カネロvsチャーロ弟。久しぶりに「カネロ様」な試合だった。チャーロ弟は早々にスペースを潰されてできることがなくなった【結果・感想】

カネロvsチャーロ弟。久しぶりに「カネロ様」な試合だった。チャーロ弟は早々にスペースを潰されてできることがなくなった【結果・感想】

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2023年9月30日(日本時間10月1日)に米・ネバダ州で行われた世界S・ミドル級4団体タイトルマッチ。同級統一王者サウル・“カネロ”・アルバレスと現S・ウェルター級4団体統一王者ジャーメル・チャーロが対戦、3-0(118-108、118-109、118-109)の判定でカネロが勝利した試合である。
 
 
「4団体統一王者vs4団体統一王者」「比類なき王者対決」等のキャッチフレーズで大々的に宣伝された今回の一戦。
2階級下(約6kg差)のチャーロがカネロにどう対応するか、いかにスピード勝負に持ち込むかに注目していたのだが……。
 
結果はカネロの馬力を持て余したチャーロはほぼ何もできず。ワンサイドゲームのまま12R終了のゴングを聞くという。
 
最後はKO負けを免れるのが精一杯で、中重量級における階級の影響を見せつけられる試合となった。
 
 
なお敗れたチャーロは試合後に「カネロのパンチは強かった」と脱帽。
同時に現ウェルター級4団体統一王者テレンス・クロフォードに対戦を呼びかけるなど、さらなるビッグマッチ実現に前向きな姿勢を示している。
 
クロフォードよ、お前がNo.1だ(1年8か月ぶり2回目)。スペンスを2Rでほぼ攻略、赤子扱いする。スペンスにとっては相性最悪だったかも?
 

斜め上のマッチメーク。最初に聞いたときは「え? そこ?」ってなったよね笑

カネロvsチャーロ弟。
 
PBCと3試合契約を締結したカネロは当初チャーロ兄との対戦を望んでいたとのこと。だが、何らかの理由(ブランク? 精神的な問題?)で実現せず。
 
そこで降って湧いたように発表されたのがチャーロ弟との階級差マッチである。
 
僕は本調子でない兄貴の代わりに「だったら俺がやってやる!!」と弟が名乗り出たのかな? と想像しているが、どちらにしろ「え? そこ?」「それは聞いてねえ笑」というのが最初の感想。
 
多くの方と同じく斜め上のマッチメークだったことを覚えている。
 
カネロvsハイメ・ムンギア。割とムンギアにもチャンスがあると思うねんな。ジャブが通用するかに注目かな。カネロはチャーロ戦を踏襲できれば
 

案外カネロがモタつきそうな気もした。根拠はないけど

そして、試合前の展望は下記。
 
カネロvsチャーロ弟。カネロが案外モタつく気がする。何の根拠もないけど。チャーロが勝つならカスターニョ戦の再現かな。フルスイングで自分の間合いを確保して
 
・チャーロ弟のイメージは強化版カシメロ
・チャーロ弟が勝つならカスターニョVol.2の再現
・左右に動いて芯を外しながらフルスイングでカネロを遠ざける
・どこかでエリクソン・ルビンをKOした右を当てられれば
・カネロにカウンターをチラつかせながら圧力をかけられると厳しい
・普通に考えればカネロが勝つ
・でも、ここ最近のカネロは下降線に入った感がある
・案外カネロがモタモタするかもしれん
・勝敗予想はカネロの判定勝利だけど
 
 
僕の中でのチャーロ弟のイメージは強化版カシメロ
 
左右に動きながらビッグパンチを当てるタイミングを探すスタイルで、2017年10月にエリクソン・ルビンを1RKOした試合はガチですごかった。
あのパンチはカシメロがソラニ・テテに勝利したアッパーと少し似ている。あれがまともに入ればカネロ相手でもチャンスはあるかもしれない。
 
しかもチャーロ弟はカシメロと違って鋭いジャブを兼ね備える。
あのジャブと右でカネロを遠間に釘付けにできれば何かを起こせるのではないか。
 
 
一方のカネロは前回、前々回とピリッとしないパフォーマンスが続いている。
長年の蓄積かウェイトの上げすぎかは不明だが、全体的にカクカクして攻防のつなぎにスムーズさがない。
 
力を入れてパンチを出す割に足がついてこない。そのためいまいち迫力を感じない上に滑らかさもなく読まれやすい。
 
普通に考えれば階級差と相性のよさでカネロが圧倒する組み合わせだが、案外モタモタするパターンもある? かも?
 
大した根拠もないけど。
何だかんだで「結局カネロだったね」という結果になる気がしてるけど。
 
 
だいたいこんな感じである。
 
デビッド・ベナビデスは“自分は絶対に正しい”と思ってる人間だよね。デメトリアス・アンドラーデを6RTKOで初防衛に成功。これはカネロも危ないかもしれん
 

“そのまんま”でしたね。チャーロが勝つにはカネロの前進をどう止めるか? だったけど…

そして、結論としては“そのまんま”
 
サプライズと呼べるものはなく両者の階級差、相性が何の捻りもなくそのまま現れる結果となった。
 
実質2Rで勝負あり。それ以降はカネロがKOするか、チャーロが逃げ切るかだけに興味が向いたことをお伝えする。
 
 
上記の通り僕はチャーロが勝機を見出すにはどれだけ自分の距離で勝負できるか、離れた位置をキープできるかだと思っていた。
 
チャーロ弟の持ち味は一足飛びで間合いをゼロにする踏み込みと躊躇のないフルスイング。
左右に動きながら踏み込みのタイミングを探し、一瞬の隙を見つけてドカン。
 
この選手のイメージは強化版カシメロだと申し上げたが、要するにフルパワーを発揮するには腕を思い切り振るスペースが必要になる。
 
なので、一番の見どころはいかに遠間で対峙できるか、前手のジャブとワンツーでカネロの前進を寸断できるか。
そこがこの試合のすべてと言っても過言ではない(過言か?)。
 
 
 
ダメでした……。
 
覚悟を決めて耐久力勝負に出たチャーロ弟の勝利。面食らって対応が遅れたカスターニョは10Rにダメージが噴き出してジ・エンド。あと、リングサイドのザブ・ジュダーさん笑
 

腰が引け気味のジャブではカネロは止まらず。早々に距離を詰められる最悪な状況に

いや〜、ダメでした。
ダメでしたねぇ〜。
 
開始直後からガードを上げて圧力をかけるカネロに対し、前手のジャブで応戦するチャーロ。
 
だが、腰が引け気味で打つパンチにはいまいち力が乗らない。
ガードの間を抜いてカネロの顔面を揺らすものの、カネロは意に介さず前進を続ける。
 
そしてカネロがジャブからワンツーを返すとチャーロは正面を外すべくより大きく左右へ動く。
 
 
2Rに入っても流れは変わらない。
チャーロのジャブではカネロは止まらず、逆に距離を詰められる展開に。
 
ラウンド後半になると両者の間合いが半歩ほど近づきほぼ万事休す。離れて勝負したいチャーロにとってはまさしく最悪の状況である。
 

2Rで実質勝負あり。チャーロは懐に入られるとできることがなくなる

繰り返しになるが、チャーロが勝機を見出すには遠い間合いからビッグパンチをぶち込む、もしくはカネロにそれを意識させることが重要。
 
それをやるには腕を思い切り振るスペースを確保しなくてはならないわけだが、困ったことにチャーロにはカネロの前進を止める術がない。
 
腰が引け気味で打ち込むジャブには威力がなく頼みの右のフルスイングは出す気配すらない。
 
ファーストコンタクトで「やばい」と感じたのだと思うが、それを踏まえても萎縮するのが早かった。
 
 
ブライアン・カスターニョVol.1でもそうだったが、あの位置に入られるとチャーロはできることがなくなる。
 
2R後半に両者の間合いが半歩ほど近づいたと申し上げたが、実質ここで勝負あった印象である。
 
ダニエル・デュボアはいい選手だった。打倒ウシクのネタは持ってた気がする。ウシクは早い段階でのローブローアピールでレフェリーを味方につけたな
 
流れを変えるには右のビッグパンチで勝負するしかない。
だが、早々にスペースを潰されてそれを出すタイミングが見つからない。
左右に動きながらチャンスを探すものの、圧力が強すぎて防御で手いっぱい。
下手に手を出そうものならカウンターの餌食になる。
 
そもそも4団体統一王者同士の対決、2階級上のカネロ相手に1、2Rで勝負をかけること自体が無茶な話である。
 
チャーロにとっては本当にキツい試合だった。
 

やりたい放題のカネロ。久しぶりに“俺様”カネロな試合だった笑

案の定、3R以降のカネロはやりたい放題である。
多少の被弾はお構いなしにガツガツ前進、チャーロにロープを背負わせ連打を浴びせていく。
 
上と見せかけて下、下と見せかけて上、右と見せかけて左、などなど。
得意のフェイントをおり混ぜド派手なアクションで攻めまくる。
 
7Rにダウンを奪った右もそれまで再三ヒットしていたパンチで、上と下のフェイントをたっぷり見せたおかげで効果は倍増である。
 
 
何と言うか、今回は久しぶりにカネロの“王様ボクシング”を観た気がする笑
 
世界は自分中心に回っていると言わんばかりの俺様っぷりw
相手の出方を見て振る舞いを決めるのではなく、自分のやりたいことだけをやる。
 
「4団体統一王者vs4団体統一王者」「比類なき王者対決」等、大袈裟な煽り文句の試合だったが、蓋を開けてみればカネロのいいところばかりが目立ったなぁと。
 

カネロが本調子ではないのは間違いなさそう。でも、ミドル級ならまだまだいけるんじゃねえか?

と言いつつ、一番よかった時に比べて動き自体は落ちていると思う。
 
相変わらず攻防のつなぎはカクカクしていてバックステップからのリターンにはトロさが目立つ。
で、終盤には定番の失速を起こして詰めきれずに試合終了。
 
下降線に入ったかはともかく本調子でないのは間違いなさそうである。
 
カネロvsジョン・ライダー感想。ダウンで吹っ切れたライダーの健闘。カネロが下降線に入ったという意見には同意せざるを得ないな。切ないけど
 
ただ、それでも階級トップレベルの力を残していることも事実。
もっと言うと、ミドル級に落とせばまだまだいけるんじゃねえか? という気もする。
 
今回の試合を観て今後は無理にビッグマンを相手にしなくてもいいのでは? と思ったのだが、どうだろうか。
L・ヘビー級まで上げた選手がミドル級でちゃんと動けるのか、30歳を超えて負担はどうなの? といった懸念はあるが。
 
 
とりあえずアレだ。
どこかの段階(次戦?)でチャーロ兄vsカネロ戦の実現を願う。切に願う。
 
このままだとマジでデメトリアス・アンドラーデがラスボスになっちゃうので笑
 
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