ジャロン・エニスvsセルゲイ・リピネッツはまあ、仕方ないよな。リピネッツがエニスに勝つ姿は想像できなかった【結果・感想】

ジャロン・エニスvsセルゲイ・リピネッツはまあ、仕方ないよな。リピネッツがエニスに勝つ姿は想像できなかった【結果・感想】

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2021年4月10日(日本時間11日)、米・コネチカット州で行われたウェルター級12回戦。元IBF世界S・ライト級王者セルゲイ・リピネッツとWBO世界ウェルター級7位ジャロン・エニスが対戦し、6R2分11秒KOでエニスが勝利。戦績を27戦全勝25KOとした一戦である。
 
 
元S・ライト級王者セルゲイ・リピネッツにウェルター級の無敗プロスペクト、ジャロン・エニスが挑んだ今回。
 
ガードを高く上げてじわじわと前に出るリピネッツに対し、エニスは遠い位置から鋭い左で応戦。身体能力の高さを活かし、微妙に角度を変えながらボディ、顔面へとヒットを重ねていく。
 
リピネッツも何とか自分の距離に入ろうと前進を続けるが、エニスのスピードについていけず。4Rには左のショートフックでダウンを奪われるなど終始苦しい展開を強いられてしまう。
 
 
エニスの圧倒的優勢で迎えた6R。
開始直後からリピネッツがプレッシャーをかけるものの、エニスも持ち味のフットワークを駆使して有効打を許さない。
そしてラウンド後半、リング中央で左のカウンターを被弾したリピネッツが仰向けにダウン。そのまま立ち上がることができずに試合が終了する。
 
初回からほぼ試合をコントロールしたジャロン・エニスが、この勝利によって自身の連勝を27とした。
 
アンカハスがロドリゲスに判定勝利で9度目の防衛成功。でも井岡一翔なら勝てると思うんだよな。接近戦での精度に差があるような…
 

注目のジャロン・エニスvsセルゲイ・リピネッツだったけど、内容は一方的。でも、リピネッツが勝つ姿は想像できなかった

GBPのバージル・オルティスJr.と並び、ウェルター級の次期王者候補と目されるジャロン・エニスが元S・ライト級王者セルゲイ・リピネッツとのサバイバルマッチに臨んだ今回の一戦。
エニスにとっては初めての強敵とも言える相手で、ノンタイトルながらも注目度の高かった試合である。
 
ところが始まってみれば内容は一方的。
ただただエニスがリピネッツをフルボッコにするだけのワンサイドゲームが展開され、ファンを驚かせる結果に。
 
と言いつつ、僕自身はこの試合には当初からあまり興味がわかず。
両者が対戦に合意したと聞いても「へえ~、そうなんだ」「ま、がんばって」としか思わなかった。
 
理由は表題の通りなのだが、この試合でセルゲイ・リピネッツが勝つ姿がまったく想像できなかったのが大きい。
 
セルゲイ・リピネッツはもともとガードを低く構えるカウンター使い。
相手を懐に呼び込んで後の先を取るというか、初弾を上体反らしで避け、その反動でカウンターを被せるスタイル。1発目のカウンターで勢いをつけた流れで連打に移行する。
 
だがガードが低い分、どうしても被弾は多くなる。特に鋭い左リードを打つ相手には上体反らしが間に合わず、まともに顔面を跳ね上げられるシーンが目立つ。2018年3月のマイキー・ガルシア戦などはその典型で、貫通力の高いマイキーの左に最後まで対応できずに12R判定負けを喫している。
 
さらに“待ち”のカウンター使いなために追い足はない。あの動きだと、エニスのような身体能力の高い相手に追いつくのは困難を極める。
 
などなど。
あれこれ考えていくと、この試合でセルゲイ・リピネッツがジャロン・エニスを何とかできるとは思えない。
遠い間合いから左リードを中心に打たれまくり、一方的に蜂の巣にされる展開が濃厚なのではないか。
 
リピネッツに勝ち筋があるとすれば被弾覚悟での同時打ちのカウンターくらいか。体力が残っている前半で何とか1発ぶち当てることができれば、もしかしたら……。
マジな話、それ以外にリピネッツが勝つ方法が思いつかなかったというのが本音である。
 
拳四朗vs久田哲也ついにやるってよ。久田の分析能力の高さなら一矢報いるかも? 拳四朗はとことんヒールに徹したらおもしろいけどなw
 

予想以上にジャロン・エニスがすごかった。サウスポーにスイッチしての接近戦であそこまで圧倒するとはね

結果としてジャロン・エニスのワンサイドで終わったこの試合だが、内容は僕が思っていた以上に一方的だった。
 
遠間からの左で顔を跳ね上げ、リピネッツが距離を詰めてくれば軽快なステップで正面を外す。
近場で微妙にアングルを変えつつガードの外側からバシバシとヒットを重ね、リピネッツの踏み込みに合わせてショートのカウンターをねじ込む。
 
遠い位置から単発気味の左リードを放つ、足を止めずに正面を外すなど、1Rこそカウンターへの警戒心を感じさせたエニスだが、ある程度動きを見切った2Rからは完全に遊んでいた印象。
 
サウスポーにスイッチ→あえて距離を詰めて近場での打ち合いを仕掛け、その位置でも打ち負けることなく逆にリピネッツをたじたじにさせてしまうという。
 
正直、リピネッツが接近戦であそこまで押し込まれる展開はちょっと想像できなかった。
アウトボクシングでエニスに置いてきぼりを食うのはある程度予想できたものの、まさか近場での打ち合いでも圧倒してしまうとは。
 
僕はエニスの左リードはマイキーほどではなく、その分を身体能力の高さでカバーすると思っていた。実際1Rはそんな感じだったし、どこかの時点でエニスの足が止まればもしかしたら……という立ち上がりでもあった。
 
だが、早々にリピネッツの動きを見切ってからは自ら率先して打ち合いを展開し、馬力とスピード差を見せつけた上でねじ伏せる結果に。
 
岩佐亮佑、敵地でアフマダリエフに5RTKO負け。レフェリーがストップのタイミングを探してたよね。セコンドが声をかけてもよかった?
 
1Rは左リードとフットワークで翻弄され、2R以降は接近戦での打ち合いでそのつど上をいかれるリピネッツ。
パワーとカウンターが生命線のリピネッツとしては、あそこで打ち負けてしまってはなすすべがない。
 
最初は高く掲げていたガードもボディを狙われたせいで下げざるを得なくなり、顔面が開いたところにサウスポースタイルの右フックをもらいまくる。
 
恐らくこの選手はvsサウスポーがあまり得意ではないのだと思うが、どちらにしても2Rの時点でなかなかの絶望感だったなと。
 

実現性はともかくエニスvsショーン・ポーター戦とか観てみたい。リピネッツは自身の穴を思いっきり露呈した試合だった

今回の試合で改めて思ったのが、ジャロン・エニスはやはりいい選手。
先日モーリス・フッカーに勝利したバージル・オルティスJr.同様、現時点でも王者クラスの実力はありそうに思える。
 
バージル・オルティスはウェルター級王者クラス? モーリス・フッカーの限界値が示された。それでもオルティスがデラホーヤになれない理由
 
今後についてだが、同じPBC勢で言えばたとえばショーン・ポーターの突進力をどうさばくかを観てみたい気はする。実際に試合が組まれるかは別にして。
カウンターが得意な“待ち”のタイプがエニスを攻略するのが難しいことはこの試合でよくわかったので。
 
 
一方、敗れたセルゲイ・リピネッツだが、今回は完全に穴を露呈した試合だった。
 
申し上げたようにこの選手はもともと追い足のないカウンター使い。
カウンターを合わせられる相手にはめっぽう強いが、一定以上のスピードや左リードの鋭さを持つ相手にはどうしても苦戦を強いられる。
非常に得手不得手のはっきりしたスタイルと言える。
 
 
またこの手のタイプはキック出身の選手に多い印象で、引退した元S・ミドル級王者のジョージ・グローブスなどもリピネッツと少し似ている。
 
なお、K-1からボクシングに転向した武居由樹も若干その傾向があるように思える。
先日のデビュー戦は相手と実力差が大きかったせいであっさり終わってしまったが、この先鋭い左リードとバネを両立できるタイプに苦戦させられる時がくるのかもしれない。
 
まあでも、しばらくは無双しそうな感じもするけどね。
リピネッツやグローブスと違ってサウスポーな上に、パッと見リーチも長そうだし。
しかも周辺階級には鋭い左リードとフットワークを持ち味とする選手は見当たらない。
国内に限って言えば、上位ランカーと当たるまでは割とすんなりいくのではないだろうか。
 
 
その点、リーチがあまり長くない(ように見える)那須川天心の場合、どれだけフットワークが利くかが重要になりそう。
キックの試合ではカウンターをチラつかせながらプレッシャーをかけるスタイルだったが、両手しか使えないボクシングでその部分がどうなるか? みたいな。
 
 
と言いつつ、僕的にはキックの試合で那須川天心vs武居由樹戦が観たかったのだが。
 
実際、微妙に階級の違う武尊よりも武居由樹の方が勝負論はあると思うんですよね。
 
今となっては叶わぬ願いですがw
 
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