京口紘人vsタノンサック・シムシー戦を京口紘人本人が自分のYouTubeチャンネルで生配信←僕がこれを「ない」と思う理由【長文】
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WBA世界L・フライ級王者京口紘人の3度目の防衛戦が発表された。
11月3日開催で相手は同級11位のタノンサック・シムシー。会場は大阪・住之江区にある「インテックス大阪」で、キャパ4000人のところを3密を避けるために観客動員は2000人にとどめる。
その他、タノンサック・シムシーの来日が難しくなった場合に備えたリザーブの手配、本来は第三国のメンバーで構成するオフィシャル4人(レフェリーとジャッジ3人)全員に日本人を起用するなど、コロナ禍での開催を目指して準備を進めていくという。
京口紘人、11・3今年国内男子初世界戦はwithコロナ新興行様式…3密避け動員は半数に https://t.co/zetRbb3MmC #スポーツ #sports #ニュース
— スポーツ報知 (@SportsHochi) September 8, 2020
なお今回は地上波の生中継もないため、代替として王者京口紘人のYouTubeチャンネルでの生配信が行われる。試合直前の様子、ラウンド間のセコンドとのやり取りなどをできる限り配信する予定とのこと。
世界タイトルマッチに出場する選手が自身のYouTubeチャンネルで試合を生配信? へえ、こんなことが許されるんだな
先日発表されたWBA世界L・フライ級王者京口紘人の3度目の防衛戦。この試合は地上波などのテレビ中継がないため、代わりとして京口本人が自身のYouTubeチャンネルでの生配信を予定しているとのこと。
表題の通りなのだが、これに対して僕が思ったのが「へえ、こんなことが許されるんだな」という感想。
YouTubeなどのネット配信自体は素晴らしいと思うが、それを試合に出場する選手自身がやっちゃうんだ。みたいな。
何じゃこりゃ?
京口のYouTubeチャンネルでラウンド間のセコンドとのやり取りを生配信って本気で言ってんのか?
相手陣営側に言葉わかるヤツ行かせれば、不正やり放題じゃねえか。
疑う余地をわざわざ自分から作りに行くとか、正気の沙汰とは思えん。
カネロ判定どころじゃないレベルであり得んな。 https://t.co/BWmYRoMZNf
— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) September 9, 2020
あまりの驚き&文字数制限のせいで「不正やり放題」「正気の沙汰」といった強めの言葉を吐いてしまったが、ああ、そうなのねと。
世界王座認定団体が承認し、JBCが公認する“世界一”を決める試合がこんな感じで配信されることに強烈な違和感を覚えている次第である。
フェアさが失われる可能性。やるかやらないかではなく、疑惑が生まれる余地を作り出す
京口紘人vsタノンサック・シムシーのタイトルマッチを京口自身のYouTubeチャンネルで生配信することに僕が「ん?」と思っている理由は、単純にフェアさが損なわれる可能性があるから。
京口のYouTubeチャンネルということは当然スタッフも身内。なので、その気になれば相手の情報を本人に伝えることもできてしまう。
上記の記事内「試合直前の様子やラウンド間のセコンドとのやり取りを配信」という部分を普通に解釈するなら、試合前の相手の控室や試合中のセコンドとのやり取りも京口の身内が撮影すると考えられる。
それこそ練習中に負ったケガや試合中に拳を痛めたりなど、相手陣営が隠したい情報もリアルタイムで知れる可能性が生まれる。そして、その情報をチームで共有して試合を優位に進めることも難しくない。
実際にやるかやらないかではなく、できる状況が生まれる。ここに強烈な違和感があると申し上げている。
ただでさえ格闘技は“疑惑の判定”がつきものの競技である。微妙な判定が出るたびにジャッジの買収や八百長といった根拠のない陰謀論が持ち上がる。
ジャッジ個人の経歴を晒し上げて糾弾したり、王座認定団体との結託を疑ったり。
「おいおい、さすがにやり過ぎじゃねえか?」と思うほどのヒステリックな感情論が飛び出すのも日常茶飯事で、うんざりさせられることも少なくない。
その中で、わざわざ「疑惑が生まれる余地」を自ら作り出すことがスポーツとして健全なのか? という話。
以前、MMA選手の朝倉未来が自身のYouTubeチャンネルで平本蓮とのギャラ付きマッチを提案して話題になったことがあるが、そういう企画モノであれば何も問題はない。当事者同士の合意の上でどんどんやればいい。
【RIZIN】朝倉未来、K-1出身・平本蓮の挑発にギャラ付き”YouTubeマッチ”提案#朝倉未来 #平本蓮 #RIZINhttps://t.co/C2LgNYQzXv
— eFight(イーファイト)格闘技&フィットネス情報 (@efight_twit) April 19, 2020
だが、今回は世界王座認定団体が承認するオフィシャルな試合、曲がりなりにも世界一を決する一戦である。
それを片方の選手の身内が中継するってどうなのよ?
スポーツとして正解なの? と。
個人的にはそこは絶対第三者に任せるべき部分だと思っているのだが。
政府から公共電波の使用を認可された事業者であったり、JBCからライセンスを交付されたプロモーターであったり。
たとえ出場選手と近い関係にあっても、超えてはいけない一線を遵守できる(はずの)、身内とは明確に異なる第三者。
京口試合前日にコロナ陽性で全試合中止←センスのかけらも感じないぞ。タノンサックが気の毒過ぎるし…。つまりダナ・ホワイトは神
まあ、トップクラスの選手から禁止薬物陽性者が次々出たり、前日計量で体重超過した選手が当たり前のようにリングに上がる競技に対して今さら何言ってんの? と言われたらぐうの音も出ないのだが。
それはそれ、これはこれということでね。
その場の空気感、細かい変化などは現場にいてこそ。そして、そういうのはマジでバカにできない
もちろんラウンド間のセコンドとのやり取りなどはテレビ中継のマイクにも拾われているし、ラウンドごとにレポートが入ったりもする。現地観戦をすれば、会場中に響き渡るほどの声量で指示を出すトレーナーにも遭遇する。
正直、ラウンド間のやり取りごときでそんなに神経質になる必要があるの? という意見はその通りだと思う。
だが、その場の空気感や細かい表情の変化など、現場ならではのものも確かに存在する。
昔、世界王者のインタビュー記事で読んだのだが、試合序盤にデモンストレーションとしてフルスイングを見せておくことにはめちゃくちゃ意味があるとのこと。表情のわかりにくい黒人選手も「これをもらったらマズい」とパッと顔色が変わるんだとか。
こういう微妙な心の揺れや警戒心の高まりなどは、恐らく当事者や間近にいる人間にしかわからない。
当然選手自身も感情の乱れを悟られないように平静を装うわけだが、仮にその場に嗅覚の優れた人物がいれば……。そして、その人物が相手陣営の人間だったとしたら……。
アマチュアボクシングのよさを初見の僕が考えてみた。要するにウンコに行く余裕があるかどうかが大きいんだろうな
先日行われたRIZIN22での浅倉カンナvs古瀬美月戦。
試合前の控室がスクリーンに映し出された際、古瀬美月があくびをする姿に浅倉カンナがカチンときたという。
で、その怒りのままに速攻を決め、1R1分35秒TKO勝利という結果に。
【RIZIN】浅倉カンナが本音を告白「カンナ凄いムカついちゃって。もうプッチーンって」https://t.co/2NJJnwN8HY#RIZIN #浅倉カンナ #女子格闘技
— ゴング格闘技 (@GONG_KAKUTOGI) August 25, 2020
正直、あくびなどは生理現象でしかなく、古瀬美月が舐めていたわけではない(と思う)。だが、現実は相手の怒りをモロに買ってしまった上での秒殺KO負けである。
RIZIN22感想。イベント自体はおもしろかった。いろいろふざけたクラウドファンディングだったけど、KO決着量産ってのはいいよね
いや、こういうのってホントにバカにならないですからね。
下記は元メジャーリーガーのイチローの動画。
2009年に行われたWBC(野球の方ね)決勝の韓国戦。同点で迎えた10回表にイチローが放ったセンター前のタイムリーが決勝点となって日本が優勝したわけだが、その際にイチローは塁上であえて感情を出さないように意識したという。
理由は、
「相手にとって何が一番屈辱かを考えた結果がそれだったから」
「いつも通りにしていれば、相手にこいつには敵わないと思わせられるから」
自分の感情をコントロールし、相手に与える情報は極力少なく。
逆に相手の細かい変化を感じ取れるかどうかによって勝敗が決するケースは往々にしてある。
そして、そういう情報をリアルタイムで知ることができれば、必然的に優位に立てることを意味する。
たとえば2017年1月の三浦隆司vsミゲル・ローマン戦。
中盤まで劣勢を強いられていた三浦がラウンド間にセコンドから「ここからは喧嘩だぞ」とハッパをかけられ、次のラウンドからエンジン全開で腕を振って強引にペースを奪い返す。そして、最後は12RKO勝利を飾ったというドラマチックな試合である。
だが、仮にあの瞬間に三浦のコーナー付近にローマン側の人間がいて、三浦の変化をリアルタイムで自陣のスタッフに伝えていたら……。
まったく違う結果が出ていた可能性も……?
状況を鑑みれば理解はする。でも、ありかなしかで言えばやっぱり「なし」かなと
ZoomなどでのWEB会議をやってみるとわかるが、慣れないうちは相手としゃべるタイミングが被りまくる。
要は、飛沫が飛び交う距離で顔を突き合わせるというのは画面越しとは比べ物にならないほどの情報量がある。そして、そこで得られた情報は決してバカにできるものではない。
相手のわずかな変化を選手に伝えることが不正になるかは微妙なところだが、自身のYouTubeチャンネルで生配信するというのはそういうこと。必然的に疑惑の余地を与える要因になると申し上げている。
吉野修一郎vs細川バレンタイン感想。いい試合だったけど、こんな感じかな? と。やっぱり細川バレンタインはちょっと小さかったよね
繰り返しになるが、京口紘人が自身のYouTubeチャンネルで試合を生配信するからといって、陣営がアンフェアな行為をするとは思わない。現在の状況を鑑みると、個人のYouTubeチャンネルを使用するのがベターであることも理解している。
理解はするが、その上でありかなしかで言えば「なし」というのが僕の意見である。
Twitterのフォロワーさんもおっしゃっていたが、登録者数の多いYouTuberのボクシング中継がどんな結果を生むかについてはめちゃくちゃ興味がある。
亀田一家と遭遇する前の内藤大助が世界戦にもかかわらずスポンサーが見つからず、苦労の末にTOKYO MXでの中継を取り付けたという話を聞いたことがあるが、そういう選択肢の限られた時代に比べれば隔世の感がある。
でも、やるなら第三者だよね。
当事者がやっちゃうのはちょっと違うよね。
遠い位置からの定点カメラで撮影するだけならギリOKかな?
まあ、あくまで僕の意見なので「全然問題なし」とおっしゃる方を否定する気はない。
実際には相手陣営ではなく、自陣のラウンド間のやり取りのみを配信するのかもしれないしね。
と、盛大に予防線を張っておく。
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