アニメ「うさぎドロップ」感想。在宅時のお供にこういうのを待ってたんだよ。「ダイキチはダイキチでいい」の圧倒的破壊力。りんの可愛さはもはや凶器

アニメ「うさぎドロップ」感想。在宅時のお供にこういうのを待ってたんだよ。「ダイキチはダイキチでいい」の圧倒的破壊力。りんの可愛さはもはや凶器
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アニメ「うさぎドロップ」を観た。
 
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「うさぎドロップ」(2011年7月〜9月)
 
衣料品メーカーに勤める河地大吉は現在30歳。営業職として忙しい日々を過ごしながら独身を謳歌していた。
 
そんなある日、祖父・鹿賀宋一が逝去したことを知らされ、久しぶりに祖父の家に行くことに。
 
 
祖父の家に到着した大吉は玄関先で見知らぬ女の子を見つける。
彼女の名前は「鹿賀りん」。
母親によると、何と宗一の隠し子だという。
 
思いがけぬ事実に驚く大吉だが、親族がりんのことを疎ましく思う空気にもやもやとする。
そして、りんを押し付け合う大人たちの様子にイライラが募り、「すぐにでも受け入れてくれる施設を当たってみよう」という伯父の言葉を聞いた瞬間、我慢が限界に達する。
 
大吉は皆が座るテーブルにつかつかと歩み寄り、テーブルの上に湯呑み茶碗を「ドンッ」と置く。そして、驚く親族たちを尻目に庭で1人佇むりんにひと言。
 
「りん! 俺んち来るか!」
 
 
こうして大吉とりんの奇妙な共同生活がスタートするのである。
 
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最悪だった「東京マグニチュード8.0」の借りを返すために「うさぎドロップ」を選んだ

「うさぎドロップ」

雑誌「FEEL YOUNG」の2005年10月号〜2012年1月号まで連載されていたマンガ作品で、同アニメは2011年7月〜9月までフジテレビ「ノイタミナ」でO.A.されていた。
 
 
先日、同じノイタミナ枠の「東京マグニチュード8.0」についての感想記事を書いたが、その際「このアニメは絶対に今観ちゃダメなヤツ」と申し上げている。
 
今絶対観ちゃダメなアニメ「東京マグニチュード8.0」感想。何コレ最悪。聞いてねえぞ。ヒーローが現れて助けてくれるヤツちゃうんか
 
理由は結末があまりにしんどかったから。
 
もともと僕は「フィクションはわかりやすさこそが至上」だと思っていて、ハッピーエンドが大好きな人間である。
「リアリティ」や「現実を直視する」とか、そんなもんはクソ喰らえ。せっかく観るなら楽しい方がいいに決まってる。
 
特に今は新型コロナウイルス感染拡大によって世間全体がどんよりしている。その状況で救いゼロのあのラストはあり得ない。後味の悪さも尋常じゃない。
評判自体はそこそこいいらしいが、気分を上げるために観た分、落差の大きさに気分はスーパーダークネスである。
 
 
そして、視聴から数日経った今も気分はまったく戻ってこない。
 
アカン。
このままだと無駄にストレスばかり溜まって不健康極まりない。
ただでさえ体調を崩したらダメな時期なのに、これは早急に何とかせな。
 
そんな感じで見つけたのが、今回の「うさぎドロップ」。
ノイタミナ枠の仇はやっぱりノイタミナ枠で返すべきだろ(?)ということで、さっそく観てみた次第である。
 

クッソおもしろいわ「うさぎドロップ」。自粛期間中のお供に最高ですね

結論を申し上げると、クッソおもしろかった

 
破壊力抜群というか、冗談抜きでこれはヤバい。基本は少女マンガで絵柄もかなり繊細なのだがそんなことは関係ない。
 
先日ちょろっと申し上げた通り、視聴後にコミックスを全巻購入してしまったほど。

うん、すごいねコレは。
表題の通りだが、自粛期間中のお供にはうってつけ。
 
独身、既婚、シングルファザー、シングルマザー、片親だけで育った方、祖父や祖母に育てられた方、兄弟や親戚と疎遠の方、その他諸々。どんな境遇の方にも優しい「うさぎドロップ」。老若男女すべてに受け入れられるアニメと断言できる。
 
騙されたと思ってぜひ観ていただきたい。
 

魅力的な登場人物。断言しよう。主人公りんの可愛さはもはや凶器であると

とりあえず、この作品は登場人物のバランスがめちゃくちゃ優れていると思う。

 
育ての親である宋一を失い、1人ぼっちの「りん」。
初登場時は口数も少なく感情表現も希薄。微妙にスカした感じの“よくあるタイプ”のヒロインで、僕も最初は「ああ、この手のヤツね」と思ったことを報告しておく。
 
だがダイキチと暮らすうちに徐々に心を開き始め、表情も豊かになっていく。
自分が作ったおにぎりを「うめえなコレ」と言って食べるダイキチを見てニコッと笑ったり、イチョウの葉を手に取って喜んだり。迎えが遅くなったダイキチの顔を見て喜び、すぐに膨れっ面に戻ったり。
 
アニメ「はじめの一歩」第1期が完璧としか言いようがない。「強いって、何ですか?」「知りたいか。ならば戦ってこい。あの男に勝ってこい」
 
先を歩くダイキチに走り寄り、「手、つながないと危ないんだよ」
食事中に肘をついて考えごとをするダイキチに「肘ついちゃダメなんだよ」
 
そして、保育園の初日に仕事に向かうダイキチを見て浮かべた表情と言ったら……。
 
母親の顔も知らず、育ててくれた祖父も亡くなった。親戚一同が自分を歓迎していないことも肌で感じる。そんな中、唯一手を差し伸べてくれたダイキチまでもが自分を置いてどこかへ行ってしまう。
6歳のりんにはあまりにも辛く、僕には到底理解できない心情である。
 
 
聞き分けもよく大人びた性格の反面、人見知りが激しく初対面の人の前ではまともに返事もできない。
だが、それもダイキチとの生活の中でだんだんと解消され、複雑な環境の中でも素直で快活な女の子に育っていく。
 
いや、もうね。
一挙手一投足がやべえんですよ。
 
喜んだり怒ったり、ダイキチにおねしょを見つかって拗ねたり。
やることなすこと全部可愛くて、たま〜にグサッとくることも言いやがる。
 
第5話のラストでダイキチがりんに「自分の養子になるか?」と聞いた際のセリフ。
「お父さんはおじいちゃんだもん」
「私、“鹿賀りん”っていう名前がいい」
「おじいちゃんとお揃いの名前、大事なの」
 
ここはちょっと胸にくるものがあった。
親として自分を育ててくれたのはあくまでおじいちゃん。そのおじいちゃんからもらった大切な名前を捨てることなどできない。ダイキチのことは大事だけど、父親と呼べる存在はおじいちゃんだけ。
 
そして、もうひと言。
「ダイキチはダイキチでいい」
 
バッカ野郎お前ww
 
最近、妙に涙腺が緩くなってんだから、唐突に爆弾落とすんじゃねえよ。
そういうことはあらかじめ断りを入れてからだな……(何が?)。
 
「これからもずーっと、ここがお前の家だからな」
「うん!!」
 
非常に小っ恥ずかしいのだが、僕はこのシーンを何回繰り返して観たかわからない。
 
断言するが、りんの可愛さはもはや凶器である。
 

ダイキチの魅力が五臓六腑に染み渡る。ズボラな聖人君子はりんとの相性がパーヘクツ

もう1人の主人公である「ダイキチ」。
こちらのキャラも魅力がありすぎて、癒しが五臓六腑に染み渡ることこの上ない()

 
衣料品メーカーに勤務しながら独身を謳歌していた30歳のダイキチは、ひょんなことから6歳のりんを引き取ることに。
 
飲み会の誘いをすべて断り、残業のない部署へ異動する。
子育てのイロハも知らない中で悪戦苦闘しつつ、生活はりん最優先のものに一変する。
 
りんの悩みやわがままに真正面から向き合い、子どもと同じ目線で問題解決に挑む。仕事が大変な中でもりんに優しく接し、突然家出してきた従姉妹も快く受け入れてしまう。
 
え?
何なん? この聖人君子。
 
仕事はできるわ、コミュニケーション能力は高いわ。
その上、我慢強くてクッソ優しい。
しかもそれがちっとも嫌味じゃないって、超卑怯じゃないっすかね。
 
見知らぬ女の子を引き取っただけでもすごいのに、どんな状況になっても冷静さを保っていられるのがさらにすごい。
 
映画「翔んで埼玉」感想。これって要は「ホット・ショット」だよな? 「口が埼玉」も「そこらへんの草」も同じパターン
 
正直、自分だったらここは切れるだろというシーンは作中に何度も出てきた。
 
聞き分けがいいとは言ってもりんは6歳の子ども。保育園を探している最中に「お腹すいた」と言われたら、思わず「お前のためにやっとんねん」「ちょい待てや」と口走ってしまいかねない。
 
その上、転がり込んできた従姉妹に家庭の愚痴を聞かされたりもする。
 
「突然ノコノコ現れて、なーにをグチグチ言ってんだてめえ」
「そういうのを引っくるめて親の責任ちゃうんか?」
「無関係の人間に意味不明な癇癪起こしてる暇ちゃうぞ」
などなど。一番言ってはいけない言葉を吐いてしまいそうな……。
 
 
複雑な境遇でも元気に育つりんと、それを見守る優しいダイキチ。感情移入を促す組み合わせとしてはパーフェクトと言える。
 

敵役である吉井正子も魅力がある。ストーリーのバランスを取るためにもこういうクズキャラは必須

そして、りんの本当の母親である「吉井正子」。

駆け出しのマンガ家だった正子は仕事に集中するため、幼いりんを宋一に押し付けて姿を消すわけだが……。
 
この正子は愛されキャラが盛りだくさんの「うさぎドロップ」における唯一の敵役。
 
要領が悪く口下手でコミュニケーションが苦手。人付き合いも嫌いで性格もぶっきらぼう。当然ダイキチとは合うはずもなく、お互いに「苦手」「顔を合わせたくない」と感じている。
 
その上、育児を放棄してりんを捨てた過去があるにも関わらず自分を正当化するセリフを平然と吐く始末。
 
「あたしはもう母親じゃないから」
「りんをどうこうする資格はありません」
 
恐らくこのキャラは視聴者(読者)から相当嫌われていただろうし、実際僕も「何コイツ」と思った。
 
 
だが、正子の存在が本作をより魅力的なものにしていたのもまた事実。
 
ダイキチの両親や妹、従姉妹の親子に二谷親子その他。りんとダイキチの周りには彼らを応援し、助けてくれる人物が揃う。
複雑な事情を抱えながらも明るく元気に育つりんと、あたふたしながらそれを見守るダイキチ。そして、両親や周囲の面々も彼らを目いっぱい手助けする。
 
一見すると幸せいっぱいの環境だが、作品として正解かと聞かれれば決してそうではない。どん底に堕ちろとまでは思わないが、多少はストーリーに起伏がほしい。
 
そういう意味で、吉井正子のクズっぷりはストーリーのバランスを取る上で非常によかった。
 
ダイキチにとってりんはあくまで他人。いつかは正子の元に返す日が来るかもしれない。
いずれこの問題には決着をつけなければならず、このままりんとの日常が続くとは限らない。
ドタバタながらも幸せな日々が有限であることを意識し、ダイキチはりんとの生活をより大事に過ごすようになる。
 
正子の存在により、2人の日常に適度な陰りが生まれるというか。
吉井正子というジョーカーを登場させることによって「うさぎドロップ」をただの子育て奮闘記ではない、より繊細な部分まで踏み込んだ作品に変貌させた。
 
バランサーとしての彼氏を含め、りんやダイキチとは一味違う魅力が正子にはある。

高校時代編は好き嫌いが分かれるよね。でも、あのラストを失敗とは言いたくないかな

なお、りんの高校時代編(コミックス5巻以降)については、人によってだいぶ好き嫌いが分かれると思う。

 
申し上げたように幼稚園・小学校時代編(コミックス4巻まで)は老若男女どんな方にもおススメできる。特にアニメは雰囲気もよく、秋風が吹き抜けるような爽やかさを感じること請け合いである。
 
だが、高校時代編はりんやコウキが思春期真っ只中なだけあり、ドロドロとした描写も多い。また従姉妹の春子が離婚していたり、ダイキチの両親が年老いていたりと時の流れも随所に感じる。
 
正子との関係にも答えを出さなければならず、純粋にりんの成長を楽しんでいればよかった幼稚園・小学校時代編から流れが一気に変わる。
 
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そして賛否両論を巻き起こしたというラスト。りんとダイキチが男と女として結ばれるわけだが、一部からは「気色が悪い」という感想すら聞かれたとか。
僕はあのラストを比較的普通に受け入れられたが、保護者と娘の関係だった2人が男と女になることに拒絶反応を示す気持ちもわからなくはない。
 
 
ただまあ、だったらどうするの? という話ではある。
仮にりんとダイキチをくっつけないとしたら、あそこまで複雑な人間関係をどう回収すればいいのか。
 
早々にりんとコウキを破綻させ、その流れでコウキの母親とダイキチの関係も終わらせた。しかもコウキの母親には再婚相手がいるとのことで、なおさらダイキチとくっつく線は絶望的。
りんはりんでクラスメートにはちっとも興味を示さず。デートに誘われても心が揺れることはいっさいない。
 
読み返してみると、この作品はりんとダイキチをくっつける結末に一直線に向かっていることに気づく。
 
 
作品の雰囲気的にバッドエンドはあり得ない。
だが、方向転換するにはしがらみが多すぎる。
 
誰もが笑顔になるハッピーエンドを迎えるには、やはりあれしか方法はなかったのではないか。作者もインタビューで言っていたように、高校時代編はりんとダイキチが結ばれるラストありきで描いていたのだろうと。
 
 
ラストがベストだったかどうかは何とも言えないところだが、少なくともあれを“失敗”と断言するのは違う気がする。それをやってしまうと「うさぎドロップ」という作品自体を否定してしまうことになるので。
 
 
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