三浦大輔と黒田博樹の引退があまりにも見事で、FA移籍と生え抜きへの考えが揺らぎそうになった件【2016年プロ野球感想】
2016年日本プロ野球。
セリーグ王者広島カープとパリーグ王者日本ハムファイターズが日本シリーズで激突し、大激戦の末に4勝2敗で日ハムが勝利。見事に日本一を飾った。
「代わったところに打球が行くには根拠がある。2016年4勝2敗で広島を下して日本ハム優勝!!」
これで今シーズンの全日程が終了し、球界はストーブリーグへと突入。
戦力外通告選手やFA権を取得した選手の動向。さらには年俸交渉など、今後は各球団が来年に向けた戦力補強に入ることになる。
「2017年阪神が5位になる理由。2017年シーズンスタート!! 破綻した内野守備とリリーフ酷使の金本謎采配は解消したのか?」
だが実を言うと、僕はまだ2016年シーズンの余韻に浸っている。
多くの野球ファンがドラフトやFA選手の動向、新たな外国人選手などに目を向ける中、いまいちそちら側に気持ちがいかない状況が続いている。
理由は非常にはっきりしている。
横浜DeNA三浦大輔と広島カープ黒田博樹という2人のレジェンドの引退。それがあまりにも強いインパクトを残したせいである。
「「リスペクト」を便利使いするお前らに言いたいことがある。「マスコミ対応もプロフェッショナルの仕事だ」ってのはお前らマスコミ側が言うことじゃないから」
いまだかつて見たことがない華麗で感動的な引退。完璧過ぎる演出にすっかり心を奪われた
三浦大輔と黒田博樹。
あれだけファンに愛され、すべての人の心に残るような引退が果たしてあっただろうか。
少なくとも僕はこれまで、あそこまで見事な去り際を観たことがなかった。
ON時代をリアルタイムで観ていないので何とも言えないのだが、とりあえず記憶に残る範囲でここまで見事な最期を飾った選手を僕は知らない。
記録にも記憶にも残る大選手の引退。
しかも同じ年に2人も。
「名将小久保覚醒ww WBC史上最高の監督小久保が藤浪を使わない理由? 絶妙継投と総力戦で打倒イスラエル」
引退発表からラスト登板まで。
黒田にいたっては先日の優勝パレードも含めた一連の流れ。
ファンの驚き、思い出の共有、涙の別れ。
完璧過ぎるほど完璧な演出に、僕の心はすっかりやられてしまっている。
おかげでシーズン終了後1週間以上経つ今も、いまだにその余韻から抜け出せていない状態である。
マジで気持ち悪いのだがww
ズタボロになるまで現役にしがみついた三浦の引退登板。最後までカッコいいたたずまいと心に響く名言
まず9月29日に現役最後のマウンドに上がった三浦大輔。
ヤクルト打線を相手に6回1/3を投げて119球、12安打10失点の結果である。
以前の記事でも申し上げたように、今シーズンの三浦にはすでにプロの一軍で通用する力はなくなっていた。この日の登板でも、まさしくそれを証明するような打たれ方を見せていた。
「ベイスターズCS初進出に際して愚将中畑清を語る。三浦大輔引退は仕方ないよあの球威じゃ」
タイミングを外した球はあっさり拾われ、全力で投げ込んだストレートが楽々外野の頭を越える。
詰まらせたはずの打球が直接フェンスに当たる光景を見て、「あれがあそこまで持っていかれるのか……」と苦笑いする三浦の表情が本当に印象的だった。
「プロ野球選手としての三浦大輔は終わったんですよ」
カラカラに乾いたタオルをさらに絞り、最後の一滴まで出し尽くして現役にしがみついた三浦につきつけられた最後通告。
「DeNA山口俊が巨人にFA移籍するべき3つの理由。横浜ファンから離れて新天地巨人でスターになれ」
何も残っていない空っぽの肉体でヘロヘロ球を投げ続ける三浦の姿は、問答無用で美しい。暗黒時代を支えたハマの番長のラストにふさわしい119球だった。
そして、試合後のセレモニーで三浦が発した「三浦大輔はこれからも横浜です。ヨロシク!」という言葉。
さすがにこれは反則であるww
カッコよすぎて卒倒してしまうww
以前の記事の繰り返しになるのだが、個人的にこの言葉は長嶋茂雄の「我が巨人軍は永遠に不滅です」に匹敵する名言だと思っている。
「ダラス・カイケルとかいう88マイルのシンカーをひたすら投げ続けてフライボール・レボリューションに巻き込まれなかった人」
「先発完投ができなくなったから辞める」それも選手としての華麗な去り際。永久欠番に文句なし
次に、10月25日の日本シリーズ第三戦がラスト登板となった黒田博樹。
結果は5回2/3を投げて85球、4安打1失点という堂々の内容である。
「2016年日本シリーズ、三戦目以降展望。優勝目指してがんばれ広島カープ!!」
惜しくも負傷降板という形でマウンドを降りてしまったが、最後の打者が大谷翔平という巡り合わせも黒田のラストにふさわしい。
「2019年の原巨人が優勝せざるを得ない理由。でも、優勝するのは広島だと思う件」
「カープで投げる方が1球の重みを感じられる」と言って広島復帰を決め、満身創痍の身体に鞭打ちながら通算200勝を達成する。
優勝パレードでは満面の笑みで観客に手を振り、「もう泣かない」と言っていたのに引退セレモニーではやっぱり泣いてしまう。
野球選手としての実力はもちろん、一挙手一投足に人間味が溢れる黒田は誰からも愛される球界のレジェンドである。
だが、三浦と違って黒田にはまだ現役を続けようと思えば続けられる力があったことも確かである。
「黒田200勝、広島カープ優勝、引退を受けて、黒田博樹の現状を考える」
球速は常時140kmを計測し、ピンチの際には145kmを超える。
セリーグ優勝を決めた9月10日の巨人戦で見せた149kmのツーシームや、日本シリーズ第三戦で投げた146kmのカットボールなど。ピンチの局面でのギアチェンジはまさしくメジャーリーガー黒田博樹。
「この試合で壊れても構わない」という言葉通りのピッチングを披露する姿に、試合中にもかかわらず僕の涙腺は崩壊しかかっていたことは内緒だww
「進化が止まらない!! ダラス・カイケルがヤンキース打線を7回無失点に抑えてアストロズ先勝。MLBのポストシーズン最高なんじゃw」
恐らく黒田は、間隔をあけてローテーションの谷間を埋めるスタンスであれば、あと数年は現役を続けることができたのだ。
中10日の登板間隔で年間5、6勝を目指す。いわゆる2014、2015年の三浦大輔の立ち位置である。
「松坂大輔a.k.a.名古屋のBIG若旦那w 平成ラストイヤーにKNOCK OUTの狂乱も週末の誘惑も超えていけ」
ただ、本人も言っていたように「先発完投」という信念を曲げてまで現役を続けることを自分自身が許さなかった。先発としてしっかりとローテーションを守り、9回を1人で投げることができなくなった自分はここにいるべきじゃない。
選手としてのプライドや強烈な責任感が今シーズン限りの引退を決意させた。そういうことなのだ。
「巨人山口俊誕生!! ストーブリーグの巨人の補強戦略が的確過ぎて開いた口がふさがらない。そしてDeNAの間の悪さが……」
2人のレジェンドの好対照なコントラストが双方を際立たせる
ボロボロになるまで現役にこだわり続け、最後の残りカスまですべて使い切った三浦大輔と、ここが引き際という絶妙のタイミングを逃さなかった黒田博樹。
「ヤクルトはなぜ弱くなったのか。2015年の優勝時と2017年では何が違ったのか。意外と球場にも原因があるかもよ?」
2人のレジェンドの対照的な幕引きが鮮やかなコントラストを描き、より一層両者を際立たせる。どちらの引退も美しく、これまで見たこともないほどの鮮烈な印象を残してくれた。
黒田の年俸が6億に対して三浦が1億2500万だとか、そういう野暮な話はどうでもいい。2人とも感動的で本当にすばらしい引き際だった。
フランチャイズ・プレイヤーの鮮やかな引退を目の当たりにして、心が大きく動いた。FA移籍は賛成だけど、生え抜きを貫くのも尊い
僕は基本的に選手のFA移籍には大賛成の人間である。日本もメジャーのようにトレードやFAの移籍市場がどんどん活性化して欲しいと思っている。
FA宣言した選手を裏切り者扱いする一部の風潮は虫唾が走るほど嫌いだし、お金の話を汚物扱いする空気もよく理解できない。
また、コストカットのために力の落ちた高給取りの選手をトレードに出すと「情がない」と騒ぎ出すファン心理など、いまだに解明できない謎も多い。
プロがお金にこだわって何が悪いのか。
よりよい環境を求めて職場を変えることがなぜ裏切りになるのか。
まさか、いまだにプロ野球選手を夢の中の住人だとでも思っているわけじゃないんだろ? まったくもって意味がわからない思考である。
「松坂大輔2018年成績予想。ついにこの季節がやってきました。ほら見ろ、松坂はすげえだろが。あ?」
だが、そんな僕でも今回の三浦と黒田の引退には大いに心を動かされた。
フランチャイズ・プレイヤーの尊さというか、生え抜きを貫いたまま引退するという美しさに目を奪われてしまった。
「アルキメデス・カミネロとかいうギリシャ神話に出てきそうな神々しい名前のノーコンは巨人で活躍できるのか?」
FAで一時的な高給を狙うのもアリだが、1つのチームでファンに愛されて引退することがどれだけ幸せか。この2人の最期を観て、そんなことを考えてしまった次第である。
自分で書いていて気色悪いのだが。
「松坂大輔さんの2017年成績予想【定例報告】オープン戦ラスト登板で広島を相手に7回無安打無失点」
ちなみに、今の現役選手であれだけの空気感を出せる選手がいるだろうか。
あの金本や前田智徳の引退試合ですら、僕の中では三浦と黒田には遠く及ばない。
パッと思いつくところだと、可能性があるのは阪神の藤川球児とロッテの福浦和也くらいだろうか。
2人ともまだ現役なので、今から引退試合に思いを巡らせるというのは失礼かもしれないが。