ロマチェンコvsゲイリー・ラッセルJr.の異次元っぷり。どうにもならないけど諦めないラッセルさん。この日のメインが亀海vsロバート・ゲレロだった事実

ロマチェンコvsゲイリー・ラッセルJr.の異次元っぷり。どうにもならないけど諦めないラッセルさん。この日のメインが亀海vsロバート・ゲレロだった事実

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2020年6月22日にWOWOWエキサイトマッチで「ワシル・ロマチェンコ特集」がO.A.された。
 
ボクシング史上最高傑作 「ハイテク」 ワシル・ロマチェンコ特集
 
ロマチェンコと言えば現ライト級3団体統一王者で、“ハイテク”の異名を持つ縦横無尽なボクシングを持ち味とする。
デビュー3戦目での世界王座戴冠はセンサク・ムアンスリンと並ぶ史上最速タイ記録。現在PFP No.1とも言われる実力者である。
 
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で興行が滞っているものの、近い将来IBF王者テオフィモ・ロペスとの一騎打ちも期待されている。
 
 
なお僕がロマチェンコの試合の中で一番好きなのが、初戴冠を果たしたデビュー3戦目のゲイリー・ラッセルJr.戦。
WBO世界フェザー級王座決定戦として行われた一戦で、結果は2-0(116-112、114-114、116-112)の判定でロマチェンコが勝利。ラッセルが25戦目にして初黒星を喫した試合である。
 
この試合は今でも気が向いたときに眺めているのだが、今回の「ワシル・ロマチェンコ特集」に際して改めて観てみた次第である。
 
 
というわけで、久しぶりに観たワシル・ロマチェンコvsゲイリー・ラッセルJr.戦の感想をダラダラと述べてみたいと思う。
 
 
ちなみにWOWOWエキサイトマッチの「ワシル・ロマチェンコ特集」は観ておりません。解説者の欄に「ジョー小泉」の名前を見つけた瞬間、僕の視聴意欲はすべてふっ飛びました。
 
この人の存在が僕をどんどんエキサイトマッチから遠ざけるんだよな……。
 
実現しなきゃダメだった幻の試合。マッチメークが難しいのはわかるけど、そこはやらなきゃアカンかったよねという組み合わせ3選
 

ゲイリー・ラッセルJr.が大好きです。最初はワシル・ロマチェンコのすごさがあまり理解できなかった…

もともと僕はゲイリー・ラッセルJr.のことが好きで、当然この試合もラッセルを応援していた。
 
凄まじいハンドスピードとダッシュ力に加え、キビキビとした前後の動きその他。
パッと見だけで長所がわかりやすく、キャリア初期は相手に何もさせずにあっという間にぶっ倒す試合も目立っていた。
 
若干動きが直線的過ぎる感じもしたが、スピードと強打をこれだけ両立できるのであればそうそう負けることはない。
2012年11月のロベルト・カスタネダ戦、2014年1月のミゲル・タマヨ戦などを観る限り、こいつは近いうちに絶対に出てくるヤツだと確信した記憶がある。
 
 
一方、ワシル・ロマチェンコについては最初はそこまでいいとは思えず。
 
鳴り物入りでデビューしたプロ初戦を4RKOで勝利したわけだが、全体的に動きがヌルヌルしていて力感も足りない。
強いのは強いのだと思うが、まだまだプロに対応しきれていないイメージ。
 
案の定、2戦目でオルランド・サリド(体重超過)のラフファイトに押し切られてしまうなど、アマチュアっぽさは端々に残っていた(気がする)。
 
正直、インパクトという意味では僕の()ゲイリー・ラッセルJr.には遠く及ばない。この頃はロマチェンコのすごさをいまいち理解できずにいた。
 
キャンベルがロマチェンコに肉薄。長身サウスポーと多彩な右リードが機能。お互いがリスクを負った好試合に感動
 
そんな中、ゲイリー・ラッセルJr.との決定戦が組まれたと聞き、「おお、ついにきたか!!」と。
 
僕の期待するゲイリー・ラッセルJr.と、アマチュア戦績397戦396勝1敗のワシル・ロマチェンコ(実力の高さを理解できていない)の一騎打ち。
 
こんなもん、ワクワクしないわけがない。
間違いなく地球(チタマ)が割れるほどのビッグマッチですよOK?
 
 
ところがファンの間でこの試合に注目している人はほとんど見当たらず。
当日の会場も空席が目立ち、観客も隣の席の人と喋りながら~という感じで完全に「メインイベントまでのつなぎ」状態。
 
僕が勝手に「世紀の一戦」だと思っていた試合は、数ある軽量級世界戦の1つに過ぎなかった。
 

超絶おもしろい試合!! ロマチェンコってこんなにすごかったんかいw 僕のラッセルが置いてきぼりを食うだと!?

実際の試合だが、もうめちゃくちゃおもしろかった
 
スピーディな右リード、鋭い踏み込みからのワンツーといういつものパターンで攻めるラッセルに対し、ロマチェンコは上体を左右に振りながら距離を詰めて的確なフックをヒットする。
 
とにかく全力で踏み込んで目いっぱい腕を振るラッセルと、スルスルと近づき力感のない連打を浴びせてサッと離れるロマチェンコ。
 
一瞬のスピードやパンチの迫力は断然ラッセルが上なのだが、確実にヒットを稼ぐのはロマチェンコの方。
ラッセルが踏み込んだ分だけ後退し、動きが止まった瞬間を狙ってガードの間からポンポンとジャブを通す。
 
攻めるシーンと守るシーンのメリハリが抜群で、なおかつ連打の切れ目を狙うのがめちゃくちゃうまい。
 
しかも残り1分を切ったところで明確にペースアップを図るなど、ポイントの取り方も心得ている印象。5R、7Rは特にそれが顕著で、スピードで上回るラッセルが置いてきぼりを食う光景はちょっと信じられないものがあった。
 
 
マジかよおい。
回転力と踏み込みの鋭さが持ち味のゲイリー・ラッセルがついていけないだと!?
 
ワシル・ロマチェンコってこんなにすごかったんかいww
 
 
特別速いようには見えない。
1発1発のパンチも強く打っている感じはしない。
動きも全体的にヌルヌルしていて、ラッセルのキビキビとした足運びに比べると迫力に欠ける。
 
正直、単純なスペックだけならラッセルの方が上だと思うのだが、それでもここまで差がついてしまうのか……。
 
亀田和毅vsゲイリー・ラッセルJr.だと!? 本当に実現するなら西岡vsドネア戦に匹敵するビッグマッチ。でもラッセルさんはクソつええぞぉ?
 
ラッセルが出方をうかがっている最中にスパスパと軽打を当て、渾身のカウンターが飛んでくる前に射程外へ。
 
攻めるときは攻め、引くときは引く。
超ハイレベルな攻防分離というか、クソ真面目なくせに性格は最悪というか。
 
ラッセルの電光石火の連打が無人の空間を切り裂く光景がとんでもなく虚しい。
 

最後まで勝負を捨てなかったラッセル。でも、ロマチェンコに対抗するには引き出しが少なかった。本当に悔しかっただろうな

絶え間ない被弾により顔面は腫れ、常に限界まで引き絞るスタイルは燃費も悪い。おかげで後半から明らかな失速を見せるラッセル。
 
序盤4Rまではどうにかロマチェンコの動きについていったが、少しでもスピードが落ちればあっという間に厳しくなる。
中盤以降はことごとく置いてきぼりを食い、ロープに詰められて棒立ちのまま連打を浴びるシーンすらも。
 
 
申し上げたようにゲイリー・ラッセルという選手は凄まじいハンドスピードと鋭い踏み込みを持ち味とする。
ただ、その分動きがやや直線的。とんでもなくハイレベルであることには違いないが、スピード&パワーが通用しなかった際のBプランにほんの少し欠ける(気がする)。
 
で、この試合ではその弱点(と呼べるほどのものでもないが)をロマチェンコに突かれて先手を取られまくったわけだが、そこからの状況を打破する手がないのが痛かった。
 
ラッセルさんちっす! 年一のお仕事ご苦労さまッス! キコ・マルチネスに勝利し2019年の勤務を終える。長谷川穂積とは一味違う?
 
だが、それでも最後まで勝負を捨てなかったラッセルはやっぱりすごい。
 
残り少ないスタミナを無理やりかき集め、強引にアクセルを吹かして腕を振る。
ペースを完全に支配された中でもどうにか持ちこたえ、何だかんだでジャッジの1人から114-114を引っ張り出してみせた。
 
曲がりなりにも“接戦”と呼べる部類まで持っていったのは、ゲイリー・ラッセルJr.の能力の高さゆえだと思う。
 
 
まあでも、ラッセルにとっては本当に悔しい試合だった。
 
もっとも得意なスピード勝負を完全に封じられ、捕まえようとしても目の前からスルッと消える。
仕切り直しで一休みすればガードの間からポンポンと軽打が飛んでくる。
 
前に出ればいなされ、動きを止めた瞬間につるべ打ちに合う。
恐らくだが、だんだんと自分がおちょくられているような、舐められているような錯覚に陥る試合だったのではないか。
これまでの積み重ねを全否定される感覚というか。
 
4連続ノーマスを含むS・フェザー級時代のロマチェンコの無双っぷりは今でも印象深いが、あそこまでやりたい放題やられれば気持ちが折れるのも仕方ない。
「手が痛い」とのたまって早めに撤退したリゴンドーはある意味正しい選択をしたとも言える。
 
 
そして、繰り返しになるがあれだけ試合を支配されても勝負を投げなかったラッセルの根気強さが改めて際立つなと。
 
ロマチェンコvsテオフィモ・ロペスか。一応ロペスにもチャンスはありそうだよな。ロマチェンコ圧倒的有利だと思うけど
 
ついでに言うと、「地球(チタマ)が割れる」とすら言われた(僕が言っただけ)この試合を差し置いてメインを務めた亀海喜寛はやっぱりすごい
日本ボクシングの地位、価値を高めたという意味では文句なしに歴代最高の選手と断言できる。
 
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