伊藤雅雪vs三代大訓、佐々木尽vs石脇麻生、坂井祥紀vs小畑武尊、千葉開vs石川春樹感想。満腹の虎がまさかの僅差判定負け【2020.12.26感想】
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2020年12月26日に東京・墨田区総合体育館で行われた「カケルホールディングス presents A-SIGN.BOXING」を現地観戦してきたのは前回申し上げた通り。
野口将志勝利ぃぃぃ!!! 山口拓也に2-1の判定勝ちで4年3ヶ月ぶりの白星。いい笑顔しとったなぁww A-SIGN.BOXING現地観戦
お目当ては第2試合の野口将志vs山口拓也戦だったわけですが、今回はそれ以外の試合についてです。
連続1RKO勝利を続ける19歳の佐々木尽選手や元世界王者伊藤雅雪選手、その他。
注目度の高い選手が多数出場した盛りだくさんの1日で、YouTube配信の視聴組も満足された方が多いのではないでしょうか。
ぶっちゃけ僕は野口選手以外にまったく興味がなく、現地観戦すらも最後まで迷ったほど。はっきり言って世間の感覚とはかなりズレている自覚があります。
それでも全スルーするのはあまりにアレなので、印象に残った試合をざっと振り返っていくことにします。
もしかしたらこちらの感想もズレているかもしれませんが、個人の印象なのでそこは大目に見ていただければ幸いです。
○千葉開vs石川春樹×(54.0kg8回戦 3-0判定)
まずはこの試合。
第3試合で日本バンタム級7位の千葉開選手が石川春樹選手と対戦し、3-0(80-72、80-72、79-73)の判定で勝利した一戦です。
僕は千葉開という選手を観たのはこの日が初めてだったのですが、はっきり言ってめちゃくちゃよかったです。
煽りVTRで「ポテンシャルは王者クラスより上」「歯車が狂って敗戦を喫したけど、すぐに取り戻せる」といった内容で紹介されていたので「へえ〜」と思っていたところ……。
おいおい、マジですげえじゃねえかと。
両者ともに中間距離での差し合いが得意なタイプで、速さと1発の威力を兼ね備えたパンチの持ち主。
スピード感溢れる派手な試合となったわけですが、各局面で千葉選手が常に上回ります。
中でも左リードの多彩さと前後の出入りの鋭さはちょっとすごい。
「うまい選手」という話でしたが、ここまで駆け引きに秀でているとは。
2019年12月に日本ユースバンタム級タイトルマッチで石川春樹選手をKOした石井渡士也選手をたまたま現地観戦したのですが、正直そのときはあまりピンと来ず。
それに比べて千葉開選手の老獪さと洗練されたスタイルはかなり僕好みでございます。
ちなみに敗れた石川春樹選手もすげえいい選手です。
近場で左ガードが下がってそこに右フックをもらうシーンが多かったり、攻防のつなぎに若干間があったりというのはやや目につきましたが、それも相手の千葉開選手が凄かったという話でね。
渡邉卓也vs三瓶数馬、高山涼深vs千葉開、鈴木雅弘vs利川聖隆振り返り。PPV3000円はアリだと思ったよね
○坂井祥紀vs小畑武尊×(ウェルター級8回戦 3-0判定)
続いて第4試合の坂井祥紀vs小畑武尊戦。
両者1歩も譲らぬ激戦でフルラウンドを戦い抜き、坂井選手が3-0(79-73、79-73、77-75)の判定勝利を挙げた一戦です。
坂井祥紀選手はメキシコ帰りの逆輸入ボクサーとして今年8月に日本のリングに復帰し、それ以来の登場となりました。
坂井祥紀、重田裕紀、佐々木尽、富岡浩介、牛島龍吾、谷口彪賀他。いい選手が多くておもしろかったですね
ただ、非常に申し上げにくいのですがこの選手はちょっと退屈です。
ガードを高く上げて身体を振り、相手のパンチの戻り際に合わせて距離を詰める。
相手にコーナーを背負わせて上下の打ち分け、馬力を活かした前進でねじ伏せる。
前回、今回とサウスポー相手にガツガツとインファイトを挑んで判定勝利を挙げたわけですが、正直試合運びがワンパターンで観るのがしんどい……。
恐らくvsサウスポー攻略のお手本のようなボクシングで、僕にはわからない細かい技術も山ほど詰まっているのだと想像します。
毎回相手が↓こういう状況に追い込まれているので、いわゆる“坂井沼”と呼べるようなものなのだろうと。
とは言えこればかりではさすがに飽きがくるし、ここまで攻めたら倒してほしい。
第4試合までKOどころかダウンシーンすらもないままだったせいもあり、この試合はちょっとダレました。
そろそろ「逆輸入ボクサー」「ゴリゴリのメキシカンファイター」の触れ込みも新鮮味がなくなってきてるしね。
○佐々木尽vs石脇麻生×(日本ユースS・ライト級王座決定8回戦)
お次はこの試合。
第5試合の日本ユースS・ライト級王座決定8回戦。佐々木尽選手が石脇麻生選手と対戦し、3R2分50秒TKOで勝利した一戦です。
佐々木尽の王道キャリアたまらんな。10/19平岡アンディと日本王座決定戦。“これが主役のボクシング”をまんま体現しとるよね
佐々木尽選手は前回の宮崎辰也戦から約1ヶ月という短いスパンでの参戦、さらに相手の石脇麻生選手は寝屋川石田ジムのホープとのことで、もしかしたら厳しい試合になるのでは? と言われていたのですが……。
結果は3RTKO勝利。
1Rに得意のフックで2度のダウンを奪うと、3Rにも再びダウンを奪ってレフェリーストップ。
石脇選手の左リードを被弾するシーンも目立ちましたが、スピード&パワーの差で見事に倒し切ってしまいました。
うん、すごいっすね佐々木尽。
前回の宮崎戦でも申し上げましたが、間近で観るとガチ感が尋常じゃない。ガードの上からテンプルをかすめるだけで相手の膝がガクガクっとくる貫通力はまさに怪物的でございます。
第4試合でダラけた僕の気分を一気に救ってくれました。
宮崎辰也vs佐々木尽感想。宮崎選手は数少ない思入れのある選手。A-SIGN BOXING in新宿FACEを現地観戦してきたぞ
今はまだパンチに強弱がなかったり、被弾が多かったりと荒削りな部分も多い気はしますが、ポテンシャルに関しては破格のものがありそうです。
てか、この階級で世界を狙おうと思えば、それこそスピード&パワーとフィジカルのゴリ押しだけで日本、東洋を制覇するくらいでちょうどええんちゃうの? と思ったり、思わなかったり。
目の肥えたファン()の方が「現時点では世界王者は厳しい」「ディフェンスが緩すぎる」とおっしゃっているのを見かけましたが、いや、現時点では日本ユース王者だからww
レインメーカー佐々木尽キター♪───O(≧∇≦)O────♪
試合中のオラつきっぷりと試合後の落ち着いたコメントのギャップ萌えゴルァ!!
隣の女性の目が完全にハート型になってましたねww
レインメーカー・ササキジン。
○三代大訓vs伊藤雅雪×(ライト級10回戦 2-0判定)
そしてラストは第7試合のライト級10回戦。三代大訓選手と伊藤雅雪選手が対戦し、2-1(96-94、96-94、95-95)の判定で三代選手が勝利した一戦です。
この試合はもう、三代選手のうまさが光ったという言葉がぴったりの試合でした。
序盤から遠い距離で伊藤選手と対峙し、鋭いジャブとサイドへのフットワークで中に入らせない三代選手。
さらに伊藤選手の動き出しを狙ってワンツーをヒットし、バックステップですぐさま距離を取る。
特に伊藤選手が踏み込もうとする瞬間にスッとサイドに踏み出し、1歩近づいてジャブを当てる流れは本当にすごい。
伊藤選手が距離感を掴むまでの前半3Rなど、「うまいなオイ」と何回呟いたかわかりませんww
この距離で対峙して、
スッと入ってワンツーを当て、
間合いの外にスルッと下がる。
ゲストの長嶋一茂氏も感嘆しておりましたが、あの間合いの支配力はこれまであまり観たことがないレベル。
この部分に関して言えば、もしかしたらフェリックス・ベルデホに勝利した中谷正義選手よりも上なんじゃねえか? というくらい。
吉野修一郎vs伊藤雅雪はムズいよね。打ち合う気満々の伊藤。吉野修一郎の剛腕がさく裂しそうな気も…。メインの村田vsゴロフキン戦より興味深い
ただ、伊藤選手もやられっぱなしではいません。
中盤から持ち前の馬力を活かして前進。強引に距離を潰し、近場での打ち合いに三代選手を巻き込みペースを無理やり引き寄せます。
これ以降、両者譲らぬ一進一退の攻防が続き、結果は2-1の僅差判定で三代選手の勝利。
僕は「ギリギリ伊藤選手が逆転したかなぁ」「それともドローかなぁ」と漠然と思っていたのですが、前半の貯金を守りきった三代選手が大金星を挙げました。
正直、僕は三代大訓という選手をこれまでまったく知らなかったのですが、今回で相当気に入っております。
試合前に「ジャブがうまい」「長身」という話を聞いて「伊藤雅雪、もしかしたら苦戦するんじゃねえか?」と思っていたのですが、マジでその通りになってしまいました。
もともと直線的なワンツーファイターで、S・フェザー級時代は大きな身体でゴリ押しするスタイルを得意としていた伊藤選手。
ですが、身体が一回り大きくサイドへの足もあるサウスポーのジャメル・ヘリングに12Rを通して捌かれて王座陥落したことを考えると、階級アップ+長身のジャブ使いというのは相性的に最悪。しかも階級屈指のフットワークの持ち主となれば、この結果も十分考えられたのかなと。
佐々木尽vs湯場海樹、一道宏vs谷口彪賀感想。ゾンビのような一道宏。佐々木尽のロマンは続く
あとはアレだ。
三代選手はキャラもいいんですよね。
パンフレットや煽りVTRで伊藤選手のことを「満腹の虎」「自称主演」呼ばわりしていたのを観て「何コイツ、めっちゃええやんww」みたいな。
秀逸なワードセンスに加え、それを有言実行に変える実力もある。
勝利後のインタビューでも「三代選手、カメラの方向を向いてください」と注意されていたし、マジでいいキャラしてるっぽいっすねww
カメラはそっちじゃないです三代選手。
そうそう、正面向いてくださいね。
「満腹の虎」「自称主演」は僕の中での2020年下半期のベストパンチラインでございますww
なお、伊藤雅雪選手は負けても男前でした。
負けてもカッコいい伊藤雅雪。
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