ピットブルに勝てるのは朝倉未来みたいな奴? サンチェスにギロチンで失神KO。渡辺華奈もデビュー戦勝利。女子はそこそこ通用するよな【Bellator255感想】
2021年4月2日(日本時間4日)、米・コネチカット州で行われた総合格闘技イベントBellator255。
この日米国デビューを果たした渡辺華奈が女子フライ級ランキング4位のアレハンドラ・ララと対戦し、2-1(29-28、29-28、28-29)の判定勝利。ベラトール2連勝を飾るとともに総合デビュー後の通算白星を10とした。
またメインイベントではフェザー級GPセミファイナル第2試合が行われ、ライト級/フェザー級2階級制覇王者パトリシオ・ピットブルがエマニュエル・サンチェスにギロチンチョークで1R3分35秒一本勝ち。2020年11月にダリオン・コールドウェルを1R一本で下したAJ・マッキーとの決勝戦に駒を進めている。
なお、僕はこの興行をBellatorのYouTubeチャンネルの配信で視聴したのだが、渡辺華奈の米国デビュー戦勝利にテンションが上がり倒し、同時にピットブルのあまりの強さにめちゃくちゃ驚かされた次第である。
というわけで、今回はこの日のBellator255から上記2試合をピックアップして適当に感想を言っていこうと思う。
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○渡辺華奈vsアレハンドラ・ララ(判定2-1 ※29-28、29-28、28-29)
今回米国デビュー戦を迎えた渡辺華奈。
この選手はもともと柔道がバックボーンで打撃に課題があると言われており、一段レベルが上がるベラトールでどうなるか? という懸念もあったわけだが……。
結論から申し上げると、結構危なかった。
開始早々のローで大きく身体が流れ、バランスを崩したところに追撃を被弾。あっさりとケージを背負わされる流れに。
相手のララが渡辺の組みを警戒してすぐ離れたものの、その後も打撃を次から次へと芯でもらいまくる。
どうにか組みついてグランドの展開に持ち込みペースを引き寄せたが、純粋なスタンドの力量では完全に遅れをとっていた(ストライカーではないララに)。
だが、そこはさすがの渡辺華奈。
被弾に耐えながら持ち前の強フィジカルでララを転がし、終始上のポジョションをキープする。
中でも随所に見せた刈り技は元柔道のトップ選手だけあり文句なしに凄まじい。ケージ際で組んだ際の腰の強さはベラトールでも上位であることが証明された。
採点としては1Rがララ、2、3Rが渡辺。で、29-28という結果になったと想像するが、3Rに入っても動きの落ちない渡辺に対してララがバテバテだったことを考えると、グランドで渡辺の圧力に耐え続けるのは相当スタミナを要すると思われる。
申し上げたようにスタンドでの打撃にはハラハラさせられっぱなしだったが、とにかく勝ってよかった。本人的にも課題の多い試合だったとは思うが、次につながったことには変わりない。
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女子MMAは海外でもそこそこ通用するよな。レスリングor柔道がバックボーンなら特に
これは前から思っていたのだが、日本の女子MMAは海外でも十分通用する。
2020年11月にUFCデビュー戦を勝利した村田夏南子同様、適正階級と準備期間さえ確保できれば日本人選手は全然やれる。
特にバックボーンがレスリングor柔道(トップ選手に限る)の場合、比較的短期間でMMAに適応できる印象。
主な要因としては、
・日本がレスリング大国、柔道大国である
・そこのトップ選手の身体能力は尋常ではない
・女子MMAが男子に比べて未成熟
・そもそもの競技人口が少ない
などがあるのではないか。
男子のMMAはすでに高度な競技化が進んでいるが、女子の場合はまだそこまでには至っていない。
RIZINにおける山本美憂などもそうだが、レスリングや柔道でトップを張れるレベルのフィジカルモンスターであれば、一定の技術を身につけることでそこそこやれてしまう余地が残っているのだろうと。地肩の強さだけでぶん回せるというか。
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また、女子格闘技における根本的な層の薄さもあるのだと思う。
ベラトール2戦目の渡辺華奈がいきなり5位にランキングされたり、UFCでもクリス・サイボーグが去ったあとの女子フェザー級が焼け野原だったり。
諸々を加味すると、今回のアレハンドラ・ララが4位なのであればひょっとしたら渡辺華奈にもチャンスは巡ってくるかもしれない。
と思ってBellator254で行われた女子フライ級タイトルマッチ、ジュリアナ・ヴェラスケスvsイリマレイ・マクファーレン戦を観てみたところ……。
ああ、ダメだ。
こりゃあアカンわww
ジュリアナ・ヴェラスケス、めっちゃ強いわ。
リーチの長い長身サウスポーで軸が一本しっかり通ったストライカータイプ。
今回のララのように打ち終わりに身体が流れることもなく、打撃がヒットしても深追いしない慎重さも持ち合わせる。
相手が強引に組みついてきてもケージをうまく使って身体を入れ替え、しれっと力を抜いて休憩する狡猾さもある。
この選手に渡辺が対抗するにはケージ際での刈り技がどこまで通用するかだと思うが、そもそもあのガバガバのスタンドで懐に入れるかが疑問だったりする。
何となくだが、遠い位置で漬けられたまま顔面を腫らされまくる展開が濃厚なのではないか。
○パトリシオ・ピットブルvsエマニュエル・サンチェス×(1R3分35秒一本)
そしてメインのフェザー級GPセミファイナル第2試合、パトリシオ・ピットブルvsエマニュエル・サンチェス戦についてだが、これはもう、ピットブルが凄すぎたとしか言いようがない。
中間距離で対峙し、ローをカットしながらジリジリと前に出るピットブル。
いきなり打ち込むワンツーが凄まじい鋭さでサンチェスの顔面を跳ね上げ、直後のハイキックをわずかなバックステップで避ける。
恐らくこの選手はカウンターを得意とするトータルファイターなのだと思うが、威風堂々とした立ち姿からは圧倒的な王者の風格が漂うw
何というか、身体のバランスがまったく崩れないのがいいんですよね。
常に両足に5対5の割合で体重が乗っている印象で、すべての攻撃にほんの少しの体重移動だけで対応できてしまう。
フィニッシュを決めたギロチンに入る瞬間もサンチェスの飛び込みにカウンターで左を合わせていたし、抜群のバランス感覚とともに相手の動き出しを察知する能力もめちゃくちゃ高いのだろうと。
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マジな話、これはAJ・マッキーでも崩すのは困難を極めるのではないか。
あの選手はどちらかと言えばグラップラー寄りだが、そこに持ち込むきっかけはあくまでスタンドでの打撃。遠間から飛び込むド派手なアクションで相手を怯ませ、そのままグランドに引き込む流れを得意とする。
今回のピットブルの動じない様子を見せられると、果たしてAJ・マッキーのアクションが通用するかどうか。
何とも言えないところだが、5Rを通して攻めあぐねたまま判定負けを喫しそうな……。
いや、あの爆発力とグランドでのバリエーションを加味すればAJ・マッキーの勝利も十分ありそうなのだが。
どちらにしろ、このマッチアップに限って言えばUFCにも匹敵するクオリティと言えそうである。
ちなみに僕はアレクサンダー・ヴォルカノフスキーがフェザー級最強だと思っておりますww
ピットブルに勝つには? 朝倉未来のようなタイプが空間支配で上回るのがいい気が…
なおパトリシオ・ピットブルを倒すにはどうすればいいかをちょろっと考えてみたのだが、はっきり言ってよくわからない。
スッと立った自然な構え+カウンター狙いの懐に飛び込んでいける選手がベラトールにいるのかも知らないし、とにかく僕の知識が圧倒的に足りていないのでどうしようもないww
パッと思いついたところだと、朝倉未来のようなタイプが空間支配で上回るのがいいのかも……。
遠間で対峙してカウンターをチラつかせ、侵入を阻みながら打ち終わりにヒットを重ねる。
無理にKOは狙わず間合いのキープに集中しつつ、各ラウンドでわずかなリードを保ったまま終了のゴングを待つ。
試合のイメージとしては、2019年末の朝倉未来vsジョン・マカパ戦が近いだろうか。
サイズ差、リーチ差を活かして距離を支配し、自分の攻撃だけが当たる間合いをキープしたままカウンター狙いに終始。
比較的小柄なピットブル相手ならその作戦で何とかなりそうな……。
いや、ならないか()
一応申し上げておくと、あくまで朝倉未来“のようなタイプ”と言っているだけであって、朝倉未来本人を指しているわけではない。
あの選手は2020年11月のタイトルマッチで斎藤裕に生命線となるディフェンスを崩されているし、恐らく現時点ではピットブルに勝つのは難しい。
朝倉未来vs斎藤裕感想。斎藤の勝ちやな。空間支配とカウンター戦術を突破された朝倉未来はちょっとヤバい?
ピットブルに踏み込みを躊躇させるほどのカウンター+見切りの持ち主がひたすら空間支配に徹すれば。ひょっとしたら何かを起こせるかも? などと思った次第である。
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