RIZIN33現地観戦感想。朝倉海、井上直樹を下して扇久保が優勝。元谷vs金太郎のリザーブファイト。予想外が山盛りの2021年大晦日
2021年12月31日、さいたまスーパーアリーナで開催されたRIZIN33を現地観戦してきたので、今回はその感想を。
本来は大田区総合体育館で行われたボクシングの世界戦、井岡一翔vs福永亮次戦を観戦する予定だったのだが、チケット購入がうまくいかずに断念。急遽さいたまスーパーアリーナのRIZINに切り替えた経緯がある。
井岡一翔vs福永亮次感想。福永は中間距離で勝負しちゃったか…。その位置の井岡は達人級。でも井岡が下降線に入ってるのは間違いなさそう
とは言え、一般販売の後に売り出されたアウトレット席を購入したので、リングからはだいぶ遠い席に。400レベルの後ろの方というまあまあの距離からの観戦となっている。
ちなみに今回も電子チケットでの入場です。
過去の反省を踏まえて「来場者情報登録フォーム」へのリンクが貼ってある(去年は列に並びながら大急ぎで登録した)。
スクリーンショットではダメという注意書きもしっかりと(去年は入り口でめちゃくちゃ狼狽した)。
僕のように直前で戸惑う方が多いのか、この辺は運営側の改善が見られた部分ですね。
というわけで、実際の試合について感想(予想についての答えあわせ)を言っていくことにする。
RIZINバンタム級GP勝敗予想。本命の朝倉海、井上直樹にアップセットを起こすとすれば瀧澤? 扇久保? 那須川天心のRIZINラストマッチは五味隆典
なお、申し上げたように今回の席はリングからかなり遠かったこと、生観戦したそのままの印象であることを踏まえてお付き合いいただければ幸いでございます。
○朝倉海vs瀧澤謙太×(3R判定 ※3-0)
勝利予想:朝倉海
まず第2試合の朝倉海vs瀧澤謙太戦について。
この試合は事前予想にある程度近かったというか、「まあ、そうだよな」というのが率直なところ。
展開としてはジリジリプレッシャーをかける朝倉海に対し、瀧澤謙太がサイドに動きながらカウンターを狙う流れ。
瀧澤は朝倉の左側に回り込みつつ、タイミングを測って前蹴り、ハイキックで牽制。前手の左を朝倉の左手にぶつけ、得意のワンツーを封じながら距離を取る。時おり自分から前に出ることもあるが、基本的には“待ち”の姿勢を貫く。
一方の朝倉は単発ながらも鋭い踏み込みからの右、ローをヒットしながらも瀧澤の攻めもしっかり見切る。
ただ、左側に回り込む瀧澤の動きにいまいちついてきけないシーンも目立つ。
1、2Rともにほぼ互角の展開だが、どちらかと言えば朝倉優勢かな? という微妙な試合である。
で、瀧澤自身もそれを感じていたか、3Rの中盤から自ら前に出て仕掛ける。
これで両者の距離が縮まり、朝倉のパンチがヒットして瀧澤が尻餅をつくダウンを喫する。結果的にあそこで前に出たことで敗色濃厚となってしまったわけだが……。
まあ、これは仕方ない。
瀧澤は仕掛けなければ確実に負ける流れだったし、朝倉が思った以上に瀧澤のカウンターを警戒していたというのもありそう。もしくは想定よりも瀧澤のハイキックが機能したせいで出足を鈍らされていたか。
どちらにしろアップセットの可能性を感じさせた瀧澤謙太の健闘が光った試合である。
ついでに言うと、お互いに背格好が似ている上にどちらも赤いトランクスだったのが……。
遠い席から観ていた僕としては、何度も「あれ? 今どっちが攻めたんだっけ?」となったことをお伝えしておく笑
朝倉海は微妙? 井上直樹とんでもない。扇久保博正、元谷友貴、ベイノア、気の毒な那須川天心その他感想
○扇久保博正vs井上直樹×(3R判定 ※3-0)
勝利予想:井上直樹
続いては第3試合の扇久保博正vs井上直樹戦。
僕自身、何度も申し上げているように井上直樹は初めて試合を現地観戦した際に「コイツ超強え!!」となった選手。今回のGPでもダントツの優勝候補に挙げさせていただいている。
吉成名高、井上直樹、クレベル・コイケ、倉本一真。RIZIN26で衝撃を受けた試合振り返り。やっぱり2週間の隔離は影響デカいよな
この試合も勝利予想はもちろん井上直樹。申し訳ないが、滅多なことがないかぎり扇久保のアップセットは起こらないだろうと思っていた。
それがまさかの……。
結果は井上を終始追い詰めた扇久保が文句なしの判定勝利。
これはちょっと予想外だったというか、立て続けに「嘘だろ」が起きたRIZIN33の中でもトップクラスの驚きだった。
とは言え、1Rの井上直樹が激強だったことも確か。
鋭いワンツー、ジャブとカーフを出しながらグイグイプレッシャーをかけ、扇久保のテイクダウンは上からあっさり潰す。
この動きを見せられれば、僕を含めて多くの方が「はい、優勝決定」と確信したのではないか。それほど開始直後の井上は圧倒的だった。
ところが2R中盤、グランドで扇久保に上のポジションを取られてから流れが変わる。
腕を捕まれ首を極められ、そこから逃げるので精いっぱいの井上直樹。
3Rには得意のバックチョークを逆に極められそうになるなど、「おいおいマジか」と思っているうちに完全に主導権を奪われてしまった。
3R開始直後のワンツーなんかはガチで酷かったですからね。
ガードの上を叩いただけなのに自分の拳に振り回されてグラつくって。
閃光のような1Rのアレは何だったの? というくらいの別人っぷり。まさかここまで一気に失速させられるとは……。
そもそも論として、自分からあそこまで攻める必要があったの? という話。
遠い位置からワンツーとカーフを出しているだけでもどうにかなるとすら思っていた僕としては、わざわざ射程に立ち入って打ち合いを挑んだこと自体に驚かされている。
1日2試合を見越した早期決着狙いだったのだとは思うが。
決勝戦でのコンディションを優先して飛ばしまくった井上直樹に対し、扇久保は当初から「このトーナメントが始まってから井上選手のことしか見えていない」と言い切っていた。
先を見ていた井上と、この一戦にすべてをかけていた扇久保。
その辺の差が結果に現れたというのが僕の中でのファイナルアンサーである。
○元谷友貴vs金太郎×(3R判定 ※3-0)
勝利予想:金太郎
そして第4試合、元谷友貴と金太郎によるリザーブファイトについて。
この試合もある程度想像通りだったというか、概ね「こんな感じかなぁ」という流れだった(勝敗予想は大外れだけど)。
予想記事でも申し上げた通り、勝負を分けたのはスタンドでの打撃。
元谷友貴は得意のグランドに持ち込むためにはスタンドである程度渡り合う必要がある。
対する金太郎はストライカー寄りのオールラウンダータイプで、打撃勝負で圧倒できれば勝利の可能性が一気に広がる。
で、実際の試合もそんな感じ。
ガードを上げてプレッシャーをかける元谷に対し、金太郎はバックステップと鋭い踏み込みを駆使しながら大技で対抗する。
スタンドでの打撃はどちらかと言えば金太郎に分があったが、元谷も完全に負けていたわけではない。
ここで圧倒的なアドバンテージを確保する必要がある金太郎としては、それができなかった時点で相当苦しくなった印象。
案の定、元谷の打撃→テイクダウンでグランドに巻き込まれ、そのつど背後に回られる展開が続く。
どちらも決定機を作れず拮抗した3Rだったものの、判定結果に文句をつけるところは見当たらない。
スタンドでの打撃で五分に近い展開を作った元谷が金太郎の爆発力を抑え込んだ試合だった。
朝倉海今季絶望、昇侍も今季絶望。ヤン・ジヨンが突然60kg→66kgに。強い責任感とやらで結論を先延ばしにしたら多大なる損失ががが。ホウレンソウは大事よ?
何と言うか、アレなんですよね。
金太郎の打撃には“崩し”が足りない気が……。
いきなりのフルスイングだったり飛び膝だったり。1発の大技に頼りすぎな分、やや確実性が低いのかなぁと。
どちらにしても勝負論のあるいい試合でした。
予想外だらけのRIZIN33。八百長? あり、純粋なMMAあり、最強幻想あり、ベラトール表明あり。シバター、天心、パク・シウ、サトシ、カズJr.その他振り返り
○扇久保博正vs朝倉海×(3R判定 ※3-0)
ラストは決勝戦、扇久保博正vs朝倉海戦について。
この試合はダントツ優勝候補の井上直樹が負けたことで予想もクソもなくなった組み合わせ。
2020年8月の初戦では1RKOで朝倉海が勝利しているが、あの試合はあえて打ち合いを挑んだ扇久保の作戦ミスという側面もあった。少なくとも今の朝倉海には井上直樹ほどの絶望感(負けたけど)はないのでは? などと思っていた次第である。
で、蓋を開けてみると……。
最初から最後まで“MMAに徹した”扇久保がお見事だったなぁと。
序盤は中間距離での打撃勝負。
朝倉のプレッシャーを同時打ちのカウンターでいなしつつ、カーフキックでダメージを蓄積させていく。
朝倉の勢いがある程度衰えた中盤からはテイクダウン中心の攻めに移行。上への打撃を意識させつつ、スルッとタックルに入って得意のグランドの展開に持ち込む。
・ストライカーを崩すには下から
・自分のストロングポイントでとことん勝負
当たり前のセオリーを最後まで徹底した扇久保の文句なしの勝利である。
いや、アレなんですよね。
試合前にゴングを待つ扇久保の姿がスクリーンに大写しにされたのだが、すげえいい表情してたなぁと。
入れ込みすぎるわけでもなく、リラックスしすぎているわけでもない。
適度に気合いが入ってほどよく集中した顔つきに期待感が爆上がりだったことを報告しておく。
敗れた朝倉海に関しては、こちらは完全に攻略されていたとしか言いようがない。
打撃をうまくいなされ、カーフを効かされて足を止められる。
上への打撃をたっぷり意識させられたところにタックルに入られ、タックルを警戒すると今度は顔面にパンチが飛んでくる。
準決勝で右拳を負傷していたとのことだが、それ以上に扇久保の術中にハマっていた感が強い。
さらに言うと、初戦の瀧澤戦から明らかにカーフを蹴らせすぎ&パンチだけで何とかしようとしすぎ。
身体ごと強引にこられるとタジタジになる癖もマネル・ケイプ戦、アラン・ヒロ・ヤマニハ戦と変わっていない。
堀口恭司、佐々木憂流迦に連勝した2019年頃はまだまだベールに包まれた部分も多かったが、試合を重ねるうちに対策を練られて丸裸にされつつある印象である。
僕のクレベル・コイケ is Back。佐々木憂流迦にバックチョークの一本勝ちウェーイ。フィジカルお化け倉本一真も復活のTKOすごかった
日本の独自色を出すという意味で1dayトーナメントがそこまで悪いと思わない。でも、実際にそれを体現できているのは…
なお、朝倉海の右拳の骨折については「そりゃしゃーないよね」と思っている。
1dayトーナメントは今の時代にそぐわない、実力以外での想定外が多すぎるという意見はめちゃくちゃ理解できる。
だが、ジャパニーズMMAを他と差別化するという意味ではそこまで悪いとは思わない。
UFCやベラトール、ONEにはない日本独自の興行スタイル。資金力で太刀打ちできない分、格闘技の血なまぐささを前面に出すやり方は個人的には嫌いではない。
ところが、
・堀口恭司→そよ風すら起こさせずにGP優勝
・トフィック・ムサエフ→拳を骨折しながら化け物揃いのライト級でGP優勝
・井上直樹→体力もやしを露呈して準決勝敗退
・朝倉海→右拳骨折で職人タイプの扇久保に“MMA”で完敗
ジャパニーズMMAを体現しつつ、平本蓮の言う「強いヤツは何やっても強い」を本当の意味で証明しているのが北米基準の堀口恭司とトフィック・ムサエフのみというのは皮肉な話である。
堀口恭司vsセルジオ・ペティス感想。堀口1発KO負け…。でも、いい試合だったし満足度は高い。堀口の鈍感力には感心するよね
特に堀口に続く北米基準を期待していた井上直樹の敗退は残念だった。
極論、ベラトールのタイトルマッチでは扇久保よりも一段スケールの大きな相手と5Rで勝負しなきゃいかんわけですからね。