クロフォードがポストルに大差判定勝利!! ん? クロフォード圧勝? むしろポストル勝てたんじゃないのか?【結果・感想】

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2016年7月23日(日本時間24日)に米・ラスベガスにあるMGMマジソン・スクウェア・ガーデンでWBC、WBO世界S・ライト級王座統一戦が行われた。
WBO王者テレンス・クロフォードがWBC王者ビクトル・ポストルを判定で下し、タイトルの統一に成功した。

無敗対決となり、テクニシャンのクロフォードが長身のポストルを攻略できるかに注目が集まったこの試合。スピードに勝るクロフォードが終始距離をとって試合を有利に進め、5Rに2度のダウンを奪うなどポストルを圧倒する。

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最終スコア118-107、118-107、117-108と大差をつけて完勝し、見事に全勝対決を制した。

2016年11月に復帰戦を行うとされるマニー・パッキャオの対戦候補筆頭に挙げられるクロフォードだが、難敵ポストルを撃破し念願のビッグマッチに大きく前進したといえそうである。

「村田1Rで圧勝!! 廃棄処分するようにタドニッパをKOする。100点満点じゃないか?」

クロフォードが持久走作戦で遮二無二勝ちにきた

全体的な印象としては、クロフォードが露骨に勝ちにきた試合。

僕はこの試合のカギは、クロフォードのスピーディなリードジャブとポストルの打ち下ろし気味の左。どちらのリードパンチの精度が高いかが勝負を分けるのではないかと思っていた。

だが、クロフォードは思った以上にポストルの懐の深さを警戒していた。激しい出入りから積極的にソリッドな右を打ち込んでいくと思っていたのだが、そうではなかった。

本来は受けのスタイルであるポストルが距離を詰め、普段はじっくり構えるクロフォードがリングをグルグル回る。この光景はちょっと意外だった。何となくキース・サーマン的なアレを感じてしまったのだが、どうだろうか。

「サーマン←才能だけでやってる人がポーターに辛勝!! ノンストップのハイスピードバトル!!」

恐らくクロフォードは、最初から自分の距離で打ち合うことを放棄していたのだと思う。ポストルは周知の通り懐が深くパンチも固い。この相手と正面から打ち合うのはリスクが高いと判断したのだ。
危険を冒して打ち合うよりも、ひたすら動き回ってポイントアウトを狙う方が勝てる可能性は高い。そう判断した上でのアウトボクシングだったのだろう。
つまり、アミール・カーンがカネロ戦で実行した作戦。序盤はスピード差で優位に立ったものの、中盤のワンパンチで撃沈した持久走作戦である。

「カーン仰向けにバッタリ。“カネロ”・アルバレスが壮絶カウンター一発でカーンを失神KO!!」

フルラウンド動き回るスタミナとペースを掴む勝負勘でポストルの前進を挫く

ただ、それでも今回のクロフォードはひたすら持久走に徹していたわけではない。要所で強く踏み込んでソリッドな右をヒットしていたし、懐に入っての打ち合いも見せていた。一瞬一瞬のスピードで確実にポストルを上回り、うまくポイントを奪取してみせたのである。

体格的に厳しかったカーンはとにかく動き回るしかなかったが、同じ階級であるポストルなら危険も少ないという判断があったのだろう。クロフォード自身がカーンほどの軽快なフットワークを持っていないという自覚もあったのかもしれない。

これを不格好ととるか、クロフォードの巧みな作戦ととるかは人それぞれだが、僕個人としてはよくやったのではないかと思っている。

「アントニオ・オロスコさんが世界チャンピオンになるには? S・ライト級のホープも29歳。2017年が勝負の年」
 
受けのスタイルを得意とするポストル相手とはいえ、あのペースでフルラウンド動き回るのは相当の体力を要するだろうし、打ち合いたい衝動を最後まで抑えた精神力もかなりのものだったと思う。

さらに、劣勢を跳ね返して流れを引き寄せる勝負勘。
4Rにこれまでよりも強めにパンチを打ってポストルの前進を止め、5R開始直後にいきなりの右でダウンを奪う。

「左だけ? 違うわ! スティーブンソンがウィリアムスを4RKOで下す!! L・ヘビー級たまらんな」

押され気味の中、一瞬のスキを狙って流れをひっくり返すクロフォードの勝負勘と思い切りのよさは本当にすばらしかったと思う。
さらにダウンを奪われて焦ったポストルが強引に前に出てきたところにカウンター一閃。ある意味、ラウンド開始直後の速攻が呼び込んだダウンである。

結果的にあのダウンがポストルに与えた影響は大きかった。
あれで試合の流れは一気にクロフォードに傾き、予想以上に強烈なクロフォードのパンチにポストルが警戒心を強めたダウンである。
ポストル自身は「効いていない」アピールをしていたが、あのラウンド以降前進に若干の躊躇が見られたことが何よりの証拠である。

「最強のクソ試合製造機アンドレ・ウォードさんが本日も安定の完封。ブランドを寄せつけず」

つまり、身体的なダメージよりも精神的なダメージが大きかった。引きどころと勝負どころを間違わない戦術眼というか、クロフォードの勝負勘が引き寄せた試合の流れというヤツである。

もちろんクロフォードのスタイリッシュなボクシングが上背のあるポストルに通用するか、実力が近い相手にいつも通り自分の距離で優位に立てるかという部分に興味があったわけで、あの作戦を選択したクロフォードに物足りなさを感じないわけではない。

「テレンス・クロフォード防衛!! ハンク・ランディを5RでKOに沈める見事な勝利!!」

あれがクロフォードの能力的な限界と考えるか、引き出しの多さと考えるかも人それぞれだと思う。

ただ、僕個人としては勝利のための最善手を選択したクロフォードの姿勢と、それをやりきった心技体のスタミナはすばらしかったと思っている。

「スペンスがブンドゥをKO!! アカン、こりゃぁガチだ。絶対キース・サーマンより上でしょ?」

ポストル勝てる試合だったなぁ……。後一歩が踏み込めなかった

一方敗れたポストルだが、正直この試合は勝てる可能性がかなり高かったのではないかと思う。
クロフォードの大差判定勝利ということで、一見ポストルの完敗のように見える。だが、実際はかなり拮抗した試合である。
むしろ前半は優勢に試合を進めていたし、前に出した左手を揺らす懐の深い構えにクロフォードは相当なやりにくさを感じていたはずである。

ただ、残念ながら後一歩が踏み込めなかった。

予想記事でも申し上げたように、この選手の持ち味は懐の深さと長身を活かした打ち下ろしのボクシング。相手の動き出しを察知する嗅覚と固い拳で出鼻を挫く左。そこから角度のある右につなげる受けのスタイルである。

「クロフォードがモリナに圧勝! でもスター候補がそれでいいのか? ホントに強いのかクロフォード」

だが、その反面フィジカル的にはあまり強いとは言えず、打ち合いの中でガードが下がる癖も目立つ。全体的な印象としては虚弱なウラジミール・クリチコといったところである。
 
「クロフォードvsインドンゴの統一戦予想。クロフォードのランニングスキルとインドンゴの踏み込みに注目」
 
高さとパワーで長年ヘビー級の王座に君臨し続けたクリチコを想起させるスタイルだが、あそこまでの絶望感はない。クリチコと違ってパワフルなインファイターは相当持て余すのではないか。
これが僕のポストルに対する評価である。

「ビクトル・ポストルやべえ!! 強いボクサー見つけた!! ポストルがマティセにKO勝ち」

申し上げたように、今回のポストルはクロフォードの持久走作戦に対して序盤は試合を優位に進めていたのである。
慣れない追い足のボクシングながら、主導権を握っていたのは間違いなくポストルの方だったのだ。

だが4Rで流れを変えられ、5Rに2度のダウンを奪われたことで踏み込みに躊躇が出てしまった。予想以上のパンチのキレと一瞬のスピードを警戒するあまり、一か八かの勝負に出ることができなかったのである。
追いかけるスタイルに慣れていなかったのもあると思うが、やりようによっては勝てた試合だっただけに悔やまれる。

僕が思うに、ポストルが最も勝負をかけるべきだったのは6、7R。ダウンをとられた直後のラウンドである。心情的には大事にいきたくなるところかもしれないが、むしろあそこで強引に前に出てもらいたかった。

「バーンズvsレリクとかいう隠れ名試合。疑惑の判定に興味がわかないのはおかしいのかな?」

ペースを掴んだクロフォードがポイントゲームに持ち込む。踏み込みを躊躇した上にスタイルを逆手に取られて勝負あり

ダウンを奪った後のクロフォードはひたすらポイントゲーム。
とにかく持久走で逃げ回り、距離をとって被弾を避けまくる。タイミングを見て何発かの有効打をヒットしておき、すぐに鬼ごっこに切り替える。結果的に数発の有効打によってポイントをかすめ取るという作戦である。

クロフォードが試合の流れを掌握しかけた6、7R。ポストルの勝負どころはまさしくここだった。
恐らくだが、あの局面で勝負をかけていれば試合が大きく動いていた可能性は高い。カウンターを被弾してピンチに陥っていた可能性も十分考えられるが、その後のジリ貧状態をみれば体力があるうちに仕掛ける必要があったのは明白である。

「クロフォードキター!! 無敗統一王者がジョン・モリナと対戦。キレッキレのスピードスターがビッグマッチに向けて再始動」

7R後半、クロフォードが攻撃姿勢を解除して持久走作戦に切り替える。試合の流れは完全に自分のものだと確信した瞬間である。そして、実質ポストルが勝利する最後のチャンスを逃した瞬間でもある。
最終ラウンドに強引に打って出たが、時すでに遅し。勝ちを確信したクロフォードにいなされておしまいである。

あえて敗因を挙げるとすれば、スタイル的な特徴をすべて逆手に取られたこと。
「追い足のなさ」と「ガードの低さ」と「引きのスタイル」をすべて利用されたことである。1つではなくすべて。そこに絶対的なスピード差が加わったおかげで勝利が指の間からすり抜けていった。そういう試合だったのではないだろうか。

Road to パッキャオ!! クロフォードは絶対勝たなくてはならない試合だった。悠々自適生活を手に入れるために

繰り返しになるが、あんなに疲れる試合運びをフルラウンドやりきったクロフォードは普通にお見事だったと思う。

正攻法で打ち合うより、勝つ可能性がより高いスタイルを選択する。勝利を最優先に最善策を講じる姿勢は文句なしにナイスファイトだった。
それが選手としての成長につながるかは別にして。試合がおもしろいかどうかも別にして。

だが、今回の試合はクロフォードにとって絶対に勝たなくてはいけない試合だったことも確かである。

なぜか。
理由は明白である。

パッキャオ戦が控えているから。

11月に復帰するとされているマニー・パッキャオの相手の最有力候補にクロフォードの名前が挙げられている。この試合に進むためには、どんな手を使ってでも勝たなくてはならなかったのだ。

「今さらメイウェザーとパッキャオを語る。アルバレスvsカーン戦を観て」

正直今回の試合を見る限り、クロフォードがパッキャオの踏み込みから逃げ切れるかは甚だ疑問である。

ただ、そんなことは大した問題じゃない。
重要なのは何よりパッキャオ戦に進むこと。クロフォード史上最高のメガマッチに進み、生涯年収を爆上げすることである。

つまり、2度のメイウェザー戦を経て、冗談みたいな太り方をしているマルコス・マイダナになるためである。
あの自適生活を手に入れるために、今回は何としても勝たなくてはならなかった。マニー・パッキャオというブランドにガッツリ乗るために、どんなに不格好でもポストルに勝つ必要があったのである。

そして、僕はそのクロフォードの徹底した姿勢が嫌いじゃない。結果的にパッキャオ戦の最右翼としての立場を掴みとったのだから、今回の作戦は間違いではなかったのだ。

まあ、これでパッキャオが復帰しなかったら笑うけど。

「英雄の帰還。生贄の名はジェシー・バルガス。パッキャオは復帰戦を盛大に飾れるか?」

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