シェーン・モズリーとかいうデラホーヤ戦の9Rですべてを使い切った男。天才肌脳筋ワンマン短距離型最強全盛期クソ短いけど試合超おもしろいマン

シェーン・モズリーとかいうデラホーヤ戦の9Rですべてを使い切った男。天才肌脳筋ワンマン短距離型最強全盛期クソ短いけど試合超おもしろいマン
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ここ最近、FITE.tvがボクシングの過去の名試合を盛んにおススメしてくるのだが、非常にそそる試合ばかりで困っている。
 
たとえば1991年4月のイベンダー・ホリフィールドvsジョージ・フォアマン戦や1987年4月のマービン・ハグラーvsシュガー・レイ・レナード戦など。
 
「FITE+ Boxing」
 
文句なしの名試合ばかりで、思わず支払いを完了してしまいそうになるww
過去の試合に金を払うのは微妙なところだが、この“痒いところに手が届く”感じが何とも憎たらしいww
 
 
そして、ついに我慢しきれずに購入手続きを完了してしまったのが下記。
 
「Shane Mosley vs Oscar de la Hoya 1」
 
2000年6月に米・カリフォルニア州で行われたWBC世界ウェルター級タイトルマッチ。同級王者オスカー・デラホーヤに前IBF同級王者シェーン・モズリーが挑戦し、2-1(116-112、115-113、113-115)の判定でモズリーが勝利した一戦である。
 
 
個人的にこの試合はモズリーのベストバウトだと思っていて、後にも先にもこれを超えるパフォーマンスはない。それこそ全盛期モズリーのMAX中のMAXだったと断言できる。
 
 
また、オスカー・デラホーヤについてはことあるごとに1999年2月のアイク・クォーティ戦を引き合いに出しているが、この試合も文句なしにすばらしい。僅差判定で敗れはしたが、デラホーヤにとってもベストバウトの一つと言えるのではないか。
 
オスカー・デラホーヤvsアイク・クォーティ。観ないと人生損する名試合。スーパースターのベストバウト
 
というわけで、今回はこのシェーン・モズリーvsオスカー・デラホーヤの一戦(2003年9月の再戦ではない方)の感想を適当に述べていこうと思う。
 

シェーン・モズリーvsオスカー・デラホーヤVol.1超おもしろい。モズリーの充実度は問答無用でキャリアMAX

まず、率直に申し上げてこの試合はおもしろい。クッソおもしろい。笑いが出るくらいにおもしろい

 
両者ともに中間距離での差し合いが得意で、その両者が得意な距離で対峙し得意分野でひたすら打ち合う。しかも実力伯仲なので、12Rにわたって拮抗した状態が続く。
 
それこそ両者のテンション、拮抗ぶりは2019年11月の井上尚弥vsノニト・ドネア戦をしのぐほど。途中やや浮き沈みはあるものの、基本的には両者が最初から最後まで全力で走り抜けた一戦と言える。
 
信じる心が拳に宿る。ドネアが井上尚弥に敗れるも、12Rの大激闘。敗者なきリングに感動しました
 
特にシェーン・モズリーの充実度は群を抜いている。
表題の通りなのだが、この日のモズリーはキャリアの中でもMAXのコンディション。
次戦以降、ここを頂点としてゆっくりと下降線に入っていくわけだが、この試合で見せた煌めきと言ったらww
冗談でも何でもなく、ボクシング界のスーパースターであるオスカー・デラホーヤを日陰に追いやるほどの眩しさだった。
 
その証拠に、2002年にバーノン・フォレストにボロ雑巾のように負けた試合はなかなかの衝撃である。
 

“Sugar”シェーン・モズリーのハイテンションボクシングを刮目せよ。デラホーヤが完全にスピード負けしてたからね

シェーン・モズリーの特徴は、何と言っても全階級トップと言われるハンドスピード。

 
小刻みにステップを踏みながら相手との間合いを計り、一瞬のタイミングを突いて連打を浴びせる。
相手に反撃する余裕をいっさい与えない回転力は1980年代の中量級のスター、シュガー・レイ・レナードの再来とも言われ、その上、ハイテンションなボクシングを1試合持続するスタミナも持ち合わせる。
 
“Sugar”の愛称に偽りなしというか、マジで才能の塊のような選手だった。
 
 
そして、パラメータを才能に全振りしたハイテンションボクシングはvsデラホーヤVol.1で頂点に達する。
 
開始直後から小刻みなステップと激しい出入りでどんどん回転力を上げていくモズリー。
デラホーヤも得意のコンビネーションで対抗するが、中間距離の差し合いでそのつど上を行かれてしまう。
 
1999年のアイク・クォーティ戦ではクォーティの左に手を焼いたデラホーヤだが、連打のスピードで負けていたわけではない。クォーティのバズーカをかいくぐって強引にぶち当てたくらいで、むしろそこの強みを活かして判定勝利をもぎ取ったくらい。
 
だが、この試合ではモズリーの連打と出入りについていくのがやっと。
動き出しを狙われてワンツーを被弾し、自分が1発目を出す瞬間にはモズリーはスウェーの態勢に入っている。
 
中間距離でお互いのパンチがヒットするものの、1発1発のインパクトはモズリーの方が明らかに上。見栄えのよさ、スタイリッシュさでもモズリーはデラホーヤを上回っていた。
 
モズリーは相手の動き出しを察知する嗅覚に長けていて、持ち前のスピードで常に先の先を取るのを得意としてきた。この“相手が動く瞬間の硬直”を狙い撃ちする能力のおかげで、何だかんだで40代半ばまで現役を続けられたのだと思う。
 
2010年にメイウェザーをグラつかせたのも、メイウェザーが踏み込もうとした瞬間の先の先だったしね。
 
カネロに勝てる可能性があるのって誰? 確かアミール・カーンがいい線行ってたような…。デカいカーンさんはどこかにいないかね
 
てか、開始直後に「ホールディングに気をつけろ」と注意に入ったレフェリーに対するモズリーのリアクションがクッソ印象的なんだよな。
ちらっとレフェリーの方を見て、右手を振りながら「どいてろ、危ないぞ」みたいな。
 
「いいところなんだから邪魔すんなよ」と言わんばかりのしぐさがめちゃくちゃカッコいいww
 
ああいうのを見てしまうと、やはり僕はボクシングの判定やレフェリングを機械化することには反対である。
 

この試合の9Rはモズリーのキャリアにおけるベストラウンド。勝負どころと判断した両者がギアを一段上げる

中でもこの試合の9Rはモズリーのキャリアにおけるベストラウンド。

 
恐らくこのラウンドまではポイント的には五分と五分。両陣営が勝負どころと判断したはずで、お互いがフルパワーでぶつかり合う。
 
 
デラホーヤのマウスピースが落ちて中断が入った1分過ぎ。ここから両者のテンションは一気に上がる。
 
再開直後に先に仕掛けたのはデラホーヤ。
自ら前に出て得意のコンビネーションを浴びせていくと、モズリーもそれに応戦。
デラホーヤのテンションに呼応するようにギアを一段上げ、小刻みなステップから速射砲のような連打でねじ伏せにかかる。
 
両者がもっとも得意とする距離で対峙し、もっとも得意な土俵で勝負する。
会場の大歓声に後押しされて打ち合いはさらにヒートアップ。
 
そして、ここでも打ち勝ったのはシェーン・モズリー。
序盤1、2Rの動きと遜色ないハイスピードな出入りでデラホーヤを圧倒し、会場の空気を丸ごと自分の味方につけた。
 
年々フルパワーで動ける時間が短くなっていったモズリーだが、こういう二番底があるのも全盛期ならでは。あの9Rには、この選手の短い全盛期における天才肌脳筋短距離マンの要素がすべて詰まっていた(と思う)。
 
 
よくライアン・ガルシアがSNSにアップする動画に対して「ハンドスピードがすごいのはわかるけど、実戦でそれができんのかよw」というツッコミを目にするが、この試合のモズリーはマジでそれをやってましたからねww

まあ、あんなボクシングが長持ちするわけないでしょというのもまた事実ではあるのだが……。
 

デラホーヤ戦はモズリーにとって最高のタイミングだった。こういう試合が実現できる選手は案外少ない? かも?

繰り返しになるが、この試合のモズリーの充実度はマジですごかった。

僕自身、デラホーヤが中間距離でスピードについていけないなど絶対にあり得ないと思っていたので、足をバタバタさせてうろたえるデラホーヤの姿に心底驚かされた。
 
と同時に、モズリーがちょうど脂の乗り切った時期にこの試合を実現できたことは本当によかったとも思う。
 
フロイド・メイウェザーJr.、ミゲール・コット、フェルナンド・バルガス、アントニオ・マルガリート、サウル・“カネロ”・アルバレス、マニー・パッキャオといったビッグネームとも対戦したモズリーだが、いずれの試合も30代後半になってから。
 
プロモーター、放送局などのしがらみや相手陣営、選手同士の思惑など。大金が動くボクシング興行はビッグネーム同士になればなるほど対戦が実現しないケースも増える。
 
全盛期にもっとも噛み合う相手に全力でぶつかり、自分の力を目いっぱい発揮した上で勝利する。実際、これを叶えられる選手は案外少ないのかもしれない。
 
その証拠に、モズリーはバーノン・フォレストやロナルド・ライトといった曲者タイプには最後まで勝てず終いだった。
特にバーノン・フォレストとの初戦は再三ダウンを奪われた上での完敗。深い懐から繰り出す鋭いジャブに翻弄され、ボロ雑巾のような状態で王座から陥落している。

 
鷹村守vsデビッド・イーグルって要するにデラホーヤvsチャベスだよな。デラホーヤの初戦の最強っぷりと再戦での主人公感
 

モズリーは天才肌のスピードスターだが、基本的には脳筋タイプ。得手不得手はめちゃくちゃはっきりしている。
 
中間距離からやや近い位置では無類の強さを発揮するが、得意な距離を外された途端にできることがなくなる。フォレストのように長身でリーチも長い相手が苦手なのは明白すぎるくらい明白である。
 
 
とは言え、この試合のバーノン・フォレストの強さと言ったら……。
ワイドなスタンスでやや前かがみ。だが、もともと身長183cmと上背があるためモズリーよりも一回り大きい。その上リーチも185cmと長く、強烈な左はモズリーのステップインをことごとく寸断する。
 
いわゆる“デカくて動けるフィジカル強者こそ最強”説をそのまま具現化したような選手。中盤以降の絶望感は筆舌に尽くし難いものがあった。
 
 
この試合でのフォレストのヤバさは一目瞭然だが、逆に言うとこういう地味強マンに全盛期をごっそり持っていかれるケースも割と多いのかもしれない。
 
そう考えると、モズリーにとってのvsデラホーヤVol.1はいろいろな意味でベストなタイミングだった。デラホーヤはフェリックス・トリニダードに初黒星を喫した翌年だし、モズリーは棄権を含む10連続KO中で絶好調だったし。
 
 
シェーン・モズリーvsオスカー・デラホーヤVol.1、文句なしにおススメである。
 
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