ジェイソン・モロニーvsアストロラビオ。え? これモロニー勝ったか? ドローすらあり得たような…。アストロラビオの対策がよかった【結果・感想】
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2023年5月13日(日本時間14日)に米・カリフォルニア州で行われたWBO世界バンタム級王座決定戦。同級1位ジェイソン・モロニーと同2位ビンセント・アストロラビオが対戦、2-0(116-112、115-113、114-114)の判定でモロニーが勝利し念願の王座戴冠を果たした一戦である。
2020年に井上尚弥と対戦したジェイソン・モロニーが迎えた王座決定戦。
対戦相手のビンセント・アストロラビロは戦績18勝3敗13KOの強豪で、2022年2月に元2階級制覇王者ギジェルモ・リゴンドーに勝利するなど目下6連勝中の選手である。
ただ、僕はこの試合にはあまりテンションが上がらず。
対戦カードどうこうではなく、実現間近と言われていたジェイソン・モロニーvsノニト・ドネア戦が締結寸前でポシャったことが大きい。
プロモーターの事情で好試合が流れる“いつものボクシング”に完全に不貞腐れていた笑
バーカバーカ、ボクシングのバーカw
ま〜たプロモーター同士の不仲で流れる“いつもの”ヤツな。「統一戦を見据えて今回は見送ったのでは?」って、クロフォードスペンスの顛末を見せられた上でその前向きさは羨ましいよ。
2018年にワイルダージョシュアがポシャって以降、僕の心はすっかり荒んでるw https://t.co/os1J2VCWwo
— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) February 2, 2023
以前にもちょろっと申し上げたようにこの試合の消滅は僕の中での2023年No.1のバッドニュース。
おかげでそれ以降のバンタム級トップ戦線にちっとも興味がわかない。
王座決定戦に出場するモロニーの相手がアストロラビオに決まったと聞いても
「へえ〜、そうなんだ」
「ところで誰そいつ?」
「ああ、リゴンドーに勝ったヤツね」
「そこそこいい選手だった気がするよ」
「どうでもいいけど」
といった感じで完全に聞き流していた。
で、いつの間にか当日を迎え、
そういえばモロニーのタイトルマッチか。
一応観てみるかな。
あまり気乗りはしないけど。
「そのテンションで観戦して何が楽しいんだよw」というくらいの低空飛行だったことを報告させていただく笑
ジェイソン・モロニーが2連続で苦戦。サウル・サンチェスみたいに我慢強くにじり寄るタイプは苦手なんだろうな。やっぱりモロニーvsドネアは観たかったぞ笑
そうか、モロニーの勝ちか。僕はドローかな? とすら思ったけど
まず全体を通しての感想だが、え? これってモロニーの勝ちっすか?
途中までボケーっと観ていたせいで詳しく採点はしていないのだが、実際相当危なかったような……。
それこそ前半の振り分け次第ではアストロラビオの勝ちもあるのでは? というくらい。
もう一度観直せば変わるのかもしれないが、初見の感想としては差はほぼないに等しい。
正直、僕の印象にもっとも近いのは3人目? のジャッジがつけた114-114だったりする。
最終ラウンドを露骨に流す→終了直後に腕を上げて喜びを爆発させたモロニーに「いやお前、そんな余裕なかっただろ」とツッコミを入れてしまったほど。
ジェイソン・モロニーのことは応援しているので戴冠自体は喜ばしいが、今回はガチでギリギリの勝負だったなぁと。
エマヌエル・ロドリゲスがメルビン・ロペスを圧倒、約4年ぶりのIBF王者に。やっぱり差があったよな。できればKOして欲しかったけど
アストロラビオのモロニー対策がよかった。“待ち”のスタイルでモロニーの出入りを封じる
今回、アストロラビオはモロニー対策をかなり念入りに練ってきた印象。
モロニーの特徴は前後左右への動きと絶え間ない出入り。
リングを広く使って左右へのサークルを繰り返し、一瞬のタイミングで踏み込む→近場で連打を浴びせるスタイル。
この出入りで相手を置いてきぼりにして後手に回らせる。
さらに1試合続けてハイペースを維持できるスタミナも兼ね備える。
2018年10月に対戦したエマヌエル・ロドリゲスなどはモロニーの出入りにカウンターが間に合わずに最後まで捕まえることができずにいた。
井上尚弥にはスピード&パワーで粉砕されたものの、その後はジョシュ・アグリアやアストン・パリクテといった強豪を退けるなどトップクラスの実力を証明し続けている。
フルトンvsローマン、モロニーvsパリクテ、ベナビデスvsレミュー。ある程度勝敗予想がしやすかった。気合い十分のモロニーが印象的だったね
もちろんこの試合もモロニーの機動力がアストロラビオを翻弄するだろうと思っていた(テンション激低だったけど)ところ……。
まったくそんなことはなく。
上述の通りアストロラビオの作戦がドンピシャでハマった(特に前半)。
素早い方向転換を繰り返して左右に動くモロニーの正面を外さず、中に入ってきた瞬間に同時打ちのタイミングでカウンターをかぶせる。モロニーが追撃姿勢に入る前に打ち込むことで連打の発動を抑える。
基本は“待ち”のスタイルだが、ジャブでモロニーの出足を止めることも忘れない。
置いてきぼりを食うどころか逆にモロニーがスピードに乗る前に出入りを封じることに成功した。
モロニーもジャブで応戦するが、いまいち当たりが浅く効果的ではない。逆にアストロラビオのジャブで顔面を跳ね上げられ、さらに一歩詰められ連打に巻き込まれてしまう。
おお、すげえなアストロラビオ。
モロニーとの機動力差を序盤であっさり埋めやがった。
これはもしかしたらもしかするんじゃねえか?
申し上げたように序盤はダラけたテンションでボーッと眺めていたのだが、アストロラビオのパフォーマンスに目が覚めた。3Rあたりからようやく真剣に観始めた次第である笑
4Rから変化を加えるモロニー。左回りを中心に遠間で勝負する
一方のモロニーは得意の出入りを封じられたことを受けて4Rから少し動きを変える。
左回りの割り合いを増やし、“待ち”主体のファイトに。
これまでは左回り7、右回り3くらいだったものを左回り9.5、右回り0.5前後の割り合いに移行。動く方向を左に限定し、アストロラビオの右サイドから鋭角にジャブを打ち込んでいく。
これによってアストロラビオは正面を外されるシーンが増え、徐々に左ジャブが機能しなくなる。
さらに抜群のタイミングで返していたカウンターにも遅れが生じ、結果的に被弾が増える。
はっきりとしたダメージこそないものの、このラウンドからペースはモロニーに傾きかけていた。
相手に先に手を出させる→同時打ちのタイミングでカウンターを返すやり方は恐らく負担が相当大きい。
アストロラビオのモロニー対策は確かに素晴らしかったが、ここから失速しそうな匂いをプンプン感じた。
武居由樹がモロニーに勝利、キック出身選手で初の世界王者に。要は「ボクシングは甘くない」勢が他競技のトップ選手のポテンシャルを舐めてたんでしょ
8Rからペースアップし自ら圧力をかけるアストロラビオ。でもどこかで失速するだろと思っていたら…
ところが8Rに入るとアストロラビオがペースを上げる。
それも前のラウンドまでの“待ち”ではなく自らプレッシャーをかける方向で。
遠い間合いで待ち構えるモロニーに対して大股で距離を詰めてジャブ。
間髪入れずにもう一歩前進、腕が届く位置まで入って右、左と重そうなパンチを振るう。
対するモロニーはペースを上げたアストロラビオの馬力に巻き込まれ、そのつど糞詰まり状態でのもみ合いを強いられる。
恐らく純粋なフィジカルではアストロラビオはモロニーを上回る。モロニー本人もあの間合いでの打ち合いは分が悪いと感じていたのではないか。
ただ、アストロラビオがこのペースを最後まで維持できるとは思えず。
どこかで失速する→再びモロニーの時間がくるだろうと思っていたのだが……。
いや、全然落ちねえじゃん笑
アストロラビオさん、ハイカロリーなまま最後まで走り抜けちゃったよ。
正直これはかなり驚きだったというか、アストロラビオの根気強さに僕は少し感動してしまった。
フィリピンの選手は前半型が多く途中から失速するケースが目立つ。性格もやや淡白な印象だったが、この選手はまったくの逆。
ここまで根気強く同じことをやり続ける&途中からスタイルを変える柔軟性も持ち合わせているとは。
ジョン・リエル・カシメロのイメージで眺めていた分、ギャップの大きさに驚かされた。
カシメロの露骨な失速とンギーチュバの健闘。僕はンギーチュバをまた観たい。伊藤雅雪の未知の強豪を引っ張ってくる能力と謎の喧嘩腰がクセになる笑
足場をしっかり決めたスタンスやノシノシと前進する力感、重そうなスイング、などなど。
カシメロというよりむしろノニト・ドネアに近いのかもしれない。
モロニーvsドネア戦がポシャったことがいまだに許せないw しつこいけどずーっと言い続けるよ笑
上述の通り今回ははっきりとモロニーの勝ちとまでは言えないと思っている(僕は)。
結果は結果として尊重するが、どちらかと言えばアストロラビオのがんばりが印象に残った試合である。
衰えたとはいえ、ギジェルモ・リゴンドーを10R追い回した根気を侮ってはいけなかった(別に侮ってはいないけど笑)。
そして、改めてモロニーvsドネア戦がポシャったことが残念すぎる。
今回の試合を観る限りドネアがアストロラビオと同じ“待ち”を選択すればモロニーは相当苦しくなる。
ただ、アストロラビオに比べてドネアはややジャブが少なく左右に動く相手への対応も微妙。
プラスマイナスそれぞれありつつめちゃくちゃおもしろかったと思うのだが。
ノニト・ドネアvsジェイソン・モロニー戦の指令!! 早くも2023年MAXきちゃったよ笑 どっちが勝つかわからん組み合わせ。僕はこの試合のために健康でいることを誓うよw
言っても仕方ないのだが、それでも言いたくなる。
普段はどれだけビッグマッチが流れようが「どうせボクシングだし」と受け入れているのだが、モロニーvsドネア戦だけは……。
いまだに心の中で「ボクシングのクソが!!」と絶叫し続けていることをお伝えする笑
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