アンソニー・ジョシュアvsジャーメイン・フランクリン戦が割とおもしろかった。劣化版クリチコって、クリチコのつまらなさを舐めんなよw 粗野な素顔をさらけ出すのは悪くない【結果・感想】
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2023年4月1日(日本時間2日)に英・ロンドンで行われたヘビー級12回戦。前3団体統一王者アンソニー・ジョシュアがジャーメイン・フランクリンと対戦、3-0(118-111、117-111、117-111)の判定で勝利した試合である。
2022年8月にオレクサンドル・ウシクとの再戦に敗れ、キャリア3敗目を喫したアンソニー・ジョシュア。
約7か月半ぶりの再起戦となった今回の相手は戦績21勝1敗14KOのジャーメイン・フランクリン。前戦でディリアン・ホワイトに0-2の僅差判定で敗れた強豪である。
だが僕は例によってリアルタイム視聴はできずに2日遅れで見逃し配信を観ることに。
ところがSNSや掲示板等を漁るとやたらと評判が悪い。
クリンチだらけでつまらない。
睡魔との戦いだった。
ジョシュアのスター性は完全に失われた。
などなど。
2019年6月にアンディ・ルイスJr.に負けて以降、消極的な試合が目立つアンソニー・ジョシュアの悪い部分が凝縮された12Rだったと。
おおう、マジか……。
そんなにダメダメな試合だったんか……。
これは相当気合いを入れないとヤバいかもしれんな。
そんな感じで、睡眠をしっかりとる+食事を腹八分に抑えつつ満を持して視聴を開始した次第である(たかがスポーツ観戦で笑)。
ジョシュア、ワイルダー揃い踏み+フューリーvsウシクもリスケ。唐突なヘビー級出血大サービスにびっくり。でもすまん、僕には“フランシス・ガヌー杯”に見えてしまうのが…
- 1. キャリア最重量のアンソニー・ジョシュア。1R開始直後に「デカっ!」「遅っ!」ってなった
- 2. 試合は割とおもしろかった。酷評の嵐だったけど。クリンチが増えた要因はフランクリンにあったような…
- 3. 消極的なジョシュアの試合運び。劣化版クリチコ? いや、クリチコのつまらなさを舐めんなよ笑
- 4. フランクリンの戦略+ジョシュアの消極さによって意外と打ち合いが増えた。フランクリンはちゃんと強かったよね
- 5. アンディ・ルイスに負けた試合がジョシュアの分岐点。クリチコ戦での主人公感はすごかったのに
- 6. ガードを下げるスタイルに変えたことがよくなかった? 粗野な素顔を隠そうともしないのは人間味があっていい
キャリア最重量のアンソニー・ジョシュア。1R開始直後に「デカっ!」「遅っ!」ってなった
下記によると今回のアンソニー・ジョシュアは前日ウェイトでキャリア最重量の255.4ポンド(約115.8kg)を記録したとのこと。
対するジャーメイン・フランクリンは234.1ポンド(約106.2kg)。前回のディリアン・ホワイト戦から-23ポンド(約10.5kg)軽い体重でリングに上がっている。
Anthony Joshua weighed the heaviest of his career today at 255.4 pounds, nearly 11 pounds more than his rematch vs. Oleksandr Usyk. AJ said he ditched weigh lifting for this camp under Derrick James. Jermaine Franklin weighed 234.1, 23 pounds lighter than https://t.co/OPYjuR9DDV…
— Mike Coppinger (@MikeCoppinger) March 31, 2023
開始直後にジョシュアの異様なデカさと鈍重さに「ああ? どうした? ジョシュア」となり、急いで調べたのが上記の記事である。
ジャーメイン・フランクリンが軽い重量に仕上げた理由はめちゃくちゃわかりやすい。ジョシュアから金星を挙げたアンディ・ルイスJr.同様、スピードと出入りの勝負を目論んでいるのは明白である。
だが、アンソニー・ジョシュアがここまで身体を大きくした意図がよくわからない。
申し上げたように動きの鈍重さは一目瞭然だったし、あれこれ記事を漁ると今回はウェイトトレーニングを止めて食べる量を増やしたとか。
これを肉体改造と呼んでいいのか、もしくは最終形態へ移行する最中なのか。
オレクサンドル・ウシクにスピード負けしてからどんな変化があったのかは不明だが、とにかく「よーわかれへんなコイツ」というのが最初の印象である。
デビン・ヘイニーvsワシル・ロマチェンコは案外ロマチェンコ有利かも? でも応援するのはヘイニー。「ヘイニーよ、お前がNo.1だ…」って言いたい笑
試合は割とおもしろかった。酷評の嵐だったけど。クリンチが増えた要因はフランクリンにあったような…
前置きが長くなったがそろそろ本題に。
試合の感想だが、割とおもしろかった。
「つまらない」「クソ試合」「ジョシュアから輝きが消えた」等、辛辣な感想を山ほど見聞きしていたので相当身構えたのだが、僕としてはそこまででもなく。
睡眠時間、食事制限を経て気合いを入れた割に拍子抜けだったことをお伝えしておく。
万全に備えた分、ギャップが大きかったとも言えるが。
クリンチだらけのクソ試合という話だったので覚悟していたのだが、いや、思ったほどでもないんちゃう?
むしろもみ合いの原因を作っていたのはフランクリンだった気が……。
上体を振りながら踏み込みのタイミングを探し、一気に距離を詰める。
同時にオーバーハンドの右を顔面にねじ込むフランクリンだが、中盤から後半にかけて徐々に手が出なくなる。
恐らくこの選手はアンディ・ルイスほど突貫ファイトに慣れておらず体力の消耗も激しい。序盤に比べて1発目の出がどんどん悪くなっていった。
で、頭から突っ込むシーンが増える→結果としてジョシュアの懐でゴチャゴチャを繰り返す流れに。
序盤は元気いっぱいだが中に入るタイミングが見つからない。
中盤はコツを掴む前に体力の方が厳しくなる。
10Rあたりにようやく作戦がハマって盛り返したものの、ポイント的にはすでに逆転は不可能。
上述の通りジョシュアがクリンチを繰り返したというより、フランクリンの作戦が機能しなかったことが一番の要因に思える。
ダニエル・デュボアはいい選手だった。打倒ウシクのネタは持ってた気がする。ウシクは早い段階でのローブローアピールでレフェリーを味方につけたな
消極的なジョシュアの試合運び。劣化版クリチコ? いや、クリチコのつまらなさを舐めんなよ笑
一方、ジョシュアの消極的な試合運びについては確かにそんな感じ。
常に安全圏に留まり、ジャブを中心に極力相手と正対することを避ける。
1発いいパンチが入っても深追いすることなく“待ち”に徹する。
身長差、リーチ差を活かしたアウトボクシングと言えばその通りだが、キャリア初期の華々しいファイトに比べると物足りさが尋常じゃない。体重アップによる鈍重さも含めて「おおう、あのジョシュアが……」と言われてしまうのも納得である。
また今のジョシュアが“劣化版クリチコ”化しているという感想をいくつか見かけたので試しにクリチコの試合を漁ってみたところ……。
格が違えww
いや、申し訳ない。
アンソニー・ジョシュアも大概だが、はっきり言ってクリチコのつまらなさは次元が違うww
遠間からの攻撃は単発のジャブで終わるジョシュアに対してクリチコはジャブ→右の打ち下ろしが可能。さらにそこからのしかかるようなクリンチで相手の反撃を封じることもできる。
交錯はなるべく一度に限定、打ち合いらしい打ち合いを避けてひたすら「ワンツー→クリンチ→ブレイク」を繰り返す。
この退屈さに比べればアンソニー・ジョシュアの消極的な試合運びなど小指の先ほどですらない笑
ウシクのド根性と巧さがアンソニー・ジョシュアを振り切る。効かされてタジタジになったジョシュアと疲労困憊の中で打ち合ったウシク。勝負どころでの覚悟の差かなぁ
クリンチに関してもジョシュアとクリチコでは練度に大きな差がある。
全体重を預けるように上から覆いかぶさり、相手の体力を奪いながら自分は休憩するのがクリチコの常とう手段だが、アンソニー・ジョシュアの場合はただただ抱きつくのみ。
今回もフランクリンの反撃で終盤タジタジさせられたが、仮にこれがクリチコであれば。徹底したのしかかり作戦で中盤あたりにガス欠を起こさせていたのではないか。
近距離での打ち合いなどもってのほか。
ビッグマンによる支配力という意味ではもはやパーフェクトに近い。
クッソつまらないけど!!
フランクリンの戦略+ジョシュアの消極さによって意外と打ち合いが増えた。フランクリンはちゃんと強かったよね
・初弾は単発のジャブ
・クリンチは腕を絡めるだけでほどかれやすい
・バックステップでスペースを確保しつつ打ち合いに応じることも
塩試合に徹しきれない部分や危なっかしいクリンチ、1発もらうと「きゅぅ~」っと縮こまってしまうメンタル。
アンディ・ルイスなら振りほどいているのでは? と思う場面も散見されたし、クソ試合というほどつまらなくはない(僕は)。フランクリンの戦略と相まってぼちぼち楽しめた次第である笑
てか、ジャーメイン・フランクリンはちゃんと強かったですよね。
21勝1敗14KOの戦績はもちろん、唯一の負け試合でもディリアン・ホワイトに肉薄している。
天敵とも言える“ずんぐり体型の突貫ファイター”を大差判定で退けたアンソニー・ジョシュアは実はそれなりに評価されるべきかもしれない。
違うかもしれない。
アンディ・ルイスに負けた試合がジョシュアの分岐点。クリチコ戦での主人公感はすごかったのに
以前から言っているが、僕はアンソニー・ジョシュアの分岐点は2019年6月にアンディ・ルイスJr.戦だと思っている。
ルイスの突進力に巻き込まれてTKOされたことや、1発もらうと盛大にグラつく打たれ弱さや中盤でゼーハーするスタミナのなさ。、などなど。根幹部分の脆さを自覚させられたことも大きい(気がする)。
その一方でウラジミール・クリチコ戦で見せた主人公感は今思い出してもとんでもない。
KOを量産する派手なファイトにルックスのよさ、受け答えの爽やかさ。
そこに逆境をはねのける底力が加わったのだから、誰もが歴代最高峰のヘビー級のスターが誕生したと思うわけで。
ただ、そこから「デオンティ・ワイルダーとの無敗対決が実現間近でポシャる→単なるつなぎだと思われたアンディ・ルイスJr.に豪快なTKO負けを喫する」という。
僕はジョシュアがあそこでビッグマッチ路線を外れたことにいまだに納得いっていないのだが、大げさでも何でもなくアレはボクシング界全体の損失だったと思う。
ワイルダー、ジョシュア、フューリー、クリチコ。2010年代後半ヘビー級名勝負振り返り。コイツらの直接対決はさぞかし盛り上がったんだろうなぁ()
ガードを下げるスタイルに変えたことがよくなかった? 粗野な素顔を隠そうともしないのは人間味があっていい
下記がアンディ・ルイスVol.1のフル動画だが、改めて振り返るとジョシュアはこの試合でガードを下げるスタイルに変えたことがよくなかったのかもしれない。
左腕を下げ、L字気味の構えでルイスを遠間に釘付けにする。
ジャブの出しやすさを重視して射程に近づけさせない作戦だったと思うが、結果としてこれが停滞を引き起こしたような……。
てか、これってどちらかと言えば器用で柔軟性のある選手がやるヤツだと思うんですけどね。
それこそタイソン・フューリーのように「何でもできるけどややアウトボクサー寄り」みたいなタイプ。
不器用&身体の固いジョシュアは試合中にアドリブを利かせるよりも作戦を忠実に遂行するやり方の方が向いている(と思う)。ファイトスタイルもそれに即したものがいい気がするのだが……。
ワイルダーが稲妻のような右でヘレニウスを1RKO。やっぱりワイルダーは動けてナンボの規格外マンだった。それだけにフューリーの人外っぷりが際立つ
突貫ファイターのアンディ・ルイスを相手に
・ジャブを中心に遠間で勝負する
・1発の鋭さ、攻撃のスムーズさを重視
作戦自体は悪くないとは思うが、代わりに防御のヌルさを差し出したのは完全に失敗だったなと。
まあでも、人間的には嫌いじゃないですけどね。
今回は試合中にギスギスしたり終了直後にフランクリンの頭を小突いて大モメしたりと、これまでのジョシュアには見られなかった姿が散見された。
恐らくオレクサンドル・ウシクVol.2直後のヒステリックな演説で何かが変わったのだと思うが、僕的にはこちらの方が好み。
粗野な素顔を隠そうともせず感情のままに振るまう姿はかつての作り込んだ王子様キャラに比べてはるかに人間味がある。引きつった笑顔で爽やかさを取り繕っていた頃のジョシュアよりも全然いい。
ウシクがジョシュアを翻弄して偉業達成。凄まじい勝利なのはもちろんだけど、ウシクがちっとも僕の視界に入ってこない…。ヘビー級の不純物
そうそう。
「王者は人格者であれ」なんてクソくらえですよ。
下品で野蛮なエゴイストくらいでようやくバランスが取れる。
あまりに行きすぎてぶっ壊れても困るが、ジョシュアには今後もこの路線でお願いしたい笑
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