江藤、クアドラスの牙城を崩せず大差判定負け!! 具志堅の愛弟子・江藤光喜、カルロス・クアドラスのスピードについていけず、23年ぶりの沖縄出身王者誕生ならず【結果】

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冬の空イメージ
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2015年11月28日に宮城・ゼビオアリーナ仙台でWBC世界S・フライ級タイトルマッチが行われた。

王者カルロス・クアドラスに同級2位の江藤光喜が挑んだこの試合、3-1の判定(117-111、117-111、116-112)でクアドラスが王座防衛を果たした。

果敢に前に出て攻める江藤だったが、スピードを活かして足を使うクアドラスを最後まで仕留めることができず、沖縄から23年ぶりの王者誕生はならなかった。

なお、この試合はペドロ・ゲバラvs木村悠のWBC世界ライトフライ級タイトルマッチとの2大タイトルマッチとして開催された。

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格上相手にまともにぶつかって散った江藤

率直な感想を申し上げると、
「あ〜、正面からまともにいっちゃった……」

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前回の記事でも言ったとおり、僕は今まで江藤の試合を一度も見たことがなかった。今回クアドラスに挑戦するということで、急いでこの選手の試合をいくつか見た次第である。
だが、残念ながらこの選手がクアドラスに勝てる要素があまり見つからなかった。

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まともにやっても江藤がクアドラスの出入りのスピードと激しい手数についていけないのは明白で、勝機を見出すには何らかの工夫が必要であると感じた。
江藤のことをまったく知らなかった僕がちょろっと見ただけでもわかるほど、江藤とクアドラスにはスピードに差があったのである。

それなのに、なぜ真正面からいってしまったのか。
まともに正面からぶつかり、予想通りスピードで翻弄されての敗北。本当にそんな試合だった。

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スピードで上回る相手に、序盤から自分のパンチの軌道を惜しげもなく披露し、追い足の限界値を堂々と公開してみせる。
得意のフックのタイミングをためらいなく見せ、クアドラスのフットワークやハンドスピードについていけないことを早々に露呈する。

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試合の最初からクアドラスに劣っていることをまったく隠すことなく全力で披露し、クアドラスをリズムに乗せていく江藤。
これは江藤本人というより、陣営の作戦ミスではないかと思う。
後半勝負はいいのだが、序盤は戦力を隠すなどもう少し工夫することはできなかったのだろうか。
何だ「江藤のよさは諦めないこと」って。

具志堅会長は能力的にはどうなんだ?
無能なのか?
後半の追い上げが見事だっただけに、ほんの少しの工夫でガラリと変わったのではないかと思えてならない。

5Rにボディをヒットしたことが、クアドラスの警戒心を強めた

江藤の動き自体は悪くはなかったのだ。
特に5、6Rあたりはプレッシャーを強めていいパンチを出していたと思う。ボディやフックなど、右がカウンターでクアドラスを捉えるシーンが増え始めていたのだ。

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5Rの中盤にカウンターでヒットした右ボディ。あのパンチは本当によかった。
よかったのだが、あれによって、かえってクアドラスの警戒心を強めてしまったことも確かである。
江藤と打ち合うのは危険が大きいと判断したクアドラス。結果的にその後のラウンドをアウトボクシングに徹するきっかけを与えてしまったパンチである。流れが変わると思われた5Rだったが、最終的には自らの勝利を遠ざけるラウンドとなってしまった。

7R以降は完全にアウトボクシングに切り替え、手数とフットワークで江藤を翻弄するクアドラス。
必死に追いかける江藤だが、スピード差があり過ぎてついていくことができない。
時折伸びる右ストレートがクアドラスの顔面を捉えるシーンはあるが、江藤が1発出すたびにクアドラスの連打が返ってくる。

連打を集め、左に回る。数発打ち、バックスステップで距離をとる。
このクアドラスの動きに江藤は徐々に翻弄されていくのだ。

9Rに江藤の左がクアドラスを捉えたように見えたが、実は浅い。足を使って打ちながら下がる流れの中でのものに過ぎない。その証拠にラウンド後半のあの猛烈なラッシュである。

クアドラスが体力的に不安がある?
何を言っている。試合を通じて動き続けられるのがクアドラスの持ち味だ。

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しかし、クアドラスは本当にうまい。
一発一発のパンチはオープン気味で軽いのだが、とにかく速い。そしてラウンドのどこかで必ず足を止めて連打をまとめるので、全体を見るとやや優勢な印象を与えるのである。老かいさや経験値においても江藤の一段上をいっていた。

江藤はよかった。もう少し工夫があれば……

それでも江藤本人は本当にがんばったと思う。想像していたよりもかなりいい選手だった。
予想では5、6RでKO負けを喫すると思っていたが、まったくそんなことはなかった。

特に終盤の10〜12Rは完全にクアドラスを押していた。中でもボディの効果は絶大で、一発もらうごとにクアドラスが表情をゆがめて下がる姿が印象的だった。

ただ、やはり序盤から自分のパンチを見せ過ぎていた感が否めない。どうしても的中率が悪く、決定的な一発を当てることができなかったのである。

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個人的には待ちのボクシングでカウンター一発に賭けてもいいのではないかと思っていたが、とりあえず江藤にはまったくそんなそぶりは見られなかった。

カウンターを狙う作戦が正解かどうかはわからないが、クアドラスをあれだけ追いつめられるポテンシャルがあれば工夫次第で奇跡を起こすことは可能だったと思うのだ。

といっても奇跡の域を出ないことは確かだが。

大差判定で敗北の江藤。それでもよくクアドラスを追いつめた

最終ラウンドはひたすら足を使って距離をとるクアドラス。
必死に追いかける江藤だが、コーナーに詰めるたびにスルリとかわされ捕まえることができない。

瞬間的に足を止めて連打を出すクアドラス。そのうちの数発が江藤の顔面を捉える。江藤もパンチを返すが、クアドラスはすでにそこにいない。

残り10秒。
勝利を確信したクアドラスがリングを回りながら両手を上げる。
最後の追い足を見せる江藤。
コーナーにクアドラスを追いつめ、パンチを打ち込む。
ロープに座り込むように攻撃を避けるクアドラス。

ここで試合終了のゴング。
一瞬の期待がため息に変わる。

117-111、117-111、116-112の3-0でクアドラスの勝利!!

ポイント的には大差がついたが、内容は非常におもしろい試合だったと思う。
今回は惜しくも敗れた江藤だが、可能性は十分に感じさせる敗戦だったのではないだろうか。このまま諦めずにどうにか再起していただきたいものである。

特に、スピードのある相手でも構わずに打ち合いを挑むスタイル。これを変える気がないのであれば、もう少し追い足を工夫するべきである。

現状は一方向から追いかけているだけなので、相手としては恐らく逃げやすいように思える。三浦隆司のように相手の進路をふさぐような追い方を身につければ、得意の打ち合いに持ち込めるシーンが増えるのではないだろうか。

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とはいえ、2試合とも白熱した試合で非常に満足できた内容だった。
木村、江藤両選手とも本当にお疲れさまだ。

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