アムナットさんのベストバウトは井岡一翔戦で間違いない。今振り返っても好きすぎる試合。人生の厳しさを教えたゾウ・シミン戦も捨てがたいけどね【感想】

アムナットさんのベストバウトは井岡一翔戦で間違いない。今振り返っても好きすぎる試合。人生の厳しさを教えたゾウ・シミン戦も捨てがたいけどね【感想】

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先日、米・フロリダ州でカルロス・アリエタとのS・フェザー級10回戦を制したルイス・レイナルド・ヌネスがアムナット・ルエンロエンっぽくて僕の好みだとお伝えしたばかり。
 
ヌネスvsアリエタの全勝対決が好きすぎる件。“無敗のプエルトリカン”のフレーズに惹かれて観てみたらヌネスがめちゃ好みだった笑
 
相手の出鼻をくじくジャブ、打ち終わりのカウンター、上体の柔軟さとクリンチ、フットワークを駆使して芯を外しまくる老獪さ、などなど。
 
一見するとまったく強そうではないのだが、とにかくヌルヌルとしてやりにくいタイプ。
正攻法で勝負をかけるカルロス・アリエタをまったく寄せ付けずに10RTKO勝利を挙げた試合運びにめちゃくちゃテンションが上がった。
 
と同時に、僕がアムナット・ルエンロエンのことが大のお気に入りだったことを思い出し、印象深い井岡一翔との対戦を再視聴してみた次第である。
 
 
というわけで、今回は2014年5月に大阪府立体育会館で行われたIBF世界フライ級タイトルマッチ、アムナット・ルエンロエンvs井岡一翔戦を久しぶりに観た感想を言っていきたいと思う。
 
 
ちなみに“過去の試合振り返りシリーズ”(シリーズ化した覚えはない)については、直近では1995年のWBA世界ミドル級タイトルマッチ、竹原慎二vsホルヘ・カストロ戦がある。
 
竹原慎二vsホルヘ・カストロ初視聴。昔のボクシングのアングラ感と竹原の接近戦での強さ。てか、この貫禄で23歳なの!?
 
この試合の竹原が23歳だったと知って目ん玉が飛び出しました笑
 

八重樫東との統一戦をクリアした井岡はフライ級初戦でいきなりタイトルマッチ。アムナットのことはまったく知らなかった

まず、この試合の何となくの情報は下記。
 
・2014年5月時点でアムナットは34歳
・井岡は2012年6月に八重樫東とのミニマム級統一戦に勝利
・L・フライ級初戦で世界タイトル戴冠、3度の防衛ののちフライ級へ進出
・フライ級初戦でアムナットの世界王座に挑戦
・アムナットにはアマチュア時代に敗戦している
 
その他、WBA世界L・フライ級スーパー王者(当時)のローマン・ゴンサレスとの対戦指令を回避したことがファンのひんしゅくを買い、そこから長年に渡って「井岡はロマゴンから逃げた」と言われ続ける羽目に。
 
ただ、L・フライ級での井岡の戦績は4勝3KOと文句のつけようがない。ロマゴン戦が実現しなかったことを除けば八重樫戦の勢いのまま2階級目を駆け抜けたと言えるのではないか。
 
3階級目となるこの試合も、相手のアムナットは12戦で5KOの34歳。アマチュア時代に敗れているとはいえ14戦全勝9KOの井岡にとっては通過点のはずだった……。
 
 
なお、僕自身は王者アムナットのことはまったく知らず。
井岡に関しても八重樫戦の印象が強かったくらいで特別注目していたわけではない。この試合も「まあ、井岡が普通に勝つんじゃないの?」と軽〜いテンションで観始めた経緯がある。
 
2021年、僕のベストバウトTOP10。コロナの影響で注目試合が中止になったり観戦熱が減退もしたけれど、私は元気です()第10〜6位まで発表
 

僕はやっぱりアムナットさんのことが大好きw 井岡はフライ級にまだ適応しきれてなかったよな

実際の試合の感想だが、改めてアムナットさんはすげえなと。
 
うん。
僕はやっぱりアムナットさんのことが大好きである。
 
それを再認識するとともに、この試合はアムナットにとってのベストバウトと言ってよさそう。
 
アマチュア上がりのスター気取りに人生の厳しさを教えたという意味では2015年3月のゾウ・シミン戦も捨てがたいが、日本の井岡一翔を完封? したインパクトを考えればやはりこっちだろうと。
 
 
そして、井岡にとってはフライ級1戦目でぶつかる相手としてアムナットはあまりに難敵すぎた。
 
ジャブを起点に得意の距離に入ろうとするも、前手の左に阻まれなかなか近づけない。
強引に前に出れば左を引っ掛けてサイドに回られたり、ガードの間からアッパーを通されたり。
 
中間距離でボディ、顔面へとつなぐいつものコンビネーションが機能せず、ヌルヌルとしのがれたまま序盤5Rが経過する。
 
 
リング上で対峙した両者を比べると井岡の方が一回り小さく力感も足りない。2021年末の福永亮次戦と比較すれば線の細さは一目瞭然である。
 
L・フライ級ではジャブで相手をのけ反らせる→グイッと前に出てコンビネーションを浴びせるのが勝ちパターンだったはずが、パワー不足のせいもあって射程に立ち入るまでにいちいち難儀させられる。
 
2015年4月のファン・カルロス・レベコ戦も微妙な勝利だったことを考えると、何だかんだでフライ級に適応するまでには1年半ほどかかった気がする。
 
井岡一翔vs井上尚弥戦実現の可能性を考える。井岡に勝ち目があったとすればあそこかな? でも、あの頃の叩かれ方は異常だったよね
 

アムナットの老獪さ、ダーティさがたまらん。多彩な左を駆使した前半とクリンチ多用の後半

階級の壁にぶつかった井岡はもちろんだが、それ以上に目を引いたのがアムナットの老獪さ。
 
ダラっと下げた左を鞭のようにしならせ、スピーディなジャブで井岡の前進を寸断。ガッチリ固めたガードの間からアッパーを通し、打ち終わりを狙ってカウンターのフックを顔面に。
 
また、井岡が様子見をすればサッとスイッチ。右でガードの外側を軽く叩き、わずかに開いた真ん中から左のアッパーをスパッと打ち込む。
 
カウンター、一瞬のスピード、前手の左の多彩さ。
キワキワの部分でアムナットは常に井岡を一歩上回る。
 
 
そして、6Rからは一転してダーティなファイトに切り替える。
前半よりもジャブを減らし、動き出しを狙って1発顔面にヒット。井岡の連打が発動する寸前に自ら前に出て肩をぶつけ、そのまま腕を絡めて動きを封じる。
 
34歳のアムナットが全力で動けるのはせいぜい5、6Rまで。後半はまともに勝負するよりクリンチを多用して相手に力を出させないやり方にシフトした方が効率的なのは明白である。
 
8、9、10Rあたりのクリンチなんかめちゃくちゃ露骨でしたからね笑
完全に肩からタックルにいっていたし、井岡のイライラは手に取るように伝わってきた。「またかよお前」と言わんばかりにブレークをかけるレフェリーの表情も印象的だった。
 

性格の悪さはホントに大事よね。イライラした井岡はドツボにはまっていく

リング上で繰り広げられるのは、3人のうち2人がイライラを隠そうともしない異様な光景。
アムナットがそこから首投げに行くか? というタイミングもあったものの、さすがに自重していたのもおもしろかった笑
 
注意を受けるたびにアムナットは申し訳なさそうな表情でグローブタッチを要求する。
だが、5秒後には何ごともなかったようにダーティファイトに身を投じる。
 
全力を出せばスピーディな打ち合いもできるが、あえてそれはやらない。
 
なぜなら疲れるから。
ダーティに時間を稼いだ方がずっと楽だから。
 
こういう性格の悪さ、勝つためには手段を選ばない狡猾さはマジで僕好み。バーナード・ホプキンスにも通じる「勝てばいいんでしょ」精神はたまらないものがある。
 
伝説のロイ・ジョーンズvsバーナード・ホプキンス感想。初めてちゃんと観たけどクソつまんねえなこの試合w さすがはホプキンスだわ
 
その結果、イライラと焦りで冷静さを欠いた井岡はさらにドツボにはまっていく。
序盤こそサイドに動いてアングルを変えながら攻める場所を探していたものの、後半以降はひたすら直線的に距離を詰めるだけ。ボディに見せパンチを打つこともなく、単なるヘッドハンターと化す。
 
 
多彩な左とカウンターを駆使してペースを掴んだ前半5R。
6R以降は動き出しの1発狙いとクリンチでとにかく相手に力を出させない作戦にシフト。
 
自分の体力のなさを自覚し、井岡の若さを目いっぱい利用した試合運びはまさしく名人芸と呼ぶにふさわしい笑。
 
 
あとはアレか。
ゲストの香川照之氏のテンションが高すぎて「#香川うるさい」がTwitterのトレンドになってたのも笑ったよねw
WOWOWエキサイトマッチにちょいちょい出演していたのを知っている人にはいつもの香川照之だったと思うが、地上波で普通に観たい人にとっては刺激が強すぎましたねw
 

アムナットさんのキャリアの濃さ。僕は各方面から嫌われるアムナットさんが大好きです笑

32歳でプロデビュー、34歳で初戴冠という遅咲きのアムナットさんだが、王座戴冠前後のキャリアは結構すごい。
 
2014年1月:ロッキー・フェンテス
2014年5月:井岡一翔
2014年9月:マックウィリアム・アローヨ
2015年3月:ゾウ・シミン
2105年6月:ジョン・リエル・カシメロ
 
わずか1年半でこのメンツ、この濃さはヤバいでしょ。
 
あの頃のカシメロは“やんちゃだけど苦労人”的なポジションで、どちらかと言えば反則スレスレのダーティファイトを得意とするアムナットの方がヒールだった記憶がある。
 
そして、各方面から嫌われまくるアムナットさんが僕は大好きである笑
 
 
ついでに言うと、井岡一翔を攻略するにはああいうクリンチを多用するやり方が有効なのだと思う。
判定に物議を醸した2021年9月のフランシスコ・ロドリゲスJr.戦もそうだが、頭や肩が当たってもいいからガツガツ前に出て井岡に距離感を発揮させないことが重要。
 
井岡は実質負けかな…。ロドリゲスの踏み込みと圧力に大苦戦。勝ちはしたけど衰えも見えたような。判定に物議を醸した時点でアウト
 
思いっきり離れるか、思いっきりくっつくか。
どちらかに振り切った極端な作戦で間合いをぶっ壊しにいくというか。
 
福永亮次のように中間距離で勝負すると井岡のペースに飲まれてしまうのでね。
 
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