井上vs河野感想。モンスター井上がタフボーイ河野に勝利。これが井上尚弥。ロマゴンだろうが関係ない。パワーとスピードでなぎ倒せ【結果】

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ファイトイメージ
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2016年12月30日に東京・有明コロシアムで行われたWBO世界S・フライ級タイトルマッチ。
同級王者井上尚弥が挑戦者で前WBA王者河野公平と対戦。6R1分1秒TKOで勝利し、4度目の防衛に成功した。

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2016年最高のマッチメークと呼ばれ、有明コロシアムのメインに据えられた一戦は井上の圧勝。パワフルなジャブと強烈なボディでダメージを与え、終始ペースを渡さなかった井上が6Rに見事なカウンターで河野を切って落とす。

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一方、挑戦者河野も“タフボーイ”の異名通りのファイトを見せたものの、最後は“モンスター”井上のラッシュに耐えきれずに失神。キャリア初のKO負けを喫してしまう。

これで戦績を12戦全勝10KOとした井上尚弥。
期待されるローマン・ゴンサレスとの頂上対決は実現するのか。ラスベガスの大舞台で、大観衆を前に「世界の井上」として羽ばたくことができるか。
2017年、井上尚弥の動向に大注目である。

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勝つべき人が勝った夜。井上尚弥がベテラン河野公平に引導を渡す

井上尚弥勝利!!
36歳河野公平をKOで退ける。

前回の記事で申し上げたように、僕はこの試合を会場で観ていたのだが、本当に盛り上がった試合だった。
年末イベントのラストを飾るにふさわしいKO劇というか、ボクシング界の主役を担う選手が「雑草」と呼ばれるベテランに引導を渡す最高のシナリオで幕を閉じたのではないだろうか。

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会場を後にする方たちにも満足感が漂い、国際展示場前の駅構内にも余韻が充満していたのが非常に印象的だった。

これで井上尚弥は、国内でやることがほぼなくなったと言っていいだろう。2017年は間違いなく勝負の年である。
ラスベガスという大舞台で最高の相手と試合をするのか。それとも国内限定王者として細いキャリアを送るのか。どちらにしろ、大きな節目の1年になりそうである。

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対する河野公平。
負けはしたが、文句なしにすばらしい挑戦者だった。

佐藤洋太
ペッチバンボーン
テーパリット
リボリオ・ソリス
デンカオセーン
亀田興毅
ルイス・コンセプシオン
井上尚弥

国内では他に類を観ないほどの戦績に加え、観客の心を打つファイトスタイル。
与えられたチャンスを何度も活かし、不屈の精神で這い上がったタフボーイは間違いなく名選手である。
このまま引退するにはあまりに惜しい存在だが、今後はどうするのだろうか。

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しっかりと試合を組み立てようとしていたのは河野公平だった。相手がどんなに強くても己のスタイルを曲げなかったタフボーイ

試合の感想としては、先日の記事でも申し上げたように「井上尚弥のファイトスタイルが確立された試合」だったように思う。

恐らくだが、しっかりと試合を組み立てようとしていたのは実は河野の方である。

ガードを上げ、急所を隠しながら井上と対峙する。
前後に動きながら少しずつステップ幅を大きくして距離を詰める。
井上の左をはたき落としながら左に回り、回転の半径を狭めるように接近。
身体を密着させ、右にシフトウェイトして全力の右フックを打ち込む。

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どれだけフィジカル的に不利だろうが、自分のやれることを全力でやりきる姿勢。まさしく己を貫くファイトスタイルである。

特に、3Rの残り10秒の詰めなどは凄まじいものだった。
まったく手を出すことなく、左右へのシフトウェイトのみで井上にコーナーを背負わせる追い込み。
あと30秒もあれば、もしかしたら何かが起こった可能性もあったのではないだろうか。

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さらに4R開始直後。
3Rの終了間際にタイミングと距離感を掴んだのだろう。
相手に手を出す暇を与えず、井上の防御を完全に崩してロープまで詰める猛攻。
実況席では「河野の気持ち」がどうこう言っていたが、そういうことではないと思う。単純に河野公平が試合の中でやるべきことをやっていた結果である。

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スピード&パワー大正義の井上尚弥が河野公平の組み立てを根元から吹き飛ばす。強烈な左で近寄ることすら許さない

だが、残念ながら両者にはフィジカルの差があり過ぎた

井上については毎回同じことを言っているのだが、事実そうなのだから仕方ない。
コンタクトスポーツにおけるスピード&パワーは大正義
それを日本でもっともわかりやすく体現するのがこの井上尚弥という選手である。

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とはいえ、今回の井上はこれまでと比べてちょっと考えていたことも確かである。
自分の絶対的なスピード&パワーを活かすにはどうしたらいいか。
前半フルスロットルでアクセルを踏み、中盤以降ガクッと失速するパターンを繰り返さないためにはどう戦えばいいか。
それを考えに考えた上で臨んだことが伝わる試合内容だった。
 
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何より意識していたのが左。
河野や前回のペッチバンボーンが「右ストレートかと思うくらい強烈だった」という、左ジャブの多用である。
河野もペッチバンボーン同様、井上と中間距離でまともに打ち合うのは危険が大きい。活路を見出すには近づくしかないわけだが、あの超ド級の左ジャブのおかげで前進を寸断されるのである。

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それだけではない。
ガードの間から右ストレートのようなジャブを被弾するうちにダメージが蓄積し、突進力が落ちる。なおかつ顔面のガードに手一杯になるためにボディへの注意が散漫になる。

結果的に距離を詰める作業だけで体力を消耗し、自分の形に持ち込むので精一杯。ロープ際に追いつめたときにはすでに息も絶え絶えで攻撃する力が残っていないという状況である。

さらに、左の多用によって河野のカウンターを封じることもできる。
今回の試合では「河野の右カウンターが当たりさえすればダウンを奪えるかもしれない」と言われていた。
もちろん河野のカウンターの脅威は周知の事実で、井上陣営も警戒していたはずである。

なので、河野のカウンターが飛んでくる中間距離では極力右を出さない。右を打つのは河野がガードを上げて踏み込んできた瞬間に限定し、極力打ち合わない作戦を実行したのである。

左で河野の前進を寸断。
河野がガードを上げて前に出てきた瞬間、サイドステップで河野の左側に回り込んでの右。
だが、河野はすぐに方向転換し、両腕を振り回しながら突進する。
それに対して、井上はガードとバックステップで対処。
カウンターを打てるスペースのある位置ではとことん打ち合いを避ける作戦である。

たとえロープに詰められても、スピードとパワーの差で脱出できるという計算もあったのだろう。
必殺のカウンターのタイミングを奪うだけでなく、慢性化している拳の怪我も防げ、なおかつ体力も温存できるという効果も得られる。

それもこれも、すべては井上の圧倒的なフィジカルあってのもの
何度も繰り返すように、コンタクトスポーツにおけるスピード&パワーがいかに大正義か。それをまざまざと見せつけた作戦である。

まあ、KOを決めた6Rには失速していたことも確かなのだが。
あのロープ際のカウンターも河野の前進に押されていた場面だったし、やはり最後まで自分のスタイルを貫いていたのは河野の方だったと思う。

といっても、それまでにだいぶダメージを与えていたわけで、そういう意味では井上尚弥の完全勝利と言えるのかもしれないが。
それでも最後のカウンターは狙っていたようには見えなかったけど。

ロマゴンとの一騎打ちは実現するのか? あの左ジャブが通用すれば勝機はある?

今回の試合を受けて、やはり期待されるのはロマゴンとの一騎打ちだろう。

果たして井上の左ジャブはロマゴンに通用するだろうか。
ロマゴンのえげつない詰めと、腕が6本あるようなコンビネーションから逃れることができるだろうか。

僕自身の意見を言うなら、あの左はロマゴンにも通用すると思う。
あの凄まじい破壊力があれば、ロマゴンの前進すらも寸断できると予想する。

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理由はもちろんフィジカルの差。
S・フライ級では明らかに身体が小さいロマゴンに対し、井上は今回の試合でも一回り身体が大きくなっていた。両者のパワー差はさらに開いたと考えていいだろう。

クアドラスは細かいパンチの連打でロマゴンの前進を止めたが、両手をフルに使ったおかげでそこから先の攻め手をなくしていた。
その点、井上は左一本でロマゴンの突進をストップできる。
当然右をフルスイングするスペースができるわけで、得意な中間距離で身長差を活かした打ち下ろしをテンプルに叩き込むことが可能になる。

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どなたかが「あの左ジャブはアイク・クォーティを彷彿とさせる」とおっしゃっていた覚えがあるが、確かにわかる気がする。
化け物的な腕力で中間距離をキープしたクォーティのジャブと、井上のそれは似ているかもしれない。

なるほど。
この試合を経て強化版辰吉丈一郎から劣化版アイク・クォーティに格上げになったわけか。
我ながら何を言っているのかわからないが。

何度も言うように、井上尚弥は「組み立て」とか「技術」云々を考える必要はない。
ただただ、パワーで吹き飛ばせ。

え?
それじゃ評価が上がらない?
ボクシングで勝ったことにならない?

そんな雑音は無視ですよ。ええ。

ただ、やはり井上がロマゴンとの一騎打ちを実現するのは2017年がリミットだろう。
今回の試合では明らかに身体が大きくなっていたし、この階級にとどまれる時間はそう多くない。ぜひとも日本のボクシングファンの願いを叶えていただきたいものである。

「井上尚弥が拳を痛めないために? 井岡スタイルに変更すればいいんじゃない? それでロマゴンに勝てるかは知らん」

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