カネロvsイルディリム、ビックリするくらい何もなかった。蜂の巣にされて3Rノーマス。“特別な選手”には“ふさわしい舞台”がある【結果・感想】
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2021年2月27日(日本時間28日)、米・フロリダ州で行われたWBA/WBC世界S・ミドル級タイトルマッチ。同級統一王者サウル・“カネロ”・アルバレスがWBC世界2位の挑戦者アブニ・イルディリムと対戦し、イルディリムの棄権により3R終了TKO勝利を飾った一戦である。
2020年12月のカラム・スミス戦から約2ヶ月のスパンでリングに戻ったカネロ。
対戦相手のアブニ・イルディリムは現在WBCランキング2位。この試合に勝利すればトルコ出身選手では史上初の世界王者誕生とのことで、健闘も期待されていたが……。
試合開始からガードを高く上げてにじり寄るイルディリムに対し、カネロは鋭い左リードで応戦。両者が得意な位置で対峙し、お互いにヒットのチャンスをうかがう。
だがパンチの正確性、多彩さで上回るカネロがボディ、顔面へのコンビネーションを駆使して早くもペースを掌握する。
イルディリムも頭を振ってどうにか対抗するも、スピードと威力を両立するカネロの攻撃についていけず。
3Rにはガードの外側から両フックを浴び、直後にワンツーでダウンを喫するなどまったく歯が立たない。
結局3ラウンド終了時に棄権を申し入れ、その場で試合終了。ミスマッチとも言える一戦はあっけなく幕を閉じた。
カネロがカラム・スミスに完勝。階級屈指のビッグマンがカネロに蹂躙される現象を“ロッキー・フィールディングの呪い”と名付けよう
カネロvsイルディリム決着はええ…。お出かけ前に終わっちゃったよ
PFP No.1に君臨するサウル・“カネロ”・アルバレスが約2ヶ月のスパンで迎えたタイトルマッチ。
前戦で12Rをフルに戦ったことを考えれば少しペースが早いのでは? とも思ったが、結果的にはいっさい問題なく。
相手のイルディリムは戦績21勝2敗の強豪ではあったものの、何ともミスマッチ感満載の一戦となってしまった。
ちなみに僕はと言うと、この日は格闘技イベント「RISE ELDORADO 2021」の現地観戦を予定していたためにリアルタイム視聴はできず。
帰宅後にゆっくりチェックしようと思っていたところ……。
あまりに早期決着だったおかげ? で普通にお出かけ前に観終わっちゃいましたというww
RISE ELDORADO 2021現地観戦。那須川天心が苦戦。原口健飛クッソ強い。相内誠ががが。格闘技ハァンやっぱりすげえw
いや、最初は本当にリアルタイム視聴はできないと思っていたのだが……。
13:00に家を出る予定で、ひと通り準備が終わったのが12:40前後。
「おや、そういえば今日カネロの試合か」ということでチラッとDAZNを覗いてみると、なにやらとんでもなくド派手なセレモニーが行われておる。
時計を気にしながらしばらく眺めていると、大歓声の中からカネロ様ご降臨。
おおう……。
すご過ぎワロタww
PFP No.1レベルになると、こんなスーパーボウルのハーフタイムショー並みの演出で入場できるんかい。
なるほど、さすがはメリケン。
開催地や主催者によって新型コロナウイルスへの対応もアホほど違う。
先日、エイドリアン・ブローナーが無観客のPBC興行でひっそりと勝利していたが、文字通り待遇には雲泥の差がある。
選手としてのブローナーには何の期待もないけど、ブローナーという生き物には少し興味がある。約2年ぶりの復帰戦でサンティアゴに勝利
で、クソ長い選手紹介も終わり、いよいよ試合開始。
さすがに試合をフルで観るのは難しいだろと諦め半分でスタートすると……。
おい終わったよww
カネロの今後に頭を巡らせる余裕すら残しつつ、ごく普通に自宅を出発した次第である。
カネロ、安定安心の3Rノーマス。
この試合だけでは何とも言えんけど、vsベテルビエフでもワンチャンある気もするんだよな。割と冗談抜きで。
あ、相手の人はお疲れ。
名前を思い出す前に負けてしもた……。 https://t.co/hM6p2OMUvo— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) February 28, 2021
イルディリムはカネロにとってやりやすい相手。ビックッリするくらい何もなかったな
例によって前置きが長くなったが、実際の試合について。
まず挑戦者のアブニ・イルディリムはカネロにとってはもっともやりやすい相手だった(と思う)。
戦前から言われていたように両者の実力にはかなりの開きがあり、指名挑戦者と言ってもミスマッチ感は否めない。
こういう結果になることは多くの方が予想していたことでもある。
だが、それ以上に今回はあまりにも相性が悪過ぎた。
過去の試合を観る限り、イルディリムはブロック&リターンが主体のインファイター。
ガードを高く上げてジリジリと近づき、自分の距離になったところで攻撃をスタートするタイプで、被弾前提の試合が基本となる。
特にスピードがあるわけでもなく手数自体も少ない。
なおかつ1発1発の精度、威力はトップレベルに比べてやや劣る。
これだとカネロにとってはやりやすいことこの上ない。
正確性と威力を両立できるカネロにガードの間を通されまくり、ひたすら蜂の巣にされるのではないか。
しかもハの字型のガードは下からの攻撃に弱く、2017年10月のクリス・ユーバンクJr.戦ではアッパーを突き上げられまくった末に3RKO負けを喫している。
カネロ・アルバレスvsイユリディンか。これはモロにカネロ有利じゃない? ビバ・メヒコに向けてだろうけど2ヶ月スパンも珍しい
この試合でイルディリムが勝つにはカネロを後退させるほどの圧力、もしくはタジタジにさせるほどのギアチェンジを見せることだと思うが、残念ながらそういった爆発力も感じられない。
ちょっと勝ち筋が見当たらないなぁと思っていたわけだが……。
本当に何もなかった。
ビックリするくらい何もなかった。
ここまで意外性ゼロの試合も珍しい。2Rで心を折られ、3Rにノーマス。まあ、致し方なしかな
マジな話、ここまで想像通りの試合展開というのもなかなか珍しい。
いつもは予想外の事態が起きたり一方が想像を上回ったりといったことが多く、そういう意外性が楽しかったりもするのだが……。
相性は最悪、実力的にもかなりの開きがある。
格下がこの状況を覆すには相当な工夫と気合いが必要になるが、今回のイルディリムにはそれがまったく感じられなかった。
もしかしたら本人は何かをしようとしていたのかもしれないが、それ以上にカネロの強さが際立ったせいで何ひとつ起きる気配はなく。
3R終了後のギブアップによってあっけなく終わってしまった。
まあ、2Rと3Rのインターバルの時点でだいぶ心は折れてたっぽいですからね。
懸命に発破をかけるセコンドとは対照的に、怯えた目で空虚を見つめるイルディリムさんの姿はなかなかのインパクト。
あそこまで闘志が失われてしまえば、ノーマスも致し方なしな気はする。
カネロが8年7ヶ月ぶりの敗戦。ビボルのジャブとガードを崩せず。“ロッキー・フィールディングの呪い”を解いたビボルに神の祝福を
カネロの技巧を堪能できた試合。やりたい放題な上に3Rで終わったので残虐ゲームにならずに済んだ
逆に言うと、今回はカネロの巧さ、華麗さを山ほど堪能できた試合でもある。
左リードで相手の動きを止め、左右フックでガードの外から側頭部を揺らす。
途中まで同じ軌道で打ち出す得意のパンチをボディ、顔面に次々ねじ込み、イルディリムをさらに混乱させる。
1Rでほぼ動きを見切り、2R以降は1発1発のパンチに力を込めることで相手の闘志を萎えさせる。
さらに3Rからは、ゴロフキンとの第1戦まで使用していたL字気味の構えを駆使してやりたい放題。
左右フックを山ほど意識させ、ガードの真ん中からいきなりのワンツーを通して止めを刺す。
以前にも申し上げた記憶があるが、パンチの威力と正確性をこれだけ高次元で両立できるのは本当にすごい。
カネロ自身、いろいろと言われる選手ではあるものの、実力の高さに関しては文句をつける部分が見当たらない。
バルデスの左フック一閃。ベルチェルトに失神KO勝利。左リードとの緩急が絶妙でこれまでとは別人レベル。相当研究してきたんだろうな
何よりスピード差のある相手を好き放題にボコる姿はそれなりに楽しめたし、3Rで終わったおかげで残虐ゲームにならずに済んだ。
いろいろな意味で「PFP No.1のカネロ様」が証明された一戦だったなと。
カネロが“特別”であることを改めて認識させられた。“特別な選手”にはふさわしい舞台が必要
上述の通り今回はカネロのド派手な入場シーンにいきなり度肝を抜かれたわけだが、ああいう光景を見せられると改めてこの選手が“特別”であることを認識させられる。
現在、ボクシング界でもっとも稼ぐスターであるとともに、大の嫌われ者でもあるカネロ。
僕自身はカネロに対してそこまで悪感情はないものの、カネロのことが嫌いな方がめちゃくちゃ多いことはよく知っている。
カネロの試合は文句なしでおもしろい。
憎たらしいくらいに強い。
どこかで負けてほしい気もするが、その反面カネロが強くないとつまらない。
いろいろと複雑な感情を抱かれることも“特別な選手”である証明であり、今回のような演出は“特別な選手”にのみ許された特権でもある。
実際、ふさわしい舞台、ふさわしい場所、ふさわしい日時ってありますからね。
PFP No.1のカネロ様の登場シーンは当然スーパーボウル並みの演出になるし、シンコ・デ・マヨにはスペシャルな相手ととびきりの舞台でしのぎを削らなくてはならない。
また、単なる防衛戦ですら6万人の観客を集めるアンソニー・ジョシュアはフランチャイズプレイヤーとしての責務を全うする義務があり、簡単に母国を出ることは許されない。
2020年末の格闘技界の大トリを務めるのは堀口恭司と朝倉海以外に考えられないし、彼らにふさわしい舞台はさいたまスーパーアリーナのど真ん中のみ。
先日の「RISE ELDORADO」がRISEの年間最高の舞台なのであれば、主役を張れるのは那須川天心しかいない。
以前にもちょろっと言ったが、井上尚弥が海を渡るのなら相応の舞台が用意されてしかるべき。日本産のモンスターが北米に上陸するのであれば、そこは絶対に「カッコよく」なくてはダメ。
井上尚弥は“お願いされて”渡米してるってのはデカいよな。
日本のモンスターが本場を支配するカタルシスってのは絶対あるし、日本一の選手が海を渡るなら「カッコよく」なきゃダメなんだよ。
この先、相応の舞台(ラスベガス+メイン)が用意されないときはオファーを蹴ってもいいと思うんだよな。
— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) December 18, 2020
軽量級の選手が名前を売るには英国を経由した方がいいとか、有名選手との抱き合わせでインパクトを残す方が近道といった現実的な話はともかく。
日本一の選手をお披露目する舞台はそれなりに値打ちをこいてもええんちゃうの? ってことでね。
ちなみにだが、現在日本でもっとも“特別な選手”と呼べる存在はK-1の武尊かなぁと思っている。
長年「K-1」というホームを守り続け、ファイトスタイルも真っ向勝負のどつき合い上等。ローで崩して至近距離のパンチでねじ伏せる王道中の王道のファイトで、那須川天心のような巧さやごまかしはほぼゼロと言っても過言ではない。
近年は本人も“特別な選手”であり続ける自分に押し潰されそうになっていたようだが、それもそろそろ最終章に入りつつある。vs那須川天心戦が現実味を帯びてきたことにより、本人の苦悩も終わりに近づいているのだろうと。
繰り返しになるが、フランチャイズプレイヤーにはホームを守る義務がある。そして、その場所から簡単に出ることは許されないのである。
なお、僕個人としては「いいからさっさとやれよ」と思っております()
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