カネロvsサンダース感想。カネロの凄さと大観衆の熱気に目を奪われた。同時にボクシングのしょーもなさも山ほど目の当たりにしたよね【結果・感想】
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2021年5月8日(日本時間9日)、米・テキサス州で行われた世界S・ミドル級タイトルマッチ。WBC/WBAスーパー王者サウル・“カネロ”・アルバレスとWBO王者ビリー・ジョー・サンダースが対戦し、8R終了TKOでカネロが勝利。3団体王座統一に成功した一戦である。
開始のゴングとともに高いガードでジリジリプレッシャーをかけるカネロに対し、腕を下げた構えで迎えうつサンダース。
右リードの連打で防御を崩しにかかるものの、カネロの強固なガードはなかなか開かない。
逆に鋭い踏み込みからのボディ、フックのコンビネーションで後退させられてしまう。
序盤はやや動きに硬さが見られたサンダースだが、中盤から徐々にペースアップし得意のフットワークと連打で流れを引き戻す。
ところが序盤のボディが効いたか、7R以降徐々に動きが鈍りまっすぐ下がるシーンが目立ち始める。
そして迎えた8R。
明らかな疲れを見せるサンダースに対し、カネロはさらにギアをアップ。
サンダースのフックにカウンターを合わせると見せかけ、すぐさまアッパーに軌道を変更。頭が下がった瞬間を狙って下からモロに突き上げる。
この1発で右目を負傷したサンダースはラウンド終了後に棄権を申し出て試合終了。
カネロがTKO勝利とともに王座3団体統一を達成した。
カネロが8年7ヶ月ぶりの敗戦。ビボルのジャブとガードを崩せず。“ロッキー・フィールディングの呪い”を解いたビボルに神の祝福を
- 1. 新型コロナウイルスいっさい関係ねえ!! 7万3000人の大観衆がこれまでの鬱憤を爆発させたぞ
- 2. カネロのパフォーマンスが凄すぎた。唯一可能性があると思っていたのがサンダースだったのに
- 3. 得意なカウンターとコンビネーションにブロック&リターンを上乗せしていよいよ手が付けられない。カネロを止めるとしたらやはりアイツ?
- 4. 7万3000人の熱気は壮観だった。やっぱり見世物要素が強い格闘技は観客ありきのイベントだよな
- 5. サンダースが突然リングの広さにゴネだした件。そんなんでいいの? リングの広さって軽くゴネると変わる程度のものなの?
- 6. リングの広さも決めずに長々と何を交渉してんのよ。「試合をしてこそ価値がある」という当たり前を軽んじた結果、ボクシングはYouTuberとご隠居MMAファイターのお戯れの場に…
新型コロナウイルスいっさい関係ねえ!! 7万3000人の大観衆がこれまでの鬱憤を爆発させたぞ
2021年2月のアブニ・イルディリム戦以来、約2ヶ月強という短いスパンでの試合となったサウル・“カネロ”・アルバレス。
WBO王者ビリー・ジョー・サンダースは数年前から対戦の話が持ち上がってはポシャるを繰り返してきた相手で、今回ようやく実現に至った経緯がある。
カネロvsイルディリム、ビックリするくらい何もなかった。蜂の巣にされて3Rノーマス。“特別な選手”には“ふさわしい舞台”がある
しかも会場のAT&Tスタジアムは約7万人超収容の巨大アリーナ。
聞くところによると、室内で行われたスポーツ興行としては歴代1位の観客動員を記録したとか。
テキサス州の代表が新型コロナウイルスの感染拡大を気にしない人間なのは知っていたが、それを差し引いてもこの動員は凄まじい。
カネロ人気に加え、コロナによって押さえつけられていた鬱憤が一気に爆発した印象である。
カネロのパフォーマンスが凄すぎた。唯一可能性があると思っていたのがサンダースだったのに
実際の試合についてだが、この試合のカネロははっきり言って凄すぎた。
僕自身、2018年9月のvsゲンナジー・ゴロフキンVol.2以降、別人レベルで怪物化を続けるカネロに驚かされっぱなしだが、その中でも唯一隙があるとすれば“サウスポーのアウトボクサー”タイプだと思っていた。
で、周辺階級でその可能性がありそうなのが今回のビリー・ジョー・サンダース。
この選手の足と見切り、狡猾さがあれば、今のカネロ相手でもワンチャンスあるのではないか。
何年間も「試合の交渉がスタート→破断」ばかりでいいかげんうんざりしていたものの、試合が正式発表された際はそれなりにテンションも上がったのだが……。
カネロvsサンダース決まる? こんな時だから楽しいことを考えようぜ。フラれまくりのカネロがサンダースに2度目の告白で成就か?
結果としてはまったく歯が立たず。
右リードの連打や左フック等、時おりいいパンチを当てるシーンもあったし、ポイントを奪取したラウンドもいくつかあったと思う。
一見するとまあまあ健闘した試合に思えなくもない。
だが、実際には「カネロのワンサイドゲームでした」というのが僕の率直な感想である。
序盤から高いガードでプレスをかけ、鋭い踏み込みからボディを突き刺すカネロ。
サンダースも細かい連打で対抗するが、1発1発の威力、炸裂音には明らかな差がある。
しかもカネロのガードはただのブロックではなく、頭の位置も一定ではない。
肩周り、首回り、腕その他。身体のすべてが分厚く太い。無造作なパリングだけでも凄まじい迫力を誇る。
圧倒的なフィジカルを活かしてガードの上を打たせ、パンチをはたき落とし、得意のカウンターにつなぐ。
たったの1発でサンダースを萎縮させ、次の瞬間には懐に踏み込んでど真ん中からボディをねじ込んでいるという。
サンダースが何とか流れを変えようとしているのはめちゃくちゃ伝わってきたが、カネロの圧力が凄すぎてどうにもならない。また、あれだけプレッシャーを感じながら動いていれば当然疲労の蓄積も早い。
終始怯えきった表情でリングを動き回る姿はとても同格の王者とは思えないほど。
気の毒な話だが、完全に役者が違いましたとしか言いようがない試合だった。
得意なカウンターとコンビネーションにブロック&リターンを上乗せしていよいよ手が付けられない。カネロを止めるとしたらやはりアイツ?
いや、やってること自体はすげえ普通なんですけどね。
足のある相手を崩すには下から。
得意の右リードをパリングとカウンターで封じる。
カウンターと見切りが持ち味の相手には極力自分からは手を出さず、高いガードでプレッシャーをかける。
もともとカネロのカウンター、コンビネーションの精度は特筆ものだったが、それを維持したままエディ・レイノソ式のブロック&リターンを上乗せしたファイトは本当にとんでもない。
カネロチーム入りした途端に本来の思い切りのよさを失ったルイス・ネリのように、こっちが立てばあっちが立たずのケースもあるだけに。ここまで見事にしっくりくると少しだけ恐怖すらも感じる。
マジな話、唯一可能性があると思っていたビリー・ジョー・サンダースがこの有様ならいよいよ今のカネロは手が付けられない。冗談でも何でもなくL・ヘビー級のアルツール・ベテルビエフとの階級差マッチが現実味を帯びてきたか? という噂も……。
7万3000人の熱気は壮観だった。やっぱり見世物要素が強い格闘技は観客ありきのイベントだよな
また今回は巨大アリーナに7万3000人の観客が詰め掛けたとのこと。
試合中の熱気も凄まじいものがあり、ああいう光景を目の当たり(画面越しだけど)にするとやはり格闘技は観客ありきだと思わされる。
サッカーやラグビー、野球などの球技と違い、格闘技はよくも悪くも見世物の要素が強い。
ガラガラの客席や無観客の会場でどれだけリングアナが声を張り上げても虚しさが残るし、声援のまったくない中で選手がどつき合う姿にも違和感がある。
異様に響きわたるトレーナーの声がより哀愁を漂わせるというか。
もちろん絵面的にも人で埋め尽くされた観客席は壮観そのもの。
小さなリングを取り囲む大観衆の狂気にも近い熱量があってこそ、格闘技イベントの本領と言えるのだろうなぁと。
カネロ凄すぎる。
ビリー・ジョー・サンダース終始怯えとったやんけ。
8Rのアッパーがトドメになったんだろうけど、ありゃ心折れるわ。
ポイントがどうとか以前に役者がちげえっす。あと、この前のUFCもそうだけど、やっぱり格闘技は観客ありきのエンタメだよな。
満員の客席は壮観だった。— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) May 9, 2021
もちろん新型コロナウイルスの感染者数が日本とは比べものにならない中でああいう巨大イベントを開催することが正しいかどうかは別の話である。
ただ今回のカネロvsサンダース戦を観戦するために7万人以上の人間が一箇所に集まり、大興奮の中でイベントが終了した事実は動かしようがない。
ルイス・ネリがフィゲロアに勝つには? パワーで押し負けずに中盤までにKOすることかな。レイノソから離れたのは正解だったと思ふ
サンダースが突然リングの広さにゴネだした件。そんなんでいいの? リングの広さって軽くゴネると変わる程度のものなの?
そしてもう一つ。
試合の4日前にサンダースが突然「リングが狭い」とゴネだした件。
報道によると本人は一辺24フィート(約7.3m)のリングを想定していたものの、現地入りしてみると16フィート〜18フィート(約4.9〜5.5m)の小さいリングが用意されていた。
足を使うスタイルのサンダースにとってリングの狭さは致命的。これが解消されない限り試合拒否も辞さない姿勢を示していたとか。
で、両陣営の協議の末に22フィート(約6.7m)の広さに落ち着いたとのこと。
当日の試合もそこそこ広いリングに見えたので、実際に22フィートのリングだったことは間違いないのだと思う。
だが、それでいいのかと。
お前らいったい何をやっとんねんと。
この件に関しては、個人的に心底呆れ返っている。
それこそカネロの凄まじいまでのパフォーマンス、7万人超えの大規模イベントというインパクトがかき消されるレベルで。
いや、だってそうでしょ。
リングの広さなんて、本来一番最初に決めておくべきものじゃないの?
ファイトマネー、開催場所と日時、レフェリー、ジャッジ、使用グローブに次いで、契約書の6行目くらいに明記するような項目だと思うのだが。
ちょっと笑った。
さすがにこれはサンダースの陽動作戦でしょ。
リングの広さなんて、使用グローブとともに契約書の6行目くらいに明記しとくヤツだろ。
何年間も交渉→破談を繰り返してきたコイツがリングの広さに無頓着なんてあり得ないし、仮に本当だとしたら100%お前が間抜けなんだよw https://t.co/edsd89ITgh
— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) May 5, 2021
もしサンダースがゴネた、リングの広さが事前に決まっていなかったという報道が本当ならガチでお話にならない。
だったら逆に聞くけど、自分ら今まで何年間も何を交渉してたん?
みたいな。
そもそも論として、リングの広さってちょろっとゴネれば変わっちゃう程度のものなの?
アンダーカードに出場する選手は現地に着くまでリングの広さを知らずに練習してるの?
通常はリングの広さや使用グローブなどをあらかじめ把握した上で準備をするもんじゃないの?
メインの選手が「狭い!!」と言えばそれが通るって、普通に考えてすごくないか?
たとえば用意されていた16フィート(約4.9m)のリングが22フィート(約6.7m)に変更されたのであれば、その差は約1.7m。
1.7mと言えば、身長170cmの成人男性の約2.2歩にあたる。
試合の4日前に突然、想定よりも2歩以上リングが広くなるなど正気の沙汰ではない。とてもじゃないが誤差の範囲内などとは言えない。
両陣営の内部事情など知る由もないが、ボクシングってそういうもんなのか?
こんなことがまかり通っていること、そこに言及する人間がいないことに僕はクソほど驚いているのだが。
井岡一翔の尿を自宅の冷蔵庫で保管ってそんなことホントにあるの? SNSで直接罵声を浴びせるのはアウトだよな。相手が誰であれ
リングの広さも決めずに長々と何を交渉してんのよ。「試合をしてこそ価値がある」という当たり前を軽んじた結果、ボクシングはYouTuberとご隠居MMAファイターのお戯れの場に…
先日、アンソニー・ジョシュアとタイソン・フューリーによるヘビー級王座統一戦の交渉が暗礁に乗り上げたという報道が出ていたが、もはや定番過ぎてツッコむ気にもなれない。
フューリー対ジョシュア「暗礁に」 プロモーター明かすhttps://t.co/4Oq93P1dM4
— AFPBB News (@afpbbcom) May 1, 2021
以前にもちょろっと申し上げたようにヘビー級のトップ戦線はデオンティ・ワイルダーとアンソニー・ジョシュアが無敗のうちにやらなければいけなかったし、その勝者がフューリーとの頂上対決に進めばよかっただけの話。本来であれば、2020年に入る前にすべてを終わらせておくべきだったヤツである。
それを今さら「頂上対決!!」「ビッグビジネス!!」と煽られてもこちらは一向にテンションが上がってこない。
で、今回は長々と交渉していた割にリングのサイズすら決めてませんでしただ?
笑わせるなよマジでww
ボブ・アラム「これほど大きな契約だと、サウジ側が詳細な調査を行うには数か月はかかるだろう」
ボブ・アラム「契約は完了したというハーン氏の話はばかげている」
何をほざいてやがる。
ばかげているのはお前らだろ笑わせんな。
「試合をしてこそ価値がある」という当たり前をないがしろにしているうちに、いつの間にかボクシングはYouTuberと隠居したMMAファイターのお戯れの場になってるじゃねえか。
損得勘定ばっかりに脳みそが行き過ぎて「試合をしてこそ価値がある」っていう当たり前をないがしろにしてりゃあ、そら人気も落ちるに決まってる。
Youtuberを起用したりの飛び道具も結構だけど、それ以前にしょーもない要素が多過ぎるんだよな。 https://t.co/0fwNWKXGNN
— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) January 19, 2021
僕自身、YouTuberの起用や派手な演出が悪いとは思わない。
試合を垂れ流すだけのイベントに2万も3万も払わせるのもどうかと思うし、あの無味無臭で無秩序なイベントを「硬派」と呼ぶのは絶対に違うと断言できる。
だが物事にはバランスというものがあり、どんなことでもやり過ぎはよくない。
2020年11月に行われたマイク・タイソンvsロイ・ジョーンズのエキシビジョンで味をしめた「トリラー・ファイト・クラブ」が第2段としてYouTuberのジェイク・ポールと元UFCファイターのベン・アスクレンの一戦をメインに据えたイベントを開催したが、どうやらなかなかのものだったとか。
タイソン起用で成功の「トリラー」第2回興行がボクシングファンから不評だったわけ(杉浦大介) – Y!ニュース https://t.co/IVkY22enRt #boxing #boxingjp
— daisuke sugiura 杉浦大介 (@daisukesugiura) April 22, 2021
・ボクシングの試合よりも有名歌手のライブの方が長い
・実況席には酒とマリファナでラリった解説者
こんなものが正解なわけはないし、“盛り上げるため”などという大義名分が通用するとも思えない。
そして、結局のところ「観たいと思う試合を絶好のタイミングで組む」という大前提を軽んじてビジネスを肥大化させまくった顛末がこれなんじゃないの? と思うわけで。
散々「対戦交渉がスタート→破断」を繰り返してきた分際で、リングの広さすら決めていなかった事実に試合の熱狂がチャラになるくらいイラつかされた次第である。
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