那須川天心vs武尊感想。衝撃的に強かった天心。この日の天心には誰も勝てないんじゃない? 武尊もあきらめずにがんばった感動的な試合【THE MATCH 2022】
2022年6月19日に東京ドームで開催されたTHE MATCH 2022。
メインイベントでは約7年間待望され続けたキックボクシングの頂上決戦、那須川天心vs武尊戦が行われ、初回にダウンを奪った那須川天心が5-0の判定勝利を挙げた。
僕もこの日は1日中画面に張り付いてAbemaTVを視聴していたのだが、いやおもしろかった。
階級の違う選手同士の対戦ということで試合前から当日計量、戻し制限、グローブその他、あれこれと条件がつけられ中には「おいおい」と思うこともあったが、試合自体はめちゃくちゃおもしろい。アンダーカードの充実ぶりも含めてPPV代5500円分は十分元が取れたと思う。
さらに今回は「試合を観ながら感想を言っていく」リアルタイム実況もどきをやってみたのだが、うん、これはアレだな。
2度とやらなくていいな笑
しんどい上に集中力も削がれる。
“ひと言感想”のつもりがテンションが上がるとだんだん冗長になっていくし、反射で書いているせいでところどころ言い回しもおかしい。
最初は投稿を2つに分けようと思っていたのが、何だかんだで5つまで膨れ上がってしまったという笑
おかげで視聴後の満足感に疲労感がプラスされて完全な抜け殻状態である。
→THE MATCH 2022結果一覧&ひと言感想(前半5試合)。KOが少ない軽量級はRISEが有利なのかもしれんね
→THE MATCH 2022結果一覧&ひと言感想(中盤3試合)。体重が上がるとやっぱり爆発力のあるK-1に傾くかな
→THE MATCH 2022結果一覧&ひと言感想(中盤4試合)。ゴンナパー最高かよ。僕はこの試合を一番楽しみにしてたんだよ笑
→THE MATCH 2022結果一覧&ひと言感想(セミセミとセミの2試合)。原口がすごすぎたし野杁vs海人はハイレベルすぎて意味不明
→THE MATCH 2022結果一覧&ひと言感想(メイン)。いよいよ那須川天心vs武尊。よくここまでこぎ着けたよ
そして一夜明け、多少冷静になったところでメインの那須川天心vs武尊戦を観直してみたので、その感想を言っていくことにする。
Breaking Downが単純におもしろかった件。賛否両論あるけど僕は好き。オーディション編はいらないけどねw 木下優樹菜の輩感、馴染み方が尋常じゃない
試合前の僕の展望。武尊の判定勝利を予想してたけど、6オンスグローブと聞いて天心寄りに傾いた
まず何度か申し上げているが、僕の試合前の展望は下記。
那須川天心vs武尊予想。やるなら2021年末のRIZINか? どっちでもいいからさっさと結論を出せよ。契約体重次第だろうけど、有利なのは…
・武尊はvsサウスポーが苦手
・2019年11月の武尊vs村越優汰戦が参考になりそう
・ここ最近の天心はやや距離が近い
・中間距離での天心は村越よりもできることが少ない?
・天心攻略にはインローや右ミドルが有効だが、武尊にはそのバリエーションがなさそう
・天心がスピードと右リードを駆使して武尊の圧力をどこまでさばけるか
・2Rまでは天心が粘ると思うが、3Rに入るとスタミナ切れを起こす?
・3Rに天心が安全運転モードに入ると危ない
・勝敗予想はまったくわからないけど、一応武尊の判定勝利で
2019年11月のvs村越優汰戦を観る限り武尊がサウスポーを苦手としているのは明らか。
恐らく天心攻略には志朗やクマンドーイが見せたインローや右ミドルが有効になるが、武尊がサウスポー相手にそういう蹴りを出しているのを観たことがない。
一方の天心はここ最近ボクシングに傾倒してか、若干距離が近くなっている。
さらに以前に比べて安全運転志向が強くなり、特に最終3Rは倒すよりも倒されない方を重視している印象。
武尊の殺気、勝負強さを考えるとこれはかなり危ないのではないか。
何とも言えないところだが、ラストラウンドで気持ちが後ろ向きになった天心が武尊に捕まると想定して、勝敗予想は武尊の判定勝利とさせていただいた。
ところが数日前に発表されたルールによると、グローブは普段使っている8オンスではなく6オンスを使用するとのこと。
これは一見すると馬力のある武尊が有利に思えるが、いやちょっと待てよ? と。
グローブが小さいということはガードの間を抜けやすくなるわけで、ブロック&リターンが中心の武尊にとっては意外とやっかい? かも?
逆に距離と見切りで勝負する天心はグローブがデカかろうが小さかろうが触らせなければどうということはない。
これによって僕の勝敗予想は天心寄りに傾いた次第である。
衝撃的に強かった那須川天心。KOを量産していたころの強さが戻った。この日の天心に勝てるヤツなんかおるの?
試合の感想だが、天心が衝撃的に強かった。
安全運転に傾倒気味だった最近の試合とは一線を画すというか、アクロバティックかつ人間離れしたスピードと当て勘でKOを量産していた2016、2017年頃を想起させた。
表題の通りなのだが、この日の天心に勝てるヤツなどこの世におらんのじゃないの? というくらい。
いまいちピリッとしなかった&父親との確執も生まれた前回の風音戦とは真逆。すべてが吹っ切れた那須川天心のすごさにひたすら驚愕させられた。
那須川天心vs風音戦感想。天心の勝ちで問題ないと思うけど、攻略のネタが揃いつつあるのが…。これは武尊有利に傾きつつあるんじゃない?
1R、リング中央で対峙する両者。
やや距離が遠く、お互いにパンチを当てるにはもう一歩踏み込む必要がある。
サウスポーの天心は左回りで正面に回り込み、前蹴りやロー、左ミドルで武尊を突き放す。
武尊もローやミドルを返すが、天心は小さいバックステップで回避。まともに触らせずに距離をキープする。
そして今度は右回りで武尊の外側を取り、ガードの真ん中から右リードをヒット。
武尊が右を打ち込んでくればそこに抜群のタイミングで左カウンターを合わせていく。
何というか、両者のスピードと精度が段違い。
同時打ちのタイミングでは天心のパンチが先に到達し、武尊がワンツーを出せば“ツー”の前に天心のカウンターが武尊の顔面を揺らす。
1R後半のダウンに関しては「凄いっす。恐れ入りました」としか言いようがない。
リアルタイムで観ていた際にはあまりの速さに一瞬何が起きたか理解できなかったのだが、改めてスローで観ると「うわ、やっば……」と。
お互いの右が交錯した瞬間、ワンテンポ遅れて天心の左が武尊の顔面を切り裂く。
同じタイミングで追撃姿勢に入ったはずが、武尊のモーションがスタートしたときにはすでに天心は左を振り抜いているという。
【THE MATCH】天心“世紀の一戦”制す!武尊から1Rにダウンを奪って判定5ー0で勝利https://t.co/PVxsuHpYDN
那須川天心が武尊を判定5―0で下し、キックボクシングラストマッチで有終の美を飾った。“神童”はキックボクシング42戦42勝無敗のままボクシングの道に進む。 pic.twitter.com/ht9treOcDD
— ライブドアニュース (@livedoornews) June 19, 2022
那須川天心の“狂気のような冷静さ”と、笑顔で打ち合った武尊の気迫、流した涙…2人はなぜ、最高の舞台で「死ぬ覚悟」だったのか(橋本宗洋)#那須川天心 #武尊 #THEMATCH2022 #THEMATCH #RISE #K1 https://t.co/K5bYUBc1j0
— Number編集部 (@numberweb) June 20, 2022
武尊がやや入れ込み過ぎ、序盤から力が入り過ぎだったのもあるとは思うが、それを踏まえた上で。ここまで置いてきぼりにされたのはちょっと驚きだった。
両者の経験値、天心の狡猾さが出た2R。あらゆる方法、ルールを駆使して勝ちを拾いにいく
続く2Rは天心の狡猾さ、経験値がモロに発揮されたラウンド。
序盤は1Rと同様、右リードとバックステップを中心に組み立てる天心だが、40秒を過ぎたところで得意の胴回し回転蹴りで時間を稼ぐ。
直後に豪快なバッティングで右目を強打するものの、ここではしっかりと時間を使って回復を待つ。もちろん大げさに痛がることで武尊にプレッシャーを与えることも忘れない。
再開直後、ようやく力が抜けて回転力が上がってきた武尊の危険度をいち早く察知。若干距離が近づいたことを受けてクリンチや首相撲からの膝等、近場でのゴチャゴチャで武尊の攻撃機会を封じていく。
遠い間合いではこれまで通り右リードとサイドへのステップで翻弄し、危ない距離に入ればさっさとくっついてレフェリーのブレークを待つ。
イライラした武尊が思わず投げてしまった際には先ほどと同様、これでもかというくらいに大げさに痛がる&しかめっ面でレフェリーにアピール。
過去何度か天心が相手選手を投げ飛ばすシーンを目にしてきたが、そんなことは忘却の彼方に吹き飛ばせばいい笑
どつき合い、倒し合いが評価されるK-1で真正面から勝負してきた武尊と、RISE、RIZIN、Knockout、肘なし、肘あり、総合、ボクシングとさまざまな舞台、ルールの中であらゆる方法を駆使して勝利を重ねてきた天心。
どちらがいいも悪いもないのだが、とにかく両者の経験値の差を感じたラウンドだった。
RISE、GLORY、K-1。ルールの異なるキックボクシングに混乱。「対世界!!(キリッ」→どうしても噛み合わない試合が増えるよな。直樹、山田洸誓、海人、原口健飛、ゴンナパー
あきらめない武尊としっかり打ち合った天心。少しでも守りに入ると危ないと思ったけど完全に杞憂だった
そして迎えたラスト3R。
正直、天心は2R後半からかなりゼーハーしていたと思う。
試合の流れは掴んでいたしルールの中での狡猾さも発揮されていた。
だが、それでも武尊の圧力は並大抵ではない。
上述の展望で「2Rの終わりくらいから天心はスタミナ切れになるのでは?」と申し上げたが、割とそれに近い状態だった気がする。
で、「ここで守りに入ると相当危ない」「武尊の馬力に飲み込まれるパティーンもあり得る」と思っていたところ……。
当の天心にはまったくそんな素振りはなく。
これまで同様に右リードで距離を測り、サイドに動きながら武尊の突進を回避。
そこで距離を取ることはせず、立ち止まって左のカウンターで応戦するなどしっかり受けて立ってみせる。
マジな話、これはちょっとすごかった。
1Rの閃光のような左カウンターにも驚いたが、疲労困憊のあの局面で打ち合う覚悟にはさらに驚かされた。
ラウンド中盤には武尊のパンチも何発か入っていたし、実際少し効いた場面もあったと思う。
ただこの日の天心はそこで弱気にならず、守りに入ることなく右リードを出し続けてカウンターを合わせ続けた。
劣勢の中でもあきらめずに足を止めなかった武尊もすごいが、その武尊に打ち勝った天心もすごい。
信じられないくらいデカいものを背負った超人同士が最後までクソ意地を張り合った3R9分間。
この試合に対してあれこれ言いたい人も多いとは思うが、少なくとも僕は両者のがんばりに大満足している。
K-1は最高だけど最強じゃなかった。K-1勢が苦戦した理由? よくも悪くもキックボクシングではなく“K-1”なんだろうな。RISE&SBとの対抗戦感想、雑感
ちなみに解説の魔裟斗が再三「武尊はいきなりの右がよくない」「左ジャブでもローでも出せば流れが変わるのに」と言っていたが、いや、武尊にはvsサウスポーでのローキックのバリエーションがないんですよね……。