堀口恭司vsセルジオ・ペティス感想。堀口1発KO負け…。でも、いい試合だったし満足度は高い。堀口の鈍感力には感心するよね【Bellator 272】
2021年12月3日(日本時間4日)、米・コネチカット州で行われたBellator 272。メインイベントでは現バンタム級王者セルジオ・ペティスに現RIZINバンタム級王者堀口恭司が挑戦し、4R3分24秒KOでペティスが勝利。初防衛に成功した一戦である。
先日発見された新型コロナウイルスの新たな変異種オミクロン株の影響により、日本政府は向こう一ヶ月間外国人の新規入国制限の見直しを発表している。
これによって年末開催が決まっていたボクシングの世界戦、村田諒太vsゲンナジー・ゴロフキン戦や井岡一翔vsジェルウィン・アンカハス戦といった注目試合が軒並み中止、延期となり、国内のファンをガッカリさせている。
僕自身も井岡vsアンカハス戦の現地観戦を検討していたこともあり、今回の決定にはまあまあ失望している笑
そんな中、井岡vsアンカハス戦と同じくらいテンションが上がったのがこのBellator 272、堀口恭司vsセルジオ・ペティス戦である。
結果は堀口のKO負けという残念なものだったが、試合自体はヒリヒリとした緊迫感が続く満足度の高いもの。
日本のMMAファンにとってもここまで注目を集める試合は珍しかったのではないか。
というわけで、今回はこの堀口vsペティス戦の感想をあれこれ言っていきたいと思う。
堀口恭司vsパトリック・ミックス感想。ミックスの作戦勝ちだろうな。やっぱり堀口の距離が近くなってるし、適性がフライ級なんてのは今さら過ぎるわな
どちらにとってもギリギリの試合だった。堀口の出入りとペティスのカウンターの勝負
まず試合の率直な感想だが、ホントにギリギリの試合だったなぁと。堀口にとってもペティスにとっても。
多くの方がおっしゃるように4Rのあの瞬間までは堀口のペースだったが、ペティスのバックブロー1発ですべてが覆ってしまった。
とはいえ、堀口に余裕があったかと言えば決してそうではなく。
ペティスのカウンターは何度も堀口の顔面をかすめていたし、1Rの開始直後には1発いいのが入ってもいた。
僕はこの試合、堀口の出入りのスピードとペティスのカウンターのどちらが上回るかの勝負になると思っていた。
堀口恭司vsペティス予想してみる? どちらにとっても難しい相手、勝負論あり過ぎる試合。ヤバいくらい楽しみですね
遠い位置からのスピーディな踏み込み、打撃を当ててパッと離れる堀口に対し、中央でどっしり構えて相手が入ってきたところにカウンターを合わせるセルジオ・ペティス。
細かいステップを駆使して微妙にアングルを変えつつ自分のパンチが当たる位置を探すのがペティスの持ち味だが、堀口の出入りスピードと当て勘がそれをどこまで凌駕できるかといったところ。
ほぼすべての局面で上回っていた堀口。出入りスピードにテイクダウンを加えた攻撃バリエーション
そして、実際堀口はほぼすべての局面でペティスを上回っていた(と思う)。
これまでよりも半歩〜1歩ほど近い間合いで対峙し、常にサイドに動いて正面を外しながら踏み込みのタイミングを探る。
で、一瞬の隙を見つけて近づきコンビネーションを打ち込みサッと離れる。
また遠間からの出入りだけでなく、左ジャブを出した勢いのままテイクダウンに行くパターンも。
ジャブを出した左をペティスの顔面に押し付け一気に押し倒す。恐らくあの左手は目隠しも兼ねていたのだと思うが、見切りとカウンター狙いのペティスにとってはやっかい極まりない。
出入りへの対応に加えてタックル、グランドへの対処も強いられる。
繰り返しになるが僕は今回の試合はほぼすべての時間帯でスタンドでの攻防、ペティスのカウンターと堀口の出入りの勝負になると思っていたが、堀口陣営はそこにテイクダウンという選択肢も織り交ぜてきた。
ああ、なるほどねぇ。
リングでのMMAとは違い、広いケージではサイドへの動きを増やすことが可能。
金網なのでリングアウトによるストップやドントムーブもないので思い切ったタックルを仕掛けられる。
RIZIN時代は伝統派空手をベースとしたスタンドを中心に試合を組み立てていた堀口だったが、別にグランドが苦手なわけではない。というよりUFCでも頂点付近まで上り詰め、ダリオン・コールドウェルに勝利するなど普通にハイレベルである。
いつもよりもやや近い間合いで対峙したのも、出入りスピードをアップしてカウンターを狙われにくくする&テイクダウンに行きやすくする狙いがあったのだろうと。
ひょっとしたら膝をぶっ壊した影響で踏み込みのレンジが落ちているのかもしれないが。
どちらにしろ舞台がリング→ケージに変わったことでより力を発揮しやすくなったと言えそうである。
あるべき場所に戻ってきた堀口恭司。朝倉海を1RTKOに沈めて王座奪還。やっぱりRIZINの現地観戦はサイコーだなw
堀口恭司の鈍感力の高さが野茂英雄とちょっと被るんだよね
ついでに言うと、堀口恭司の鈍感力の高さには毎回感心させられる。
僕はこの選手の試合でリングorケージや日本or米国など、舞台や開催地の違いによる影響を感じたことがほとんどない。
どの舞台、場所でも関係なく自分の力を最大化する術を知っているというか。
もちろん必要な対策、研究はするし、相手の力量を分析した上で作戦も立てる。
だが必要以上に気にしない、神経質にならないのが長所でもある。
「やることはやってきたんだからあとはなるようにしかならんでしょワハハ」的なメンタルで毎回試合に臨んでいるのだろうと。
似たようなところで言えば元プロ野球選手の野茂英雄もそんな感じ。
MLB移籍後にメジャーと日本のボールの違いに気づかなかったらしいし、そういう鈍感力の高さは大舞台でプラス方面に作用する気がする。
狙いすましたペティスのバックブロー。MMAではああいう結末が無視できない頻度で起きる
なおフィニッシュとなったペティスのバックブローだが、アレは完全に積み重ねたものが出たと思っている。
その証拠に2R(だっけ?)にもバックブローが見られたし、ハイキックまでの流れもめちゃくちゃスムーズ。常日頃から近場での一瞬を想定して練習していたのだと想像する。
うん、やっぱりMMAはああいう終わり方が結構あるよね。
ナックルパート以外を使えない&上半身しか攻撃できないボクシングと違い、MMAではほぼ全身が使用可能。
試合後に「アレを予想して避けるのは不可能」という意見が多数見られたが、実際には無視できない頻度で離れ際のバックブロー、ハイキックによるフィニッシュは発生している。
カマル・ウスマンvsコルビー・コヴィントン、ジャスティン・ゲイジーvsマイケル・チャンドラー。UFC268感想。コヴィントンの追い上げに感動。チャンドラーは前半型過ぎて…
4Rから圧力を強めて勝負をかけたペティスのお見事さはもちろん、劣勢の中でも自分にやれることをやり続けてチャンスを見出した堅実さは文句なしに素晴らしい。
堀口攻略にはやはりカウンター。何が起きてもおかしくない中での“何か”が起きた
もっと言うと、堀口攻略にはやはりカウンターなのだと思う。
2019年8月の朝倉海戦もそうだが、堀口は基本的に自分から攻めることで試合を組み立てるタイプ。当然相手は入ってくる瞬間、離れ際を狙うわけで、どこかの段階でタイミングがドンピシャに合うケースは普通にあり得る。
朝倉海w 堀口恭司もそこまで簡単ではないと思ってたけど、ホントに勝ってどうするw 試合観たことなかったけど
特に今回はここ数年経験したことがない長いラウンド&ギリギリの攻防が続いていた。ケージを背にした際にわずかな隙が生まれたとしてもおかしくはない。
堀口恭司の実力は間違いなく世界トップ10に入る。
ただ、セルジオ・ペティスも十分な実力を持つ上に、同等の相手と常にしのぎを削ってきている。何が起きても不思議ではない勝負の中、持てる力をすべて出し切った末にその“何か”が起てしまったのが今回の結果なのだろうと。
そう考えると、このレベルで何一つ起こさせることなく引退したハビブ・ヌルマゴメドフがいかにチートだったかという話でもある。
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