畑山隆則vs崔龍洙(チェ・ヨンス)再戦感想。僕の中での元祖日本人チャンピオンはやっぱり畑山隆則なんだよな。辰吉丈一郎ではなく

畑山隆則vs崔龍洙(チェ・ヨンス)再戦感想。僕の中での元祖日本人チャンピオンはやっぱり畑山隆則なんだよな。辰吉丈一郎ではなく

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先日から気が向いたときにやっている「ボクシングのレジェンド漁り」がなかなか楽しい。
思いついた際にできる気軽さや年代、選手を問わず好き勝手に選べる制限のなさなど。新型コロナウイルスの感染拡大によって世間の空気がどんよりしている中、ちょうどいい気晴らしとなっている。

そして表題の件。
今回は「畑山隆則vs崔龍洙(チェ・ヨンス)の再戦」を取り上げてみたいと思う。

1998年5月に東京・両国国技館で行われたWBA世界S・フェザー級タイトルマッチ。同級王者チェ・ヨンスにランキング2位の畑山隆則が挑戦し、2-0の判定(116-113、116-113、114-114)で畑山が勝利。初の戴冠を果たすとともに1997年10月の第一戦でのドロー以来、11か月ぶりの再戦でリベンジに成功した一戦である。

以前にも申し上げた記憶があるが、僕は辰吉丈一郎をよく知らない。

辰吉と言えば薬師寺保栄との壮絶な打ち合いやシリモンコン・ナコントンパークビュー戦での奇跡のKO勝利などが挙げられるが、正直どちらの試合もピンときていない。
ボクシングを観始めた時期もあるとは思うが、「辰吉はすごかった」と何度聞かされても「へえ~、そうなんだ」という感想しか出てこない。

なので、僕にとっての元祖日本人チャンピオンはやはり畑山隆則。
中でもチェ・ヨンスとの第2戦はめちゃくちゃすごかった記憶がある。もっとも有名なのは2000年10月の坂本博之戦だが、僕の中でのベストバウトは断然チェ・ヨンス戦である。

ついでに言うと、2001年2月のリック吉村戦もなかなかよかったかな。

おもしれえなこの試合w 畑山の試合はやっぱり外れがないよね

まず試合を通しての感想だが、はっきり言って超おもしろい
僕がこの試合を最後に観たのは5年以上前なのだが、やっぱり何度観てもすげえなと。

粟生隆寛引退。ビタリ・タイベルト戦おもしろ過ぎワロタw 確かに内山高志に勝てる日本人だったかもしれんね

というより、畑山の試合は基本的に外れがない。
前傾姿勢でグイグイ前進し、真正面から打ち合う。
距離が近くなればなるほど連打の回転力が上がり、被弾も気にせず相手をロープに詰めてねじ伏せるスタイル。

通算戦績が24勝2敗3分19KO。
果敢に相手と打ち合い、真っ向勝負でねじ伏せに行った結果がこの19KO、3引き分けという数字に表れているのだと思う。

“カリスマ”とはちょっと違うかもしれないが、畑山の試合には人を惹きつける魅力、熱量が充満していた。
しかも、チェ・ヨンスとのリマッチ前の再起戦がコウジ有沢との日本タイトル戦ですからね。
リスクを恐れず強敵との対戦に躊躇なく進む。

なるほど、これは人気があったのも納得ですわ。
せっかくなので、1997年10月のチェ・ヨンス第1戦と1998年3月のコウジ有沢戦もあとで観てみますか。
 

意外と足を使ってたんだな。もっと接近戦で打ち合う印象が強かったけど

そして、改めて観るとこの試合の畑山はかなり足を使っていたことに気づかされる。

僕の中では両者が足を止めて頭をくっつけて打ち合う印象が強かったのだが、実際にはそうでもない。
ガードを固めてじり寄り、左右の強打をゴンゴン振るチェ・ヨンスに対し、畑山は足を止めずに出入りのボクシングで対抗している。

身体の強さ、無尽蔵のスタミナ、接近戦での打ち合いを持ち味とするチェ・ヨンスだが、フットワークはそこまでではない。射程も短く、強い左を打つにはある程度まで近づく必要がある。

その点、畑山は接近戦もできるが、前後左右に動きながら左を当てるアウトボクシングも可能。多少膝の硬さは目立つものの、持って生まれたセンスはやはり抜群だったのだと思う。

基本的に至近距離での打ち合いのみのチェ・ヨンスと、離れてもくっついても高い実力を発揮する畑山。
再戦では引き出しの多い方が勝つという話はちょいちょい耳にするが、この試合も概ねそのパターンだったのかなぁと。

メイウェザーベストバウト3選。プリティからマネーへ。金の亡者のL字ガードと左ジャブ

打ち合っちゃうんですよ。1発もらうと「あ?」ってなる

ただアレだ。
打ち合っちゃうんですよねこの人

開始直後から足を使い、遠い位置から左を伸ばす畑山。
身体を振りながら円を描くように左右に動き、絶えず正面を外す。
距離をとり、チェ・ヨンスの突進をいなす意識が山ほど感じられる立ち上がりである。

と、思っていると。

近場でチェ・ヨンスの右フックを被弾した途端、畑山が足を止めて打ち合いをおっぱじめる。
頭を下げて右フックを避け、そのまま体重を預けるように身体を寄せて左右の連打。
負けじと打ち返すチェ・ヨンスの腕を掴み、肩で強引にロープに押し込んでいく。
そして、肘でスペースをこじ開け、身体を倒して右アッパーをねじ込む。

ラウンド序盤の足を使うスタイルとは真逆のインファイトに場内からも歓声が沸き起こる。

そうそう、これこれww
この“プチっ”とくる感じがまさしく畑山隆則。
「あ? 何だてめえ」という心の声がモロに聞こえてくるというか。1発もらうとスイッチが入るのが丸わかりなのがいいですよねww

もともとのヤンキー気質に加え、やられたら倍返ししなければ気が済まないメンタル。
闘争本能の塊のような選手なのだと思うが、チェ・ヨンス戦との第2戦では特にそれが全面に出ていた気がする。

先ほど「この試合はもう少し足を止めて打ち合っていた覚えがある」と申し上げたが、要するに畑山のこういう部分が強く印象に残っていたのだろうと。

もう少し勝負に徹すればさらにいい戦績が残せたと思うけど、それをしないのが畑山の魅力

終盤11、12Rなどは本当にすごかった。

頭をつけてリング中央から下がらず、チェ・ヨンスの突進を真正面から受け止める。
フックを何度も受けたせいで両目は腫れあがり、すでに足を使う体力も残っていない。
だが、自ら前に出て腕を振ることですべてをチャラにし、無尽蔵のスタミナを誇るチェ・ヨンスをヘロヘロにしてみせた。

ラウンドが終わるごとに疲れ切った表情でコーナーに戻るのだが、ゴングが鳴れば動きはこれまでと変わらず。
前戦ではラスト3Rで追い上げを許したこともあり、背中からも「ここは絶対に譲らない」という決意がありありとみなぎっていた。

何とも言えないところだが、この選手にもう少し勝負に徹する冷静さが備わっていれば、最終戦績はより見栄えのいいものになっていたのかもしれない。対戦相手を選びつつ先行逃げ切りの試合を量産できれば、ダメージも少なくもっと長く現役を続けられたのではないか。

そして、あえてそれをしないのが畑山隆則の魅力とも言える。

一度目の引退から階級を上げて復帰したのも坂本博之とやるためだったというし、世界タイトル云々より“太く短く”“楽しい勝負がしたい”というのが最大のモチベーションだったはず。

以前、PRIDE時代の五味隆典が「大晦日に判定? 駄目だよ! KOじゃなきゃ!」と発言して話題になったが、間違いなく畑山隆則もそっち側の人種だと断言できる。

知らんけど。

繰り返しになるが、畑山隆則vsチェ・ヨンス戦、クッソおもしろかった。

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