ベテルビエフvsグヴォジク何やコイツら気持ち悪っw フィジカルの暴力と超絶カウンター。あの打ち方であの効き方!?【結果・感想】
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2019年10月18日(日本時間19日)、米・ペンシルベニア州フィラデルフィアで行われたWBC/IBF世界L・ヘビー級統一戦。IBF同級王者アルツール・ベテルビエフvsWBC同級王者アレクサンドル・グヴォジクの一騎打ちは10R2分49秒TKOでベテルビエフの勝利。見事王座統一に成功した一戦である。
無敗の倒し屋同士の頂上決戦となった今回。
序盤から軽快なフットワークとジャブを放つグヴォジクに対し、ベテルビエフはガードを上げてジリジリと距離を詰める。
時おりグヴォジクの左で顔が上がるものの、持ち前のパワフルさで前に出るベテルビエフ。そのまま距離が詰まったところで左リードに合わせて右クロスを打ち込む。
これにより1R終盤に押し潰されるようにグヴォジクがダウン。スリップのようにも見えたが、そのまま1Rが終了する。
それ以降はお互いがペースを奪い合う一進一退の攻防が続く。
ベテルビエフの右にグヴォジクは右カウンターを合わせると、そこからベテルビエフがボディ中心に攻めてペースを奪い返す。
7Rには両者がグラつきを見せるなど、ダメージの蓄積と凄まじい駆け引きが交錯する消耗戦となる。
そして9Rにベテルビエフがグヴォジクに深いダメージを与えると、10Rに3度のダウンを奪う畳み掛けで勝利。劇的な幕切れで15連続KOを決めるとともに、L・ヘビー級の無敗対決に勝利した。
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楽しみにしていたベテルビエフvsグヴォジク戦をリアルタイムで観られず。なぜなら日にちを勘違いしていたから
IBF王者アルツール・ベテルビエフvsWBC王者アレクサンドル・グヴォジク。
前々から僕が「全階級を通してもっともハイレベルでエキサイティング」だとほざいているL・ヘビー級。その中でも間違いなくトップレベルと断言できる両者の統一戦ということで、3ヶ月近く前からワクワクしていた一戦である。
「ベテルビエフvsグヴォジクとかいう地球が割れるかもしれない統一戦。退路を断った爆腕と重量級の拳四朗楽しみやね」
などと言っているが、実は僕はこの試合をリアルタイムでは観ておらず。
特に用事があったわけでもないのだが、思いっきり開催日を間違えていた。てっきり19日(日本時間20日)だと思い込んでいて、気づいたら試合が終わっていたというまさかの失態である。
いや、だって。
いつもだいたい土曜日開催(現地時間)じゃんか。しかも今回は王座統一戦、無敗の実力者同士の一戦なので、当然土曜日開催(現地時間)だと思うじゃんか。
まあ、この辺がL・ヘビー級という不人気階級ゆえの境遇ということか。両者ともに米国人ではないというのもあるのだろうなと。
個人的な意見を言えば、これほどすごい選手同士の試合がこの程度の注目度の時点でお話にならない。完全にトチ狂ってるとしか思えないわけだが。
おもしろい試合だった!! グヴォジクの左ジャブをベテルビエフがどう封じるかに注目していました
試合の感想についてだが、もうめちゃくちゃおもしろかった。
両者の高度な駆け引きに加え、ベテルビエフの卑怯なまでの馬力、パンチ力が山ほど感じられた試合というヤツ。
まずWBC王者アレクサンドル・グヴォジクだが、以前から申し上げているように個人的なイメージとしては“重量級の拳四朗”。
鋭い左を起点に前後左右に動き、正面を外しながら空いた場所に連打を浴びせていく。1発の破壊力で倒すというより数を当ててダメージを蓄積させるタイプで、試合を通して足と手が止まらず上半身と下半身の連動がすばらしい。まるで軽量級かと思うようなボクシングを展開する選手である。
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そして、ベテルビエフが主導権を握るためにはこの左ジャブを何とかする必要がある。
ベテルビエフはどちらかと言えば1発の威力を重視するスタイルで、決して手数が多い方ではない。グヴォジクのハイテクな連打に対抗するには、とにかくあの連打と左右への動きを封じること。すべての起点となる左ジャブへの対応が重要になると思っていた。
右クロスでグヴォジクの連打の発動を抑え、カウンターでペースを掴むベテルビエフ
で、そのベテルビエフが見せたグヴォジクの左ジャブ攻略法が右のクロス。
ガードを上げてじっくりと近づき、グヴォジクに先に手を出させる。
基本的にグヴォジクの1発目はほぼ左ジャブなので、それに合わせて左を出す。同時打ちでグヴォジクの動きを止め、そこから外側に1歩踏み込んで右のクロスをオーバーハンドで被せる。
これによってグヴォジクは次の動作に入れず、得意の連打を発動できない。
自分から手を出すのはいいのだが、ベテルビエフのカウンターを警戒してなかなか射程内に立ち入れないため連打が続かない。1R終了間際のダウンは明らかにミスジャッジだと思うが、立ち上がりの主導権はベテルビエフが掴んだと言えるのではないか。
「べスプーチンvsブタエフとんでもなっ!! 超いい試合でビックリした。地味強ロシア人がウェルター級にも…!」
だが2R以降、グヴォジクが1発1発に力を入れてパンチを放つ。
これまでのように肩の力を抜いて軽いパンチを連打するのではなく、単発ながらもしっかりと足を決めてパワフルに打ち出す。
ただ、ベテルビエフはこれにも動じない。
腕を強く振る分、サイドへの動きが減り、重心の上下動も増えるグヴォジク。
ベテルビエフはグヴォジクの動き出しを狙って左を放ち、さらにもう一歩中に入って右を打ち込む。
グヴォジクも懸命に左を返すが、ベテルビエフは落ち着いて右クロスを合わせていく。
そうなんだよな。
ベテルビエフは剛腕と強フィジカルばかりが注目されるが、実はカウンターもうまい。懸命に前に出ていた選手が突然こと切れて倒れるという衝撃的なシーンも過去に目撃したし、連打を封じられたグヴォジクにとってこの流れははっきり言ってよくない。
「カネロvsコバレフ。ちょっと待て、この試合ホントにやるのか? カネロに勝算? マジで言ってんのか?」
ベテルビエフの右にカウンターの右を返すグヴォジク。ベテルビエフがお構いなしに前に出てダウンを奪う
ところが。
中盤4Rあたりからグヴォジクが流れを変える。
1発目の左に右をクロスで合わせるベテルビエフに対し、グヴォジクはそこに右ストレートをカウンターで返す。
ガードを下げて構えるベテルビエフの誘いにあえて乗り、左を打ち込むグヴォジク。
そこに飛んでくるベテルビエフの右をダッキングで避け、反動をつけて全力の右を打ち込む。
これにより、ベテルビエフから思い切りのいい踏み込みが失われる。再び距離をとり、ガードを高く上げて左から組み立てる流れに。
「KODトーナメントをBOXING RAISEで視聴したので感想を。洗練されてない雑多な手探り感が最高におもしろかった」
一方、ベテルビエフの突進力を渾身のスイングで防いだグヴォジクは軽快なステップが復活する。サイドに動いて正面を外し、ベテルビエフの左に右を被せていく。
と思ったら。
6R終了間際にベテルビエフが強引に前に出る。カウンターの被弾もお構いなしに腕を振り、無理やり左右のクロスを側頭部に当ててダウンを奪う。
うおお!!
すげえ!!
マジですげえ。
両者のフェイント合戦、駆け引きはもちろん、グヴォジクの機動力もすえげしベテルビエフの馬力もすげえ。
なぜかスリップ判定でグヴォジクがダウンを免れたわけだが、どちらにしても僕は今、とんでもないものを観ている。
一進一退の攻防が続き、8Rの相討ちでグヴォジクのダメージが噴き出す
7R。
前のラウンドでペースを持っていかれそうになったグヴォジクが開始直後から飛ばす。
鋭い左でベテルビエフの顔を跳ね上げ、鋭いワンツーでロープ際まで下がらせる。これで一瞬ベテルビエフの動きが止まる。
だが、中盤にベテルビエフのボディがカウンターでヒットすると、そこからグヴォジクの動きがガクッと落ちる。さらに残り45秒で再びベテルビエフの左ボディが突き刺さり、グヴォジクの身体がくの字に折れる。
8Rに入っても一進一退の攻防が続くが、先ほどからグヴォジクの足が明らかに動いていない。要所で突き刺さるベテルビエフのボディが効いていることは間違いなさそうである。
そして、残り14秒あたりで両者の右が相討ちで顔面を捉え、お互いの動きが止まる。
すぐさまグヴォジクが追撃の左を出すが、ベテルビエフは落ち着いてバックステップしながらカウンターを返す。対するグヴォジクは抑えが効かず、ベテルビエフにもたれるように腕を絡める。
ああ、アカン。
今ので完全にダメージが噴き出したっぽい。
これまでベテルビエフの強打に何とか持ちこたえていたが、ついに我慢しきれなくなったか。
「ポーターを見くびってたな。スペンスをあれだけ追い詰めるとは。ただの突貫野郎じゃない」
続く9R。
すでにグヴォジクは身体に力が入らない。
1発目の左、2発目の右まではいいのだが、そこから先が続かず踏ん張りも効かない。
ベテルビエフの左で後退させられ、頭が下がったところに右のオーバーハンド。さらに顔面を意識したところにボディをもらい、背中が大きく丸まる。
うん、厳しい。
クリンチで何とかダウンを拒否してはいるが、どう見ても厳しい。
結局10Rに3度のダウンを奪われてTKO負けとなったわけだが、これは仕方ない。いわゆるダメージレースで負けていたし、どうにかつなぎとめていた糸も8Rの相討ちで完全に切れてしまった。
グヴォジクはめちゃくちゃがんばったが、最後はベテルビエフの剛腕の前に散った感じ。
凄まじい駆け引きとフェイントの掛け合いを展開し、最後はベテルビエフが馬力でねじ伏せた
いやしかし。
本当にすごい試合だった。
ベテルビエフがグヴォジクの左に右クロスを合わせて連打の発動を抑えれば、グヴォジクはベテルビエフの右クロスを渾身の右カウンターで迎撃する。
ところがベテルビエフは被弾もお構いなしに強引に腕を振ってグヴォジクをなぎ倒す。グヴォジクもペースを取り戻すためにラウンド序盤から飛ばしてベテルビエフの突進を止める。
グヴォジクが主導権を取り戻した途端、今度はベテルビエフが近場のボディカウンターでグヴォジクの足を殺し、最後は右の相討ちでダメージを噴出させて勝負あり。
ベテルビエフvsグヴォジクすごい試合だった。
グヴォジクの左に右クロスを被せて攻撃の起点を封じたベテルビエフと、中盤からそこに右カウンターを合わせたグヴォジクと、さらにそこにボディのカウンターを合わせたベテルビエフ。
アルバラードが拳四朗相手にアレをやれれば期待できるけどな。— 俺に出版とかマジ無理じゃね? (@Info_Frentopia) October 19, 2019
繰り返しになるが、本当にすごい試合だった。
両者が凄まじいフェイントの掛け合いを展開し、最後の最後でベテルビエフの理不尽なパンチ力がグヴォジクをねじ伏せた試合。期待した通りの大熱戦+どちらの選手も気持ち悪いくらいにハイレベルだった。
てか、ベテルビエフのパンチって何であんなに効くんすかね。
無造作に手を出してるように見えて、グヴォジクの芯をビリビリ揺らすイメージ。
その瞬間だけしっかりと下半身を決めて打っているのか、それとも上半身、腕力が並外れているのか。
ボディ打ちなんて、ただ腕を伸ばしているだけにしか見えないのにね。
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