井岡は実質負けかな…。ロドリゲスの踏み込みと圧力に大苦戦。勝ちはしたけど衰えも見えたような。判定に物議を醸した時点でアウト【結果・感想】

井岡は実質負けかな…。ロドリゲスの踏み込みと圧力に大苦戦。勝ちはしたけど衰えも見えたような。判定に物議を醸した時点でアウト【結果・感想】

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2021年9月1日、東京・大田区総合体育館で行われたWBO世界S・フライ級タイトルマッチ。同級王者井岡一翔とランキング2位フランシスコ・ロドリゲスJr.が対戦し、3-0(116-112、116-112、116-112)の判定で井岡が勝利。3度目の防衛に成功した一戦である。
 
 
開始のゴングとともに積極的に前に出て圧力をかけるロドリゲス。
対する王者井岡はじっくりと距離をとって待ち構え、ロドリゲスが入ってきたところにボディで迎え打つ。
 
だが、鋭い踏み込みと伸びるパンチを駆使するロドリゲスに井岡はなかなか対応しきれない。
いきなりの右で顔を跳ね上げられ、近場の打ち合いではロドリゲスの猛攻に後退を強いられるシーンも。
 
中盤からペースを取り戻して何とか勝利したものの、内容的には間違いなく苦戦の部類。
新型コロナウイルスの影響でジャッジが全員日本人だったこともあり、ロドリゲスが勝っていたという声も多く聞かれる微妙な結果となった。
 
アムナットさんのベストバウトは井岡一翔戦で間違いない。今振り返っても好きすぎる試合。人生の厳しさを教えたゾウ・シミン戦も捨てがたいけどね
 

井岡が防衛に成功したけど、危ない試合でしたね。公式採点のバラつきを見ると10-10を復活してもいいような…

WBO王者井岡一翔が迎えた3度目の防衛戦。
 
新型コロナウイルスの影響が大きい中で海外選手を招聘しての世界戦。
前回の田中恒成戦後のゴタゴタ。
本番まで1ヶ月を切ってからの正式発表。
直前での無観客開催決定。
 
井岡にとってはボクシング以外の要素が多く、逆にそれが注目度を高めた今回。
結果としては3-0(116-112、116-112、116-112)の判定で3度目の防衛に成功したわけだが……。
 
内容的にはかなり際どかったというか、実際相当危ない試合だった。
視聴後にあれこれと感想を漁ってみたところ、強めの口調でロドリゲス勝利を主張する意見も散見された。
ジャッジ3人が全員日本人だったことも影響してか、不信感を募らせた方も多いようである。
 
 
なお僕は今回、リアルタイムではなく放送終了後に結果を知った状態で視聴したのだが、確かに微妙な試合だった。
 
ボーッと採点した結果は115-113で井岡の勝利。
だが公式の採点表を見ると、同じ116-112でもラウンドによって三者三様バラつきがある。
僕のド素人採点とも乖離している部分が多い。
 
「井岡、ロドリゲスの採点表」
 
特に前半3Rの割れっぷりはあまりに顕著である。
日本人選手に忖度があったなどと言うつもりはないが、ここまで見解が分かれるのはそれだけ難しい試合だった証拠。これならいっそのこと、10-10を復活させるのもアリなんじゃないの? と思ったり。
 

ロドリゲスが井岡をよく研究していた。遠い位置からいきなりの右と近場での強引さ。田中にはない老獪さがあった

具体的な感想だが、今回は挑戦者フランシスコ・ロドリゲスJr.が井岡をよく研究してきていたと思う。
 
遠い位置で対峙し、身体を思い切り伸ばしていきなり右を打ち込む。
これで前手の差し合いをすっ飛ばして一気に距離を詰める。
 
さらに近場では下からアッパーを突き上げることで井岡の前進をストップし、そのまま腕を強振して強引に下がらせる流れ。
 
被弾が増えるのは仕方ない。
カウンターの危険性も大きい。
 
だが、打ち合いの局面では絶対に自分のパンチで締めることで、井岡に得意のコンビネーションを出させないことに成功した。
 
・井岡のパンチが届かない間合いで対峙
・ジャブの差し合いはせずにいきなりの右ストレートで距離を詰める
・近場での打ち合いは必ず自分のパンチで終わる
・クリンチを駆使して井岡にコンビネーションを出させない
 
井岡がもっとも得意とする中間距離での差し合い、近い位置でのテクニック勝負をとことん拒否し、近場の強引なガチャガチャでねじ伏せる作戦。
 
真正面から技術比べを挑んで撃沈させられた田中恒成とは真逆の老獪さである。
 
井岡一翔vs田中恒成。井岡の重ねてきたものの重さが桁違い。ホントに勝ってよかった。黙して語らぬ視聴率大正義時代の最後の生き残り
 

先行逃げ切りの作戦もよかった。ラウンドによって配分を変えていたのがわかったよね

また、ラウンドによって配分を変えていたのもよかった。
 
恐らくだが、今回のロドリゲス陣営の作戦は先行逃げ切り。
前半を全力で突っ走ってリードを奪い、中盤に少し休憩する。で、後半に再びペースを上げて最後は僅差でゴールテープを切る。
だいたいそんな試合運びをイメージしていたのではないか。
 
漠然とした印象だが、
・1〜4Rまでを3-1、あわよくば4-0で突っ走る
・5〜8Rを1-3で乗り切る
・9〜12Rを4-0、最悪でも3-1で締める
ことを想定していた気がする。
 
狙いとしては、117-111から115-113までの判定勝利。
一番低く見積もっても2ポイント差で勝つ流れを考えていたと想像する。
 
 
実際、序盤のロドリゲスはかなり飛ばしていたし、遠間から踏み込んで打ち込む右や近場での強引な打ち合いも機能していた。
 
前回の田中戦では余力を残しながらも序盤を互角の内容で切り抜け、中盤からペースを掴んでみせた井岡だったが、今回は自分の距離で対峙できたシーンはほぼ皆無だった。
 
オスカル・バルデスvsロブソン・コンセイサン感想。コンセイサンの作戦とピーキングの勝利()バルデスはベルチェルト戦をうまく参考にされたかな
 

スタミナが尽きるのが早かったのが…。慣れないことをやったのと隔離、バブルの影響だろうな

だが、惜しかったのはロドリゲスのスタミナが思った以上に早く尽きたこと。
 
文句なしの立ち上がりを見せたものの、4Rには失速。5、6、7とラウンドが進むにつれて序盤の踏み込みが失われていったのが残念だった。
 
また、後半にもう一度エンジンを吹かすも、そこまで回転数が上がらなかったもの痛かった。
申し上げたように9〜12Rを圧倒した上での僅差逃げ切りを想定していたのだと思うが、最後まで走り抜けることはできず。11Rに再びゼーハーゼーハーしてしまった。
 
 
過去の映像を観る限り、ロドリゲスがあそこまで逆ワンツーを多用した試合はない(と思う)。
要するにアレが対井岡用の作戦だったわけで、慣れないことをやったせいで想定以上に早く疲労がきてしまったのだろうと。
もちろん来日後の隔離、バブルでの不自由な調整を強いられたことも影響していたはず。
 
本人が「最後のチャンス」とコメントしていたようにロドリゲスの気合いは相当なものだったし、作戦もうまくいっていた。
 
ただ、最後の最後でコロナ禍での調整の難しさが出てしまったというか。
思ったように前半でアドバンテージが取れなかったことを含め、アウェイの洗礼を受けたと言えるのではないか。
 
アンカハスを吹っ飛ばせ。フェルナンド・マルティネスの殺気に満ちたファイトと顔面が気に入った。この際だから井岡との統一戦を消滅させてやれや笑
 

井岡の動きの悪さに驚いた。ここまで足が動かないとは。これは不調というより衰えなのでは?

そして何より驚いたのが、井岡の動きがめちゃくちゃ悪かったこと。
 
パンチへの反応が遅く、ロドリゲスのいきなりの右にちっとも対応できない。
 
距離を詰められてからの足運びもおかしい。
どっしりと構えて相手と自分の間にしっかりとスペースを確保するのがこの選手の持ち味だが、この試合ではなかなかそうはいかず。
 
踏ん張りがきかないせいでパンチに力が乗らず、カウンターを当ててもロドリゲスの前進を止めることができない。
ロドリゲスの強引な突進にあっさり押し込まれ、フットワークを崩されてたたらを踏むシーンも。
 
「おーっとっと」とよろけながら大慌てで距離を取る井岡など、僕はこれまであまり観た記憶がない。
 
もちろんロドリゲスの作戦が機能していたのもあるとは思うが、近距離の打ち合いで警戒心を植え付けることができなかったのはちょっと意外だった。
 
 
申し上げたようにフランシスコ・ロドリゲスJr.は井岡をよく研究してきていたし、田中恒成にはない老獪さも兼ね備えていた。
 
だが、それでもそこまで手強い相手だったとは思わない。
今回の結果を受けてもう一度過去の映像を漁ってみたが、この試合のロドリゲスがぶっ飛んでいい動きをしていた感じはまったくない。
 
 
そう考えると、やはり井岡の不調の影響が大きかったわけで。
どんな状況でもしっかりとピーキングしてくることが井岡の持ち味というのを踏まえると、これはどうやら下降線に入ったと判断するべき? なのか?


12Rを通して同じ構えを維持できるのもこの選手の特徴なだけに、下半身の衰えは結構致命的かもしれませんね。
 

僕はやっぱりこういう不公平な試合を観るのがしんどい。不平不満を封じるためにも井岡は圧勝以外許されなかった

改めて思ったのが、僕はこういう不公平感満載の試合を観るのにとことん向いていないということ。
 
前回申し上げたようにフランシスコ・ロドリゲスJr.の実力は井岡と比べてやや落ちる。井岡が本来の力を発揮すれば普通に勝てると思っていたし、試合を終えた今でもその考えは変わっていない。
 
井岡一翔がフランシスコ・ロドリゲスと9月に指名戦? でもこれは大丈夫でしょ。荒っぽいファイタータイプじゃ井岡には通用しない
 
さらにロドリゲスが来日後の隔離やバブルでの調整を強いられることを聞き、井岡は圧勝以外許されないと申し上げている。
 
井岡一翔は100%フランシスコ・ロドリゲスに勝つよ。圧勝が至上の試合。やっぱり対人競技は隔離の影響が大きいんだろうな
 
一方、この日の井岡の調子なら、ロドリゲスが通常通りの調整さえできていれば勝てたのでは? とも思っている。
 
それが正しいかどうかはともかく。
ロドリゲスの飲まされた条件があまりに不利だったせいで、まともなテンションで観戦するのが難しかったことをお伝えしておく。
先日の東京オリンピックもそうだが、僕の中ではスポーツ大会としての最低限を下回っているとしか言いようがない。
 
僕が東京オリンピックに興味が持てない3つの理由。開催に美学を感じない。日本の獲得メダル数の最多更新が成功の最低条件だろうな
 
ジャッジが全員日本人だった件もそう。
試合後に相手側やファンからケチがつくのは明らかだったわけで。
 
「井岡に判定負けのロドリゲスは裁定に不満「レフェリーが仕事をしてくれていたら勝てていた」」
 
そういった不平不満を封じるためにも今回の井岡は圧勝以外許されない、わずかな苦戦すらしちゃダメだと喚き散らした次第である。
 
つまり、判定に物議を醸した時点で実質井岡の負けと言っても過言ではない(それは言い過ぎか?)。
 
 
てか、3人とも116-112というのがマズかったですよね。
贔屓や不正といった話ではなく、あまりにも“ちょうどいい”“それっぽい”ラインだったのがねw
 
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