エリスランディ・ララvsフォアマン感想。ムカつくけどすげえ。ララがダーティ、正当両面でフォアマンを圧倒。長谷川穂積の理想型だな【結果】
2017年1月13日(日本時間14日)に、米・フロリダ州にあるハイアリアパーク競馬場で行われたWBA世界S・ウェルター級タイトルマッチ。
同級スーパー王者エリスランディ・ララに、元WBA世界S・ウェルター級王者でランキング10位の挑戦者ユーリ・フォアマンが挑み、4R1分47秒KOでララが5度目の防衛に成功した一戦である。
試合は当初の予想通り、ララの一方的な展開。
接近戦に持ち込みたいフォアマンをララが右1本でコントロールする。
「ジェイコブス大健闘!! ゴロフキンのKO記録をストップ!! でもがんばった止まりかな。倒し方は見えたけど誰ができんの?」
3Rにスリップ気味のダウンを奪われ、劣勢を強いられたフォアマンは4Rに勝負を賭けて前に出る。だが、それを待ち構えていたララの左アッパーがショートでヒットし、2度目のダウン。
何とか立ち上がったものの、足が言うことを効かずにストップ。
珍しく大歓声を受け、高々と左手を挙げるララの姿が印象的だった試合である。
「俺のウィリー・モンローJr.さんキター!! サンダースとのタイトルマッチ。よしお前ら、震えて眠れ」
見事なKO勝利を飾ったララは、試合後のインタビューで「ゴロフキン、カネロと戦う準備はできている。ベストな選手と戦いたい」と宣言。今後のビッグマッチ実現をアピールした。
「恐れ入りましたカネロ。リアム・スミスにあんな勝ち方するか。サウル・アルバレスが9RTKO勝ち」
- 1. すごい試合過ぎて気絶しそうになった。エリスランディ・ララさすがだわ。好きじゃないけど
- 2. ハイパースピードスター、ララに圧倒されたフォアマン。ガチのレジェンドがいかにすごいかを実感させられますね
- 3. できることをすべてやり尽した上で何もできずにフォアマンは負けた。残念だけどララがすご過ぎた
- 4. やっぱりダーティテクニックは「やられる方が悪いです」とララさんが言ってましたよ。プロ同士の壮絶な駆け引きに目を奪われた
- 5. 無駄を削ぎ落した効率重視の究極系。その頂点に君臨するエリスランディ・ララやギジェルモ・リゴンドー
- 6. 長谷川穂積の才能はガチですごかった。アイツはリやっぱりゴンドーになれたよ……
すごい試合過ぎて気絶しそうになった。エリスランディ・ララさすがだわ。好きじゃないけど
最初に申し上げておくと、僕はエリスランディ・ララという選手が好きではない。
理由は「試合がつまらないから」。
これは僕がリゴンドーを大嫌いな理由と共通するのだが、とにかく試合が退屈過ぎる。フルラウンド観るのが苦行で、なおかつ「本人がそれを気にするそぶりも見せないのがムカつく」というのが最大の理由である。
「この試合をわからないヤツはニワカだ!! エリスランディ・ララvsガウシャのハイレベルな駆け引きの末に生まれた芸術的ボクシング」
ただ今回の試合については問答無用ですばらしかった。
すばらしいというか、ちょっと感動してしまった。
ムカつくけど、やっぱりすげえわこの人。
ムカつくけど。
個人的な感情はともかく、この選手がスペシャルである事実は直視せざるを得ない。
エリスランディ・ララ、ナイスファイト。
本当にすごい試合だった。
「カネロ・アルバレスvsチャベスJr.決定! ビバ メヒコ! 大絶賛の時間だあああぁぁぁ!!」
ハイパースピードスター、ララに圧倒されたフォアマン。ガチのレジェンドがいかにすごいかを実感させられますね
試合内容については、申し上げたようにララのワンサイドゲーム。
近づいての打ち合いに持ち込みたいフォアマンをララが右1本でコントロールするという試合である。
「マイキー・ガルシアがズラティカニンにKO勝ち。空中で失神してゆっくり崩れ落ちる衝撃映像。戦慄のカウンター」
左ジャブを出しつつ飛び込むタイミングを測るフォアマンだが、ララのカウンターの脅威にさらされアクションが起こせない。
対するララは、抜群の距離感を活かして射程の一歩外をキープし、フォアマンのジャブにカウンターを合わせる。
「久保隼vsセルメニョ感想。ナイスファイト久保。万全の準備をした上での好試合。え? リゴンドーとやれ?」
うん。
これはアカンね。
格が違う。
早計かとも思ったが、僕がララの勝ちを確信したのが1R1分40秒。フォアマンの左にララがカウンターの右ボディをヒットしたシーンを観て、フォアマンの勝ちはないと思ってしまった。
「ベルチェルト勝っちゃったw バルガスを流血ストップで王座奪還!! 三浦vsベルチェルト最高じゃねえか」
「手を出すとリターンが飛んでくる」という威圧感。
これを相手に感じさせる選手というのはやはりすごい。
スピードやテクニックもそうだが、カウンターの威光で相手を下がらせることができるというのは、これ系の選手の最上級である。
「フランシスコ・バルガスvsミゲール・ベルチェルト予想。豪打のメキシカン対決勃発。ベルチェルトねえ……」
そして、このララの圧力に屈することなくコンビネーションを出し続けた“カネロ”・アルバレスはやっぱりすごいし、そのカネロをカウンターの威光で硬直させたメイウェザーはもっとすごい。
今回の試合の1R目を観て、ガチのレジェンドがいかに途方もないか。それを改めて思い知らされた。
「今さらメイウェザーとパッキャオを語る。アルバレスvsカーン戦を観て、この2人が唯一無二の存在だった」
できることをすべてやり尽した上で何もできずにフォアマンは負けた。残念だけどララがすご過ぎた
なすすべなく敗れ去ったフォアマンだが、動き自体は悪くなかったと思う。
左に回りながら、ララの外側へ回り込む意識はひしひしと伝わってきた。
ララの正面から何とか逃れ、アングルを変えて踏み込むタイミングを探す姿からは、「劣勢の中でも勝利への執念を捨てない」思いが強く感じられた。
「デービスvsベドラサ感想。どうもピンとこない。新スター候補デービスが7RKOでペドラサを一蹴して初奪還」
だが、ララはフォアマンの狙いをすぐに察知。バックステップで距離をとられてしまい、そのつどやり直しを強いられる。
左ジャブからスタートするも、楽々カウンターを合わせられて近づけず。意表をついて右から飛び込むものの、うまく腕を絡められて突破口を見出せず。
相手の能力が自分よりもはるかに上回っていることを認めた上で、できることをすべてやって、さらになすすべがない。
残念だが、フォアマンにとっては妥当な結末だったとしか言いようがない。
すげえわやっぱりエリスランディ・ララ。
オースティン・トラウトとはひと味もふた味も違う。
たぶん僕の好きなジャーマル・チャーロでも歯が立たない。
「チャーロ兄ジャーマルがトラウトを撃破!! フィジカルモンスターが階級屈指のテクニシャンを力技でねじ伏せる!!」
やっぱりダーティテクニックは「やられる方が悪いです」とララさんが言ってましたよ。プロ同士の壮絶な駆け引きに目を奪われた
僕がこの試合のララに特に感動したのは、フォアマンのダーティテクニックへのララの対応である。
「インドンゴがバーンズ討伐を果たして王座統一。おもしれえ試合ww 野生動物のようなインドンゴにビックリ」
正攻法ではとても敵わないと判断したフォアマンは、2Rから盛んにララの足を踏みにきていた。
外側に左足を踏み出しつつ、ララの右足を踏む。手に負えないララの動きを止めるために、反則スレスレのダーティテクニックを仕掛けてきていたのである。
これに対するララのアクションが本当にすごかった。
目を奪われるというか、あれこそガチのプロフェッショナルである。
「フランプトンvsサンタクルス再戦感想。ハイレベル? なの? よくわからなかったな。2-1の判定でフランプトンがキャリア初黒星」
まずフォアマンがララの足を狙い始めたのが2R。
再三足を踏むフォアマンに対し、右手で地面を差し「おい、足を踏んでるぞ」とアピール。残り40秒でのシーンである。
もちろんフォアマンはそんなことは気に止めない。
その後も左に回り込みつつ、積極的にララの足を踏みつける。
そして迎えた3R。
執拗に足への攻撃を繰り返すフォアマンに対し、ララのとった対抗策は「踏み出した足を逆に引っかける」。
「サンダースvsウィリー・モンローJr.とかいうアラサー大男2人のお見合いが36分間続く地獄。俺がリゴンドーを嫌いな理由がコレww」
開始25秒。
踏み出したフォアマンの左足に体重が乗った瞬間を狙い、ララが右膝で押す。バランスを崩したフォアマンはよろけるようにロープ際まで後退。踏み出しのタイミングを測るところからやり直しである。
「アントニオ・オロスコさんが世界チャンピオンになるには? S・ライト級のホープも29歳。2017年が勝負の年」
その後も再三にわたってララの足を踏みつけるフォアマン。
僕が確認できただけでも、3Rだけで4、5回は踏んづけていたと思う。
しかもララは、そのフォアマンの足を毎回離れ際に刈りにきているのである。
ラウンド終盤のダウンがミスジャッジなのは間違いないが、あれももちろん偶然ではない。インサイドに踏み込んだフォアマンの左足を離れ際にララが裏から押し、まるでパンチで倒れたように演出したダウンである。
「一度は警告したぞ? どうなるかはわかってるよな?」
いや、最高過ぎやしませんかね。
「アントニオ・オロスコvsケアンドレ・ギブソン予想。ついに復帰戦キタ!! オロスコさんの栄光への道が再スタート」
恐らくだが、あのダウンによってララの気はある程度済んだのだと思う。
続く4Rではフォアマンの前進を真正面から受け止め、逆に右足をインサイドにねじ込んで肩で押し返す。
最後は狙いすました左のショートアッパーでジ・エンドである。
「うん、お前もういいや。逝ってよし」
感動しますよねマジで。
2016年末の内山高志vsジェスレル・コラレス戦で、コラレスが内山の足を再三踏んだことが話題になっていた。その瞬間を捉えた写真を大々的に載せた検証記事が出ていたと記憶している。
「内山再戦でコラレスに惜敗!! 2-1の判定でリベンジ失敗で引退か? ダイレクトリマッチはボディを効かせる」
だが、僕にはなぜ今さらこんなことを言っているのかまったく理解できなかった。あんなことは日常茶飯事だし、改めてドヤ顔で検証するほどのことか? と思っていた。
そして今回の試合を観て、僕はやっぱりこっちの方が好きだなと実感した次第である。
まあ、考え方は人それぞれですが。
「【閲覧注意】バドゥ・ジャックvsジェームス・デゲール感想。体調整えて気合い入れて観るべし」
無駄を削ぎ落した効率重視の究極系。その頂点に君臨するエリスランディ・ララやギジェルモ・リゴンドー
しかし観るたびに思うのだが、エリスランディ・ララやギジェルモ・リゴンドーのボクシングは本当に見事である。
とことん現実主義を貫くというか、いかに効率的に勝利するかを極限まで突き詰めた形だと思う。
「ヒット率、ヒット数以外のスタッツのお話。リングの広さとか温度とかの表記。見えなかった自分が見えるはず【後編】」
観ているとわかるが、彼らはそれほど激しく動いているわけではない。
基本的には相手の踏み込みに対する反応のみで、超人的な動きを見せるのはほんの一瞬である。
それ以外は抜群の距離感で安全圏をキープし、リターンの威光をチラつかせながら圧力をかけるのである。
「藤本京太郎がジョセフ・パーカーに挑戦か? ヘビー級日本人王者誕生の可能性は?」
そして、この「リターンの威光」というのがキモで、これはやはりフィジカルの強靭さがないと発揮できないものである。
いくらスピードがあっても、相手に「パンチをもらっても問題ない」と判断されればどんどん前に出てこられるし、そもそも強烈なストップ&ゴーを実現するには身体の強さは必須になる。
「ジャレット・ハードvsトラウトが名試合の予感? 勝敗予想がクソ難しいタイトルマッチ。無敗の新鋭にベテランが挑む」
今回の試合でも3、4Rでフォアマンの突進をララが肩を使って受け止めていたが、正面衝突で押し負けないだけのフィジカルというのは「柔よく剛を制す」を実現する上でも必要であることは間違いない。
「ホプキンス引退!! ジョー・スミスにリングアウト負けで伝説に終止符。出がらし状態の51歳がラストマッチで豪快に散る」
さらに言うと、カウンターの威光で相手に圧力をかけることができれば、無駄な体力を使うことなく主導権を握れる。
いわゆる八重樫東やジェスレル・コラレスとは対極のスタイルである。というより、正確には洗練されたスタイルというべきか。
絶えず動き続け、1発1発のマン振りで相手を受け止める八重樫やコラレスのスタイルは観ている分には楽しい。
だが、あれだけ力み返った状態では体力の消耗も激しい。当たり前だが、あんな動きで12Rもつわけがない。
しかも八重樫のように30歳を過ぎれば代謝も落ちるだろうし、あの動きで現役生活終盤を乗り切れるほど世界は甘くない。はず。
「八重樫がサマートレックをパワーで圧倒!! あれ? 肉体改造でもしたか?」
なお現在、エリスランディ・ララは33歳、リゴンドーに至っては36歳。両者ともに、衰える気配はまったくない。
特にララは下半身の怪我さえ気をつければまだまだいける。恐らくあと3、4年はこのレベルを維持できるのではないだろうか。
これはすべてのスポーツに言えることだが、レベルが上がれば上がるほど無駄が削ぎ落されて洗練されるという最たる例である。
「コラレスゥゥウウ〜〜……。カスティジャノスに大苦戦の末ベルトを守る。負傷判定で3度目の防衛成功。負けに近い勝利」
長谷川穂積の才能はガチですごかった。アイツはリやっぱりゴンドーになれたよ……
以前にも申し上げたが、僕は長谷川穂積はリゴンドーやエリスランディ・ララになれる才能があったと思っている。ラストマッチとなったウーゴ・ルイス戦でも、その才能の片鱗は随所に見られた。
「長谷川穂積のベストバウトはあの試合だろ? 壮絶な打撃戦の最中に長谷川を覚醒させ、その後の道すじを決定した7R」
だが、この選手はとにかく理想のヒーロー思考が強過ぎた。
・ラウンドごとのグローブタッチ
・「美しく勝つ」発言
・ローブローや足を踏まれたことへのアピール
・頭が当たるたびごとの大げさなリアクション
「美しく勝つ」のではなく、もう少し「楽して効率的に勝つ」という思考があれば、あの選手はマジでリゴンドーやララのレベルまでいけたのではないだろうか。
今さら言っても仕方ないし、それで人気が出るかは別の話だが。
ちなみにだが、日本人でこの「楽して効率的に勝つ」スタイルに最も近いのはやはり井岡一翔だろう。
引退した選手も含めれば、亀田興毅もそれにあたる。まあ、現役終盤の亀田興毅については劣化が酷過ぎてあまり興味がわかなかったのだが。
だが、井岡一翔は残念ながらフィジカル面が脆弱過ぎる。
抜群の距離感が最大の持ち味ではあるのだが、それを実現するだけのフィジカルが弱い。パワー不足によって、自分の危険地帯にあっさり入られてしまうのである。2016年末のスタンプ・キャットニワット戦でのでダウンもそれが原因だと思っている。
「井岡のボディでスタンプ嘔吐。2016年大みそかも悶絶ボディで安定のKO勝利。唯一無二の伝説()を目指して」
とりあえず、今の日本人で井岡以外にリゴンドーやララのレベルに到達できそうな選手は田中恒成だろうか。
でも、ちょっとイキり過ぎではあるよな……。
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