メイウェザーvsパッキャオ世紀の一戦終了。祭りのあと
現地時間5月2日(日本時間5月3日)、アメリカ・ラスベガスMGMグランド・ガーデン・アリーナでボクシングWBA・WBC・WBO世界ウェルター級王座統一戦が行われ、WBA・WBC王者のフロイド・メイウェザー(38)がWBO王者のマニー・パッキャオ(36)を3-0の判定で敗り、世紀の一戦を制した。
「ザ・ファイト・オブ・ザ・センチュリー」「地球が揺れる」と銘打たれ、全世界が注目する一戦だったが、パッキャオの鋭い踏み込みからの連打を見切ったメイウェザーが文句なしの判定勝ちで、名実共にボクシング界の主人公であることを証明する結果となった。
おもしろかった。
とにかくおもしろかった。
本当に楽しかった。
個人的には2003年のロイ・ジョーンズvsジョン・ルイス戦以来、すべての予定をキャンセルしてボクシングにかじりついた試合でした。
続々登場するセレブ。まさかのチャーター機の渋滞。上がり続ける会場のトーン。
開始のゴング。試合中の緊張感。
そして終了のゴング。結果が出た後のほんの少しの虚構。
こういうお祭り騒ぎといいますか、バカ試合は、あーだこーだと理屈を並べるよりも、その雰囲気に思いっきり乗っかって目一杯楽しむ方がよっぽど有意義に過ごせる。そのことを身をもって体験できた試合でした。
メイウェザーは強かった。
パッキャオもよかった。
両者ともにおつかれでした。
まさにそんな試合でしたね。
サイズを活かしたスタイルでパッキャオを迎え撃つメイウェザー
立ち上がり。
いつもよりも前に体重を乗せて構えるメイウェザー。
自分よりも一回り小さいパッキャオの踏み込みを、自分のサイズを活かして止める。
後ろ足に体重を乗せて相手のパンチをよけるいつものスタイルとは違い、自分から手を出す。特に右を強めに打ち込むメイウェザー。
ちょっと予想外の立ち上がり。
「テレンス・クロフォードがディエリー・ジャンに快勝!! 10回TKOで下し初防衛に成功」
対するパッキャオ。
どっしりと構えるメイウェザーの懐に思い切り踏み込んで左を振るう。
鋭い。早い。
メイウェザーのサイドステップにかわされクリーンヒットはしないが、調子自体はよさそうである。
メイウェザーもパッキャオの鋭い踏み込みに若干スウェーが遅れている。
これはもしかしたら当たるかも。そんな期待を抱かせる序盤の攻防。
右が絶好調のメイウェザー。パッキャオは踏み込みが鈍らないうちに一発当てたい
パッキャオの踏み込みは相変わらず鋭い。しかも踏み込む距離や角度、足の出し方を微妙に変えて変化をつけている。
ここ数年で一番の出来といってもいいくらい調子はよさそう。
対するメイウェザー。
パッキャオの踏み込みからの連打にちょっと圧力を感じている印象。
普段よりも前傾姿勢で構えている分、被弾も多い。
とはいえ、クリーンヒットは決して許さない。
そして時折パッキャオが踏み込む瞬間に出す右のカウンター。これでパッキャオの顔面が弾ける。
ステップバックしながらの右。信じられないタイミング。
細かいパンチを出しながら前に出るパッキャオ。
メイウェザーの小さいジャブや右を時折被弾して足が止まる。
だが、やはり踏み込みは早い。この踏み込みが鈍らないうちに一発大きいのを当てたい。
パッキャオの左がヒット!! メイウェザーが一瞬のけぞる!!
4R。
またしてもパッキャオの鋭い踏み込み。
そこからさらにパッキャオの左が伸びる。
メイウェザーのこめかみにヒット!! メイウェザーの腰が一瞬落ちる!!
パッキャオのチャンス!!
ロープ際に押し込み左右の連打。
左、右、右、左……。
ロープの反動を使ってかわすメイウェザー。
頭を下げてパッキャオに身体を近づけ、パンチのスペースを殺す。
クリンチを交えてロープ際から脱出。
すごい!!
5R。
まだ少し足がバタバタするメイウェザー。パンチにも腰が入らない。
チャンスと見たか、さらに攻勢に打って出るパッキャオ。
だがメイウェザーは巧みに身体を入れ替え、パッキャオにフルスイングを許さない。それどころか、一つ、二つ軽いパンチながらカウンターをヒットさせる。
ロープ際でまたしてもパッキャオのラッシュ。
だがメイウェザーは得意のL字ガードと上体の動きですべてのパンチをいなす。そして「当たらないよ」の表情。さすが。
ラウンド後半、メイウェザーの足取り、動きが戻る。うまく回復したか。
逆にパッキャオはチャンスだったのだが、若干手が出なくなる。
メイウェザーがパッキャオの見切りを完了したか。
6R。
パッキャオが猛然と前に出る。
野性的な踏み込みからのラッシュでメイウェザーの防御の上からパンチを浴びせる。
早い。そして強い。
メイウェザーはパッキャオの突進に付き合わずに下がる。
というよりもロープに押し込まれた印象。
大きな被弾はないものの、反撃する間はない。
メイウェザーに傾きかけた流れをパッキャオが無理矢理引き戻す。
すごい。マジですごい。
剣豪の居合い抜きのような緊張感。だがパンチのヒット数でメイウェザー優勢か
7R以降。
小さいパンチから踏み込みを繰り返すパッキャオ。
しかし完全に見切りが完了したメイウェザー。ジャブと本日絶好調の右カウンターを的確にパッキャオの顔面に当てる。
攻めながら相手の打ち終わりを狙うパッキャオ。
待ちながらカウンターを狙うメイウェザー。
中盤から終盤にかけて、お互い後の先の取り合いが続く。剣豪同士の居合い抜きのようなピリピリとした緊張感が漂う。
だが、すべての面においてメイウェザーが一枚上をいっている印象。
やはり天才。やはりディフェンスのキング。
さすがに出足が鈍ったパッキャオ。勝敗の行方は?
10R、11R。
さすがに踏み込みが若干鈍ったパッキャオ。
メイウェザーはパッキャオの突進をうまくかわす。
だが、完全に勝ったとは思っていないだろう。普段の余裕のある表情とはひと味違い、真剣な眼差しでパッキャオの攻撃を見極める。
そして、パッキャオが一休みした瞬間に前に出るメイウェザー。相手に息をつかせることすら許さない攻撃。この辺りの勝負どころを見極める嗅覚が尋常ではない。
倒しにいけば、もしかしたらメイウェザーのKO勝ちもあるかもしれない。そう思わせてくれるラウンドだった
最終12R。
ポイントでのリードを確信したメイウェザー。
前に出続けるパッキャオだが、追い足の鈍った状態では本気のディフェンスモードに入ったメイウェザーをつかまえることは難しい。
逆に飛び込み際に数発、右のカウンターを被弾してしまう。
最後まで追い続けるパッキャオ。
両腕を上げて勝利をアピールするメイウェザー。
ラスト数秒の突進にかけるパッキャオ。
難なくいなすメイウェザー。
ここで終了のゴング。
「地球が揺れた」世紀の一戦が終わる。
判定は118-110、116-112、116-112の3-0。
文句なしのメイウェザー勝利。
メイウェザー王朝健在。
ディフェンスキングのメイウェザーの牙城はパッキャオでも崩せず。
だが、パッキャオも最後の最後まで自分の持ち味を出し続けた試合だった。多くの挑戦者が自分の光を消されて何もできずに終了のゴングを聞いたのに対して、パッキャオは最後まで自分の持ち味である踏み込んでの攻撃を見せ続けてくれた。
ナイスファイト。
どちらも本当にナイスファイトだった。
両者、今後はどうするんでしょうか
さてボクシング史に残るギガファイトを終えた両者ですが、今後はどうするのでしょうか。
メイウェザーは後一試合、スポンサーとの契約が残っていて、インタビューでも9月頃に試合をすることを明言していました。相手が誰になるのかというところですが、このイベントの後ですからそれなりに期待感のある相手を選んで欲しいものです。
個人的にはアミール・カーンかキース・サーマン。特にアミール・カーンは個人的に今一番メイウェザーを慌てさせる可能性のあるボクサーだと思っています。ただ、メイウェザーに無視されまくっているので実現するかは微妙ですが。
後は減量してゴロフキンでしょうか。これもメイウェザー側にリスクがあり過ぎるので、可能性としてはちょっと低いでしょうか。
今のところ、誰になるのかまったく予想がつかないですね。
パッキャオに関しては、こちらも情報がないのでまったくわかりませんが、試合後のインタビューを聞く限り引退ということはなさそうに思えます。納得いかない表情が印象的でしたし、闘志も衰えていないと感じました。
何より今日の動きを見れば、まだ高いレベルで現役を続けられるものは持っていることも証明できたはずです。
こちらも今後の動向に注目していきたいと思います。
とにかくおもしろかったです。
楽しかったです。
こういう、素直に乗っかれるバカ試合があるからやっぱりボクシングはおもしろいです。
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