バルデスvsクイッグ感想。体重超過でパツパツのクイッグがバルデスに判定負け。体重超過に対するペナルティが緩い理由?【結果・感想】

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体重計イメージ
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2018年3月10日(日本時間11日)、米・カリフォルニア州カーソンで行われたWBO世界フェザー級タイトルマッチ。
同級王者オスカル・バルデスがランキング10位の挑戦者スコット・クイッグと対戦し、3-0(118-110、117-111、117-111)の判定で勝利。3度目の防衛に成功した試合である。
 
 
これまで通り左右フックを積極的に打ち込んでいくバルデスに対し、一回り大きな体格を活かしてプレッシャーをかけるクイッグ。
 
だが、バルデスのフックからボディへの連打で、たびたび出足を止められてしまう。
ロープ際に追い込み連打を浴びせたいのだが、そのつどバルデスにサイドに回られ反撃を受ける。
 
5Rにフックをヒットしてバルデスをグラつかせたものの、そこから追撃の1発が打ち込めず。
逆にバルデスの手数に翻弄され、攻めきることができない。
 
試合はそのままバルデスペースで進み、12R終了のゴングが鳴る。
結果は3-0の判定でバルデスの勝利。
 
5Rに顎を骨折するなど苦戦を強いられたバルデスだが、強敵相手に文句なしの防衛を飾った。
 
「プログレイスがインドンゴをボッコボコで初戴冠。まんま山中vsルイス・ネリだったな。相性の悪さがモロだった」
 
なお、挑戦者のスコット・クイッグは前日計量で2.8ポンドオーバーで失格。当日も142.2ポンドまで増量(フェザー級リミットは126ポンド)してリングに上がっていたとのこと。
 
試合はバルデスが勝利した場合のみ防衛成功という変則ルールで行われている。
 
「マイキー・ガルシア4階級制覇達成!! リピネッツに3-0で勝利。やっぱりS・ライト級ではスペシャル感は薄れるよな」
 

普通におもしろい試合だった。体重超過はあったけど、それを除けば期待に違わぬ熱戦だったと思います

オスカル・バルデスvsスコット・クイッグ。
 
まず率直な感想を申し上げると、
「普通におもしろかった」
 
僕はこの試合を以前から楽しみにしていたのだが、期待以上の熱戦だったと思う。
 
クイッグの体重超過でケチはついたものの、内容だけを観ればまさに激戦。
「この両者ならこういう試合になるだろうな」という展開そのものだったのではないか。
 
「カネロの禁止薬物陽性の裏でいろいろあったよ。コバレフvsミカルキン、ビボルvsバレラ、ジョシュ・テイラーvsカンポス」
 
そして、クイッグのプレッシャーを真正面から受け止め、耐えきったバルデスのがんばり。
以前から「あまりいい選手には思えない」と申し上げてきたが、最近はそうでもない。ミゲール・マリアガ、ジェネシス・セルバニア、スコット・クイッグと骨太なキャリアを歩むうちに、しっかりと成長している感が強い。
 
僕自身もジェネシス・セルバニア戦あたりから「あれ? ちょっといいかもしれないぞ?」と思い始め、今回の勝利で完全にバルデスのファンに鞍替えであるww
 
「バルデス完勝!! セルバニアを寄せつけず。思ったよりいい選手なのかもなオスカル・バルデス」
 
これなら対抗王者のレオ・サンタクルスにも勝てるのではないか。
割とガチで、WBC王者のゲイリー・ラッセルJr.に次ぐ実力者と言っても過言ではない気がする。
 
「ベルデホ堕ちる…。ロサダに10RTKO負け。復帰戦で番狂わせ、キャリア初黒星を喫する。観てるだけで息切れが止まらん」
 

クイッグの作戦は大正解だった。でも、バルデスの強振に煽られてシャープさを欠いてしまった

とりあえず、今回のクイッグは作戦自体は間違いではなかったと思う。
 
これまでよりも分厚い身体でリングに上がり、フェザー級の中では小柄なバルデスを物量で押し潰す。
得意のプレスをより強化し、接近戦で連打を浴びせてフィジカルでねじ伏せる。
 
体重超過はマジでしょーもないが、やろうとしていたことは明確かつ的確。
クイッグがバルデスに勝つにはこれしかないという方法だった。
 
「決まっちゃったよw ロマチェンコvsリナレス。相性は悪くないけど、実際は難しいかな」
 
ただ、今回のクイッグはシャープさが足りなかったというか、いつもよりもスイングが大振りだった気がする。
 
中間距離での左が大振り過ぎて命中率が悪い。
おかげで打ち終わりに身体が流れ、バルデスのフックをカウンター気味に被弾。そのつど出足を止められてしまう。
 
「ドネアvsフランプトンやっとオワタ(^▽^)/ 退屈過ぎて観てるのがしんどかった試合。いろいろキツい」
 
予想記事でも申し上げたように、クイッグが苦手なタイプは中間距離でのカウンター使い。
2016年2月のカール・フランプトン戦や2017年4月のビオレル・シミオン戦など。最初のリードにカウンターを合わせられると一気に手数が少なくなり、間合いを詰める機会を奪われる。
 
「バルデスvsクイッグ!? またおもしろそうな試合を組みやがって…。今回ばかりはバルデス大ピンチじゃない?」
 
遠い位置でくぎ付けにされ、そのままポイントを失い続ける悪循環である。
 
「さっすがポベトキン。プライスをフック一閃KO勝利。こういう試合が観たいよね。そして、ワイルダーとかいうアフォww」
 
そして、今回はバルデスの強打に煽られて強振した結果、打ち終わりに再三カウンターを被弾してしまった。
本来のクイッグは、もう少しコンパクトに最短距離を打ち抜くタイプなのだが。
 
これもいわゆる「腕を強く振れる選手の強み」というヤツか。
 
「せーの」でパンチを出し、どちらが先に当たるか。
全体的に大ざっぱさが目立つバルデスだが、どんな体勢からでも腕をマン振りできるというのはやはりすごい。
 
日本の木村翔同様、相手に恐怖を与えるフルスイングはすべてのテクニックを凌駕する。
 
「ウォーリントン圧勝! フランプトンを終始コントロールして初防衛成功。うん、思った以上にウォーリントンがすごかった」
 

強敵との防衛戦を経て戦術の引き出しを増やしたバルデス。ハンドスピードでクイッグのプレスを受け止めたのは意外だった

また中盤以降、連打でクイッグを止める方法に切り替えたのもよかったと思う。
 
サイドに動きながら、渾身のフックを打ち込むバルデス。
 
だが、クイッグのプレスは1発では止まらない。
固いガードとパリングで前進し、バルデスをロープに追い詰める。
 
「大竹がドグボエに負ける要素が見当たらない件。世界王座初戴冠おめでとう大竹秀典。どうせ勝つから今から祝福しとこうぜ」
 
そこでバルデスは足を止め、ガードの上から左右の連打を浴びせる。
クイッグに手を出す余裕を与えないスピードで、なおかつノーガードでもらうと危険な強度を保ちつつ。
 
そして、クイッグの動きが止まった瞬間にサッとサイドに回り込む。
 
2016年のクアドラスが持ち前のハンドスピードでロマゴンのコンビネーションをストップしたが、やっているのはそれと同じ。
 
「こいつホントにクアドラスか? アローヨと足止めて打ち合うとか、何があったんだオイ。激しい打撃戦の末にアローヨ判定勝利」
 
基本的にバルデスは1発に力を込めて打つ選手。
なので今回の試合、僕はクイッグのプレスをバルデスの腕力が上回るかどうかが勝敗を分けると思っていた。
 
「バルテレミーvsレリク、グローブスvsユーバンクJr.を観たので感想を。バルテレミーさんの体調の悪さとグローブスの泥仕合ww」
 
それがまさか、軽打を駆使して突進を止めるとは。
個人的に、この対応力にはちょっと驚いてしまった。
 
「お前、こんなこともやるんかい」
「全力で腕を振るだけじゃないんだな」
みたいな。
 
バルデスはクイッグのような攻防分離のインファイターが苦手だと思っていたが、それも見事に克服してみせた。
ミゲール・マリアガ、ジェネシス・セルバニアの2連戦を経て、戦術の引き出しが増えたということか。骨太路線、恐るべしである。
 
「ウォーリントンvsフランプトンは大接戦になりそうだよな。もっと注目されていい試合。勝者がオスカル・バルデスと統一戦?」
 
まあ、その分怪我のリスクが高くなることも確かだが。
 
もともと被弾上等のスタイルなのでピンチも多く、至近距離でのガードの緩さも相変わらず。
今回はとうとう顎を骨折してしまった。
 

クイッグの当日体重がウェルター級だったってさ。体重超過は問題だけど、当日のリバウンドも大概だよね

ちなみにだが、今回のクイッグの当日体重は140ポンドをオーバーしていたとのこと。体格的にはウェルター級に相当する。
 
これには「確信犯だ」「悪質過ぎる」という声が飛んでおり、さすがに「バルデスががんばった」で済まされる問題ではないとも言われている。
先日の山中慎介vsルイス・ネリ戦を含め、体重超過に対してのペナルティを厳しくすべきという意見はますます強くなっている。
 
「山中2RKO負け引退表明。ネリ体重超過で試合に臨み、パワフルな連打で圧倒。めんどくせーけど、一応感想を言っておこうか」
 
だが、同時に「当日のリバウンドも大概じゃない?」という声もちょいちょい耳にする。
 
今回のクイッグの当日体重が約64.5kg。
フェザー級のリミットが約57.15kgということを考えると、リミットよりも7kg以上重い。
 
前日計量の時点では約1.3kgオーバー。
だが、当日はリミットから約7kgオーバー。
 
実際、どちらの方がタチが悪いのだろうか。
マジでよくわからない。
 
「ボクシングの体重超過が完全に様式美な件。体重超過を減らすには? やらかすメリットを削ればいいんじゃないの?」
 
たとえば2017年3月のゲンナジー・ゴロフキンvsダニエル・ジェイコブス戦。
IBFの当日軽量を拒否したジェイコブスが異様に巨大化してリングに上がったことが問題視されたり、過剰なリバウンドはたびたび話題に挙がる。
 
また、2017年1月のセルゲイ・リピネッツvs近藤明広戦での近藤も失笑レベルでデカかった記憶がある。
あまり言われていないし、僕の気のせいかもしれないが。
 
「近藤明広がリピネッツを圧倒しながら惜敗。試合は支配してたけど、手数とヒット数がまったく足りず。やってしまいましたなぁ」
 
前日計量の体重超過には凄まじい批判が渦巻く反面、当日のリバウンドの危険性についてはそこまで厳しい意見は聞かれない。これは不思議と言えば不思議である。
 
ルール違反そのものを糾弾されているのか、それとも体重差による競技の不均衡について言われているのか。
実はいまいちピンときていない。
 
「エマヌエル・ロドリゲスなかなかいいっすね!! ポール・バトラーを寄せつけず。井上尚弥vsペッチバンボーンだったな」
 

体重超過と当日のリバウンドを制限すると困ったことになるかも。実は日本人選手が一番影響を受けるんじゃないの?

仮に体重超過に対するペナルティが強化され、当日のリバウンドも制限された場合、恐らくボクシング界の勢力図はガラッと変わる。
 
多くの選手が階級アップを強いられ、無理な減量による複数階級制覇も激減する。防衛を続けるのが困難な王者も続出するだろうし、ランキング下位から台頭する選手も増えるのではないか。
 
「圧勝ダニエル・ローマン。松本亮手も足も出ず。誰だ松本が勝つとか言ってたヤツは? 僕だけどww まあ相手が悪いよ」
 
そして、もしかしたら一番影響を受けるのは日本人選手ではないかと思っている。
 
階級ごとの体重差が小さい軽量級に有力選手が多く、なおかつ前日計量→当日の大幅なリバウンドが主流。
 
フライ級の比嘉大吾が9.5kgなどという無茶な減量を続けるのも、当日のリバウンドありきで計算しているから。
仮に比嘉大吾がナチュラルウェイト(S・フェザー級orライト級)で試合をしたら、今の圧倒的なパフォーマンスを維持できるとは思えない。
 
正直、当日リバウンドの恩恵をもっとも受けているのが日本のボクシング界なのかもしれない。
 
「比嘉vsロサレス予想。って、もう防衛戦やるの?!」
 
確かに体重超過はダメだし、ルールの抜け穴を突いた当日のリバウンドも微妙な気がする。
 
ただ、そこをギッチギチに縛ると、いろいろな不都合も出てくるのではないか。
 
繰り返しになるが、複数階級の制覇が困難になることは間違いない。
防衛回数よりも3階級、4階級制覇に価値が置かれる現状、選手の生涯年収にも影響するはず。
 
それこそ「1回だけ減量をがんばって、とりあえずミニマム級を戴冠」→「さっさと返上」→「2階級目にチャレンジ」というパターンは滅びる可能性が高い。
 
「田中恒成フライ級初戦。ロニー・バルドナドは結構おっかない? 無敗対決の世界前哨戦を制してタイトルマッチに進めるか」
 
「体重超過に厳しいペナルティを」と叫ばれるわりになかなか話が進展しないのも、そういう実利の部分が影響しているのかもしれない。「メインの試合を中止すると興行が成り立たない」という理由だけでなく。
 
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