石田順裕vsディミトリー・ピログが超いい試合だった件。カークランドもゴロフキンもいいけど、僕はピログ戦の方が好き

石田順裕vsディミトリー・ピログが超いい試合だった件。カークランドもゴロフキンもいいけど、僕はピログ戦の方が好き
「ボクシング記事一覧リンク集」へ戻る
 
ここ最近時間のあるときにやっている「レジェンドの試合漁り」。今回は元WBA世界S・ウェルター級暫定王者石田順裕について。
 
 
石田順裕と言えば、もっとも有名なのが2011年4月のジェームス・カークランド戦と2013年3月のゲンナジー・ゴロフキン戦。
 
ジェームス・カークランドは当時27戦全勝23KOのホープ、ゴロフキンは戴冠以来6連続KO防衛中と最強王者としての地位を確立しつつあった時期で、いずれも海外を主戦場とするミドル級の日本人選手にとっては前人未到の挑戦となった。
 
特にカークランド戦は倍率17:1という圧倒的不利予想の中、まさかの1RKO勝利。サウスポーのカークランドから初回に3度のダウンを奪う圧勝で大番狂わせを果たしている。
 
また、2013年のゴロフキン戦では強打のゴロフキンに3RTKO負けを喫するものの、開始直後から果敢に真っ向勝負を挑んだ石田の姿勢は多くのファンから賞賛を受けた。
 

石田順裕vsディミトリー・ピログ超いい試合!! カークランド戦ばかりが注目されるけど…

上記の2試合、カークランド戦、ゴロフキン戦が石田順裕にとっての文句なしのハイライトだとは思うが、個人的には2012年5月のディミトリー・ピログ戦も捨てがたい。

 
この試合は当時JBC未認可のWBOタイトルに挑戦するため、いったん引退届を提出してJBCから離れた上で実現させたもの。「ミドル級世界王者」というチャンスにかける石田順裕の覚悟が感じられた一戦と言える。
 
と言いつつ、僕はこれまでこの試合をまともに観たことがなく。
ディミトリー・ピログについても「確かキャリア初期のダニエル・ジェイコブスに勝ったヤツだよな」程度の認識で、名前を聞いてもどんな選手なのかはちっともわからない。
ほぼ初見に近い状態で観てみた次第である。
 
何コレ超いい試合!!
 
いや、ビックリした。
正直に申し上げるとこの試合には大して期待しておらず。暇つぶしに観たというか、本当はカークランド戦についての感想を述べようと思っていたのだが。
 
粟生隆寛引退。ビタリ・タイベルト戦おもしろ過ぎワロタw 確かに内山高志に勝てる日本人だったかもしれんね
 
参考程度にボーッと眺めていたところ、待て待て、これはえらいこっちゃと。
ディミトリー・ピログのハイレベルさに釘付けになり、あっという間に12Rを観終えてしまった。
 

“大番狂わせ”と言われたカークランド戦は実はそこまででもない? 両者の実力的にも十分あり得た結果だったかも

石田順裕という選手は身長187cm、リーチ183cmのサイズを活かした打ち下ろしが得意なタイプ(だと思う)。キャリア晩年ではヘビー級で藤本京太郎に挑戦するなど、上背とスピードが持ち味のアウトボクサーである。

 
“大番狂わせ”と言われたジェームス・カークランド戦を観直してみたが、改めて観ると実はそこまでのアップセットではなかったのかも? とも思える。
 
カークランドはもともとS・ウェルター級の選手で、ミドル級でも大柄な石田と対峙すると一回り小さい。また前に出る突進力は秀でているものの、右のガードが低くモーションも大きいために動き出しと同時に顔面がガラ空きになる。
2015年5月のカネロ戦でも左を山ほど被弾しているし、この試合でも石田の左をカウンターでもらって深いダメージを負っている。
 
顔面を晒して飛びかかる瞬間に石田の打ち下ろしがドンピシャで入った感じで、言われているほど奇跡でもないのでは? というのが本音だったりする。
 
恐らくだが、カークランドの実力は決してミドル級のトップレベルとは言えず、石田順裕にも十分勝機はあったのだと思う。石田の打ち下ろしとカークランドの踏み込みのタイミングが合致するのは必然で、それが1Rにいきなりきてしまった。あの結果はアップセットでも何でもなく、両者の実力と相性の要素が大きかったのかなと。
 
あくまで結果論ではあるが。
 
カネロvs村田決まるのか? カネロが日本に来るのか? →コネー!!! 長期大型契約も大変だよな

ピログ戦は言い訳のしようがないほどの完敗。世界の壁を痛感させられた

その点、2012年5月のディミトリー・ピログ戦は一味違う。

 
両者が中間距離からやや近い位置で対峙し、細かいパンチの交錯が続く。
お互いに顔面、ボディへのコンビネーションの打ち合いを展開するが、そのつどピログが石田を上回る。
 
左のダブルに石田はガードが間に合わず、追撃の右を防ぐのに精一杯で反撃まで手が回らない。
ジャブで顔面を跳ね上げられ、右フックをバックステップで避けられ打ち終わりにボディを被弾。
一瞬亀になったところに細かい連打を浴びて後退させられる。
 
石田もノーガードで待ち構えてカウンターを狙ったり、自ら前に出て腕を振ったりと様々な工夫を見せるが、落ち着き払ったピログのガードを崩せない。至近距離で微妙にアングルを変えるフットワークについていけず、反撃を許す流れ。
 
何だコイツ、すげえなディミトリー・ピログ。
そして、石田順裕はこんな達人と真正面から勝負してたのか。
 
申し上げたように“大番狂わせ”と呼ばれたジェームス・カークランドはミドル級のトップレベルとまでは言えず。
逆にゲンナジー・ゴロフキンはあまりに強すぎてどうにもならなかった。
また、ピログに挑戦する前に対戦したポール・ウィリアムスは身長185cm、リーチ201cmのサウスポーという規格外。
 
勝つにしろ負けるにしろ、どの試合もある程度の理由付けが可能な相手だった。
 
だが、ディミトリー・ピログとの一戦だけは言い訳のしようがない。
自分の得意な距離で対峙し、自分の得意なパンチを目一杯打ち込んだ上で完敗を喫した。恐らく石田にとっても自分にできることをやり尽くした試合。力を出し切り全力を尽くした結果の完封負けというヤツ。
 
言い訳の余地がどこにもない、まさしく“世界の壁”を感じさせられた試合だったと言える。
 

ディミトリー・ピログの実力はミドル級トップレベル。ジェイコブスやシュトルムよりも上だったんじゃない?

しかし、観れば観るほどディミトリー・ピログはいい。

 
攻防兼備のインファイトは井岡一翔に勝利したドニー・ニエテスっぽくもあるし、小刻みに角度を変えるフットワークは同じロシアのアレクサンドル・グヴォジクを彷彿とさせる。
 
石田が流れを変えるためにどれだけアクションを起こしてもまったく動じず、淡々と“任務を遂行”する姿からは体温のようなものがいっさい感じられない。こういう冷徹な部分はIBF世界L・ヘビー級王者アルツール・ベテルビエフにも通じるものがある。
 
ベテルビエフvsグヴォジク何やコイツら気持ち悪っw フィジカルの暴力と超絶カウンター
 
さすがに当時のゲンナジー・ゴロフキンに勝つのは難しかったと思うが、間違いなくディミトリー・ピログの実力はミドル級トップレベル。
2013年前後で言えば、ピーター・クィリン、ダニエル・ジェイコブス、アルフレド・アングロ、マルコ・アントニオ・ルビオ、フェリックス・シュトルムあたりと比べても互角かやや上くらいの強さだったのではないか。

石田順裕のキャリアの濃さに改めて驚く。ピログとのタイトルマッチのおもしろさはダントツだよね

そして、当たり前だが敗れた石田順裕も全然弱くはない。イメージ的には上記の選手たちの少し下あたりに位置する感じで、だいたいマイケル・ゼラファと同等くらいかなぁと。

 
殿堂入り間違いなし? のゲンナジー・ゴロフキンには歯が立たなかったが、穴の多いカークランドには勝利した。だが、トップレベルの実力を持つディミトリー・ピログとの技術戦では大きな差を見せつけられての敗戦。
 
・海外を主戦場とするミドル級日本人
・日本人初のHBOのPPV中継での勝利
・JBCを離脱してWBO王座挑戦
・現役晩年でのヘビー級転向
 
いろいろと前人未到なネタがありすぎてアレだが、落ち着いて振り返ると実力通りの結果が出ている気がする。
 
・無敗の倒し屋ジェームス・カークランド
・長身でリーチも長いサウスポー、ポール・ウィリアムス
・攻防兼備のバランス型インファイター、ディミトリー・ピログ
・最強王者ゲンナジー・ゴロフキン
 
今さらだが、改めて石田順裕のキャリアを見るとその濃さがめちゃくちゃ際立つ。ミドル級日本人ということを差し引いても、これだけ様々なタイプと対戦を重ねた経験は希少。文句のつけようがないキャリアと言えるのではないか。
 
中でもディミトリー・ピログとのWBO王座戦のおもしろさはダントツだった。
 
Advertisement