フューリーがガヌーにダウンを奪われ辛勝。競技のトップがポッと出のMMA選手に大苦戦って。自分の土俵に立たせた時点で言い訳はできないんだよ【結果・感想】

フューリーがガヌーにダウンを奪われ辛勝。競技のトップがポッと出のMMA選手に大苦戦って。自分の土俵に立たせた時点で言い訳はできないんだよ【結果・感想】

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2023年10月28日(日本時間29日)にサウジアラビアで行われたヘビー級10回戦。WBC同級王者タイソン・フューリーと元UFC王者フランシス・ガヌーの一戦は2-1(96-93、95-94、94-95)の判定でフューリーが勝利。3Rにダウンを奪われるなど大苦戦を強いられたフューリーがギリギリで逃げ切った試合である。
 
 
ボクシングの現役ヘビー級世界王者と元UFC王者によるボクシングマッチ。
ちょいちょい話題になっていたのでそれなりに興味があったのだが、開始が早朝だったせいでPPV購入は見送ることにした。
 
 
そもそもこれは勝負どうこうの試合じゃない。
フューリーとガヌーという、ボクシングとMMAにおける怪物2人が同じリングで向かい合う。その光景を楽しむもの。
 
ただ、わざわざ睡眠時間を削ってまで観るほどか? と聞かれると……。
散々迷った挙句、今回は購入をやめることに。
 
 
ところが当日何気なくニュースを眺めたところ、ガヌーがフューリーをダウンさせたと。しかも勝敗はスプリット判定、見ようによってはガヌーの勝ちだったかも? とのこと。
 
これはえらいこっちゃということで、急遽PPVを購入した次第である。
 
ワイルダーコケたよ。パーカーに3-0の判定負け。手が出ない、反応が遅れる、足が動かない。2016年のアルツール・スピルカ戦と違いすぎて哀しくなる
 

ガヌーはフューリーの天敵だった。フューリーの長所を片っ端から消された

まず試合の感想としては、単純におもしろかった&ガヌーはフューリーにとって天敵タイプだったなぁと。
 
やたらと長い腕を高く掲げた構え、右手は攻撃のとき以外は極力顎から外さない。
 
そして持ち前の馬力でじりじり前進、フューリーのジャブをものともせずに距離を詰めていく。
 
試合を観直してみると、1、2、3Rとガヌーが段階的に間合いを詰めているのがわかる。
最初はフューリーのステップに追いつけなかったのがだんだんと身体に当たり始め、さらにロープを背負わせるシーンも目立つように。
 
で、テンパったフューリーが苦し紛れに出したワンツーに左のカウンターをドカン。
MMAの試合でよく見るぶん回しのフックでフューリーの側頭部を捉えて値千金のダウンを奪う。
 
その後もサウスポーとオーソドックスを使い分けつつ持ち前のフィジカルを活かしてフューリーを追い詰めていく。表情にこそ疲れが見えるが、動き自体に変化はない。スタミナ面でも十分以上に渡り合えていた。
 
 
長い腕を前に掲げた構えで急所を遠ざけ、MMA仕込みの組み力でクリンチを機能させない。
で、これまたMMA仕込みの踏み込みスピードでフューリーのバックステップにあっさりと追いつく。
 
さらにサウスポーにスイッチすることで前手のジャブを封じ、なおかつ真正面から左ストレートが当たる位置をキープする。
 
 
強フィジカルと長い腕によってジャブを封じる。
MMA仕込みの組み力でクリンチを機能させない。
左構え+踏み込みスピードでフットワークに追いつく。
 
これまでフューリーがもっとも得意としてきた部分をガヌーは片っ端から潰してみせた。
 
デカくて動ける(左構え+踏み込みスピードで相殺)上にジャブが強力(左構え、リーチの長さで相殺)、当て勘のよさ(強フィジカル、タフネスで相殺)がフューリーの持ち味だが、ガヌーはその長所をまるっと消してしまった。
 
ワイルダー陥落! フューリーがヘビー級史上最強でいいよな。オラが町のごんたくれは“パーフェクトな2秒”を与えられず
 

サウスポーのガヌーはオット・ワリンの強化バージョンだったな

過去、フューリーがもっとも苦戦した相手は(ワイルダー以外では)2019年9月のオット・ワリンだと思っているが、あの選手もブロック&リターン型のサウスポー。
再三コーナーを背負わされて連打を浴びるフューリーの姿が印象に残っている。
 
そして今回のフランシス・ガヌーはオット・ワリンにはない踏み込みスピード、フィジカル、組み際の強さを兼ね備えていた。
 
フューリーにとってはまさに天敵だった&フランシス・ガヌーの怪物っぷりに驚くばかりである笑
 

フューリーはこんな醜態を晒すならやらん方がマシ。競技のトップ選手がポッと出の新人に大苦戦などあり得ない

試合についてはこんな感じだが、ここからは全体の感想を。
 
とりあえずフューリーはあり得ない
こんな醜態を晒すなら異種格闘技戦などやらない方がマシ、大人しくボクシングの王様をやってろという話である。
 
 
僕は基本的に「ボクシングがNo.1」「キング・オブ・スポーツ」「崇高で高尚な〜」みたいな意見が大嫌い。
どの競技にも良し悪しはあるし、ボクシングを上げるために他競技を見下すなどもってのほかである。
 
また、競技人口とトップに到達する困難さは決して比例しないとも思っている。
 
競技レベルの向上と競技人口は関係ない。前田日明パイセンの「素質のある海外の選手を連れてくれば日本人選手と一緒に成長できる」説はその通りだとオモタ
 
一時期「MMAとボクシングではどちらがトップを取るのが難しいか」みたいな不毛な議論にバカどもが熱を上げていたが、くだらないことこの上ない。
 
競技人口を増やして裾野を広げることと現トップ層のレベルを引き上げることはまったく別の話。そこはアメフトが参考になる。
 
 
ただ、今回のようにトップ選手が他競技の選手に自分のルールで苦戦(負けに等しい)するのはシャレにならん。
 
しかもフューリーは歴代ヘビー級No.1とも言われる選手である。
 
ボクシングの象徴でもあるヘビー級のオールタイムベストが0勝0敗のMMA選手にダウンを奪われ大苦戦を強いられた。
これはちょっととんでもないというか、ヤバいにもほどがある。
 
舐めていたとかパフォーマンスが悪すぎたとか、調整不足だった等の言い訳はいっさい通用しない。
ボクシング初挑戦のMMA選手を自分の土俵に立たせている時点で圧勝以外はすべてアウトと断言させていただく。
 
タイソン・フューリーにディリアン・ホワイトが勝てるわけねえだろ。誰が興味あんねんこの試合→き、9万人!? 実況の絶叫が聞こえて気づいたらホワイトが大の字で寝てた
 
マジな話、今回は比較対象が見当たらないレベルの大惨事。
冗談抜きで一番重要な立場の人間が一番やってはダメなことをやりやがった。
 
たとえ本人にそのつもりがなくてもフューリーはそれだけのものを背負っている。


一応言っておくと、僕は「ボクシングが舐められる」とか「歴史の違いガー」とかはどうでもいい。
そうではなく、どんな競技だろうとトップ選手がポッと出の新人(未経験)に苦戦したらヤバいでしょ? という話。
 
アメフトのRBや野球の盗塁王みたいな快速自慢でも、いきなり100mで金メダルを取ることはあり得ない。
いくら競技に親和性があろうがさすがに初戦でトップ選手に勝つ(肉薄する)とは誰も思わない。
 
そのあり得ないことが起きたと言っている。
 

メイウェザーのリスクマネジメントを見習え。金を稼ぐにも知性がいる笑

繰り返しになるが、醜態を晒すなら異種格闘技戦などやるな。
もしやるなら絶対に勝て。苦戦すらするな。ケチョンケチョンに圧勝しろ。
 
金儲けも結構だが、少しは自分の立場を考えやがれ笑
 
極論、今回に関しては負けた方がよほど清々しい。
散々情けない姿を見せた上でスプリット判定による延命などお話にならない。
 
豪快に負ければ少しは笑えたのに。
 
 
その辺、フロイド・メイウェザーはさすがのリスクマネジメントですよね。
コナー・マクレガー戦以降、絶対にエキシビジョンしかやらないし、あくまで「自分は一線を退いた」「客を楽しませる」スタンスを貫いている。
 
つまり、金を稼ぐにも知性がいる笑
 
低調なメイウェザーvsローガン・ポール。想定していた中で一番無難で望まない展開だった。メイウェザーにとっても痛い結果じゃない?
 

実はヘビー級はもっとも事故が起きやすい階級かも? 軽量級の方が技術と経験が要求される?

現実的な話をすると、実はヘビー級はもっとも事故が起きやすい階級なのかも? と思っている。
散々「ヘビー級はボクシングの象徴」と連呼しておいてアレだが。
 
当たり前だが身体が大きくなればなるほど1発の威力、フィジカルは増す。
それこそヘビー級は馬力がものを言う階級で、よく言えば迫力満点、悪く言えば大味な側面がある。
 
 
身体はデカいが鈍重、スローな打ち合いからの1発KOというのが従来のヘビー級(言い過ぎか?)だったが、タイソン・フューリーはそれを根底から覆した。
 
2mオーバーの身長で自在に動き回る機動力、12Rを走り抜けるスタミナ、大きな身体を活かしたクリンチ等、すべてが規格外だった。
 
ただ、上述の通りフランシス・ガヌーはフューリーの長所をことごとく消す特徴の持ち主。
技術にも抜きん出ていたはずのフューリーを純粋な馬力勝負の土俵に引きずり下ろしてしまった。
 
 
要するにフューリーの技術、リングIQも「大味なヘビー級の中では」抜きん出ているだけだった? のかも?
 
 
そう考えると、むしろ軽量級の方がアップセットは起きにくい?
 
軽量級は1発ではなかなか倒せない分、細かい技術が要求される。
より多くのパンチを当てるための駆け引き、長いラウンドを走り抜けるペース配分等、重量級に比べて求められる要素が多い。
 
それだけに一朝一夕ではない、積み重ねた経験値や潜った修羅場の数がモノを言う(気がする)。
 
アンソニー・ジョシュアvsフランシス・ガヌー。ジョシュアが戻ってきやがったw ここにきてフューリーvsジョシュアが楽しみになるとは。ヘビー3強時代の締めくくり
 
まあ、軽量級の異種格闘技戦にはいまいち食指が動きませんが。
そもそもMMAの主流がフライ級(56.7kg)までだしね。
 
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