エロール・スペンスがクリス・アルジェリをまったく問題にせず!! こりゃ本物だ。アミール・カーンやパッキャオにも善戦した難敵をあっさり片付ける【結果】

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マシーンイメージ
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2016年4月16日(日本時間17日)に米ニューヨーク・バークレイズ・センターでウェルター級10回戦が行われ、スター候補のエロール・スペンスが元WBO世界S・ライト級王者クリス・アルジェリを5R48秒でTKOに下した。

これでデビュー以来の戦績を20戦全勝(17KO)に伸ばしたエロール・スペンス。試合後のインタビューでIBF王者のケル・ブルック、WBC王者のダニー・ガルシアの名前を挙げ、挑戦に名乗りを上げた。
 
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さすがのトッププロスペクト。エロール・スペンスは本物だわ

ボクシング次世代のスター候補であり、メイウェザーの秘蔵っ子でもあるエロール・スペンス。
今回の相手であるクリス・アルジェリはスペンスにとって最初にして最大の関門だった(はずだった)。

パッキャオともフルラウンド戦い、アミール・カーンを終盤まで苦しめた元王者のアルジェリは間違いなく強敵である。スペンスにとって、この相手にどのような形で勝利するかは今後のキャリアを左右する。それほど大事な一戦になるといっても過言ではなかった。
そして、結果的には満点の解答でその実力を証明してみせたというわけである。

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いや、すごかった。
これは本物だわ。
次回はケル・ブルックvsエロール・スペンスか?
この試合が実現するならウェルター級最強決定戦になるんじゃないの?
その勝者にティモシー・ブラッドリーが挑戦して、勝った方が名実ともに最強王者。それでいいんじゃないだろうか。

キース・サーマン?
ダニー・ガルシア?

ほっときゃいいよ。
無理してやる必要ない。
結果はわかってるから。

「サーマン←才能だけでやってる人がポーターに辛勝!! ノンストップのハイスピードバトル!!」

試合の注目はアルジェリのフットワークをスペンスがどう封じるか

僕は前回の記事で「左回りのフットワークを使うアルジェリをスペンスがどうやってつかまえるか」に注目したいと申し上げた。
アルジェリのフットワークに翻弄されるようだと、スペンスが完勝することは難しい。つまり必然的にスペンスがアルジェリの足を封じる方法に注目することになるというわけである。

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2014年にアルジェリと対戦したパッキャオは、強靭なバネとフィジカルを活かした踏み込み、そこからの激しい方向転換でアルジェリのフットワークに追いついてみせた。
だが、パッキャオほどのバネのないスペンスはどうやってアルジェリのフットワークに追いつくのだろうか。

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アルジェリのフットワークに追いつけなかった場合、スペンスは意外と苦戦するかもしれない。
そんなことを考えながらこの試合を観始めたというわけである。

杞憂だった。
まったくの杞憂だった。
まあ、どちらかというとアルジェリ寄りで見ていた手前、杞憂というと多少語弊があるが。
ただ、あれこれ考えていたのがバカバカしくなるほどのスペンスの圧勝劇だった。

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すべてはスペンスの手の上で起きていた出来事。アルジェリが何をやっても通用しない

まずアルジェリのフットワークをスペンスがどう封じるかについてだが、これは歩幅の大きさを活かしすことで相殺してみせていた。
左に回ろうとするアルジェリに対し、スペンスは右を出しながらアルジェリの左側に思いきり右足を踏み込む。そしてアルジェリの左側に半身で回り込むように身体を入れて逃げ道を塞ぐ。そして真正面から左のストレート。この左をガードしてフットワークで左に回り込もうとするところに右ボディである。

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足を使って距離をとりたいアルジェリだが、逃げ道を封じられて強引に正対させられてしまう。
アルジェリのフットワークを封じることに成功したスペンスは、堂々と距離を詰めてボディにパンチを集める。左右のボディから顔面へ。いつものようにスムーズなコンビネーションでアルジェリの体力を削る。

「正気か? ケル・ブルックがゴロフキンに挑戦? しかもミドル級正規のウェイトで?」

1R目からいきなりフットワークを封じられたアルジェリ。
2Rに入ると、身体を振りながら頭を下げての打ち合いを挑む。得意のフットワークを封じられ、このままでは一方的な展開になると判断して前に出たのだ。
だが、これもすべてスペンスの作戦どおり。
正確にはアルジェリが接近戦を挑んだというより、スペンスに挑まされた。

ここ最近、打ち合いを交えた泥仕合もこなすようになったアルジェリだが、さすがに至近距離でスペンスと打ち合っては歯が立たないと思っていた。
この試合でアルジェリが有利に進める展開があるとすれば、フットワークでスペンスをかく乱しつつ、目先を変えた接近戦を織り交ぜることではないかと予想していた。

「アミール・カーンはメイウェザーの相手にふさわしいのか?」

だが、結果的には得意のフットワークをスペンスにあっさりと攻略され、やむをえず勝ち目のない接近戦に持ち込まざるを得なくなったという状況である。

そして、打ち合いに持ち込むことに成功したスペンスの次の狙いはカウンター。頭を下げて右を振るアルジェリの打ち始めを狙った左である。

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僕は接近戦でアルジェリにチャンスがあるとすれば、スペンスが左を打つ瞬間に右のカウンターを打ち込むことだと思っていた。
だが、スペンスはその左を撒き餌にして、さらに左でカウンターを狙っていたのである。

アルジェリが頭を振る。
二度、三度と左右に振り子運動を繰り返し、スペンスの左を誘う。
タイミングを測って右に身体を傾ける。
スペンスの狙いはこの瞬間。
アルジェリの重心が右足にかかったところを左で狙い撃ちである。
その一発を打ち込む前に左右のボディでさんざん下を意識させているのも効果的だ。

4Rに入ると、アルジェリが再び足を使い始める。接近戦を挑んでも軽々と弾き返されるアルジェリの苦肉の策である。だが、すでにアルジェリのフットワークを見切っているスペンスはまったく動じない。
落ち着いてアルジェリに右側に回り込み、右、そしてボディから左へつなぐ。

「スペンスがブンドゥをKO!! アカン、こりゃぁガチだ。絶対キース・サーマンより上でしょ?」

逃げるアルジェリ。
楽々と距離を詰めるスペンス。

リング中央でスペンスの右がカウンターでアルジェリの顔面を捉える。
一瞬遅れてアルジェリがダウン!!

いや、すげえな。
横綱相撲じゃねえか。
 
「スペンス圧勝!! ケル・ブルックを一方的にコントロールしてウェルター級最強対決に勝利」
 

エロール・スペンスの完勝!! お見事以外の言葉が見つからない

5R開始のゴングが鳴る。
すでにダメージが足にきているアルジェリは身体に力が入らない。
だが、スペンスは強引に倒しにいくことはしない。
自分からは手を出さず、アルジェリの出方をうかがう。
焦れたアルジェリが前に出て打ち込む。この連打を楽々と防ぎ、打ち終わりに左を返すスペンス。
アルジェリが吹っ飛ぶようにダウン!!

クッソ憎たらしいww
若さというか、ハツラツさがまったく感じられん。
何だこのクレバーなおっさんくさいボクシングはww
全部相手の力を利用しやがってww
自分の力をほとんど使わない省エネボクシングである。

何とか立ち上がるアルジェリだが、もはや反撃する力はほとんど残っていない。
スペンスがアルジェリをロープ際に追いつめ、左右のボディを連打。上が開いたところで得意の左フック!!
このパンチを被弾したアルジェリが尻餅をつくようにダウン!!
その瞬間レフェリーが両腕を交差して試合をストップする。
5R48秒TKOでエロール・スペンス勝利!!

文句なしの完全勝利だ。

6度のダウンを奪ったパッキャオでさえ判定まで持ち込まれたアルジェリを、わずか5Rでストップである。
お見事としか言いようがない。

アルジェリは実力を出し切って、それで完敗した。スペンスはすごい。ケル・ブルック戦が観たいぞ

完膚なきまでに敗れたアルジェリだが、今回の試合でできることはすべてやり尽したのではないかと思う。
フットワークで翻弄する作戦。途中から接近戦に切り替える作戦。そして再びのアウトボクシング。スペンスの左に右を合わせるというのも、恐らく想定していたパンチだったのではないだろうか。

戦前に立てていた作戦、考えていた動きをすべてやり尽した上で完全に負けた。清々しいくらいに負けた。エロール・スペンスという選手が自分よりはるかに上だった。まさしくそういう試合だったのではないか。

僕もスペンスが勝つとは思っていたが、実際はもう少し苦労するのではないかと予想していた。8〜11RのKO予想とはいったものの、判定までいく可能性も高いのではないかと考えていた。
だが、実際は見てのとおりだ。

試合展開としてはある程度予想の範疇だったが、エロール・スペンスの対応力やボクサーとしての才能は僕の予想をかなり上回っていた。

以前、僕はこのエロール・スペンスに対して「実力的には申し分ないのだろうが、ややエキサイティングさに欠ける」「メイウェザーが好みそうな選手っぽい」と申し上げた記憶がある。

「エキサイトマッチ2015年総集編のランキングを観ての感想」

今回の試合を観た結果、その評価が「申し分のない実力を持った、憎たらしいくらいのクレバーな選手」というものに変わったことをお伝えしたい。

いや、すごいっす。
派手に倒しはしたが、それまでの試合運びの盤石さというかクレバーさというか。気持ちを爆発させるでもなく、ここぞのラウンドで勝負を賭けるでもなく。

相手の状態を冷静に観察して、いけると判断したときに集中砲火を浴びせる。
冷酷に冷徹に。
感情の起伏をいっさい見せることなく仕事を遂行する。
そんな、熱の通わないボクシングマシーン的な試合を見せられたというのが率直な感想である。

先ほども申し上げたとおり、この選手とケル・ブルックの試合はぜひとも観てみたい。

「ケル・ブルックは強化版ハメドだ!! ケビン・ビジェールに圧勝!!」

スペンスはアルジェリくらいの攻撃力ならまったく問題にならないことはわかった。それならケル・ブルックのように強固なディフェンスと硬質な拳を持った選手と対峙した場合にどうなるか。興味は尽きない。

障害がなければ次戦で挑戦となるのだろうか。それとも、両者共にもう一試合ほど調整試合を挟むのだろうか。
どちらにしてもできれば2016年内、もしくは2017年始め頃に実現してもらいたい。
そして、同時にメイウェザーにもしれっと復帰していてもらいたい。

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