恐れ入りましたカネロ。リアム・スミスにあんな勝ち方するか。サウル・アルバレスが9RTKO勝ちでS・ウェルター級最強を証明!!【結果】

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アーリントンの町イメージ
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2016年9月17日(日本時間18日)、米テキサス州アーリントンにあるAT&Tスタジアムで行われたWBO世界S・ウェルター級タイトルマッチ。
同級王者リアム・スミスに前WBC世界ミドル級王者サウル・“カネロ”・アルバレスが挑戦し、9R2分28秒TKO勝ちを収めて王座奪還に成功した。

「エリスランディ・ララvsフォアマン感想。ムカつくけどすげえ。ララがダーティ、正当両面でフォアマンを圧倒。長谷川穂積の理想型だな」

NFLダラス・カウボーイズの本拠地でもあるAT&Tスタジアムで行われたこの一戦。巨大スクリーンにリング上の選手の勇姿が映し出される臨場感が有名な巨大アリーナに集まった5万人(!!)を超える観客は、ボクシング界のスター、アルバレスのKO劇に大熱狂。2017年に開催されるであろうミドル級最強王者ゲンナジー・ゴロフキンとのメガマッチに思いを馳せた。

カネロ負ける? 1Rを観て割とマジでそう思った

カネロKO勝利!!
強敵リアム・スミスから悶絶ボディでダウンを奪う!!

恐るべしカネロ。
リアム・スミスにこんな勝ち方をするとは。
ミドル級で試合をすると思いきや、なぜか1階級下げてタイトルマッチを敢行する姿勢に多くの批判が集まり、KOが必須と言っても過言ではない状況での見事な9RTKO。
さすがというか、やはり「持っている」選手である。

個人的な感想を申し上げれば、今回は正直「やばい」と思った

1R開始直後。
スミスはガードを高く上げた覗き見の構えでじわじわと距離を詰めるいつものスタイル。数多くの相手にロープ際で地獄を味わわせた必殺の理詰めである。まさしく堅実を絵に描いたような硬派なボクシング。

「カネロ・アルバレスvsチャベスJr.決定! ビバ メヒコ! 大絶賛の時間だあああぁぁぁ!!」

対するカネロは、リラックスした構えから左ジャブを連打してスミスの前進を止める作戦。
これまでよりも左を多く多彩に打ち込み、手数の少ないスミスのダメージを蓄積させるプランである。

いや、ダメだよカネロ。
前回ジョン・トンプソンがそれやって、枯れ枝のようになぎ倒されたヤツじゃんか。

「やばい。カネロ負けるぞこれ」
1Rのカネロを観たとき、マジでそう思った。

「リナレスがクローラに勝利!! 才能が凡人の努力をあっさり凌駕する」

カネロがするべきはフィジカル勝負。そしてカネロの正確性が特筆ものだった

だが2Rに入り、カネロのスタイルが微妙に変わる。
L字気味に左を下げてリラックスしたいつものフォームではなく、ガードを上げて足をしっかりと踏ん張り、前傾姿勢に構えるファイタースタイルにチェンジしてきたのである。

恐らく1Rを終えて、思ったよりもスミスの圧力が強いことに気づいたのだろう。
スミスはまだ様子見段階で、それほど前進してきていたわけではないが、カネロの嗅覚がいち早く危険信号を察知したということだろうか。

「“カネロ”・アルバレスがリアム・スミス挑戦にファン失望? ゴロフキンとの一騎打ちを回避」

そうそう。
カネロがやるべきはこれなんですよ。

予想記事でも申し上げたが、今回の試合でカネロが勝利するにはフィジカルでどれだけスミスを上回れるか。スミスのエグい詰めに対し、いかにパワーで対抗できるか。
アミール・カーン戦やミゲール・コット戦で見せたようなパシャパシャコンビネーションではスミスは止まらない。どこまでパワー面で優位に立てるかが勝利のカギではないかと思っていた。

「カーン仰向けにバッタリ。“カネロ”・アルバレスが壮絶カウンター一発でカーンを失神KO!!」
「“カネロ”・アルバレス、コットに大差判定勝ち!! 最高峰の技術戦に完勝し、王座獲得!!」

とはいえ、リアム・スミスのスタイルはカネロにも十分通用していたことも確かである。ファイタースタイルに傾向したカネロに対し、再三にわたってロープを背負わせるシーンを作り出していたし、ロープ際での連打はこれまでのスミスの攻めそのものだった。

カネロはスミスの攻めを得意のボディワークで何とか凌いではいたが、あそこで主導権を握っていたのは間違いなくリアム・スミスである。

「バーンズvsレリクとかいう隠れ名試合。疑惑の判定に興味がわかないのはおかしいのかな?」

だがそのスミスの詰めに、カネロはパワーで対抗してみせたのである。
ロープ際で1発1発のパンチにパワーを込め、スミスとの間にスペースができた瞬間に身体を入れ替える。
あれだけ力を入れて打っているのに命中率が落ちないカネロのコンビネーション。井上尚弥の見せかけアウトボクシングにガッカリさせられたばかりだったこともあり、その鮮やかさに目を奪われてしまった次第である。

「井上尚弥がペッチバンボーンに10RKO勝ち!! 井上が何者なのかがいまだに謎…」

想像を超えていたカネロのうまさ。まさかあそこまでリアム・スミスの前進を寸断するとは

そして、カネロのうまさが僕の予想を超えて光ったのが、リアム・スミスの前進を止めるためにカネロが選択したパンチである。

「ウィリー・モンロー・ジュニアがロサドを一蹴!! え? カネロのミドル級調整試合にモンロー?」

見ての通り、スミスは覗き見ガードの構えで距離を詰めてくる選手である。自分の距離になるまで手は出さず、堅いガードと小さなシフトウェイトのみで前進し続けるスタイル。

「ホルヘ・リナレスvsアンソニー・クローラ(クロラ)予想! シャレにならんぞリナレス。スピードで勝てるってマジ?」

一見手数も少なく狙いやすいように思えるが、決してそんなことはない。
あれだけ前後左右に小さくアングルを変えながら距離を詰められれば、そこから逃げ切ることは容易ではない。ガードも堅く、遠い距離で自分のパンチを当てるのも難しい。必然的に距離が詰まった状況で打ち合いをせざるを得なくなるのである。
距離を詰めるまでの過程には若干の違いがあるが、最終的な着地地点はゴロフキンのそれと近いものがあるのではないだろうか。

「ゴロフキンがウェイドを子ども扱い!! もう相手おらんなこりゃ」

そのスミスを相手にカネロが狙ったのは、遠い距離でのコンビネーション勝負。
攻略することが難しいとされる位置で、あえてスミスのガードを崩しにかかる作戦である。

崩すというより、正確には「ガードの隙間を通す」
狙い目は覗き見ガードの下、横。
つまり、アッパーとテンプルへのフックである。

「エストラーダがタブゴンを一蹴!! S・フライで準備万端か。井上尚弥、ロマゴンをパワフルに蹴散らす?」

動き出しにスミスの頭がほんの少し下がる瞬間を狙って自分も踏み込み、左フックをテンプルにヒット。スミスの動きが一瞬止まったところに右足を踏み出して角度をつけてのボディアッパー。もう一度左をスマッシュ気味にテンプルへ。さらに追い打ちをかけるように右のアッパーをダブルで顔面に叩き込む。
しかも、スミスの前進を寸断するほどのパワーがありながら正確性も失わない。

いや、もちろんガードの堅い相手にこの作戦を選択する選手を観たことはあるが、ここまでパワーと精度を高いレベルで両立できる選手はあまりいなかったのではないだろうか。しかも相手はリアム・スミスである。

「パッキャオが復帰戦に快勝!! バルガスに格の違いを見せつけての判定勝利。次戦? やっぱりアイツしか考えられない」

このコンビネーションによってスミスは得意の前進を寸断され、そのたびに足を踏ん張って立て直すところから始めなくてはならないのである。

スミス自身、あれだけ強力で正確性の高いコンビネーションを受けたのは初めてだったのだろう。この選手がガードした腕を振ったり、ローブローに激高したりという姿を見せるのは本当に珍しい光景だった。

すげえなこれ。
まるで「はじめの一歩」の『幕之内一歩vs真田一樹』じゃねえか。
「リングの上に燕は二羽いるぞ」ってか。

って、幕之内一歩vs真田一樹って34巻なの!?
しかも34巻って、調べてみたら1996年発売じゃねえか!!

この前ひっさびさに「はじめの一歩」読んだら完全に迷走してて驚いたけど、確かにこれだけやってればおかしな方向にもいくかもしれないな。

次は夏合宿で砂浜に残った一歩の足あとに久美さんが絶望する感じかね。
ちょうど医療関係に勤務されてる方だしちょうどいいかもね。

んで、試合前の控え室で「好きなの!! 矢吹くん!!」って告白する展開ですね。
「ずっと好きだったの!! だから行かないで」

いやオイww
思いっきり「矢吹くん」って言っちゃってるしww

ゴロフキン戦へ向けて一筋の光が見えた? カネロのあのパワフルなコンビネーションが通用すれば……

強敵リアム・スミスに文句なしの内容で快勝したサウル・“カネロ”・アルバレス(内容的には一進一退)。
これでS・ウェルター級最強を証明することに成功したわけだが、今後の展望はどうなのだろうか。

最大の目標であるゴロフキンとの対戦は依然として厳しいことには変わりないが、それでも今回の試合で一筋の光は見えたのではないかと思う。

以前にも申し上げたように、僕はカネロがゴロフキン戦で勝機を見出すには、自らが前に出る展開に持ち込むことが必須条件だと思っている。

まずゴロフキンの前進に対抗できる武器がカネロにあるかと考えると、やはり得意の高速コンビネーションしかない。

「鉄拳爆発!! ジャーマル・チャーロがテクニシャンウィリアムスを豪腕で沈める!!」

だが、カーン戦やコット戦で見せたようなパシャパシャコンビネーションではゴロフキンには絶対に通用しない。とはいえ、力を込めて打てばスピードが落ちる。どこをどう比較してもカネロがゴロフキンに勝つのは難しい。

と思っていたのだが、今回のスミス戦で見せたように、あれだけ力を入れても精度が落ちないのであれば少しは期待できるのではないかと思い始めている。
あの正確無比で威力抜群のアッパーやフックであれば、ゴロフキンのガードの間をピンポイントで突き通すことが可能かもしれない。ハンドスピードでゴロフキンを圧倒することができればもしかしたら……。

そういう意味でも、わざわざ階級を下げてまでリアム・スミス戦を選択したことには大きな意味があったと言える。
前回はスピードのあるアミール・カーンを相手に追い足の鋭さを磨き、今回は防御の堅いスミスのガードを突き破る練習をする。

「トロヤノフスキー、ワンパンKO負け!! 40秒でインドンゴの左で衝撃ダウンで王座陥落!! 内山vsコラレスの既視感」

いろいろと批判を受けるカネロではあるが、冷静に見ればしっかりとゴロフキン戦を見据えたキャリアを送っていることがわかるのだ(ちょっとこじつけか?)。

そして2017年秋までに後1、2戦正規のミドル級ウェイトで試合をしてフィジカル面を強化すれば、晴れてゴロフキンとのメガマッチへの準備完了である。

「コバレフvsウォード予想!! PFP最強を賭けた2016年最大のメガマッチ!!」

これだけ強敵との試合をこなすカネロを批判? ちょっと落ち着こうぜ

これは常々思っていることなのだが、間を空けずにこれだけ強敵との試合を選択してきたカネロに対して、なぜここまで批判が集まるのかが僕にはわからない。

確かにリング上で「今からグローブをつけてゴロフキンとやってもいい」などとぶち上げてしまったのはアレだが、試合後にアドレナリンが出ていたおかげで吹いてしまったと思えば寛容になれると言えなくもなくもなくないYo!!

そもそもカネロのキャリアを振り返ればわかるように、

エリスランディ・ララ
ミゲール・コット
シェーン・モズリー
フロイド・メイウェザー
オースティン・トラウト
アミール・カーン
リアム・スミス

これだけの強敵と試合をして、48勝1敗1分という戦績を残しているのである。
キャッチウェイトが多いという批判もあるかもしれないが、強敵との対戦を数多くこなしていることは紛れもない事実である。

「ジャーマル・チャーロvsジュリアン・ウィリアムス予想!! チャーロ兄がまたしてもテクニシャンを迎えうつ」

まあ、ボクシングファンの要求する「強敵と戦え」ってのは、単純な強敵ではなく「自分より身体の大きな」強敵と戦えという意味がふんだんに含まれてるからな。

自分より格上で、なおかつ体格的にも不利な相手を選んでこそ男。
自分より下の階級の相手を選んだら、どんな相手だろうがその時点でクソ。

こういう無茶な要求がエスカレートした結果が先日のケル・ブルックvsゲンナジー・ゴロフキン戦のような空前絶後の茶番を生むんだよな。

「無謀にもほどがあるケル・ブルックがゴロフキンに5RTKO負け!! 止めてくれてホントによかった」

「防衛成功のために相手を選んでいるようではベルトの権威が失墜する」
「勝つか負けるかわからないような相手を選んでこそ本物」

こういう風潮が却って「ベルトの権威」とやらを失墜させてるんじゃないの? と僕なんかは思ってるんですけどね。というか、そもそも「ベルトの権威」って何よ?

無敗レコードの継続は一握りの超人のみに許された特権だといつも申し上げているのだが、階級を超えたびっくりファイトが許されるのも、ロイ・ジョーンズやマニー・パッキャオのような超人の特権だということをボクシングファンは忘れてはいけないと思う。

「涙が止まらんw 亀海TKO勝ち!! ソト・カラスとの再戦を制してS・ウェルター級に名前を刻む」

そもそもロイ・ジョーンズが狙ったのも穴王者と言われていたジョン・ルイスである。
さらにウェルター級最強と呼ばれていたフェリックス・トリニダードやオスカー・デラホーヤも、当時悪魔的な強さを誇っていたバーナード・ホプキンスにはなす術なく返り討ちにあっている。
 
「カネロ・アルバレスvsゴロフキン予想。頂上決戦開幕だぜ。若き英雄か、破壊の帝王か。GGGのキャリア集大成の大一番の行方は?」
 
そんな歴史を振り返ると、1年以上の時間をかけて最強王者挑戦への準備を進めているカネロを批判する気持ちなどすっ飛んでしまうのだが。

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