サンウルブズがなぜ勝てないかだって? 弱いからでしょ。戦力と準備、全部が不足してる。だから弱い。当たり前の話だ【ラグビー】
スーパーラグビーに参戦中の日本チーム、サンウルブズが苦戦している。アウェーでチーターズ(南アフリカ)に17-92という歴史的大敗を喫するなど、開幕から勝ち星なしの7連敗である。
このサンウルブズの現状に対し、ラグビー日本代表の前ヘッドコーチで、イングランド代表のエディ・ジョーンズ監督が「日本の状態はひどい。負けても健闘したと喜んでいる昔のラグビーに戻ってしまった」と酷評した。
さらに「サンウルブズ立ち上げの際に方向性を間違えたことは日本ラグビーにとって恥ずべきこと」との見解を示している。
2015年のW杯で南アフリカを敗る快挙を成し遂げ、旋風を巻き起こした日本ラグビー。だが、歴史的な一歩を踏み出したスーパーラグビー参戦初年度は前途多難である。
「サンウルブズ勝利!! やればできるじゃねえかww ジャガーズに逆転勝ち」
苦戦のサンウルブズに幻滅した方は多いの? それともまだ温かく見守ってるの?
サンウルブズが勝てない。
五郎丸やリーチ・マイケルを始めとした日本代表の主力組が早々と契約を断るなど、発足前から苦戦は予想されていた。
そもそもすべての契約選手が顔を合わせたのが大会開幕4週間前だというのだから、今回の状況はある程度想像できた事態ともいえる。
「サンウルブズがフォースに大敗。力負けっすね完全に。フォースのゲームプランどおりに進んで理想的に負けた」
だが、あのW杯での快進撃を目にしてラグビーに興味を持っただろう新規のファンにとってはそんなことは関係ない。
「あの強かった日本はどうしちゃったの?」
「あれ、五郎丸はいないの?」
思い描いていた日本代表とかけ離れた姿にガッカリした方も多いのではないだろうか。
「ラグビー人気アカンな…。ダン・カーター来日が完全に空気って……」
勝てない理由? そんなのわかりきってる。弱いからだ
開幕して半分の日程を消化したスーパーラグビーだが、実をいうと僕はここまでサンウルブズの試合を一度も観たことがなかった。
今回のチーターズ戦での衝撃的な敗戦、そして前ヘッドコーチであるエディ・ジョーンズの辛辣なコメントを受けて、初めて試合を観た次第である。
「サンウルブズこりゃキツいな…。ストーマーズに勝利するにはどうすれば?」
とりあえずヘッドコーチを退任して日本とはまったく無関係になった人間がサンウルブズを「恥」呼ばわりすることの是非はここでは置いておく。
個人的にはブチ切れてもいいのではないかと思っているが。ファンの間では「そのとおりだ。エディありがとう」という風潮が強かったことに驚いているところである。
ちなみに僕は、サンウルブズ発足の苦労や組閣の遅れといった事前情報はほとんど知らなかった。五郎丸が辞退したことくらいは知っていたが、ほぼまっさらな状態でのサンウルブズ初観戦であった。
試合を観た率直な感想を申し上げると、
「寄せ集めチームの典型的な負け方」。
まず初めに感じたのが、このチームは日本代表とはまったくの別物であること。
「ワラターズvsサンウルブズ予想!! 強いなワラターズ。これに勝つのは至難の業」
なるべく密集の近くでボールをもらい、味方を引き連れて密集近くでコンタクトする。複数人で素早くボールを出し、再び密集近くの味方に渡す。
試合開始から終了まで走り回る、いわゆる「世界一のフィットネス」を標榜したアタッキングラグビーを見せた日本代表だが、そのスタイルとは一線を画すものだった。
1フェーズ目から長いパスで外に大きく振る。
キックでウィングとセンターを走らせる。
スタンドオフの内と外に必ず走り込み、常に両方のサイドに展開できる選択肢を持っておく。
などなど。
必然的に手からボールを離すプレーが増えるため、ハマれば強いが一度歯車が狂うと一気に崩れるもろ刃の剣的なスタイルである。先日のチーターズ戦での大敗は、このスタイルの悪い部分がモロに出てしまったためなのではないだろうか。
「日本vsジョージアテストマッチ感想。タックルの精度と両翼の決定力が光った試合」
さらに、個人技を重視したプレースタイルのためハンドリングの悪さやディフェンスラインの粗さも目立つ。W杯で見せた近場でのボール運びや強固なチームディフェンスなどといった堅実さは残念ながら見当たらない。
つまり、W杯で見せた泥臭いラグビーとは真逆をいく省エネスタイルを目指していることが見てとれたわけである。
時おり見せる密集サイドの連続攻撃や2人がかりのタックルにかろうじて日本代表の面影を感じることができたものの、それ以外ではほぼゼロからのスタートと言っても過言ではない。
サンウルブズは日本代表とはまったくの別チームといって間違いないものだった。
戦術の選択肢はこれしかなかった。そして4週間でチームを完成させるのは不可能だった
2015年のW杯日本代表とはまったく違うチームであるサンウルブズだが、裏を返せばこのチームにはこれしか選択肢はなかったとも言えるのではないだろうか。
「省エネで効率的に勝つ」と言えば聞こえはいいが、要するにフィットネスの足りない急造チームを無理矢理形にするための苦肉の策である。
これは以前も言ったのだが、2015年W杯での日本チームの躍進は、選手個々のフィジカルやフィットネスのアップが最大の要因である。
よくマスコミが口にする「力で対抗できない分、組織力で対抗する」とか「日本人のメンタル」といったことでは断じてない。
「スコットランド戦の感想と展望。日本ラグビーの分岐点? W杯で培った貯金が尽きかけてるぞ」
後半に入っても運動量を落とさないフィットネス。2人で1人を潰しにいけるだけの体力とスピード。そして身体の大きな相手に弾き飛ばされないだけのフィジカル。
「世界一のフィットネス」を旗印にエディ・ジョーンズのもと厳しいトレーニングに耐えて手にしたまぎれもない「選手個々の力」である。
「久々に酷い試合。サンウルブズがチーターズに完敗。ヒエッヒエで11敗目。行かなくてよかった【2017スーパーラグビー結果・感想】」
ましてや「メンタル」などでは決してない。
そもそもメンタルなどというものは、実力伯仲の状況においてのほんの少しのプラスアルファであって、絶対的な実力差を埋める類のものではない。現実的な話、メンタルだけで持ちこたえられるほどラグビーの80分は短くない。
重要なのは選手個々のフィジカル。あのW杯の快進撃でそれは死ぬほど身にしみたはずである。
急ごしらえのスタイルを短期間で無理やり確立したサンウルブズではあるが、大抵の場合こういったチームは後半に崩れることが多い。
前半はクロスゲームでそこそこいい勝負をして勝利への希望を持たせる。
だが、後半に入ると運動量がガクッと落ち、密集サイドやディフェンスラインのギャップをつかれてビッグゲインを許すシーンが増える。マイボールの時間帯が徐々に少なくなり、タックルも甘くなる。立て続けに失点を重ね、最後は気持ちが折れるというパターンである。
そして、試合後に必ずこう言い訳をするのだ。
「前半はよかった。あれを続けられれば」
「次につながる負けだった」
いや、もう「次につながる」って聞き飽きたわ。
「次」って何だよ。
今発揮しないでいつ発揮するんだよ。
さらに準備不足も深刻だ。
スクラムやラインアウトなど、セットプレーでのちぐはぐさは準備期間の短さを露骨に表しているといえる。
ラインアウトの成功率は低いし、スクラムもいいときと悪いときの波があまりにも激しい。特に後半の疲労が溜まってくる時間帯では相手にグイグイと押し込まれるシーンが目立つ。
これはもはや技術的にどうこうではない。チームとしてどれだけ時間を共有したか、どれだけ本番に向けた実戦練習をこなしたかにかかっている領域である。
たとえばスクラムなら、選手それぞれのスキルがどれだけ高かろうが、前5人の息が合わなければ大きな力は生まれない。
もちろん相手のスクラムが強いというのもあるだろうが、少なくとも互角以上に組めるシーンもあるのだからやはり一番の要因は経験不足だろう。
ラインアウトにしてもそうだ。誰がどう動くかのシミュレーションを山ほど重ねた上で、さらにアイディアを上乗せするという気の遠くなる作業が必要になるのである。
はっきりいって、この部分を完成させるのは開幕4週間前に集まったチームには不可能だ。どれだけ優秀なコーチを連れてこようが、FW8人を「1つのチーム」と呼べる段階に引き上げることは土台無理な話である。
フィットネスと経験が絶対的に不足した急造チーム。これがサンウルブズの現状である。
じゃあどうすればいいのよ? サンウルブズが強くなるには←めっちゃ簡単
連敗の続くサンウルブズ。
先述のとおり、プレイヤー個々のフィットネスとチームとしての経験値、その両方が不足していることが苦戦の最大の要因である。
じゃあ、どうすればいいのか。
今期とは言わないまでも、来期以降もスーパーラグビーに継続的に参戦するのであれば、どういうチーム作りを目指していけばいいのだろうか。
これはもう、本当に簡単な話だ。
予算を大幅に増やしてすごい選手をもっとたくさん連れてくればいいのである。
再三申し上げているのだが、ラグビーという競技は金満スポーツだ。これはもう、切なくなるくらいの金満スポーツである。
「日本が南アフリカに勝利!! 日本代表を支える外国人。ラグビーW杯で起きた奇跡をひも解く」
すごいヤツがいればチームは強くなる。
すごいヤツがいないチームは弱い。
野球のように、ピッチャー1人ががんばれば他が打てなくても負けることはないスポーツとは違う。
チームにおける各ポジションごとの比重が均等に近いため、選手個々の戦闘力の合計がそのままチーム力となる。強力な選手をかき集めた方が自動的に有利になるのである。
つまり、金をかけて強力な助っ人をより多く連れてきたチームが優勝するスポーツ。それがラグビーである。
トレーニング?
努力?
しょーもない。
そんなことをする前にさっさとお金を出してすごいヤツを連れてくればいい。
体重75kgの人間が85kgになるのを待つより、札束で頬をはたいて90kgの人間を連れてくる方がはるかに手っ取り早い。
大金を出して招聘した助っ人がチームにフィットしないのであれば、その倍の金を出してそいつの友だちを連れてくればいい。
金こそ正義。
それがラグビーというスポーツなのだ。
特にサンウルブズは、発足時に日本代表の主力メンバーが次々に契約を断ったという寄せ集めチームである。恐らく来期も同じように準備期間の不足に悩まされることになるのだろう。
だったらなおさらだ。
準備期間を考えれば、チームとしての完成度を見込むのはほぼ不可能。
それなら大枚をはたいて各国から助っ人を大量に連れてきてチームを強化するしかない。
エディ・ジョーンズの言うように日本代表とのつながりが薄いのであれば、ラグビー人気をアップさせるためのコンテンツとして割りきればいいのである。
それじゃ日本代表からどんどんかけ離れる?
感情移入ができない?
安心していい。
勝てば官軍だ。
勝ちさえすればメンバーなど関係なく注目は集まる。
ファンが応援しているのは選手個人ではない。
ユニフォームだ。
日本チームと名のつくものが勝ちさえすれば、それを着ているのが誰だろうと問題はない。
「サンウルブズがまさかのストーマーズ戦引き分け!! マジすげえ!! 結成以来のベストゲームでしょ?」
サンウルブズが勝利すれば、必然的にラグビーの注目度は上がる。
2019年のW杯日本開催に向けたラグビー人気の底上げという目的は立派に果たすことができる。
日本代表メンバーがサンウルブズにあまり協力的でない現状、このチームでラグビーを盛り上げるにはそれしかないのではないだろうか。
無能を大量生産? 日本ラグビー界の未来は決して明るくはない
僕は以前の記事で、欧洲シックスネーションズの観戦記を書いていたのだが、実は途中で書くのを止めている。
これは別に面倒くさくなったからではない。実況席に座る解説者があまりに無能だったせいで、番組を観るのに嫌気がさしたのである。
「ラグビーシックス・ネーションズの注目国はフランスだ!! 日本の解説者はクソ無能だ!!」
この記事のとおり、この大会で僕が最も注目していたのがフランスチームである。そして、同率で迎えたウェールズ戦を今大会最大の目玉と捉えていた。
だが、この試合の解説をつとめたのが残念ながら上記の無能解説だったのである。そのため、試合開始5分で観るのを止めてしまったというわけだ。
・気取った横文字の連発
・専門用語の連発
・戦術面の説明の絶対的な不足
・自分の言葉に酔った口調
無能解説者の口から発せられる言葉すべてが僕の神経を逆なでし、観戦意欲を根こそぎ奪っていったのである。そして、二度とチャンネルを合わせようという気をなくさせたのである。
「サンウルブズが五郎丸レッズに惜敗!! 出たよ無能解説。おもしろい試合だったのに」
せっかくW杯で盛り上がったラグビー人気。新規の視聴者も多くいた欧洲シックスネーションズだったと思うが、そういう新規のファンの間口を狭める行為を積極的にするような無能が日本ラグビー界には腐るほどいる。そのことを身を持って知らされた大会だったのだ。
そして、今回のように代表メンバーがサンウルブズとの契約を次々と断る事態を見ていると、またラグビー界に無能な人間が大量生産されるのだろうと思った次第である。
今回のサンウルブズ発足時に起きた体たらくの元凶は「無能」と言われるラグビー協会なのか、それとも代表選手個人の問題なのか。そのあたりの詳しい事情は僕にはわからない。
だが、2015年のW杯の盛り上がりでせっかく注目度が集まったところでの一体感のなさは残念極まりないものである。
五郎丸を始め、代表チーム個人の顔と名前がクローズアップされた今こそ、再びサンウルブズに集結するべきときだったと思うのだが。
現状のメンバーは恐らく2019年のW杯では代表から退いている可能性が高い。自分たちの役割は先のW杯で終わったとでも思ったのだろうか。ここからは個人のラグビーを追及する時間だとでも考えたのだろうか。
そして、ラグビー協会はこれらの人気選手をサンウルブズに引き止めるだけの待遇を用意しようとは考えなかったのだろうか。
すげえな。
ラグビーっていつからそんな人気スポーツになったんだ?
一過性のブームを人気の定着とでも思っちゃったか?
「これをブームで終わらせずに継続していくことが大事」とか言ってなかったか?
別に僕がカリカリすることでもないのだが、本当によくわからない。方向性というか、今後どうしたいのかがまったく見えない。
まあ、何だかんだと言いながらも2019年が近づけばまた変わってくるのだろう。そのときまで頭を低くして、冬の時代を耐えればいいということなのかな?