プレミア12なんてやる意味がない。メジャーリーガーが出ない大会に価値はない。こんな大会に本気になってるのは日本だけ

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飛行機雲イメージ
第1回「プレミア12」が開幕した。

WBCに続く新たな国際大会の発足である。グローバル化を進める野球界にとって大きな一歩となるとともに、1人の野球ファンとしても非常に心が躍るものがある。
ぜひともこの記念すべき第1回大会を成功させて、いっそう野球界が発展することを願うばかりである。

だが残念なことに、相変わらず「こんなメジャーリーガーの出ない大会、やる意味がない」という声はいたるところから聞こえるのも事実である。

「侍ジャパンの今後は? プレミア12終了、韓国戦に敗北した侍ジャパン。小久保監督辞めろ? 采配と資質に疑問あり?」

ファンの間だけではない。
野球関係者、プロのライターを名乗る人間の中にもこの大会の意義に疑問を呈する者が当たり前のように存在するのである。

「黒田年俸6億で契約更改!! 広島カープとかいう金満球団」

「この時期の国際大会など害悪」
「中南米のチームは目を疑いたくなるようなメンバー構成」
「サッカーやラグビーのW杯と比べて価値がなさすぎる」

中には「ラグビーはもともとリーグ戦の期間が短いから代表の活動にさける時間を取りやすい。だが、野球は本来休養にあてるべき期間を削って代表の活動をしている」という意見も見られた。 
「目指せNPB! WBCで就活中の外国人選手たち。「日本でできれば最高」? でも、そんな甘いもんじゃないのだよ」
 

シーズンオフの恒例「国際大会意味あるの? 議論」

もはや毎年恒例になりつつあるオフシーズンの国際大会議論。
毎回思うのだが、なぜ「価値がある」か「価値がないか」の二元論でばかり語るのだろう。
なぜ「プレミア12という国際大会を価値のあるものにしていこう」という発想にならないのか。
なぜサッカーやラグビーのW杯のような、ある程度成熟した大会との現在地を比べて「価値がない」と言ってしまうのだろうか。
本当に理解できない。

「プレミア12開催に先立ち、日本野球の国際化と国内リーグの強化を同時に実現する方法を考えてみる」

まず1930年から開催されているサッカーW杯と第1回大会であるプレミア12を比較すること自体がナンセンスだし、1987年に発足して以来2015年で8回を数えたラグビーW杯においても改善の余地は多く残っている。

「阪神マット・ヘイグ(マット・ハグ)は活躍できるか?【新外国人補強】」

どんな大会であれ、回を追うごとに伝統と権威を積み重ね、すべてのプレイヤーが憧れる舞台へと成長させていくものなのだ。
重厚なバックボーンを持った大会と、2015年11月にスタートしたばかりのプレミア12を比較して「価値がない」と断言するその意味がわからないのである。

なぜ「産声を上げたばかりの大会を権威と価値のあるものにするにはどうすればいいかを、日本が先頭に立って考える」という発想にならないのか。甚だ疑問である。

メジャーリーガーが出ない大会に価値がないという意味不明な理屈

メジャーリーガーが出ないから価値がないという理屈もまた微妙だ。

そもそもプレミア12の発足は、IBAFワールドカップの廃止に端を発する。
WBSC(世界野球ソフトボール連盟)の前身であるIBAF(国際野球連盟)が、オリンピックから野球とソフトボールが除外されたことによる補助金の消失で深刻な財政難に陥る。そこでやむを得ずMLBから資金援助を受けるのだが、その際にMLB側が提示した条件というのが「IBAFワールドカップ廃止、WBC開催」だったのである。

ものすごく乱暴な言い方をすると「お金を援助する代わりに今後はMLBが国際大会を主催します。だから君たちは引っ込んでなさい」ということである。

「野球は長い。5回にしろ(松本人志)それいいかも(上原浩治)」

その後、IBAFはISF(国際ソフトボール連盟)と合併して現在のWBSC(世界野球ソフトボール連盟)となり、新たなシニアの国際大会「プレミア12」を立ち上げたのである。

ちなみにIBAFワールドカップは1938年の第1回大会を皮切りにほぼ毎年のように開催され、2011年に廃止されるまでにのべ39回を数える伝統ある大会だ。しかも33回大会からはプロ選手の参加も解禁されている。
だが、MLBがこの大会にトップ選手を派遣することは最後までなかったのだ。

つまり、今回のプレミア12にメジャーリーガーが参加しないことは何ら不思議なことではない。大会の名前が変わっただけで、MLBが非協力的なのは今に始まったことではないのである。

そして侍ジャパンをドル箱コンテンツにしたい、MLBによる全世界マイナー化計画をどうにか阻止したいと考えるNPBが、今回のプレミア12の発足に全面的に協力することにしたのである。
 
「小久保が侍JAPAN史上最高の有能監督な件について。WBCで世界一を目指す日本野球にふさわしい采配の数々を語る」
 
メジャーリーガーが出るから価値がある。出ないから価値がないというのは実際に一生懸命プレーしている選手に対してリスペクトがなさすぎるという理屈はもちろんその通りだ。
ただ、それ以前に出ないことが普通である前提の大会ということを認識しなくてはいけないのである。

ラグビーと比べたってしゃーないでしょww

「ラグビーのリーグ戦の期間は短いから代表の活動にさける時間を取りやすい」という意見があったが、これを本気で言っているのなら相当ヤバい。

まず、大前提としてラグビーのリーグ戦は短くない。
2014-2015シーズンを例にあげれば、8月の下旬から年明けの1月までたっぷり5カ月以上にわたって開催されている。今回の2015-2016シーズンを指して言っているのであれば、あくまでW杯の期間と重なったことによる例外に過ぎない。

そして、ラグビーは代表の活動にさける時間を取りやすいというのもおかしい。
先のW杯でもわかるとおり、ラグビーは中三日でも過密日程と言われてしまうほど過酷なスポーツだ。しかもたかだか参加国が20カ国の大会の開催期間が一か月半である。これだけでもラグビーがどれだけ消耗の激しいスポーツであるかはわかるはずだ。
もっというと、日本のトップリーグは5カ月以上の開催期間がありながら、1チームの試合数はわずかに14試合だ。2月のファイナルに残るチームですら最大で16試合である。

つまり、ラグビーにおける20試合未満の試合数はプロ野球の144試合に相当するのである。
もちろん単純な比較はできないが、1試合にかかる身体の負担の大きさを考えれば「代表の活動にさける時間を取りやすい」などと言えるはずはないのだ。

比較してあーだこーだ文句をつけるんじゃなくて、いいところを取り入れた方がよっぽど有意義じゃね?

前にも言ったが、野球の国際化を進める上でラグビーに学べる部分は非常に多い。
特に外国人枠の問題については、丸パクリしてもいいのではないかというくらい見事に理にかなっている。
W杯の参加資格に含まれる「本人が3年以上継続して日本に在住している」という項目は本当にすばらしいと思う。ぜひともWBCやプレミア12にも加えてほしい項目である。

「日本が南アフリカに勝利!! 日本代表を支える外国人。ラグビーW杯で起きた奇跡をひも解く」

現状、プレミア12の参加資格には外国籍の選手が入る余地がない。野球の国際化を推進するのであれば、もう少し外国人選手が参加しやすい環境を整えてもいいと思うのだが。

前にも申し上げたが、僕は野球の国際大会には純血の日本人だけで挑む必要はまったくないと思っている。
日本の球団でプレーする外国人選手が侍ジャパンに入ることは、国内リーグ活性化のためにも非常にいいことだと思うのだ。

その点WBCの参加資格は比較的緩めに設定されている。
「当該国の永住資格を持っている」「親のどちらかが当該国で出生している」など、外国人選手が入る余地が存分に残されているのだ。

だが、僕に言わせればまだまだ物足りない。
前回の記事でも申し上げたように、ここに「3年以上国内球団でプレーしている」という項目をぜひとも追加していただきたい。日本で長く活躍する外国人選手、日本で才能を開花させた外国人選手に侍ジャパン参加への門出を開くのだ。

さらに「親のどちらかが当該国で出生している」という条件を思いきって「祖父母のどちらかが当該国で出生している」に変更して、親世代から祖父母世代に広げてもいいのではないかと思う。
そうすれば阪神のメッセンジャーやソフトバンクのサファテなどはもちろんのこと、広島のジョンソンも侍ジャパンへの参加が可能になるのだ。

日本人は何より「日本のことが好きな外国人」が大好きだ。
参加してくれるかはともかくとして「広島ジョンソン、侍ジャパン入り」などという報道が出たらワクワクしないだろうか。

わざわざプレミア12とラグビーW杯を比較してあら探しをするより、優れた部分を取り入れて大会自体を成長させることを考えた方が遥かに有意義だと思うのだが、いかがだろうか。

日本が世界の中心になれるんだよ? 世界の中心になれば儲かるんだよ?

「プレミア12という大会に価値がない」と切り捨てるのではなく、「誰もが出たいと思う価値のある大会にするにはどうすればいいか」を日本が中心となって考える。

僕は常々こう思っているのだが、特に「日本が中心となって」というのがミソだ。

なぜか。
簡単な話である。
日本がボスになれるからだ。

10年後か20年後かはわからないが、プレミア12が誰もが憧れるような価値ある大会に成長したと仮定する。そのとき、発足時から先頭に立って大会を引っ張ってきた日本は間違いなく他国から一目置かれる存在になる。

そうなればWBSCへの発言権も強くなり、WBCにおけるMLBのように自国に有利な収益分配のシステムを作ることも可能だ。勝ち進むかどうかとは別次元の別格な権限を得られるのである。

何度も言うが、プロスポーツは結局金だ。いくら綺麗ごとを言ったところで、金のあるところに優秀な人材が集まるのは世の常である。

大会の収益でNPBが潤えば、それだけ有力選手が日本に集まりやすくなる。優秀な人材が集まることで国内リーグが活性化し、侍ジャパンの強化にもつながる。さらに企業体力に頼った各球団の経営構造も変えられる可能性も出てくるかもしれない。

長期的に見れば、日本が先頭に立ってプレミア12を盛り上げることには大いに意味があるのだ。
もちろん中期的には、プレミア12の成功が2020年の東京オリンピックでの野球復活につながることもあるだろう。

野球は日本が主導権を握れる数少ないスポーツ

当たり前だが、草創期には多くの不備もある。至らぬ点や失敗もそこら中で起きる。数多くの失敗を経験し、乗り越えることで大会を成熟させていけばいいのだ。

新しいことを始めるときには雑音はつきものである。心ない罵声を浴びせられることもあるだろう。だが、そんなことには惑わされず、できる限り突き進んでもらいたいものである。
野球は日本が世界で主導権を握れる数少ないスポーツの1つなのだから。

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