サンキュー、ダン・カーター。2年間夢を見せてくれたことに感謝。神戸製鋼には“夢は金で買える”ことを教えてもらった

サンキュー、ダン・カーター。2年間夢を見せてくれたことに感謝。神戸製鋼には“夢は金で買える”ことを教えてもらった
ラグビー、トップリーグの神戸製鋼コベルコスティーラーズに所属するダン・カーターが2020年4月17日に自身のインスタグラムを更新し、今シーズン限りの退団を示唆した。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で今季のTLは第6節で終了、日本選手権の中止も決定している。
母国に帰国したダン・カーターはインスタグラムに「過去2シーズン、これまでで最も楽しいラグビーにしてくれたことに感謝します」とつづり神戸退団を示唆した。

オールブラックスで長年SOを務め、2015年W杯では母国の2連覇に貢献したダン・カーターは国際統括団体「ワールドラグビー」の最優秀選手賞を3度受賞するなど「世界最高のSO」と言われた名選手。
神戸製鋼には2018-2019年シーズンより2年契約で入団し、今季が2年目となっていた。

ダン・カーターが神戸製鋼退団示唆…。せめてもう1シーズン! と思ってたけど、無理っぽいな

ダン・カーターの神戸製鋼退団が決定的とのこと。

まだ正式発表はされていないが、諸々の記事を読む限りほぼ決まりと言ってもよさそうな雰囲気である。
 
僕もダン・カーターの去就についてはあれこれと耳に入ってきていて、新型コロナウイルス感染拡大の影響で尻切れとんぼのままいなくなるのはめちゃくちゃ悲しいと思っていたところ。何とかもう1シーズンいてくれないかなぁと願っていたのだが、どうやらそれはかないそうにない。
 
引退or現役続行は何とも言えないが、下記を見るとラグビーへの情熱はまだ残っている? のかな?

パーカーの下に着ているのが神戸製鋼ではなくオールブラックスのジャージであることが嬉しくもあり、若干寂しくもあるわけだがww
 

ダン・カーターには感謝しかない。2017年の神戸入団にはクソほど興奮したし、デビュー戦の盛り上がりも印象的だった

とは言え、現役最終盤に日本に来てくれたダン・カーターには感謝の思いしかない。

 
 
僕がダン・カーターの神戸入りの噂を初めて聞いたのは2017年。
2017年と言えば、2015年W杯での日本代表の快進撃も忘れ去られ、ラグビーが元の“微妙に人気のないマニア向けのスポーツ”に戻っていた時期。一部のファンから「2年後にW杯が自国開催されるのに、ちっとも盛り上がらない」「ラグビー協会はいったい何してんの?」といった不満が聞かれるくらいで、2015年時の熱狂は完全に下火となっていた。
 
その中でダン・カーターの神戸製鋼入りの正式発表を聞き、目ん玉が飛び出るほど驚いた次第である。
 
はあ?
ダン・カーターが日本に来るだ?
 
いや、冗談だろお前。

って、ガチじゃねえか……!!
 
これはもう、今まで日本に来た助っ人の中でも文句なしのNo.1。
2012年にオールブラックスのソニー・ビル・ウィリアムズがパナソニック入りしたことが話題になったが、今回はその比ではない。
 
ダン・カーターが神戸製鋼入りするってよ!! 世界的なプレイヤーが観たければラグビートップリーグがおススメだよん
 
野球で言えば、MLBデトロイト・タイガースのミゲル・カブレラが阪神タイガース入りするようなもん。
バスケで言えば、LAレイカーズのコービー・ブライアントが現役ラストシーズンをアルバルク東京でプレーするようなもん。
サッカーで言えば、2006年W杯でMVPを獲得したジネディーヌ・ジダンが翌シーズンにヴィッセル神戸入りするようなもん。
 
その上、神戸製鋼のスクラムハーフであるアンドリュー・エリスはダン・カーターの元相棒。これはユベントス時代のジダンとデル・ピエロのコンビ復活と同レベルと言っても過言ではない。
 
などなど。
ダン・カーターの神戸製鋼入りに興奮が収まらなかった記憶がある。
 
 
そして、2018年9月14日に東京・秩父宮ラグビー場で行われた神戸製鋼コベルコスティーラーズvsサントリーサンゴリアス戦でダン・カーターが日本デビューを果たすわけだが、この日の観衆は17,576人。
1試合の平均観客数が5,000人前後(2018年)のトップリーグにおいては快挙と言える数字で、間違いなくダン・カーターは「名前で客を呼べる選手」だった。
 
歴史的土曜日。神戸製鋼ダン・カーターがデビュー。サントリーのマット・ギタウとマッチアップ
 

神戸製鋼の金満補強にワクワクしたよね。“夢は金で買える”ことを教えてくれた

ダン・カーター効果もあり、2018-2019年シーズンに18年ぶり10度目の優勝を決めた神戸製鋼。W杯で活躍した選手を多数補強し、万全の体制で2020年シーズンを迎えるわけだが……。

 
実際にシーズンが始まってみると、もうケタ外れに強い。
僕のようなクソニワカw でも一目でわかるくらい、神戸製鋼の充実度は群を抜いていた。

外側のディフェンスは若干ちぐはぐな面も見られたが、球際の強さや接点の強さは文句なしに日本一。冗談でも何でもなく、この強さは世界三指に入るのでは? と思わせるほどのパフォーマンスで相手ディフェンスを圧倒していた。
 
 
これを言うと怒られるのかもしれないが、金はマジで努力を超える
 
チームを強くしたければ高い金を出していい選手をいっぱい連れてくればいい。そうすりゃ勝手に強くなるから。
大金を出して連れてきた選手がチームにフィットしないのであれば、その倍額を出してそいつの友達を連れてくりゃいい。
 
元も子もない話ではあるが、ラグビーは残酷なくらいの金満スポーツである。冗談抜きで夢は金で買える
 
そういう意味でも、同じく大補強に成功して他チームを圧倒していたパナソニック ワイルドナイツとの頂上決戦は珠玉の一戦。何としても実現してほしい試合だった。

 
パナソニックがトヨタに苦戦しつつも後半に突き放す。続々退団が発表されてるけど、もう少しまともなシーズンで観たかった
 

第3節の神戸製鋼vsサントリー戦は今シーズンのベストゲーム。圧倒的個人技の神戸製鋼の試合は超おもしろい

ちなみにだが、短い2020年シーズンの中で僕がベストゲームだったと思うのが下記の試合。

2020年1月26日に兵庫県にあるノエビアスタジアム神戸で行われたトップリーグ第3節。神戸製鋼コベルコスティーラーズvsサントリーサンゴリアスの一戦である。
 
開始4分でサントリーのSO田村がトライを挙げていきなり先制すると、10分過ぎに神戸製鋼がダン・カーターのPGで3点を返す。
 
その後、24分に山中のトライ+ゴールキックで神戸製鋼が追いついて以降、順調にリードを広げるものの、後半21分にサントリーがトライを奪って32-21と追い上げる。
33分にもサントリーが追加のトライを決めて35-26と9点差まで追いすがるが、反撃はそこまで。終了間際にマット・ギタウがPGを入れて35-29の6点差としたところで試合終了のホイッスルが鳴る。
 
 
内側の突進で相手ディフェンスを崩し、テビタ・リー、中鶴隆彰、松島幸太朗の高速バックスリーを走らせるサントリーに対し、接点での強さと個々の能力の高さでごり押しする神戸製鋼。
 
規律を大事にするサントリーのディフェンスをブロディ・レタリック、トム・フランクリン、タウムア・ナエアタといった神戸製鋼の強力FW陣が粉砕する構図。
 
チームワークvs圧倒的個人技というか、サントリーの粘りに苦戦しながらも神戸製鋼が王者の強さを発揮した好試合。神戸製鋼vsパナソニックという頂上決戦がすっ飛んでしまった中で、僕が知る限りではもっとも白熱した一戦である。

 
TJ・ペレナラカッチョよすぎて気絶しそうw マピンピさんはこのチームには合わないとあれほど…。NTTドコモvsキヤノン現地観戦感想
 

何より神戸製鋼の試合は純粋におもしろい
 
張碩煥、中島イシレリなどの代表級FWが縦突破を図り、ブロディ・レタリックやタウムア・ナエアタの第3列がゲインを切る。
倒れながらのオフロードパスでボールをつなぎ、フォローに入ったパックマンやラファエレがさらに前へ。密集からSH日和佐が供給したパスをFBの山中が直で受け、そのまま一気に裏に出る。
 
ワンタッチでのパスやオフロードパスがポンポン繋がり、ボールを持ったアンダーソン・フレイザーが外側を一気に駆け抜ける。
いわゆる“銀河系軍団”の見せるド派手なプレー。誰が観ても楽しめるわかりやすいラグビーというヤツ。
 
 
そして、そのスター集団を牽引するSOダン・カーターがまた……。
 
正確なキックに流れるようなパス、広い視野。
圧倒的なスピードや強烈な突進力があるわけではなく、一見するとそこまで突出したプレイヤーには思えない。
 
だが、なぜかベストな位置でボールを受け、パスを出すタイミングも絶妙。ボディコントロールもうまく、密集サイドでのタックルもしょっちゅう。
恐らく走るコースや相手との間合いの取り方に長けているのだと思うが、個人技の突出した選手が多い神戸製鋼にとっては相性抜群のSOと言える。
 
てか、ホントに楽しそうだったもんな。
いろんなヤツが次々に顔を出すから、どんどんスペースに放ってチャンスを演出できる。自分でゲインを切るシーンもあったし、本人的にもやりやすいチームだったのだと思う。
 
ついでに言うと、No.8のタウムア・ナエアタはぜひとも日本代表にほしい。

 

新型コロナウイルスの騒動が1日でも早く収まることを願う。そしてダン・カーターにはもう少しだけ現役を…

しかし、改めて今回の新型コロナウイルス感染拡大はいろいろなものを奪っていった。

 
ダン・カーターのように今シーズンが集大成だった選手やクビor現役続行のボーダーライン上にいる選手、今がまさに絶頂期の選手。各々立場は違えど、現役生活の短いスポーツ選手にとっては大きな痛手としか言いようがない。
 
例えばプロ野球、読売巨人ジャイアンツに所属する中島裕之はクビor現役続行の瀬戸際にいる選手で、オープン戦で好調を維持していただけにシーズンの開幕延期はマジでシャレになっていない。
 
バスケットのBリーグ、レバンガ北海道の折茂武彦は今期限りでの引退を表明してシーズンに臨んだものの、コロナの影響でシーズンは第28節で中止。引退試合も行われることなく現役生活に幕を閉じている。
 
その他、僕の知らないところでもあれこれと影響は出ているはずで、観る側にとってもプレーする側にとっても切ない話である。
 
 
スポーツに限らず、何とか1日でも早くこの状況が収まり平穏な日常が戻ることを願う。
 
そして、できることならダン・カーターにはもう少しだけ現役を……。
 
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