【ラグビー】TMOって必要? テレビジョンマッチオフィシャル不要論を唱えてみる。暴論かな?
TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)とは:
世界のラグビー統括団体ワールドラグビー(World Rugby)が採用する国際基準の判定技術で、トライ時やゴールキックの判断が困難な際に録画映像を使用して主審の判定を手助けするもの。
主審が両手で四角い箱を示して「TMO」での確認を依頼し、その状況は大型ビジョン(設置されていれば)にも映し出される。
「第6条 マッチオフィシャル – World Rugby Laws」
要は野球のMLBにおけるチャレンジ制度のようなもので、MLBとの違いはチームが申請するのではなく主審が依頼するところ。
MLBは疑惑の判定を覆すために他方のチームが権利を行使するのに対し、ラグビーの場合は主審自らが判定に正確性を期すために設けられた制度である。
なお、ジャッジ用の画面は12画面ほど用意されているとのこと。
いわゆる「ビデオ判定」。トップリーグで昨シーズンから導入された制度です
最近よく耳にする「TMO」。
いわゆるラグビーの試合におけるビデオ判定。現在世界基準で導入が進められている制度であり、日本のトップリーグでも2015-2016シーズンから公式戦全試合に導入されている。
「トップリーグ2016-2017、全試合でTMOを実施、ジャパンラグビーTMO サポーター決定」
この制度によりジャッジの正確性が向上し、ファンにもわかりやすいプレーの提供を期待できるとのことである。
さらに、大学選手権においても微妙なジャッジが勝敗を分けるケースが起こり、下位のカテゴリーでの導入を希望する声も大きくなっている。
「【ラグビー】帝京vs東海感想。帝京は小型版オールブラックス? 驚異の8連覇の秘訣を考察する」
2019年に日本で開催されるW杯に向け、国際基準に沿った制度の浸透は日本ラグビー界にとって急務である。
TMOいらないです。メリットとデメリットを鑑みると、そういう結論に至る
時代を逆行するようでアレなのだが、あえて言わせていただきたい。
TMOいる?
去年からちょくちょく目にするTMO。
個人的な意見を言わせていただくと「あれ、いらない」。
インターネットなどでラグビーファンの声をざっと聞くと、どうやらTMO制度にはおおむね賛成の方が多いようである。特に勝敗を左右するトライシーンについては、球際のジャッジに対する正確性の向上が大いに歓迎されている。
確かにジャッジの精度が向上するのはすばらしいし、ギリギリの局面で白黒をはっきりさせるというのはいいことである。
だが、それらを踏まえた上で、やっぱり「TMOはいらない」。
「今の日本は強い」マニアもニワカもそうでない人も一緒に。日本がスコットランドを下し初のベスト8」
とりあえずTMOのメリットとデメリットを思いつくままに……。
●メリット
・トライやゴールのジャッジの正確性が向上する
・ギリギリのプレーにおいて主審の力量に左右されないジャッジが臨める
・勝敗を左右するシーンでの疑惑判定による遺恨を防げる
大まかにはこんな感じだろうか。
若干内容は被っているが、つまりは「ジャッジの正確性」に収束するわけである。
●デメリット
・試合の流れが止まる
・大型ビジョンがないグランドだと、観客が放置される
・設備投資が必要になる
・主審の力量の向上が見込めない
・選手にとって無意味な休憩時間が生まれる
思いつく限りでは、だいたい上記の通りである。
その中でも特に気になるのが、
・試合の流れが止まる
・選手にとって無意味な休憩時間が生まれる
の2つについて。
デメリット例1:試合の流れが止まる
ご存知の方も多いと思うが、ラグビーというスポーツはルールが複雑である。
・ボールを前に落としたらダメ
・ボールを前に投げたらダメ
大前提としてはこの2つだが、それ以外にもわけのわからないルールが山ほど存在する。
「歴史的土曜日。神戸製鋼ダン・カーターがデビュー。サントリーのマット・ギタウとマッチアップ。日本ラグビーとんでもねえわ」
しかも毎年のようにマイナーチェンジがなされ、そのつど知識の見直しをする必要がある。
極端な話、実際にプレーしている選手でもよく把握していない部分もあるのではないだろうか。
そして、ここ数年の傾向として「なるべくゲームを切らないスピーディな展開」を重視したルール改定がなされている。
「選手は立ってプレーしなさい」
「タックルした後はすぐに立ちなさい」
「倒れたプレイヤーはボールを早く離しなさい」
もともと言われていたことではあるが、この何年かで「スピーディな展開ラグビー」の推奨は世界でも加速度的に進んでいる。
だが、このTMOは残念ながら世界のすう勢とは真逆の制度と言わざるを得ない。
まあ世界のすう勢云々よりも、端的に言うとつまらない。
基本的にTMOの依頼が発生するのはトライシーンである。
つまり、どちらかのチームが自分たちの攻撃パターンで相手ディフェンスを崩し、ゲインラインを突破した瞬間である。
まさしくラグビーの醍醐味。
選手たちの膨大な反復練習と一瞬の閃きが融合した、ラグビーにおける最高のシーンである。
イキった言い方をすれば「ケミストリーが起こった瞬間」というヤツだ。
正直、僕はこのシーンのためにラグビーを観ていると言っても過言ではない。
試合中の駆け引きや両チームの采配、お目当ての選手など。見どころは数多くあるが、ラグビーにおける最高潮がトライシーンであることに疑いの余地はない。
そして、その最高のシーンにスポットライトを当てずに「ボールをグラウンディングしたか、してないか」でゴチャゴチャするのがどうにも邪魔くさいのである。
いいじゃねえかトライで。
あれだけ見事なプレーなら、主審がトライって言えばトライだよ。
いちいち試合を止めてビデオなんか観る必要ないでしょ。
いい場面であればあるほど興ざめしてしまうのである。
すべてに正確性を期すというのは確かに大事である。
だが、僕などは「微妙な判定も含めてラグビーじゃないの?」「プレーするのも人間、ジャッジするのも人間。そういう人間臭さがあるからおもしろいんじゃないの?」と思ってしまう。
そもそも「主審によってオンプレーの時間が10分前後変わる」という話もあるし、わざわざ試合を間延びさせてまでゴチャゴチャやる必要性を感じないのである。
というか、TMOの回数制限がないってどういうことよ?
主審の力量不足をノーリスクで補える制度ってのがどうも納得いかないんですよね。
ひょっとしたら決まりがあるの?
探したけど見つからなかったんですが。
というか、あの人たちってインターセプトを狙って失敗すると「故意のノックオン」って怒るじゃんか。
わざわざその選手を呼び出して「あれはラグビーの流れを切る最悪のプレーだ」って長々と説教するじゃんか。あの説教の方がよっぽど試合の流れを切ってると思うんですけどね。
「アメフト初観戦おもしれえww ライスボウルin東京ドームがご機嫌な体験だった件。来年はXリーグを現地観戦しよう」
デメリット例2:選手にとって無意味な休憩時間が生まれる
そして、このTMOの一番ダメだと思うのがこれ。
「選手にとって無意味な休憩時間が生まれる」ことである。
ラグビーというのは基本、心肺機能と力比べのスポーツと言っても過言ではない。
トップレベルなら前後半合わせて80分、いかに体力とパワーを持続できるかが勝敗を左右するゲームである。
もちろんフォワード戦が得意なチーム、バックスの走力で勝負するチームとカラーはさまざまあり、相手チームの特徴によって戦術を変えることになる。
だがこのTMO制度には、こうした各チームの戦術を根底から覆す可能性をはらんでいるのである。
「ラグビー7人制(セブンス)の魅力。メダル獲得できるか? ニュージーランド、フランスに勝利し、フィジーと激突」
1度のTMOがどのくらいなのかは定かではないが、僕の観た限りではだいたい3、4分。長くなると10分近くなるケースもある。
その間選手たちが何をしているかというと、特に何もしていない。チームで集まり、プレーの確認をしている場合がほとんどである。
つまり、TMOの審議中に無意味な休憩時間が生じているのである。
これは結構重大なことだと思うのだが、どうだろうか。
たとえば重量フォワードが持ち味のチームがじわじわと相手を消耗させ、終盤の一発逆転を狙っていたとする。そして、後半残り10分に勝負を賭けようと思っていたところでTMOが発生したら。
せっかく消耗させた相手フォワードに無駄な休憩時間を与えてしまうのである。
えらいこっちゃである。
特に後半になればなるほど、チームとして積み重ねてきた戦術が覆される可能性が高くなるのだ。
TMOの設備がショボい。もう少し多角的な映像が欲しいよね
以上が僕がラグビーのでTMO制度が不要だと考える理由である。
もちろんジャッジの正確性を向上させることは大事だが、僕はこのTMOにはそれ以上のデメリットがあるようにしか思えない。
ただでさえわかりにくいラグビーの試合をさらに間延びさせ、最悪客離れを引き起こす原因にすらなりかねない。
そもそも12の画面で判断しているとのことだが、それもちょっと怪しい。
大型ビジョンに映し出されるシーンは単なるテレビ放送のリプレイだし、明らかに映す角度が不足している。
何度観ても判別が難しく、それならやらない方がマシじゃないの? という気すらしてくるのである。
ちなみにこれがMLBでのチャレンジに使われるモニター設備。
An Inside Look at Major League Baseball's High-Tech Replay Center (Photos) https://t.co/Yl6EM6QFHW @thrさんから
— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) 2017年1月23日
「正確性」を強調するなら、せめてこのくらいの設備は欲しいところである。
まあ、実際にこれを揃えようと思えば10億円ほどかかるらしいが。
というか、僕はMLBのチャレンジ制度にも反対なんですけどね。
やるならとことんやれ。できないなら止めちまえ。今のTMOはとにかく全部が中途半端過ぎる
個人的には反対のTMO制度。
その理由は散々述べてきた通りだが、残念ながらこれだけ浸透した状況では今からなくせというのも無理なのだろう。
だが、とりあえず言えるのは現状はすべてが中途半端だということ。
MLB並みにとは言わないが、せめてもう少し設備をマシなものにしてもらいたい。それこそインゴールでしか起こらないのだから、その部分にカメラをもっと設置するべきだと思う。
逆に何度観てもわからない中途半端な映像を延々と流して観客を放置するくらいなら、やらない方がマシ。主審のジャッジに委ねた方がスポーツイベントとしてははるかにいい。
また、現状の「主審の判断でノーリスクで何度も依頼できる」というのは絶対によくない。とりあえず、TMOを依頼するからには主審に何かしらのリスクを背負っていただきたい。
「ラグビーシックス・ネーションズの注目国はフランスだ!! 日本の解説者はクソ無能だ!!」
たとえばシーズントータルで依頼できる回数を決めるとか、累積回数が平均の4割を超えた場合は講習を義務付けるとか。
そうすれば主審側も「困ったらTMO」という甘えを排除し、緊張感を持って試合に臨むことになるし、それによってスキルアップも見込めるはず。
そして、審議の時間は最長で1分半。
これを徹底していただきたい。
観客の放置タイムをスクラムやラインアウトの準備にかかる時間程度に収め、それを過ぎても結論が出ない場合は主審の判断に委ねる。そのくらいはっきりとした線引きがあれば、もう少し試合が締まるはず。
無理だと思うけど。