映画「BLUE/ブルー」感想。後楽園ホールの試合シーンがリアル過ぎて最高に不愉快。あと、やっぱり俳優のスキャンダルってマイナスだよな
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映画「BLUE/ブルー」を観た。
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「BLUE/ブルー」(2021年)
プロボクサーの瓜田は後輩の面倒見もよく練習熱心な努力家。ボクシングに真摯に向き合う彼の姿勢は会長やジム仲間からも広く信頼されていた。
だがその努力や熱量に結果は伴わず、彼の戦績は振るわない。リングに上がるたびに倒されるの繰り返しで、ここ何年かはいいところなく負ける試合が続いていた。
一方、瓜田の紹介でボクシングを始めた後輩の小川は天性の才能とセンス、恵まれた体格で頭角を現し、今では日本王者まであと一歩のところまで上り詰めている。
さらに瓜田の幼馴染である千佳とは恋人同士で、近々結婚を考える間柄。
順風満帆に見えた小川だったが、近ごろ様子がおかしい。
物忘れが多く、突然平衡感覚を失ったり呂律が回らなかったり。ボクシングのダメージと思われる諸症状が目立つようになっていたのである。
小川を心配する千佳は瓜田に小川に引退を進言するよう相談するが、瓜田はこれを固辞。
「もし自分にチャンピオンになるチャンスがあるなら、どんな犠牲だって払う」
彼の才能、ボクシング愛を知っているからこそ、瓜田は千佳の申し出を拒否する。
そんなある日、小川にチャンスが巡ってくる。
次の試合に勝てば、ついに念願のタイトルマッチが実現するという。
千佳の心配をよそに日々の練習にいっそう熱が入る小川。
さらに、その日のアンダーカードには瓜田の試合も組まれているのだった……。
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- 1. 吉田恵輔監督渾身の「BLUE/ブルー」を観た。柄本時生のボクシングシーンは必見。このためだけに映画館に行くのもアリ
- 2. 結構いいけどちょっと物足りなかったかな。せっかくのフィクションなら、もう少しカタルシスがあってもよかった気が…
- 3. 恋愛面も同様。惚れた女がどんな相手だろうがGo! だろ。だって、映画が終わればすべて終了なんだから
- 4. 後楽園ホールでの試合シーンは過去に類を見ないレベルの臨場感。そして最高に不愉快
- 5. 千佳役の木村文乃が印象的。こういう“一歩引いたやまとなでしこ”役が得意だよな。でも…
- 6. 東出昌大もすげえがんばってた。ただ、すまん。どうしてもスキャンダルがチラついて笑ってしまうんだよ()
吉田恵輔監督渾身の「BLUE/ブルー」を観た。柄本時生のボクシングシーンは必見。このためだけに映画館に行くのもアリ
吉田恵輔監督が30年以上続けてきたボクシングを題材にした映画「BLUE/ブルー」。脚本だけでなく殺陣指導にも自ら携わるなど、本人の熱い想いが注ぎ込まれた渾身の作品とのこと。
まず今作を観た感想だが、「結構いいけど若干物足りない」というのが率直なところである。
主人公瓜田を演じた松山ケンイチを始め、出演陣は概ねいい仕事をしていたと思う。
中でも楢崎を演じた柄本時生の存在感は秀逸。
「職場の女の子にいいところを見せるために“ボクシングをやってる風”を出したい」というチャラい理由でジム通いを始めたものの、いつの間にかボクシングにのめり込んでいく様子を見事に表現していた。
特にジム内での練習風景は特筆ものである。最初は運動神経がまったく感じられない鈍臭い動きをしていた楢崎が、日を追うごとにボクサーとして洗練されていく流れ。
瓜田役の松山ケンイチも2年間のジム通いを経て今作に臨んだとのことだが、正直柄本時生は桁が違う。
ド下手な素人→ちょっとだけボクシングをかじった人→プロボクサー。
未経験の素人がプロボクサーになるまでの過程を少ないカットで演じきった役者根性は問答無用で目を見張るものがある。
マジな話、柄本時生のボクシングシーンだけでも今作は映画館に足を運ぶ価値があるのではないか。
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結構いいけどちょっと物足りなかったかな。せっかくのフィクションなら、もう少しカタルシスがあってもよかった気が…
ただ、申し上げたように「若干物足りない」。
今作は「選ばれた者しかたどり着けない栄光に挑戦する“その他大勢”の生き様」を描くことがコンセプトとなっている。
きらびやかな舞台で躍動する選手、“チャンピオン”と呼ばれる人間はほんのひと握り。
どんなに努力しても報われず、表舞台に立つことのないまま去っていく圧倒的多数の“その他”。そんな彼らにもそれぞれに人生があり、自分だけのドラマを生きている。
ボクシングという勝負の世界において、いわゆる「“勝者”になれなかった者たちの日常」にスポットを当てたのが今作「BLUE/ブルー」である。
これ、やろうとしていることはめちゃくちゃ理解できる。
全編1時間47分と適度に短くリアリティもある。
出演陣の努力、プロ根性によって完成度の高い作品に仕上がっていたと思う。
だが、あまりにリアリティを追求し過ぎたせいか、全体的に起伏に乏しく平坦。
せっかくのオリジナル脚本なのだから、多少は逆転のカタルシス要素を入れてもよかった気がするのだが……。
連敗続きでジムの練習生にすらボコられてしまう選手が実際の試合で勝てるわけがない。
デビュー2戦目の選手が経験豊富な元キックボクサーに勝てるわけがない。
わかる。
めちゃくちゃわかる。
リアリティを表現するには、彼らに勝たせてはいけないことは十分理解できる。
でも、アレじゃん?
勝ったっていいじゃんか。
「遊んでんじゃねえよお前」
「ボクシングは何があるかわからないんだから」
「相手がクソ弱いからよかったようなものの」
「わかってますよ」
「だったらもう少しまともな相手を用意してくださいよ」
↑こういうムカつくヤツをイワして溜飲を下げることができるのも創作物のいいところなわけで。
現実的には「性格が悪かろうが強いヤツは強い」「瓜田のように努力家でボクシング愛があっても才能がないヤツはいる」。
勝負の世界が残酷なのは重々承知しているが、少しくらい視聴者心理に寄り添っても罪はないのではないか。オリジナル脚本ならなおさらである。
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恋愛面も同様。惚れた女がどんな相手だろうがGo! だろ。だって、映画が終わればすべて終了なんだから
また、今作では瓜田が実は幼馴染の千佳に惚れていて、自分にはない才能を持つ小川に嫉妬していることが物語が進むにつれて判明する。
はっきりとした描写はタイトルマッチ後の3人のシーンのみだが、何気ない仕草や表情だけでそれを表現してみせた松山ケンイチの演技力はさすがのひと言である。
だが、一歩踏み出さずに感情を押し殺してしまう瓜田へのフラストレーションはえげつない。
後輩であり親友でもある小川が幼馴染の千佳と近々結婚する。
ところが、実はその千佳に瓜田は惚れている。
ボクシングの勝敗同様、恋愛においてもあの局面で勝負に出る男はまずいない。
たとえ自分が千佳に惚れていたとしても、3人の仲を壊す危険を冒してまで行動を起こすことは現実的にはあり得ない。
とは言え、フィクションの世界でならそれをやってもいいんじゃないの?
リアリティを追求するなら踏みとどまるのが正解。
でも、そこで突撃して玉砕するのも決して間違いとは言えない。
なぜならこれは作り物だから。
彼らの人生は映画が終われば終わるから。
要するに「野暮なことすんなよ」という話。
リアリティを求めるのはいいけど、ほんの少し遊び心を出してもよかったんじゃない?
みたいな。
後楽園ホールでの試合シーンは過去に類を見ないレベルの臨場感。そして最高に不愉快
同じリアリティで言えば、今作における後楽園ホールの試合シーンは過去に類を見ないレベルで臨場感に溢れている。
そして、それが最高に不愉快だった。
僕自身、たまに後楽園ホールでボクシングを生観戦したりするのだが、はっきり言ってあの会場が大嫌いである。
理由は会場全体に漂うアングラ感、内輪感満載の雰囲気が気持ち悪くて仕方ないから。
特に選手や観客が仲間同士でワイワイやっている内輪感は尋常ではなく、一見さんが入りにくい空気が充満している。
今作の試合シーンでも端々にそれが再現されていて、ことあるごとにあの不快感を呼び覚ましてくれた。
試合を終えた瓜田や試合前の小川が何の迷いもなく千佳の隣に座ったり、小川の試合中に瓜田がリングサイドの席から声援を送ったり。
「お前ら、絶対にその席のチケット持ってねえだろ」という。
試合の真っ最中に平気で立ち歩くバカがいたりとか、試合中に同じジムの選手がリングサイドにぞろぞろ集まったりとか。
ああいうのって実際の会場でもごく普通にありますからね。
「ナイトゥー!!」
「小さく小さくぅぅ……」
じゃねえんだよバカ。
学生の部活のノリでいっちょまえに“プロ”を名乗ってんじゃねえよクソが。
単純に観戦の邪魔だし、とにかくあの下等な生き物どもの存在が不愉快極まりない。
割と本気で「コイツら全員くたばればいいのに」と思っている。
そして、その不愉快な光景を忠実に再現した今作には強烈な不快感を覚えた次第である()
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千佳役の木村文乃が印象的。こういう“一歩引いたやまとなでしこ”役が得意だよな。でも…
その他、印象に残ったことを挙げるなら、やはり千佳役の木村文乃と小川役の東出昌大の2人か。
木村文乃演じる千佳は東出昌大演じる小川と同棲中で、徐々にボクシングのダメージに侵されていく小川を心配する役どころ。
健康のために小川に引退して欲しいものの、彼のボクシングへの情熱や嫌われたくない思いからあまり強く言い出せずにいる。
そして、木村文乃はこういう“アウトローな生き方をする男を一歩引いた場所から支えるパートナー”的な役どころがめちゃくちゃ得意である。
「火花」での真樹や「ザ・ファブル」でのヨウコ、「追憶」での田所真理などなど(全部未視聴だけど)。
今作の千佳も出しゃばり過ぎずに適度な距離感を保つ女性で、まさしく木村文乃にぴったりの配役と言える。
でもアレだよな。
さすがに老けたよな。
NTTドコモのCMで世間に衝撃を与えた木村文乃も2021年4月現在、すでに33歳。大画面で観ると目尻付近の小ジワも目立つ。
そろそろ“アウトローな男を支えるつつましい彼女”という立ち位置も厳しくなりつつあるのかなと。
てか、初めて観たときは衝撃的でしたからね。
東出昌大もすげえがんばってた。ただ、すまん。どうしてもスキャンダルがチラついて笑ってしまうんだよ()
小川役の東出昌大については、どうしても例のスキャンダルがチラついてしまうというのがある。
僕自身、芸能人が不倫しようがどうでもいいし謹慎する必要性も感じない。当時の東出昌大の叩かれ方は明らかにやり過ぎだったとも思っている。
だが、それはともかく「東出昌大=スキャンダル」のイメージが強いことも事実。この人を観るたびに、どうしても元妻やすっぱ抜かれた相手の顔がチラつく。
今作の東出昌大はめちゃくちゃがんばっていた上に実際の演技もよかった(と思う)。
ただ、シリアスなシーンになればなるほど、カッコつけた演技をすればするほど「でもお前、アレだろ?」と笑いそうになるのである。
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そう考えると、やはり芸能人にとってスキャンダルはマイナス面が多いと思わされる。
スポンサーやファンを裏切ったとか、清廉潔白であるべきみたいな話ではなく。純粋にスキャンダルのイメージが強過ぎて仕事に支障が出やすいという意味で。
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