黒田200勝(まだ)、広島カープ優勝(する?)、引退(しない?)を受けて、黒田博樹の現状を考える(球種、球速)

黒田200勝(まだ)、広島カープ優勝(する?)、引退(しない?)を受けて、黒田博樹の現状を考える(球種、球速)

ニューヨーク高層ビル
日米通算200勝に後1勝と王手をかけている広島カープの黒田博樹投手が2016年7月6日、中日戦に先発。6回3失点と粘投したが、リードを許した状況で降板したために勝ち星はつかず。200勝は次回以降に持ち越しとなった。

2008年にメジャーリーグに挑戦し、7年間で5年連続2桁勝利を含む通算79勝を挙げ、2015年に古巣に復帰した男気エース黒田。ここまで14試合89イニングを投げて6勝4敗 防御率2.73と及第点の成績を残している。

2016年7月7日現在、2位に9ゲーム差をつけて首位独走中の広島カープだが、果たしてこのまま優勝することができるのだろうか。また、200勝と優勝を同時に達成した黒田は今シーズン限りで引退してしまうのだろうか。

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今回は黒田博樹の200勝(まだだけど)を受けて、現状この男にどのくらいの力が残っているのか、本当に今シーズンで引退してしまうのかについて考えていきたいと思う。

黒田のことを応援しているので多少偏った内容になるかもしれませんが、ご了承いただければありがたいです。
 
「「リスペクト」を便利使いするお前らに言いたいことがある。「マスコミ対応もプロフェッショナルの仕事だ」ってのはお前らマスコミ側が言うことじゃないから」
 

黒田は今シーズンで引退してしまうのか? してしまうんじゃないか?

まずこれは完全に個人的見解だが、黒田が今シーズンで引退する可能性はかなり高いと思う。
理由は先日も申し上げたとおり、広島カープ優勝によって現役生活に満足するのではないかという予想である。

ことあるごとに「辛い、キツい」と口にする黒田だが、実際身体の調子はあまりよくないのだろう。今シーズンは故障離脱もしているし、慢性的な肩の痛みや昨シーズン痛めた足首も状態が悪いと聞く。メジャーで毎シーズン200イニングをこなしていた頃に比べれば耐久力は落ちていることは間違いない。

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なので、このタイミングでチームが優勝を果たせば、今シーズン限りで現役生活にピリオドを打ってもまったく不思議はない。黒田を応援している人間としては複雑ではあるが、これはある程度仕方ない。

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ここ数年で軒並み球速が落ちている黒田。衰えが見えるのは明らかである

次に現状の黒田の力について。
これはもう、球速を見れば一目瞭然である。
 
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ヤンキース初年度の2012年。
33試合16勝11敗 防御率3.32 219.2投球回というメジャーでのキャリアハイの成績を残したシーズンである。
このときのストレートの平均球速が、4シーム:92.14マイル(約148.3km)、2シーム:92.58マイル(約148.9km)。

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そして広島カープに復帰して2年目の2016年シーズンでは、4シーム:141.2km、2シーム:142.1km。実に6、7km前後も球速が低下しているのである。

もちろんマウンドの違いやボールの違い、計測方法等、考えられる要因はある。だが、さすがにここまで一気に落ちるのというのはそれだけでは考えにくい。やはり、力自体が落ちたと考えるのが妥当ではないだろうか。

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ちなみにだが、2016年シーズンからメジャーに移籍した前田健太投手の平均球速は以下である。

2015年→4シーム:144.4km 2シーム:143.9km
2016年→4シーム:90.75マイル(146.0km)2シーム:90.36マイル(145.4km)

往々にして1.5km前後の球速アップ。日米のボールとマウンドの違いによる影響はだいたいこんな感じなのだろう。

これはやはり、純粋に黒田の球速が落ちていると考えるべきではないだろうか。球速が出なくなっているのか、あえて出そうとしていないのかはわからないが。

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スプリットの多投でごまかしていたメジャー最終年。球威の低下を補うのはあれが限界だった

投球内容を調べていくと、さらに黒田の現状が見えてくる。
まずキャリアハイを記録した2012年の投球内容だが、スプリットの割合が14.38%となっている。ところが、メジャーでのラストイヤーとなった2014年には28.22%と倍増しているのである。防御率も3.32→3.71と悪化し、勝ち星も11と伸びていない。

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理由は本当に単純な話である。
球威が落ちたために直球系で勝負ができなくなり、落ちる球に頼らざるを得なくなった。カウント球にも勝負球にもスプリットを多投してごまかしていた。つまりはそういうことである。 
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実際の映像を見れば一目瞭然だ。

↓キャリアハイを記録した2012年のピッチング

↓2013年前半戦の飛ばしまくっていた頃のピッチング

もうキレッキレである。ツーシームの曲がり方などは完全におかしい。

↓そして、これがメジャーラストイヤーの2014年シーズンのピッチング

↓さらにカープでの2016年シーズンのピッチング

特に2016年は全体的に球速が落ち、変化球の曲がりがドロンとしていることがわかると思う。

スライダーの精度も落ちている。鋭さが低下して打ちやすい軌道になっている

黒田の現状を計る上で最もわかりやすいのは直球系の球速。それに加えて、スライダーの精度が微妙に落ちていることも見逃せない点だ。

ご存知の通り、2012年〜2013年前半の黒田はメジャーでもトップクラスの先発投手である。
4シームは高めに伸び、2シームはグニャグニャと曲がり、スプリットは加速しながら落ちる。その上毎シーズン200イニングを消化する頑丈さ。援護率が悪く勝利数はあまり多くないものの、20億の年俸を提示されるレベルの投手であることは疑う余地がない。

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2011年以前と2012、2013年の投球内容を比較するとわかるのだが、このシーズンを境に黒田のスライダーは変化量が小さくなっているのである。
横への変化量を表すHorizontal movementが2010年が+1.80in、2011年が+2.10inであったのに対し、2012年は+1.29in、2013年にいたっては+0.45inとなっている。つまりこのときの黒田のスライダーは、より打者の手元で小さく鋭く曲がっていたのである。

↓以下は2010年の黒田のピッチングだが、このときのスライダーはやや大きく膨らむように外旋回の変化をしていることがわかる。

つまり2012年以降、このスライダーを手元で小さく曲がるように改良した。その結果、これまでよりも打者の芯を外しやすくなり、好成績につながったのである。
 
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右打者には内側にツーシームを見せてスライダーを引っ掛けさせる。左打者には内側のスライダーを見せ球にして外のツーシームとスプリットで芯を外す。これはある意味、黒田の完成形と言えると思う。

そして、2014年くらいから徐々に直球系の球威とスライダーの鋭さに陰りが見られ、現在の状況に落ち着いたということである。

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日本復帰のタイミングは完璧だった。あそこまで神がかった自己プロデュースを見せられちゃカッコいいと言わざるを得ない

200勝に王手をかけている黒田だが、恐らくこのままいくとシーズントータルで10勝7敗 防御率3.00前後に落ち着くのではないかと思う。
この先発3番手的な成績を上出来ととるか、限界が近いととるかは本人次第だが、すでに数年前の爆発的な力は失われていることは間違いない。

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そう考えると、2015年シーズンの日本球界復帰はタイミングとしては本当に絶妙だった。恐らくあのままメジャーに残っていたら軒並み成績を下げていただろうし、掌返しが尋常じゃないニューヨークのファンにも相当叩かれていたはずである。

球威が落ちたといっても、日本であればまだまだ通用する(MLB平均球速:148km、NPB平均球速:141km)力があり、黒田にとってもカープファンにとっても一番いい時期の復帰だったのだろう。

マエケンラストイヤーと新井復帰が重なったこと。メジャーキャンプの日程に合わせたキャンプイン。さらに2016年シーズンの現役続行を思い悩む日々。しかも節目の200勝よりチームの勝利が大事だという姿勢。

「前田健太のピッチングスタイルが見えた? これならMLBでもなんとかやれるんじゃないか?」

何もかもがドラマチックな演出となり、一挙手一投足がファンを感動させる。
自他共に認める優柔不断な性格によって大物感が増幅し、神がかり的な自己プロデュース力を生む。

そしてとどめは広島カープ25年ぶりの優勝を飾っての引退というグランドフィナーレである。

タイミング。
演出。
ドラマ性。

「完璧」以外の言葉が見つからない。

さまざまな意見があるとは思うが、何だかんだでカープ優勝とともに引退するのが一番黒田らしいのではないかという気もしてくる。

マジな話、ここまでカッコつけられちゃったらどうにもならんでしょ。もう「優勝最高!! 黒田最高!!」でいいんじゃないっすか?

余談だが、僕はこの写真を見るたびに黒田がとてつもない選手であることを感じている。

「黒田200勝王手 広島32年ぶり11連勝」

菊池との縮尺がおかしい。

30歳を過ぎて渡米、5年連続2桁勝利、毎シーズン200イニング。さらに41歳でも一線でバリバリやるには、このくらいのガタイが必要なのかなと思ってしまう。

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