井上尚弥がペッチバンボーンに10RKO勝ち!! 井上が何者なのかがいまだに謎…。すごいのはわかるんだが。ロマゴン戦は厳しい?【結果】
2016年9月4日に神奈川県にあるスカイアリーナ座間で行われたWBO世界S・フライ級タイトルマッチ。同級王者井上尚弥がランキング1位の挑戦者ペッチバンボーン・ゴーキャットジムと対戦し、10R3分3秒TKO勝ちで3度目の防衛に成功した。
「井上vs河野予想!! ペッチバンボーン最強説を覆せ。モンスター井上の実力を証明する試合」
挑戦者のペッチバンボーンは目下16連勝中と勢いに乗る強豪。井上は序盤からジャブを中心に試合の主導権を握るが、ガードが高くタフな挑戦者に10Rまで粘られる。
6Rにローブローのアピールをした際に攻め込まれるなど、一瞬ヒヤッとするシーンがあったものの、最後は力の差を見せつけてKO勝利を飾る。
「井上拓真がタパレスに挑戦!! って、何を焦ってるんだ拓真さん」
これで防衛を3度にのばした井上陣営の大橋会長は、試合後のインタビューで9月10日(日本時間11日)に米・ロサンゼルスで行われるロマゴンvsクアドラス戦を井上とともに視察することを明言。
「ロマゴンvsクアドラス? クアドラスに勝ち目あるか? 判定までいけば上出来でしょ」
モンスター井上vsPFP No.1ローマン・ゴンサレス。いよいよファンの期待するビッグカード実現か。
また身体大きくなったか? 井上の攻撃力は本当に凄まじい
井上KO勝利。
だけど内容的には微妙?
今回の試合の感想を簡潔に言うと、
「井上が技術力を見せようと思ったけど、うまくいかなくて結局力技でなぎ倒した」
といった感じだろうか。
初回、リング中央で対峙した両者を観た際に思ったのが、
「井上デケえな」
いや、井上これまでにも増してデカくねえか?
また肩周りが一回りゴツくなったように見えるが。
聞くところによると、今回の減量はかなり過酷だったとのことで、この階級でもそろそろ厳しくなってきているということなのだろうか。
「言うほどいい試合かこれ? 長谷川穂積がウーゴ・ルイスから王座奪取!! すまん長谷川、あんまり感動せんかった」
そして、攻撃力は相変わらず凄まじい。
以前にも言った覚えがあるが、この選手の前に出る馬力、1発1発の破壊力とスピードは本当に常人離れしている。攻撃面だけで見れば、マジでロマゴンやロマチェンコに比肩するほどではないかと思う。回転数が上がったときの迫力なら、それこそPFP No.1なのではないだろうか。
下半身を始めとしたフィジカルははっきり言ってロマゴンの比ではない。
「井上尚弥の強さ、すごさを考える。カルモナ戦の予想? KO勝ちでいいんじゃないの?」
ペッチバンボーンはやっぱりいい選手だった。それでも井上とのフィジカル差は歴然だったけど
対する挑戦者のペッチバンボーンだが、やはり思った通りのいい選手だった。
スムーズなコンビネーションに加え、必要以上に動かないディフェンス。
僕はこの選手の過去の試合を観た際、ガードの間を打たれることが多く防御が甘いタイプなのかと思っていた。
「レイ・バルガスがムニョスに勝利し、また一歩王座へ近づく。でも見た目ほど圧勝じゃなかったな」
だが今回の試合を観ると、どうやら反撃の姿勢を崩さないためにあえてオーバーなアクションを抑えているのではないかと思うようになった。
井上のスピーディな連打に対応し、得意のコンビネーションのきっかけとなるジャブをスムーズに出すために常にパンチを出せる姿勢をキープする。いわゆる攻防兼備を実現するための被弾というヤツだろうか。
解説陣や実況が盛んに「タフな挑戦者だ」と連呼していたが、それはちょっと違うような気がするのだが、どうだろうか。
「名前で損してるぞペッチバンボーン。そんなに悪い選手じゃないような…」
「ペッチバンボーン」という名前の印象もあってか、完全に安パイの挑戦者に認定されていたが、実際は文句なしの強敵だったと思う。
ただ、それでも井上尚弥と比べればその差は段違いである。
個体能力というか、両者の持っているポテンシャルには雲泥の差がある。スピード、パワー両面において、ペッチバンボーンと井上のスペック差は歴然としていた。
加えて階級アップ後1年も経たずに地獄の減量を強いられるほどの体躯。まるで2階級下の選手と対峙しているような印象だった。
そして、それだけのフィジカルの差、スピードとパワーで圧倒しながらのあの試合である。
「怪物ロマゴンも人間だった? クアドラスを判定で下して4階級制覇達成!! キャリア最大の苦戦」
試合開始直後から盛んに出すジャブはヒット数こそ多いが、ペッチバンボーンの前進を止めることはできず。ロープ際に詰められたところでギアを入れ替え、パワーとスピードで強引にリング中央まで押し返す。
パワフルな超絶コンビネーションは随所に見せてはいたが、これではちょっと厳しいと言わざるを得ないのではないだろうか。
テクニックで翻弄しようとした結果がこの試合なら、井岡スタイルを手に入れるのは難しいか?
僕は以前の記事で「井上尚弥は井岡一翔のスタイルを踏襲すればいい」「井上のフィジカルに井岡の攻防兼備のスタイルが加われば鬼に金棒ではないか」と申し上げている。
「井上尚弥が拳を痛めないために? 井岡スタイルに変更すればいいんじゃない?」
現状の井上はあり余るパワーをそのまま相手にぶつけている状態。間合いを詰めて「いっせーのせ」で同時にパンチを出し、パワーとスピード差を活かして先に当てる。そこから一気呵成に攻め込んでねじ伏せる。
これを強化版辰吉丈一郎と申し上げたのだが、要は本能のままに相手をなぎ倒すスタイルである。
「エストラーダがタブゴンを一蹴!! S・フライで準備万端か。井上尚弥、ロマゴンをパワフルに蹴散らす?」
そして、このスタイルは非常に燃費が悪く、拳も痛めやすい。あれだけのフィジカルがあるのだから、もう少し落ち着いた試合運びをすればいい。全力を出す場面はここぞのときにのみ限定すれば、より効率的になるのではないか。
もっとも参考になるのが井岡一翔のスタイルではないかと申し上げた次第である。
だが、どうやらそれは難しいのではないかと思い始めている。
今回の試合、確かにジャブを多用して左から組み立てようという意識は見られた。拳の怪我のこともあるのだと思うが、これまでのように超人的なフィジカルでなぎ倒すパワフルなスタイルから脱却しようという思いはひしひしと伝わってきた。
ただ、その結果が今回の試合である。
解説陣からは「すばらしい」「安定感抜群」と絶賛の声が飛んでいたのだが、本当にそうなのだろうか。
あの序盤のジャブ多用、後半のアウトボクシングを含め、あれを「引き出しの多さ」と表現することにどうも違和感があるのである。
むしろ、できもしないことをやろうとして不格好になっているという印象が強いのだが。
付け焼刃というか、慣れないことを無理矢理やらされてる感というか。それが却って辰吉感を強めてしまっている気がするのである。
そして「やっぱり無理。俺にはこんなのできん」と、開き直ったのが10R。ペッチバンボーンの疲弊を見抜いてフィジカルのゴリ押しに切り替えた。そういうことだったのではないだろうか。
「技術ではペッチバンボーンのはるかに上をいっていた」という人もいるのだが、僕にはそこまでには思えない。井上尚弥という選手が何者なのかがいまいち掴みきれない部分である。
「井上vs河野感想。モンスター井上がタフボーイ河野に勝利。これが井上尚弥。ロマゴンだろうが関係ない」
結局は原点回帰。井上の最大の持ち味は比類なきパワーとスピード。できないことをやる必要もないのかも
僕はこれまで井上に対して「井岡スタイルを身につけろ」「今のやり方は燃費が悪すぎる」「ゴリゴリこられると苦戦するんじゃないか」などあれこれ言ってきたが、正直そういうのは全部なしにしていいのではないかと思い始めている。
前半はジャブ中心で体力を温存し、7、8割の力でポイントをリードしておく。そして後半のどこかでパワーを爆発させる瞬間をうかがう。
恐らく井上が模索しているのはこういう試合運びなのだと思う。だが、拳のケガが様式美となっている現状ではそれも難しい。試合のどこかでアウトボクシングに切り替えるラウンドを挟む必要がある。
「井上がカルモナに大差判定で勝利!! 意外と苦戦? 拳を痛めて攻撃力が半減」
ご存知の通り、井上の身体能力やフィジカル面はずば抜けている。なので、このスタイルのままでもそうそう負けることはないだろう。
僕は常々言っているようにフィジカル至上主義である。技術云々、試合の組み立て云々は圧倒的な個体能力の前では無力。井上尚弥はまさしくそれを地でいく選手である。
ただ、ロマゴンは別だ。
対ロマゴン戦を想定した場合、今のままで勝つのは難しいと言わざるを得ない。
あんな左の連打でロマゴンは止まらないし、あのキース・サーマンのようなフットワークでロマゴンの追い足から逃げられるとも思えない。
サクッとロープに詰められてコンビネーション地獄に巻き込まれるのが関の山だろう。自慢のフィジカルを発揮する前に懐に入られてジ・エンドである。
「リカルド・ロドリゲスっていい選手だと思う。井上尚弥の苦手なタイプかも? 米国からのオファーがあるってホントかね」
井上がロマゴンに勝つにはやっぱりフィジカルでの圧倒。前半のゴリ押ししかないんじゃないか
つまり、井上が勝機を見出すとしたら前半。
試合開始直後から持ち前のフィジカルを最高値で発動させるしかない。
とにかく前半、体力が満タンなうちにこれまで通りのゴリ押しラッシュを仕掛けて、拳を痛める前に一か八かの1発を叩き込む。
最初のラッシュでロマゴンをグラつかせて、そのままパワーとスピードにものを言わせてねじ伏せるのである。
アウトボクシング?
ペース配分?
関係ない。
拳を痛めようが中盤体力切れを起こそうが知ったこっちゃない。
勝負は2Rまで。
そこまでにすべてを賭けて、ダメだったらごめんなさい。
拳を痛めない方法を考えるのではなく、拳を痛める前に倒す。
以上!!
そして、そのためにはどれだけ減量がキツかろうが、何としてもS・フライ級に留まらなくてはならない。ガリッガリのフラッフラでもいいから意地でも計量をクリアし、翌日に豪快にリバウンドする。ロマゴンとの体格差をさらに大きくして、パワー面のアドバンテージをより強大にするのだ。
正直、今の井上がロマゴンに勝つにはそのくらいしか方法がないような気がする。
ん?
今回は試合前に腰を痛めていた?
まともにスパーリングができなかった?
もしかしたら拳も試合前からおかしかった?
知るか。
ロマゴンは円形脱毛症が出るほどの半病人状態でアローヨに圧勝してるぞ。
「ロマゴン、アローヨを大差判定で退ける!! 半病人のゴンサレスにアローヨは歯が立たず」
ちなみに年末はコンセプシオンとの統一戦を考えているとのことで、これまた厳しい試合になりそうである。
とはいえ、今回のペッチバンボーンといい弟の井上拓真といい、大橋ジムのマッチメークのハード路線はガチですね。時期尚早かどうかは別にして、その部分だけは文句を言われる筋合いはないような気がする。
まあ、僕個人としてはコンセプシオンには河野公平にリベンジしてもらいたいのだが。
「河野惜敗!! 激闘の末、コンセプシオンに敗れる。引退なんかするなよ?」
あとアレだわ。
試合中にローブローのアピールするのってマジでガッカリすんだよね。
その後に怒りのラッシュを見せてたけど、たぶん拳痛めたのもあのときだよな?