ロマチェンコ完勝! ウォータースあへあへギブアップで余裕の防衛成功!! 階級アップで覚醒した天才ロマチェンコにアックスマン歯が立たず【結果】
2016年11月25日(日本時間26日)に米・ネバダ州ラスベガスで行われたWBO世界S・フェザー級タイトルマッチ。
同級王者で五輪2度の金メダリスト、ワシル・ロマチェンコに、KO率78%の挑戦者ニコラス・ウォータースが挑んだ一戦である。
「は? ソーサがロマチェンコに勝てるわけねえじゃんかww え? 棄権した? よし、批判の時間だあああああ」
結果は大方の予想通りロマチェンコの一方的な展開となり、7R終了時点でウォータースのギブアップを呼び込んで勝利を挙げる。
開始直後からロマチェンコはウォータースを翻弄。左右に動きながらまったく的を絞らせず、自分のパンチだけを次々に叩き込んでいく。
1発の逆転打に賭けたいウォータースだったが、防御で手一杯になり反撃の糸口をまったく掴めず。7Rにコーナーでパンチを集められ、最後は心が折れた形で試合続行を拒否する。
「ロマチェンコにウォータースは勝てるか? 無理だろうなぁ。勝って欲しいけどなぁ。ロマチェンコはすごいからなぁ」
見事初防衛に成功したロマチェンコ。
前回のマルティネス戦に続き、強敵を打ち破ったことでまた評価を上げることは間違いない。
今後さらなる階級アップを果たし、期待されるパッキャオ戦にたどり着くことができるだろうか。
「ベテルビエフこれアカンヤツやww プリエトを豪打のカウンター1発で生まれたての小鹿に」
これはロマチェンコのプロモーションビデオだ。もしかしたらウォータースKO負けするかも、と思っていたけど
ロマチェンコ圧勝!!
ウォータースの闘争心を根こそぎ削り取る!!
ロマチェンコお見事である。
まさしくロマチェンコのための夜。
ロマチェンコがどれだけ強く、どれだけ速く、どれだけ精密であるかを見せつけるための試合。
「トロヤノフスキーが挑戦者決定戦に勝利。ポルティージョを1RKOで下して次期挑戦者に名乗り。ホントに内山高志に似てる」
ウォータースという動くサンドバッグを相手に、いかに華麗なスパーリングを披露するか。
ワシル・ロマチェンコというマシーンがどれだけ優秀であるかを測るテスト。
ロマチェンコのすごさを自慢するために用意されたPV。
マジでそんな感じだったのではないだろうか。
「覚醒した田中がフエンテスに圧勝!! “中京の怪物”が絶不調のフエンテスを5RKO」
いや、正直に申し上げると、もしかしたらウォータースはKOされるかもしれないと思っていた。
以前の記事でロマチェンコの判定勝ちを予想したのだが、前回のマルティネス戦でのパワフルな戦いぶりから、ウォータースは最後まで立っていられないのではと感じ始めていた。
「ロマチェンコがゴロフキン化? マルティネスに手も足も出させず完勝!! アカンわこりゃww」
ガードの間をピンポイントで通されまくり、ウォータースは手を出す暇すら与えてもらえないのではないか。どこかでロマチェンコのパワフルな左がウォータースに突き刺さるのではないか。
何となくだが、判定を聞くウォータースの姿が想像できなかった次第である。
「マン振り魔人ダニー・ガルシアがサミュエル・バルガスを圧倒! あれだけ躊躇なく振り回せる選手は驚異的」
ロマチェンコでけえ!! お前、またビルドアップしたんか
試合開始直後、リング中央で向かい合った両者を観て思ったのが、
「ロマチェンコ、またデカくなったんじゃねえか?」
ガードを高く上げ、やや猫背気味で上半身を左右に振りながら右に回るロマチェンコ。この姿を観て「あれ? コイツまたビルドアップしたか?」と思ったのだが、どうだろうか。
肩から上腕にかけて一回り大きくなり、腰回りから下半身がどっしりとして安定感を感じさせる。全体的に一段パワフルになった印象である。どちらかと言えば、ウォータースの方が小さく見えたくらいに。
「いいじゃん亀田和毅。そうそう、これをやって欲しかったんだよね」
試合前の計量ではウォータースがやや軽めのウェイトだったという話だが、それを差し引いてもこの日のロマチェンコの身体は大きかったのではないだろうか。
「ロマチェンコ圧勝。リゴンドーにもノーマス。体重差じゃないぞ? 相性が悪過ぎた結果だぞ?」
打ち終わりを狙うウォータース、ロマチェンコのスピードにまったくついていけず
試合の流れとしては、パンチと動きのスピードで翻弄したいロマチェンコと、打ち終わりにカウンターを狙うウォータースといったところだろうか。
スピーディな右から大きく踏み込んで左を打ち、素早く右にステップして右フックを当てていくロマチェンコ。
対するウォータースは、ロマチェンコの鋭い踏み込みをバックステップしながらガード。さらに自身の左側にサイドステップする瞬間を狙い打ちする作戦である。
「エキサイトマッチ総集編2016を観た感想と、俗世にまみれた雑感など」
ロマチェンコが右足を踏み出し、ウォータースの左側に回り込む。その一瞬、ウォータースの正面に身体を晒すわずかな時間。ウォータースが狙っていたのはここである。
自分と正対する一瞬を狙ってロマチェンコのど真ん中にボディを打ち、自慢のアッパーにつなぐ。これが今回の試合でウォータースがやろうとした作戦だったのではないだろうか。
「ラフファイトとか体重超過とか、別にアリだよな? というお話」
だが、残念ながら結果は観ての通りである。
そもそもウォータースは、ロマチェンコのスピーディな踏み込みに対応できない。
ロマチェンコの右をガードしてバックステップするのだが、そこからの左をどうしても被弾してしまう。そのためロマチェンコのサイドステップへの反応に一瞬の遅れが生じるのである。
「クロフォードがモリナに圧勝! でもスター候補がそれでいいのか? ホントに強いのかクロフォード」
パンチを打つ際に一瞬の間ができるウォータースにとって、この遅れは致命的と言わざるを得ない。
ロマチェンコにあっさり左に回られ、アングルを変えた位置から左を打ち込まれる。まるで背後に回ったかのような錯覚を覚えるほどのスピード差。ロマチェンコの得意のパターンである。
「ゲイリー・ラッセルvsエスカンドンが楽しみすぐる。両方めちゃくちゃいい選手ですよねこれ?」
ウォータースの調子はよかった。だが、すべての面でロマチェンコが上だった。パワーでも上だった
実のところ、今回のウォータースは調子自体はよかったと思う。
動きもキレていたし、ロマチェンコのパンチに対する反応も悪くはなかった。
少なくとも前回のマルティネス戦を参考に、スピード負けしないようにという意識は伝わってきた。
「コバレフvsウォード感想。コバレフ敗れる!! ウォードが3-0の判定で王座奪還!!」
対するロマチェンコも、恐らく序盤はウォータースの攻撃力を警戒していたのだろう。
1Rと2Rの中盤くらいまではウォータースの戦力を慎重に推し量っていたのではないだろうか。
「ガンボアvsカステリャノス感想。ガンボアの身体がデカ過ぎてアレだった。ところで内山の今後は?」
ウォータースの長いリーチがどこまで伸びるのか。
アックスマンと呼ばれた独特のアッパーがどのタイミングで出るのか。
そして、自分のスピードにどこまで対応してくるのか。
そういった諸々の準備をしつつ、冷静に相手の力量を見ている時間帯だったはずである。
あまり激しく動かず、射程内に近づかないように。
「ロマチェンコに勝てるのは誰? 階級を超えたPFP、ハイテクボクシングマシーンをストップできそうな選手」
だが、分析を終えたロマチェンコがギアチェンジした3R以降はほぼノーチャンス。
ロマチェンコの初弾をかわせず、反撃が遅れる。
攻撃がかわせないのでガードを下げることができなくなる。
打ち終わりを狙いたいのだが、ガードを下げられないので攻撃姿勢に入れない。
スルスルと左に回り込まれ、得意のアッパーは打つタイミングすらも与えてもらえない。
「レミュー左フック一閃!! スティーブンスがスヤッスヤ。マザーの胸で安らかに眠れ」
そして、最も痛かったのがロマチェンコにパワー負けしたという事実。
4Rの中盤、リング中央でウォータースが被弾覚悟で前に出たシーン。ここでロマチェンコを下がらせることができなかったのは意外だった。
正面衝突で当たり負けせず、逆に手数を浴びせてウォータースを下がらせる光景を観て、僕はロマチェンコの完全勝利を確信してしまった。
「ダメだ……。ウォータースが勝つ可能性あれへん……」
「トロヤノフスキー、ワンパンKO負け!! 40秒でインドンゴの左で衝撃ダウンで王座陥落!! 内山vsコラレスの既視感」
ウォータースが左のボディで活路を見出そうとするが、冷酷非情なロマチェンコにあっさり攻略されてジ・エンド
6Rに入ると、ウォータースが左ボディを使い始める。
恐らくセコンドから指示が出たのだろう。
サイドステップするロマチェンコの進行方向からボディを打ち込み、アングルチェンジを封じる作戦である。
目一杯の力で左ボディを打ち、足を踏ん張ってガードするロマチェンコの顔面を狙って右。
一瞬顔面がお留守になるが、そんなことを言っている場合じゃない。
1発1発を全力で打ち込むウォータース。まさしく玉砕覚悟の勝負に出たラウンドである。
「ウォータースがソーサにまさかのドロー!! S・フェザー級転向初戦で連勝ストップ。今後のキャリアに暗雲?」
だが、一か八かの勝負を賭けたウォータースにもロマチェンコは冷静に対処する。
距離を詰め、至近距離で細かいパンチを打ちながらウォータースの周りをグルグル回る。ガードの間から軽いパンチを当て、ウォータースを軸にアングルを変えて空転させる。
ボディを打つためのスペースが欲しいウォータースはすぐに手が出せなくなる。
再びスピード差を見せつけられ、ガードを堅めて耐える元の木阿弥である。
決死の反撃をわずか1分で攻略され、振り出しに戻されたウォータース。絶望とはこのことを言う。
そして7R。
前のラウンドで一瞬ペースを掴まれかけたことに納得がいかなかったのか、ロマチェンコがさらにギアをアップする。
1分過ぎ、6R同様に間合いを詰め、至近距離で激しくアングルを変えながらパンチの雨を降らせる。
右でウォータースの顔を跳ね上げ、身体を密着させる。
右手でわずかにウォータースの左手を持ち上げ、ボディに一発。
ウォータースの頭が下がったところで右側に回り込み、ガードの外から右。
やられっぱなしのウォータースはロマチェンコの腕を抑えて時間を稼ぐことしかできない。
「ロマチェンコにno masされない選手は誰? 階級を上げても無双は続くの? どこかに勝てる人はいないの?」
レフェリーが両者を分けて試合再開。
ロマチェンコがウォータースをロープ際に追い詰めて左右のフックを連打。
絶えずポジションを変え、腕を抱え込もうとするウォータースに影すら踏ませない。
いや、お前マジメかww
ここまで追い込んでもきっちりやることやりやがってww
そして、終了間際にも再びコーナーでめった打ち。
ロマチェンコの腕を抱え込もうとして、たたらを踏むウォータースの姿が痛々しい。
「ロマチェンコ攻略の糸口見っけ? マリアガボッコボコ。今日も対戦相手をオモチャにして遊ぶ」
うん。このギブアップはしゃーない。
ウォータースはやることを全部やろうとして、その上で何もできずに負けた。
淡白過ぎると言う人もいるかもしれないが、どう見てもここから先は地獄絵図にしかならない。
このギブアップは完全に正解だ。
気持ちが折れたとか、試合を捨てるのが早いとか、そういうことじゃない。
むしろ覚醒したロマチェンコを相手に、よくここまで持ち堪えたと言った方がいい。
また出直そう。
またがんばろうウォータース。
応援してるぞ。
「ウォータースvsロマチェンコ決定ワロタww これで内山vsコラレス再戦確定的か?」
実力的には他の追随を許さないロマチェンコ。だけどボクシング界を背負うスターの素養があるかと言えば……
前回のローマン・マルティネスに続き、ニコラス・ウォータースをも圧倒的な実力差で撃破してみせたロマチェンコ。階級アップによって完全に欠点を解消し、凄みすらを感じさせるほどの強さを見せつけている。
もはや誰が勝てるんだレベルになりつつあるロマチェンコだが、あえて課題を挙げるとすれば「マジメ過ぎる」ところだろうか。
何というか、この選手は本当にマジメである。
あれだけボコボコにしているのに、最後の一歩を踏み込まない。
ウォータースのアッパーを警戒していたのだと思うが、絶対に中間距離で真正面からは打ち合わないという意識を貫き続けるのである。あそこまで追いつめているにも関わらず。
正直、今回の試合はその気になれば5RでKO勝ちできていた試合だと思う。
ただ、その分ウォータースに大逆転を許す可能性も残されており、この選手はそういったリスクを絶対に負わないのだ。
ボクシング界を長年支えたオスカー・デラホーヤを倒し、スーパースターの座を受け継いだマニー・パッキャオ。そして、今度はロマチェンコがパッキャオを倒してその座を奪い、世代交代を果たすことが期待されている。
「パッキャオが復帰戦に快勝!! バルガスに格の違いを見せつけて余裕の判定勝利。次戦? やっぱりアイツしか考えられないだろ」
だが、今のロマチェンコにはパッキャオのように、リスクを冒してハイリターンを得るというポリシーは感じられない。そして、このリスクと引き換えに観客を楽しませる気概というのはデラホーヤにも共通する。
それがいいか悪いかはともかく、こういうのはやはりスーパースターの素養として不可欠なのではないだろうか。
メイウェザーのようなヒール役にしては爽やか過ぎるし、パッキャオやデラホーヤの系譜を継ぐにはやや物足りない。
実力があり過ぎるだけに非常に難しい立ち位置の選手である。
「メイウェザー、やっぱり判定勝ち!! 現役ラストの試合でも挑戦者ベルトに何もさせず」
まあ、リゴンドーよりははるかにいいけどね。