中谷正義とベルデホの成熟度が段違い。やっぱりOPBF王座11度防衛は伊達じゃねえな。そして井岡パパの名コーチ属性

中谷正義とベルデホの成熟度が段違い。やっぱりOPBF王座11度防衛は伊達じゃねえな。そして井岡パパの名コーチ属性

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2020年12月12日(日本時間13日)、米ネバダ州で行われたWBOインターコンチネンタル・ライト級王座決定戦。WBO世界同級14位の中谷正義が同級12位のフェリックス・ベルデホに9R1分45秒TKOで勝利した一戦である。
 
 
僕はその試合をWOWOWの中継で観ていたのだが、中谷勝利の瞬間は近所迷惑なほど叫びまくり、直後に号泣するなど思いっきりぶっ壊れたことをお伝えしている。


ベルデホがダウンしたときの僕。
「バカお前、寝てろバカ!!」
「もう無理だって!! 止めとけってバカ!!」
「どう見てもキツいだろおい!!」
 
ベルデホが立ち上がったときの僕。
「バカお前、早く始めろバカ!!」
「全然大丈夫だろ!! もう十分回復してるよ!!」
「できるだろ!! 見たらわかるだろ!!」
「邪魔すんなよレフェリー!!」
 
中谷が勝利した瞬間の僕。
「※◎★●!?%△#?%◎&@□!!!!」
 
↑もう完全にヤベえヤツじゃんコイツww
おもくそ人格破綻しとるわ……。
 
 
で、先日。
WOWOWエキサイトマッチのレギュラー放送で再度この試合を観戦し、改めてすごい試合だったなと。
特に中谷正義の成熟度に驚かされたというか、フェリックス・ベルデホとはボクサーとしての純度に雲泥の差があったように感じた。
 
 
というわけで、今回は中谷正義vsフェリックス・ベルデホ戦を頭を冷やして観た感想を適当に述べていくことにする。
 
スルタンがカラバロにアップセット。これが俺たちのプエルトリコ。ファン・カルロス・トーレスも!? 期待の2トップが揃ってコケる(期待に応える)って笑
 

ベルデホは中谷をよく研究してきていた。長身+左ジャブの名手の中谷を序盤から攻略してみせた

まず今回の試合、ベルデホは中谷をかなり研究していたように思う。
 
遠い位置から左ボディを伸ばして中谷の顎を下げ、鋭い踏み込みからワンツーを顔面に。
中谷の左にカウンターを合わせ、すぐさま近場での連打につなぐ。
 
遠間から身体を伸ばしてボディ。
ジャブにカウンターを合わせて連打。
 
長身を活かした中谷のファイトスタイルを崩すべく、この試合のベルデホは序盤からゴリゴリに攻めてきていた。
 
 
また、中谷は打ち終わりに頭を斜めに傾けて下がる傾向があり、今回はベルデホにそこを狙われていた気がする。
 
前回のロペス戦でも打ち終わりに頭が下がった瞬間に右のカウンターを食うシーンは目についたし、特にこの日の中谷は自分から距離を詰めて腕を振っていた。
1Rのダウンは必然だったというか、KOを狙いにいく積極姿勢によってカウンターをもらう確率が一気に上がってしまった。
 
中谷正義vsフェリックス・ベルデホ戦実現を願う会解散とともに中谷正義のフェリックス・ベルデホ戦での勝利を願う会発足を宣言します
 
恐らくだが、中谷はこれまであれだけの踏み込みと威力を両立できる相手と遭遇したことがなかったのだと思う。
「182cmの長身+ジャブの名手」←このスペックだけで大きなアドバンテージとなり、相手の射程内でも身体を傾けるだけで危険な被弾は防げる。
 
だがテオフィモ・ロペスやフェリックス・ベルデホなど、世界レベルの選手が相手ではそうはいかない。これまでの相手よりも鋭い踏み込み、伸びるパンチによって防御が間に合わずに面食らってしまった。
 

燃費の悪いボクシングで体力を吐き出したベルデホと、ダウン後も落ち着いてチャンスを待ち続けた中谷。選手としての成熟度が段違い

ただ逆に言うと、ベルデホも長身の中谷に強いパンチを打ち込むにはそれなりの踏み込みが必要になるわけで。
 
常に左右に動いて正面を外し、瞬間的な踏み込みとともに足がもつれるほど腕をぶん回す。
 
試合を観直すとわかるが、この試合のベルデホは5Rから明らかに動きが落ちている。
身体を伸ばしてボディを打つのもいちいち体力を使うだろうし、全体的にとにかく燃費が悪い。
 
凄まじい踏み込みと惚れ惚れするほど華麗なカウンターと引き換えに、あっという間に体力を吐き出してしまった印象である。
 
ベルデホ復活? 無敗のマデラを豪快1RKOに下す。持って生まれた華と才能はホントにすげえ。ボクシング界の主人公にまで駆け上がれ
 
一方の中谷はベルデホの圧力に押されつつも、まったく慌てることはなく。
ベルデホの動きが落ちるとともにジャブのヒットも増え、中盤からは持ち前の体格差でプレッシャーをかける展開に持ち込む。
 
中でも目を引いたのが4Rに喫したダウン後の振る舞い。
完璧なタイミングで右カウンターを被弾してガクッと膝をついたものの、サラッと立ち上がって何ごともなかったかのように再開に応じる。
 
よくよく見るとダウン後の中谷はパンチがかすめるたびに一瞬動きが止まり、微妙に膝も落ちている。正直、あのダウンは致命傷に近いレベルで効いていたはず。
 
だがそれをまったく表に出さず、涼しい顔で前に出てくる姿にベルデホは相当焦りを感じたのではないか。
 
 
結局あそこで勝負をかけられなかったことがベルデホの敗因となったわけだが、中谷の打たれ強さ、精神的なタフネスがクソほど発揮された局面でもあった。
 
さらに言うと、テオフィモ・ロペス戦で同水準のパンチを経験していたことも大きかったのだと思う。


1発効かされた途端にバタバタし始めるベルデホとは真逆というか、7Rにグラつかされて以降、ベルデホのメンタルが後ろ向きになっているのは僕にも伝わってきた。
 
画面越しに観ている僕でもわかるのだから、実際に対峙している本人はなおさら。大きな確信を持って前に出ていたと思われる。
 
 
そう考えると、OPBF王座11度の防衛はやはり伊達ではない。
キャリア19戦のうち、12Rのタイトルマッチが計12度。前回と今回も含めれば、中谷正義はキャリアのおよそ3/4で「負けられない試合」を経験していることになる。
 
当然ピンチやリードを許す場面もあったはずだが、そのつど跳ね返してきたわけで。
打たれ強さやメンタルに関しては本人の素養はもちろん、どんな局面でも慌てず対応する引き出しの多さ、長いラウンドをトータルで見据える成熟度は相当なもの。この部分において両者には大きな差があった(と思う)。
 
 
約5年半、防衛を重ねながら淡々とチャンスを待ち続けたメンタルを舐めんじゃねえぞって話でね。
 

井岡パパは名コーチだよね。多彩な左とディフェンス技術に長けた中間距離のスペシャリスト量産マン

またこういう試合を観ると、井岡パパは改めて名コーチなのだろうなと思わされる。
 
井岡一翔を筆頭に中谷正義、石田匠といった井岡ジム出身の有力選手の特徴として、
・左リードが多彩
・ボディがうまい
・中間距離での差し合いに強い
・防御が固い
印象がある。
 
ボディ打ちを含めた左の多彩さ、中間距離での駆け引きにめっぽう強く、ディフェンス面は常に顎を引いた構え+瞬間的に芯を外す技術に長けている。
 
今回の中谷もヘッドスリップでうまくダメージを逃がしていたし、先日のvs石井渡士也戦で石井をさばききった石田匠のアウトボクシングは本当にお見事だった。

井岡一翔も中谷も石田もそうだが、脱力した状態から無造作にスッと出す左の精度はすごい。ガチですごい。力みまくって腕をぶん回すフェリックス・ベルデホとはあまりに正反対である。
 
スピードもパワーもセンスもベルデホの方が上だけど、勝ったのは中谷正義なんですよ。やっぱり中量級以上の日本人には気持ちが入るよね
 
その反面、
・フィジカル面はあまり重視しない
・追い足がなく距離を外されるとモタつく
側面が見られる(気がする)。
 
筋トレをがんばって馬力をつけるよりも極限まで絞って下の階級にとどまる方を優先し、その上で極力中間距離での差し合いができる相手を連れてくる方針。
 
フライ級時代の井岡一翔も、どちらかと言えば中間距離の攻防が得意な相手を選んでいたように思う。
 
 
左リードとディフェンス技術を極限まで高め、選手の長所がもっとも発揮できる(負けにくい)相手を選出する。
トレーナーとしてもマッチメーカーとしても井岡パパは有能だったのだろうと。
 
まあ、フライ級王座に挑戦した2014年5月のアムナット・ルエンロエン戦だけは唯一うまくいかなかったようだが。
 
中谷正義vsロマチェンコ戦が今夏? テオフィモ→ベルデホの次のロマチェンコって、完全に1人UFC状態やな。でも、もう少し分散してもいい気も…
 
以前にもちょろっと申し上げたが、“私生活では金や女にだらしないけど競技には真摯に向き合う”タイプが名コーチ属性を備えているというのはマジでありそう。


井岡親子のゴタゴタや経営手腕については詳細を知らないので止めておくが、どちらにしても井岡パパの名コーチっぷりは今回の試合からも十分感じられた。
 
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