田中マー君、今季初完投で9勝目。被弾に泣かされた雪辱を晴らす!!【ブルージェイズ戦】
ヤンキースに所属するマー君こと田中将大投手が15日(日本時間16日)に敵地で行われたトロント・ブルージェイズ戦に先発。
9回を投げ、112球8奪三振5安打1失点の好投で9勝目(5敗)をマークするとともに、今季初完投を挙げた。
「田中将大、2本のソロ本塁打に泣き今季5敗目。なぜ今年は被本塁打が増えたのだろうか」
ア・リーグ東地区で激しい首位争いを繰り広げるブルージェイズとの一戦。この大事な試合を田中の好投で制したヤンキースは、連勝を3に延ばした。
結果に対して調子自体はあまりよくなかった
結論から言うと、今日の田中はあまりよくなかった。
特に序盤は身体の開きが早く、肘も下がり気味。左足を着地した際の沈み込みもやや浅い。1球1球リリースポイントも一定せず、フォーム全体のバランスははっきり言ってバラバラだった。
そのせいでフォーシームはシュート回転で真ん中付近に集まり、スライダーは引っ掛け気味で外側低めに大きく外れてしまう。正直、ホームランされてもおかしくないような危ない球もかなり多かった。何より、カットボールの比率が高過ぎた。カットボールの多い日の田中はあまり調子がよくないのだ。
今日のアンパイアの判定がかなり甘かったのと、ブルージェイズ打線が甘い球を打ち損じてくれたことが幸いして大けがをせずに済んだ。そういうことである。
「ヤンキース田中将大復の復活したのか? 不調は続くのか? フォームの比較で検証する」
恐らく、今シーズンに入って多くのホームランを打たれていることが影響したのだろう。丁寧にいこう、丁寧にいこうという意識が強すぎるあまり、身体を大きく使えなくなっていたのだ。前回登板で痛いホームランを喫したブルージェイズ打線が相手ということもあったかもしれない。5回に引っ掛けた球が増えてフォアボールを連発したのもそのせいだろう。前の回から予兆はあったが、それが噴出した形になってしまったのだ。
キャッチャーのマーフィーがうまくリードして、ブルージェイズ打線に的を絞らせなかった
ただ、今日はキャッチャーのマーフィーが田中をうまくリードしていた。
序盤はフォーシーム主体の組み立て、後半はスプリット中心の攻めで相手打線に的を絞らせなかったのが大きかった。
いつもは序盤からスプリットを連投するので、回が進むにつれて見逃されるというパターンだった。
だが、今日は序盤フォーシームとスライダーを軸にした組み立てを選択していた。そのため回が進んでも相手打線がスプリットの軌道に慣れることなく、ここぞの場面で非常に効果的に使えたのである。
特に5回2アウト1、2塁でのエンカーナシオンへのピッチングはこの日一番のキレとスピードだった。
初球は外側へのカットボールが外れて1-0。
2球目。同じコースのやや内側へのスライダー。エンカーナシオンが空振りで1-1。
3球目。内角高めへ食い込む94マイルのフォーシーム。カウント1-2。
4球目。3球目と同じ内角高めへ食い込みながら沈むスプリット。この球にエンカーナシオンがバットを出すが、打球は力のない小フライ。セカンドのドルーがつかみ3アウト。
すばらしいピッチングだった。内側へのフォーシームを見せてから、同じコースへのスプリット。打てる球は1球もなかった。
その気になれば、エンジン全開のピッチングで相手を圧倒することもできるのだから、さすがの田中マー君である。
6回から調子が上がった田中。さすがの修正力で相手打線を沈黙させる
6回からは田中の球に俄然キレが出てきた。
開きが早く手投げ状態だったフォームにもタメが作れてきている。
恐らく5回の全力投球がいいきっかけになったと思われる。あの全力投球で、しっくりくる身体のバランスを見つけたのだ。マウンドを降りる際の手応えを掴んだような納得の表情がそれを物語っている。この修正力こそ田中将大の最大の持ち味である。
7回に入ると完全に調子を取り戻す田中。
加速するように落ちるスプリットのキレもどんどん増してきている。序盤、カウントを取る場面ではあまり見せていなかった球をこの回あたりからどんどん使い始めている。
そして、いつもなら間違いなくスプリットを投げるカウントで投じた高めのフォーシーム。意表をつかれた打者はあえなく三振に倒れる。
そうそう!!
前から言っているように、田中将大のこのピッチングが観たいんですよ。低めのスプリットを意識させながら高めのフォーシームを見せるピッチング。または高めのフォーシームを見せてからの低めへのスプリット。こういう高低の揺さぶりを有効に使う組み立てが観たかったのです。
このマーフィー、なかなかいいリードをするキャッチャーである。
ただ、今日はカーブを投げるときに肘が下がるのが気になるところではある。この投げ方だと縦に落ちる変化にはなりにくく、横回転でスーッと入る危険な球になりうるのだ。どうか甘いコースにいかないことを祈るばかりである。
最終回はやや球威が落ちたが、どうにか力を振り絞って見事完投勝利!!
太陽もやや陰ってきた最終回。
ここまで104球を投げている田中がマウンドに上がる。
先頭のナバロをレフトフライに打ち取るが、やはり球威は落ちてきている。ここまできたら何とか粘りたい。がんばれ田中。
続くピラーをサードゴロ、ゴインズには内側にフォーシームを見せてから、最後は外に沈むスプリットでショートゴロ。
3アウトで試合終了!!
9回112球で今季初完投勝利!!
奪三振8、被安打5。
文句なしの好投だ。
立ち上がりはかなり危うかったが、尻上がりに調子を上げたナイスピッチングである。試合後、ブルージェイズのギボンズ監督も「彼は偉大だった」と、この日の完敗を認めるコメントを出している。
これで万事OKとは言えないだろうが、プレーオフに向けて一つ重要な階段を上ったことは間違いない。尻上がりに調子を上げる投球は見ていて頼もしいし、何より首位攻防戦でチームに勢いをつける勝利をもたらしたのは大きい。
シーズンも後半。残りの登板は9〜10回だろうか。毎試合6、7回を投げれば当然二桁勝利は確実だろうし、規定投球回数にも達する。
「ヤンキース田中将大、自己ワーストタイの3ホームランを許すも今季7勝目」
開幕当初、田中本人が言っていた「シーズンの大事なところで働けるように調整する」という言葉。今まさにそれを証明しようとしているのではないだろうか。一ヶ月の離脱はあったが、なんだかんだで8月後半。怪我なく次回登板を迎えられるように祈りたい。
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