ダニエル・デュボアはいい選手だった。打倒ウシクのネタは持ってた気がする。ウシクは早い段階でのローブローアピールでレフェリーを味方につけたな【結果・感想】

ダニエル・デュボアはいい選手だった。打倒ウシクのネタは持ってた気がする。ウシクは早い段階でのローブローアピールでレフェリーを味方につけたな【結果・感想】

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2023年8月26日(日本時間27日)にポーランド、ブロツワフで行われたWBA/IBF/WBO世界ヘビー級タイトルマッチ。同級3団体統一王者オレクサンデル・ウシクとWBAレギュラー王者ダニエル・デュボアが対戦し、9R48秒KOでウシクが勝利。2度目の防衛に成功した試合である。
 
 
先週末に行われたヘビー級のタイトルマッチ。
3団体統一王者オレクサンデル・ウシクが2022年8月以来約1年ぶりの防衛戦に挑んだわけだが。
 
 
実を言うと僕は今週あまり調子が上がらず。
日曜日のプロレス観戦で騒ぎすぎた&厳しい残暑のせいか微妙にダルい状態が続いている。
 
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ウシクvsデュボア戦の存在も知っていたのだが、ウシクに興味がないこともあって食指が動かずにいた。
 
で、ようやく調子が戻ってきたので遅ればせながら視聴した次第である。
 
 
ちなみにウシクに2度敗れて再起戦でも微妙だったアンソニー・ジョシュアはおなじみのO2アリーナでスカ勝ちしたらしい。
 
当然未視聴だが。
 
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フットワークと連打の精度+サウスポー。ウシクはヘビー級では希少な存在だよね

まず挑戦者ダニエル・デュボアはなかなかいい選手だった。
僕はこの人の試合をほとんど観たことがなかったのだが、19勝18KOの戦績もなるほどと思わせるパフォーマンスだった。
 
 
オレクサンデル・ウシクは重量級の中では突出した機動力の持ち主。元クルーザー級ということでこの階級ではやや小柄だが、その分凄まじいフットワークと連打を兼ね備える。
 
あれだけ左右に動きながらもスピーディな出入りと連打を同時進行できる能力はとんでもない。
 
 
ヘビー級はどうしても1発頼りの試合になりがちで、スピード勝負というより真正面からの打ち合いが中心になる(と思う)。
 
大男同士がどつき合う光景はド迫力だがやや大味。タイソン・フューリー、デオンティ・ワイルダー、アンソニー・ジョシュアのビッグ3以外はランキング上位の選手でも若干鈍重な印象である。
 
なので、ヘビー級におけるウシクの機動力と精度の高さはめちゃくちゃ希少。その上サウスポーともなれば対策をしようにも練習相手を見つけることすら困難なのではないか。
 
ウシクのド根性と巧さがアンソニー・ジョシュアを振り切る。効かされてタジタジになったジョシュアと疲労困憊の中で打ち合ったウシク。勝負どころでの覚悟の差かなぁ
 

デュボアは打倒ウシクのネタを持ち合わせていた。あそこまでウシクと渡り合ったのはすごい

だが、今回のデュボアは打倒ウシクのネタを一通り持ち合わせていた(と思う)。
・ウシクの出入りについていくスピード
・前手のジャブで渡り合える
・動き出しの瞬間にカウンターを狙える
・ウシクよりも一回り大きい
 
中でも縦横無尽に動き回るウシクについていく小回りが利いたのはよかった。
アンソニー・ジョシュアはウシクの動きに合わせているうちに縮こまってしまったが、デュボアはそうはならず。「当たれば何かが起きる?」と思わせる強打を最後まで打ち続けることができた。
 
25歳という若さもあってか、後半まで失速することもない。
中間距離であそこまでウシクと渡り合ったのは普通にすごいのではないか。
 

連打のウシクと単発気味のデュボア。このままウシクが押し切るか? と思っていたら…

だが、キワの部分で徐々に差が見え始める。
 
激しい出入りを繰り返しながら連打を浴びせるウシクに対し、デュボアの攻撃は基本単発。
 
ジャブの差し合いをしつつウシクが近づく瞬間を狙って右を打ち込む。
あの右は確かに脅威なのだが、それ以上にウシクの連打が邪魔くさい。
 
左で距離を測り、ウシクが踏み込むタイミングに合わせて右をブンッ!!
だが、一連の流れの中で必ず何発か被弾を許してしまう。
ビッグチャンスを掴む代わりに細かい犠牲を払うというか。
 
しかもそのパンチでまあまあのダメージを食っているのが……。
表情には出さないものの、ガクッと膝が落ちるシーンが何度か目に付いた。
 
3Rに入るとデュボアが差し合いを避ける場面が目立ち始め、「これはこのまま押し切られるか?」という雰囲気が漂う。
 
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デュボアが右ボディをウシクの腹に突き刺す。相当練習してきたんだろうな。って、ローブローか〜い

で、問題の5R。
 
このラウンドも軽快な動きでヒットを重ねるウシク。
スルスルっと距離を詰めてガードの外から右をねじ込む……。
 
その瞬間、デュボアが鋭く踏み込み右ボディを突き刺す。
ウシクの右ジャブを内側からねじ込むような左で受け止め、がら空き腹に右をズドン。
 
何となくだが、漫画「はじめの一歩」でアーニー・グレゴリーが宮田一郎を追い詰めたブラッディクロスを連想させるパンチだった。
まあ、現実的に生身の人間にあんなことができるとは思えないのだが。
 
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デュボアは序盤からあの右を多用していたが、基本は顔面狙い。ボディへのパンチは都合3、4発ほど。
だがそのボディがかなり惜しかったというか、そのつどウシクの反応が遅れていたのが印象的。
 
顔面をたっぷり意識させてからいきなりのボディ。その瞬間だけデュボアのスピードがアップした(ように見えた)ことを考えると、この試合に向けて相当練習してきたのだと想像する。
 
って、ローブローか~い笑
 
いや、ローブローが物議を醸しているのは知っていたが、実際の映像を観るとなかなか……。
 
ウシクはもともと足が長い&トランクスもハイウエスト気味。打てる範囲が極端に狭くボディ狙いのデュボアにとってはちょっと気の毒だった。試合後に陣営がゴネるのも仕方ない気がする。
 

序盤から執拗なローブローアピール。アレでレフェリーの意識をそっち側に向けたよね

それを踏まえて試合を観直すと、序盤からウシクが執拗にローブローをアピールしていることがわかる。
「え? そんなに低いか?」「お前がハイウエストなんちゃうの?」と思うほどの神経質っぷり。
 
しかもきっちりと安全圏に退避してからアピールするせいで追撃を受けることもない。
 
要するにあのアピールが適度な線引きになった。
意識的にやったのか結果としてそうなったかは不明だが、ウシクの過剰なアピールによってレフェリーの意識は明らかにそっち側に向いた。
 
こういうのも“試合の流れ”と呼べるのかもしれない。
 
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デュボアはがんばったけど、ウシクのファイトに対応しきれず。フューリーに勝てるとしたらウシクだと思うよ

それ以降、ボディ狙いのデュボアは顔面の防御がおろそかになりウシクのパンチをもらいまくる。
 
8Rにようやく上下に散らすパターンを取り戻したが、すでに流れを変える力はなく。ラウンド終了間際にダメージが噴き出しダウンを喫する。さらに9R開始早々のダウンで万事休す。
 
何だかんだでウシクのファイトに最後まで対応しきれなかった。
 
 
僕は大げさな反則打アピールが好きではない上にウシクにも興味がない。
どうしてもデュボア寄りになってしまうのだが、それでもウシクの実力、実績は凄まじいものがある。
 
それこそタイソン・フューリーに勝てるとすればウシクじゃないの? と思うくらいに。
 
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(ヘビー級の中では)小柄で的が小さく、なおかつ12Rを通して動き回れる機動力とスタミナを兼ね備える。フューリーに狙いを絞らせずに走りきるパターンはガチであり得るのではないか。
 
 
まあ、肝心のフューリーはMMA選手との金稼ぎファイトに夢中なのだが笑
 
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