普段アマチュアボクシングをまったく観ない僕が初めてちゃんと観てみた。短いラウンドを全力で駆け抜けるには? 世界ユース選手権inポーランド【感想】
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ポーランドのキエルツェで開催中のボクシング世界ユース選手権。
男子60kg級に出場している日本の堤麗斗が現地時間20日の準決勝でブルガリアのラドスラフ・ロセノフを5-0の判定で下し、決勝戦へと駒を進めた。
なお決勝戦は現地時間23日に行われる予定で、カザフスタンのイエノアと対戦する。
僕は普段アマチュアボクシングをいっさい観ない。理由は「過酷過ぎておっかない」から
最初に申し上げておくと、僕は普段アマチュアボクシングをいっさい観ない。
理由はいくつかあるのだが、まず「過酷過ぎておっかない」というのが大きい。
この大会で活躍中の堤麗斗も4月15日の初戦以降は18日、19日、20日と3日連続でリングに上がるなど、とにかくアマチュアボクシングはスケジュールがタイトな印象。
恐らく「1試合3Rだから何とかなるだろ」的な理屈なのだとは思うが、全力の殴り合いを3日連続で続けるなどどう考えても正気の沙汰ではない。
また詳しくないのでアレだが、その間のウェイトはどうなっているのだろうか。
レスリングでは大会期間中はずーっとウェイトをキープしたままだと聞いたことがあるが、ボクシングも同様なのか。
減量幅にもよるとは思うが、仮にそうであれば相当過酷に思えるが……。
しかも2013年にヘッドギアが廃止され、現在は全員が顔面むき出しでどつき合っているという。
日本では夏の甲子園や箱根駅伝が“非人道的スポーツ”の代表格として毎年やり玉に挙げられるが、正直アマチュアボクシングもそれに比肩するレベルな気がする。
というより、「炎天下の中で何百球も投げる」「それが連日続く」と言われつつ実は試合の半分は日陰のベンチで座っている野球と、1日9分間の全力の殴り合い×3日+期間中は体重をキープしなくてはならないアマチュアボクシング、瞬間最大風速だけならアマチュアボクシングの方がずっと上じゃないの? という噂も……。
カルロス・ゴンゴラめちゃくちゃいいw アムナットとかホプキンス的な巧さ。相手の嫌がることをやるって楽しいだろ? 不変のテクニシャンがピアーソンをKO
一番の理由は「コスチュームがダサくて臭そう」だから。申し訳ないことに長時間観ていると吐き気を催すんですよ…
そしてもう一つ。これが僕がアマチュアボクシングを敬遠するもっとも大きな理由なのだが、アマチュアボクシングは「コスチュームがダサくて臭そう」なのがキツい。
両コーナーの色に合わせた青or赤の上下。
何とも言えないサイズ感のノースリーブに微妙な長さの膝上ハーフパンツ。
この絶妙なダサさ加減が僕の視聴意欲を根こそぎ刈り取っていくのである。
さらに試合が進むにつれてノースリーブが選手の肌にピッタリとくっつき、画面上でもあの独特なスポーツ臭が漂ってくる気が……。
「アマチュアボクシングはおもしろい」「プロとはひと味違う醍醐味がある」という話はよく聞くのだが、申し訳ないことに僕にはこのダサさがどうしても耐えられない。
それこそ長時間観ていると吐き気を催すほどに。
我ながら最低な理由だとは思うが、現実問題として視聴意欲がわかないのだからどうしようもない。
なので、今回の世界ユース選手権がいったいどんな位置づけの大会なのか、なぜ廃止になったはずのヘッドギアをしているのか(ユースだから?)、東京オリンピックと関連があるのか、などなど。
詳しい人からすれば常識に思えるような知識すら持ち合わせていないことを報告しておく。
一応、ラウンドごとに5人のジャッジがポイントをつける、毎ラウンド採点が公開されるオープンスコアリングシステムが採用されていることぐらいは理解できたんですけどね。
60kg級の堤麗斗は確かにすごいね。こんなヤツらがプロに入ってきたら普通の選手じゃ歯が立たないでしょ
そんな感じで僕は普段、アマチュアボクシングをまったく観ない人間なのだが、今大会での日本人選手の活躍は嫌でも耳に入ってきている。
中でも男子60kg級に出場中の堤麗斗という選手がとんでもないとのこと。
ほほう、そんなにすごいのであればちょっと観てみるかと、多少興味がわいた次第である。
で、猛烈な吐き気を我慢しながら観てみたところ……。
おお!! 確かにこりゃあすげえっすわww
人間離れしたスピードと近場でのカウンターの凄まじさはもちろんだが、激しく動きつつも足場をしっかり決めて打つスタイルはプロ向きにも思える。
2002年生まれとのことだが、短いラウンドであれば現時点でも王者クラスの力があるのではないか。
相変わらずコスチュームがダサくて臭そう+スケジュールのタイトさがおっかないのだが、諸々の要素さえ我慢すれば(できないから観てないんだけど)、アマチュアボクシングもそれなりに楽しめそうな気がしてきた。
なるほどねえ。
こんなヤツらがプロに入ってきたら、「ボクシングを初めて3年目です。去年プロテストに合格してこの前デビュー戦でした」みたいな選手がかなうわけがない。
それこそアマチュアの3Rに近い4回戦ではお話にならないというか、天地がひっくり返ってもアップセットは起きないと断言できる。
ここ最近、プロのトップレベルで勝負するにはアマチュア経験が必須になりつつあるが、今後はますますその傾向に拍車がかかると思われる。
と同時に、アマチュア経験なしでのし上がってやろうという“叩き上げ”がさらに減少しそうな……。
ボクシングのクラブオーナー制度が廃止されたあとの世界線(仮)。ジュニア世代から強化費をジャブジャブかけて育成しなきゃ勝てない競技化が一気に加速する?
アマチュアボクシングはプロボクシングとは完全に別競技ですね。アマチュア→1500m走、プロ→10000m走のイメージ
一応、今回の世界ユース選手権だけでなく2020年3月にヨルダンで行われた「2020東京五輪アジア・オセアニア大陸予選」なるものも眺めてみたのだが、これはもう、いつも僕が観ている“プロボクシング”とは完全に別競技としか言いようがない。
何というか、とにかくスピード感が凄まじい。
両選手がリング上を縦横無尽に動き回り、攻守が目まぐるしく入れ変わる。
プロの試合と比べて2段階以上アップテンポな印象で、パッと見で「早送りしてんの?」とすら思うほど。
アマチュア選手とスパーリングをするとスピード感に慣れる前に終わってしまうとおっしゃっていたプロの方がいた記憶があるが、マジでそんな感じ。
プロとアマ、どちらの方が上か? などの比較論はよく耳にするが、実際にはまったくの別の競技というのがファイナルアンサーだろうと。
ただ、アマチュア→短距離走、プロ→マラソンとまでは言えない。
あくまで僕の印象だが、おおざっぱに言えばアマチュア→1500m走、プロ→10000m走くらいの違いである。
短い3Rと言っても陸上の100m、200mのような無酸素運動ではなく、細かい部分でのペース配分、駆け引きは存在する。
もちろんプロの12Rのように「ガードを上げて~、ジャブで距離を測って~、ボディから崩して~」などとやっている暇はどこにもない。
初めから全力で飛ばさないとあっという間に置いていかれてしまうことには違いないが、どの試合でもフルパワーで打ち合う局面と流す局面の使い分けが感じられる。
100mを10秒で走る選手が42.195kmに対応できるとは思えないが、1500m走→10000m走への仕様チェンジなら時間をかければ何とかなる(気がする)。
地肩の強い元トップアマがプロの12Rに対応して世界王者になるのと近いと言えるのではないか。
トップ選手にサウスポーがめちゃくちゃ多い。短いラウンドで打たせずに打つを実現するには左構えが最適解なんでしょうね
さらに観ていて思ったのが、アマチュアボクシングにはサウスポーがめちゃくちゃ多いということ。
上述の堤麗斗もサウスポーだし、準々決勝、準決勝で堤麗斗と対戦した選手も両方サウスポー。
「2020東京五輪アジア・オセアニア大陸予選」も同様で、オーソドックス同士の対戦は数えるほどしかない。
試しに過去の金メダリストを調べてみたところ、
・ライトフライ級
2012年ロンドン:鄒市明(右)
2016年リオ:ハサンボイ・ドゥスマトフ(左)
・フライ級
2012年ロンドン:ロベイシ・ラミレス(左)
2016年リオ:シャホビディン・ゾイロフ(左)
・バンタム級
2012年ロンドン:ルーク・キャンベル(左)
2016年リオ:ロベイシ・ラミレス(左)
・ライト級
2012年ロンドン:ワシル・ロマチェンコ(左)
2016年リオ:ロブソン・コンセイソン(右)
・ライトウェルター級
2012年ロンドン:ロニエル・イグレシアス(左)
2016年リオ:ファズリディン・ガイブナザロフ(左)
・ウェルター級
2012年ロンドン:セリク・サピエフ(左)
2016年リオ:ダニヤル・イエレウシノフ(左)
・ミドル級
2012年ロンドン:村田諒太(右)
2016年リオ:アーレン・ロペス(左)
・ライトヘビー級
2012年ロンドン:エゴー・メコンチェフ(左)
2016年リオ:フリオ・セサール・ラ・クルス(右)
・ヘビー級
2012年ロンドン:オレクサンデル・ウシク(左)
2016年リオ:エフゲニー・ティシチェンコ(左)
・スーパーヘビー級
2012年ロンドン:アンソニー・ジョシュア(右)
2016年リオ:トニー・ヨカ(右)
男子の全10階級、オリンピック2大会の金メダリスト20人のうち、実に14人がサウスポー。
これはもう、アマチュアボクシングの舞台で活躍するにはサウスポーが有利なのは間違いなさそうである。
・打たせずに打つ
・少ないラウンドを全力で走り抜ける
もともと左利きなのか、あえてサウスポーに矯正しているのかは不明だが、短いラウンドを効率的に消化するには左構えにするのが定石なのだろうと。
ウェルター級の岡澤セオンなどはその典型である。
前後左右に跳ねるように動き回り、正面を外しながら遠間から右リードを当ててサッと離れる。
ディフェンスは距離と見切りが基本で、相手と距離が近くなればクリンチで動きを封じてブレイクを待つ。極力足を止めずに打ち合いを避けまくり、ひたすらポイントアウトを狙うスタイル。
先日のプロアマ合同のボクシングイベントではホープの佐々木尽を翻弄したらしいが、確かにこれをやられたらプロの選手が短いラウンドで捕まえるのは不可能に近い。
だが、残念ながら観ていておもしろいとは言い難い。
よくも悪くもアマチュアに特化した選手なのだろうなと思わされる。
アマチュアボクシングのよさを初見の僕が考えてみた。要するにウンコに行く余裕があるかどうかが大きいんだろうな
で、サウスポーだらけのトップ選手の中からロマチェンコのような“ハイテク”タイプが台頭して希少性を見出したり、それを凌駕するために今後はスイッチを多用する選手が出てきたりといったことが起こるのかなぁと思ったり。
2013年にヘッドギアが廃止されたことも多少は“打たせずに打つ”に影響を与えているだろうし、歴代のアマチュア選手を振り返ってみるのもおもしろいのかもしれない。
まあ、吐き気が止まらないので僕はやりませんがww
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