ティム・チューがトニー・ハリソンのジャブとクネクネディフェンスを打ち破って暫定王座戴冠。流れが見える僕好みの試合だったw でも、チャーロ弟に勝てるかは…【結果・感想】
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2023年3月12日にオーストラリア・シドニーで行われたWBO世界S・ウェルター級暫定王座決定戦。同級1位ティム・チューと同4位トニー・ハリソンが対戦し、9R2分43秒TKOでティム・チューが勝利。暫定ながらも初の世界タイトル戴冠を果たした試合である。
僕はこの1、2週間ほどWBC(野球の方)関連で忙しく(笑)、ボクシングをほとんど観ていない。
侍ジャパン4連勝で準々決勝進出。プールB東京ラウンド感想。弱者の兵法の中国、打撃のチェコ。ヌートバー、大谷翔平、ダルビッシュその他
ただ、個人的に注目しているティム・チューが初めて世界タイトルマッチを迎えるということでこれはチェックしておくかと。
ボクシングこええww
いや、ボクシング怖いっす。
久しぶりに格闘技の試合を観たけど、マジっすか。
こんなに刺激が強いんすね笑
そもそも何が悲しくて何の恨みもない相手と30分以上殴り合ってんだよ。
意味不明すぎるでしょ()
去年12月のサッカーW杯期間にも似たようなテンションになったことを覚えているが、今回はガチで観ていなかったせいでさらにおっかないw
3Rあたりでようやく慣れてきたものの、そこまでは完全に「うへぇ……」状態だったことを告白する。
なので、これから申し上げる感想もそれを踏まえた上でお付き合いいただければ幸いである。
カネロが戻ってくる。WBO暫定王者ジョン・ライダーとの復帰戦。打ち合いになりそうだけど、僕はカネロを応援する。でもジョン・ライダーもいい選手っぽい
めちゃくちゃ僕好みの試合だった。様子見の序盤から圧力を強め、徐々に相手を袋小路に追い込む
まず全体の感想としては、かなり僕好みの試合だったなぁと。
立ち上がりはハリソンの懐の深さ、ジャブの鋭さを持て余したティム・チューだが、2R後半あたりから少しずつ適応。パンチの戻り際に圧力を強め、徐々に自分の距離で対峙する流れに。
対するハリソンはジャブだけでは対応しきれず右の強打、サイドへのフットワーク等を駆使するが、チューのプレスにどんどん苦しくなる。
7Rあたりからは不得手な接近戦を強いられ9Rについに決壊。ダウンを奪われ、フラフラになったところでレフェリーが試合を止める。
相手のジャブをもらいながらも力強いプレスでじわじわと距離を詰める。
中盤、自分の得意な間合いを作ったところで1発1発に力を込めてパンチを打ち込む。
必死に足を使う相手を袋小路に追い込み、強引に接近戦を強いる。
で、最後はロープを背負わせた状態でラッシュを浴びせてジ・エンド。
様子見の序盤→圧力を強める中盤→フィニッシュの後半と、全体を通してしっかりと流れが見えた一戦。
ハリソンも鋭いジャブと懐の深さ、上体の柔軟性等、実力の高さを示したものの、最後はにっちもさっちもいかずに撃沈させられた。
強烈な1発で決着がつくド派手な試合もいいが、今回のように流れのある試合はマジで僕好み。
内容はまったく異なるものの、2020年11月の井上尚弥vsジェイソン・モロニー戦を想起させる一戦だった。
尚弥きゅん。井上尚弥がモロニー(マロニー)を7RKO。モロニーはいい選手だったし井上の試合で過去一番好きかもしれない
トニー・ハリソンもがんばった。ジャブと右ガードを徹底。でも想定よりも早く攻略されちゃったよね
敗れたトニー・ハリソンについてだが、どこかで聞いたことがある名前だと思っていたら……。
ああ、チャーロ弟と2度対戦したアイツか!! と。
1戦目で微妙な判定勝利で初戴冠→リマッチで負けちゃった人だっけ?
柔軟性と見切りのよさを全面に出したクネクネファイターだったと記憶しているが、確かにそんな感じ。
この試合でもチューの圧力をヌルヌルといなしつつ、中盤までは鋭いジャブを再三ヒットするなど互角の展開。スコアも8Rまでは3者ともに77-75でチューのリードとかなりの僅差。ファイタータイプを空転させる能力は相当高かった。
覚悟を決めて耐久力勝負に出たチャーロ弟の勝利。面食らって対応が遅れたカスターニョは10Rにダメージが噴き出してジ・エンド。あと、リングサイドのザブ・ジュダーさん笑
中でも常時右で顎を守る徹底ぶりは目を見張るものがあった。
チューの左フックへの警戒、左ジャブ中心の組み立ては十分機能していた(気がする)。
ただ、思った以上に早く攻略されてしまったのが……。
左を軸になるべく長い時間粘る作戦だったと想像するが、想定よりも早いラウンドで距離が詰まったために右を強振せざるを得なくなる。
左右のパンチを強めに打ち込むことでチューの圧力を受け止めるが、その分ガードはやや甘めに。打ち終わりの復元力も若干落ちたところに右をもらって盛大にグラつかされてしまう。
この選手はチャーロ弟とのリマッチでも近場のフックでダウンを食っていたが、接近戦での脆さ、根本的なフィジカル不足はちょっとどうにもならない。
風貌はバーナード・ホプキンスっぽさもあるのだが、相手の馬力、プレスの強さが一定以上になると手に負えなくなる。そこからの二番底がないのが何とも惜しい。
ティム・チューvsムルタザリエフ、カシメロvsサンチェス、小國以載vsンギーチュンバ。またロシアのヤバいヤツが出てきた。カシメロは実質ラストチャンスを逃した? “キレイなジャイアン”伊藤雅雪も大変だよな笑
ティム・チューから目が離せないw 前回のテレル・ガウシャ戦が役に立った気がするよ
そして勝利したティム・チューはめちゃくちゃよかった。
上述の通りじわじわと相手を袋小路に追い込む理詰め感は僕の大好きな試合運び。ある程度の被弾はOK、自分の距離に入る方を優先する姿は全盛期のゲンナジー・ゴロフキンを彷彿とさせる。
しかもそれをトニー・ハリソン相手にやったのが素晴らしい。
何となくだが、これは前回のテレル・ガウシャ戦が活きているのではないか。
ティム・チューの馬力と経験値の少なさ? テレル・ガウシャの懐の深さとカウンターにモタついたけど圧力で圧倒。こういう相手への対策は日本人選手も必須なんだろう
初めてチューが北米のリングに上がった2022年3月。
相手のテレル・ガウシャはオースティン・トラウトやエリスランディ・ララ、エリクソン・ルビンとも対戦経験のある強豪で、キャリアでKO負けは一度もない。
攻略のしにくさではトニー・ハリソン以上と言っても過言ではない。
その相手に初回にダウンを奪われるものの、2R以降はしっかりと攻勢に転じた上での判定勝利。
アジア圏ではまず出会うことがない(日本人選手の鬼門とも言える)クネクネマンに初遭遇で勝利したことは今回の試合にも大いに役立ったはず。
ザブ・ジュダーを2RTKOで仕留めた父親同様、ナチュラルな骨太っぷりと柔軟性が融合したスケールの大きさはマジで僕好みw
北米でどこまで人気が出るかは不明だが、個人的に今後も注目したい選手である。
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チャーロ弟に勝てるかはわからない。試合を組み立てている最中に1発でひっくり返される可能性も?
ただ、現時点でチャーロ弟に勝てるかどうかは……。
2021年11月の井上岳戦を観た際は「はい!! 世界王者決定」と確信したのだが、この2戦を経て「もしかしたら危ないかも?」と思い始めている。
ティム・チュークッソ強え…。井上岳志にほぼフルマークの判定勝利。厳しい試合になるとは思ったけど、すでに世界王者よりも強そう
特に今回、トニー・ハリソンを仕留めるのに9Rまでかかっているのが……。
序盤からじわじわと追い詰め後半にフィニッシュする試合運びは確かにお見事だったが、爆発力という面ではいまいち。ややフィジカルの足りないハリソンにあれだけ粘られたことを考えると、チャーロのスピード&パワーに後れを取る可能性もありそう。
それこそチューが自分の距離を作る前に遠間からの1発で豪快に効かされるパティーンも?
チャーロ弟は順序だてて相手を仕留めるというよりどちらかと言えば強烈な1発で一気に決めるスタイル。元3階級制覇王者のジョン・リエル・カシメロと似たタイプの選手だと思っている。
なので、チューが試合を組み立てている最中にテーブルごとひっくり返される展開も全然あるのではないか。
日にちも決まっていない状態であれこれ言っても仕方ないが、とにかく僕は両者の対戦が楽しみである(正確にはティム・チューの4団体統一戦が)。
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