なロペス。
センス抜群の拳四朗は楽しみだが、もしかしたらグダグダのしょっぱい試合になる可能性も?
事前の予想としては概ねこんな感じだった。
 
「打倒井上尚弥筆頭アンカハスが帝里木下を迎えての防衛戦!! マックジョーに勝利した長身王者が今回もサウスポー対決に挑む」
 

注目度は低かったけど、実は見どころ満載のおもしろい試合だった

試合を観た感想を申し上げると、
「非常によかった。めっちゃおもしろかった」
 
アウトボクサーの拳四朗と小柄なサウスポーのガニガン・ロペスということで、いまいち地味な印象がぬぐえなかったこの試合。5月20、21日で行われた世界戦の中では、一番注目度が低かったのではないだろうか。
 
「八重樫がメリンドにまさかの1RTKO負け!! L・フライ級日本人王者4人体勢が1夜で崩れ去る。メリンド強かったね」
 
ただ、個人的には満足度の高い、見どころ満載の試合だったと思う。
 
特に拳四朗の「クレバーなスタイルのくせに激情型を抑えられない」粗さはなかなかよかった。
「クールにスタイリッシュにやり過ごそうとしてるんだけど、我慢できずに打ち合っちゃうんだよ」みたいな。
この選手の目指すスタイルとしては正解ではないのかもしれないが、僕は全然嫌いじゃないww
 
「地の利とか日本人ボクサーがタイで勝てない理由とか。世界戦19敗1分を引き起こしたマモノ()についてのお話」
 

序盤3Rまでは最低の試合。こんなのを12R観なきゃいかんのかと絶望した立ち上がり

一進一退の攻防の末、拳四朗がガニガン・ロペスを退けた今回。
正直に申し上げると、序盤3Rは最低だった
 
右回りで正面に回り込み、ロペスの外側から右フックを当てたい拳四朗と、極力斜に構えて身体の正面を晒したくないロペス。
右にサイドステップして右を打ち込む拳四朗に対し、ロペスも右回りでお互いの位置関係をキープする。さらに、ときおり見せるオーバーハンドの左で拳四朗を射程の外に追い出す。
拳四朗は拳四朗で、左回りでサイドを取るというより、自分が当てやすい位置取りを意識した動きである。
 
「田中恒成が激闘の末にアコスタを退ける!! すっげえ試合! アコスタも間違いなく最強の挑戦者だったし大満足だね」
 
また、両者とも打ち終わりに対する意識が強く、基本的に攻撃は単発。
打ち合うシーンは皆無で、一瞬の交錯の後にさっと距離をとる展開が続く。
 
マジな話、こんなのを12R見せられるなど正気の沙汰じゃない
これが世界戦? 苦行以外の何物でもないぞ。
 
「拳四朗忘れんなよ。ロペスとの再戦をボディ一撃で終わらせる。北斗一烈拳炸裂()でパーヘクツ勝利」
 
案の定、ロペスは対オーソドックスになるとパッタリと手数が減る。
拳四朗は拳四朗で、サウスポーとの距離感がしっくりきていないのがありありと伝わってくる。
左回りの際は滑らかだったフットワークも、右回りになるとどこかぎこちない。
 
試合前に予想した中で、もっともよろしくない状況である。
 
「拳四朗は和製ロマチェンコを目指せ。ゲバラに消耗戦で勝利!! だけど、これじゃない感半端ない」
 

拳四朗が試合を動かす。ロペスの正面に立ち、積極的に左を打ち込んでいく

ところが、4Rに入ると少し様子が変わる。
 
これまで露骨に右回りを意識していた拳四朗が、正面からまっすぐ踏み込んでいく。
右中心の攻めはこれまで通りだが、左のトリプルなど得意のジャブも数が明らかに増える。
 
「ダニエル・ローマンと松本亮のタイトルマッチを予想。松本亮という選手にビックリするくらい思い入れがないんだが」
 
そして、拳四朗が右回りを止めたおかげでロペスも手が出しやすくなる。
頭を下げての右、打ち終わりを狙っての左、タイミングを合わせてワンツーなど、中間距離での攻防が一気に加熱する。
 
「村田vsエンダム感想。疑惑の判定負け? 素人がプロに口出すな。やったことがないヤツが語るな」
 
5R以降、拳四朗はさらに攻勢を強める。
無理に右回りは意識せずロペスと正対し、1発1発に力を込めて腕を振る。
得意の左を中心に顔面へのヒットを重ね、フットワークにもスムーズさが戻る。
 
なるほど、いいですね。
ようやく距離感がしっくりきた感じか。
 
対するロペスも、拳四朗が出てくる分思い切り腕を振れるようになる。
右足を拳四朗の両足の間にねじ込み、インサイドからワンツーを打ち込む。
 
「拳四朗4RTKO!! ペドロサ手も足も出ず。いいですね拳四朗。ホントに期待できるぞこの選手。まあ、今回は相手が微妙だったけど」
 
両者ともにヒットが増え、両者ともに被弾も増える。
7、8Rと激しいペース争い、白熱した打ち合いが続く。
 
「はあ、ラッセルたん…。エスカンドンを接近戦で圧倒して勝利!! この試合好き過ぎて、もう5回くらい観てるw」
 

完全に距離感を掴んだ拳四朗が、得意のスタイルでロペスを翻弄する

迎えた9R。
ここでまた展開が少し変わる。
 
これまで積極的に前に出ていた拳四朗が、足を使ってロペスの周りを回り始める。
それも試合序盤とは違い、ぎこちなさを感じないスムーズな足運びである。
 
ロペスの射程の一歩外からスッと近づき左を2発。
すぐに距離をとって左サイドに回り込む。
ロペスの動き出しを狙っていきなりの右。
ジャブを叩き落とし、威嚇の左を出しつつ小さくバックステップ。
 
おお、これは拳四朗本来の動き。
僕が過去に観た試合そのもののスタイルである。
 
恐らくサウスポーのロペスとの距離感やタイミングを完全に掴んだのだろう。対オーソドックスとまったく変わらぬスムーズなフットワークである。
 
「井上vsリカルド・ロドリゲス感想。だーめだ、ムリムリ無理無理。無謀な挑戦お疲れロドリゲス」
 

勝負を賭けたロペス。10R以降、強引に前に出て拳四朗を追い詰める。うん、それを待ってたよ

9Rでロペスの動きを見切り、完全に試合をコントロールした拳四朗。
だが、10Rに入るとまたしても展開が変わる。
 
このまま拳四朗ペースで終わると思われた矢先、ロペスがなりふり構わず前に出る
 
身体を上下に振り、タイミングを測って左をフルスイング。
そのまま体重を預け、拳四朗をリング中央から押し込む。
 
拳四朗がバックステップで距離をとるが、ロペスはお構いなしに踏み込んで左を振り回す。
ダッキングとバックステップで逃げる拳四朗を追いかけるロペス。バタバタと不格好ではあるが、拳四朗を射程内に捉えたまま外さない。
 
はい、打倒拳四朗のパターン出ました。
 
「打ち終わりのカウンターをケア」「右回りの拳四朗を射程に入れない」とかではなく、この選手を崩すには強引に打ち合いに巻き込むのが一番手っ取り早い。
 
「村中優惜しい!! ヤファイを追い詰めるが、最後の最後で失速。敵地で絶好のパフォーマンスは次につながるんでねえか?」
 
勝負を賭けたロペスに対し、拳四朗も真正面から応じる。
リング中央から下がらず、頭をくっつけてボディを連打。
顔面に被弾を許しながらもペースは渡さない。
 
というより、意地を張っていると言った方が正確か。
最初に申し上げた通り、意外と激情型の選手である。
 
「比嘉大吾vsトマ・マソン予想。トリプル世界戦の中で唯一楽しみな試合。余裕ぶっこいてると危ないんじゃないの?」
 

拳四朗の対応力の高さが勝因かな。ロペスはもう少し早いラウンドからあの攻めができていれば……

めまぐるしく展開が変わり、激しい駆け引きが繰り広げられた今回。
 
最後は壮絶な打ち合いの末、わずかに拳四朗が上回って勝利したわけだが、ホントにおもしろい試合だった。
拳四朗が持ち味を発揮したのはもちろん、ガニガン・ロペスも文句なしにいい選手だった。
 
強いて勝因を挙げるとすれば、拳四朗の対応力の高さだろうか。
慣れないサウスポーとの対戦を試合の中で修正し、自分の得意分野に引きずり込むセンス。
ゴリゴリの打ち合いでも負けず、ペースを渡さないタフさも併せ持つ。
この選手、MAX覚醒すればモンティエルになれるんじゃないの? 知らんけど。
 
「ポーターvsベルト感想。体力腕力万歳ポーターがベルトを突進力と腕ぶん回しでKOする。トップ戦線に踏みとどまった突貫小僧」
 
逆にガニガン・ロペスとしては、若干仕掛けが遅かったのが悔やまれる。
あの10R以降の攻めをもう少し早いラウンドでできていれば。
まあ、体力的にも展開的にも難しいというのは非常にわかるのだが。
一か八かとは違う、局面を打開するためのペースアップがあればまた違う展開になったのかもしれない。
 
 
とりあえずアレだ。
両者ナイスファイト。
ほとんど話題になっていないのが残念なくらいいい試合だったと思う。
我ながら3Rで挫折しなくてよかった。
 
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