高山勝成vsエルウィン・ソト感想。突然のストップに驚いたけど、ソトはまだ精神が若いんだろうな。矢吹正道なら勝てたんじゃないの?【結果・感想】
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2021年5月8日(日本時間9日)、米・テキサス州で行われたWBO世界L・フライ級タイトルマッチ。同級王者エルウィン・ソトにランキング11位の高山勝成が挑戦し、9R2分44秒TKOでソトが勝利。3度目の防衛に成功した一戦である。
開始のゴングとともに軽快なステップでリングを旋回する高山。
対する王者ソトは高いガードとどっしりした構えで前進し、高山にプレッシャーをかける。
ラウンド中盤に高山が身体を伸ばしてボディにストレートを放つと、打ち終わりにソトが大振りの右フックを被せる。この右が側頭部を捉え、高山が大きくバランスを崩す。
その後もたびたびソトの強打を浴びて動きが止まる高山だったが、持ち前のフットワークと連打を駆使して王者に追いすがる。
7Rからはボディを中心にソトを攻め立て流れを引き寄せたかに見えたが……。
9Rに入ってやや動きが落ちたところにソトのフックを浴び、再びグラつきを見せる高山。何とか立て直したものの、両者がリング中央で対峙したことろでレフェリーが割って入り試合をストップ。唐突な終了により、ソトの3度目の防衛が決定した。
ジョナサン・ゴンサレス初戴冠。ソト陥落は普通にあり得た結果か。矢吹正道がマッチルームと契約。拳四朗側から興行権も買い取る太っ腹
高山のパフォーマンスはあまりよくなかった。調整不足か階級アップか、理由はいろいろあると思うけど
まず今回の試合、高山勝成のパフォーマンスはそこまでいいとは思わなかった。
準備期間の短さによる調整不足か、短期間でプロ→アマチュア→プロと改造を繰り返したことの弊害か、階級アップによるパワー不足か、単純な加齢による衰えか。もしくはそのすべてなのかは不明だが、とにかく僕の記憶にある高山勝成に比べて若干精彩を欠いていたように思える。
この選手の持ち味は何と言っても縦横無尽に動きながら浴びせる連打とそれを試合を通して継続できるスタミナ。さらに開始のゴングと同時にフルスロットルで動き回るダッシュ力も持ち合わせる。
出だしのスタートダッシュで相手を引き離し、そのまま全力で12Rを走り抜ける。これこそが高山勝成の最大の武器という印象である。
だが今回は開始直後にエンジンがかからず、ようやく暖まってきたのが5Rあたり。
久しぶりの12Rに加えていきなり右フックを効かされたのもあったとは思うが、とにかく序盤は試合勘? 的なものがあまり戻っていなかったのかなぁと。
最初からソトの右フックが合ってたのもキツかったな。復元に一瞬遅れが生じ、そこにドンピシャでフックが飛んでくる
もちろん階級アップによる耐久性の違いも少なからず影響していたと思う。
ミニマム級→L・フライ級に転級したことで当然相手の耐久力、サイズもアップする。懐の深い相手に威力のあるパンチを当てるにはそれだけ深く踏み込む必要があり、その分復元にも時間がかかる。
恐らくボディストレートでソトの出足を止めるというのが陣営の作戦だったと思うが、それが逆に仇になったというか。ボディに腕を伸ばして元のポジションに戻るまでに一瞬遅れが生じ、そこにドンピシャのタイミングで右フックを食ってしまった。
また近場での打ち合いを挑む局面もあったが、どうしてもパワー差を埋められず。持ち前の連打で流れをつかみかけてもパワフルな1発であっさりチャラにされる流れ。
結局あの右フックには最後まで苦しめられたわけだが、方向転換の際に生じる一瞬の間とソトのフルスイングが見事なくらいに合ってしまっていた。
高山勝成がエルウィン・ソトに挑戦。どうせなら勝っちまえよ。ついでに京口にも勝っちゃえ。統一王者の最年長記録とかあんの?
ストップは早かったよね。止めるタイミングも意味不明だったし。ちょっとかわいそうな終わり方だった
なお物議を醸したストップのタイミングについてだが、これは正直早いと思った。
試合後のシャドーでもわかるように高山本人はまだまだ元気だったし、そもそもリング中央で両者が向き合ったところにレフェリーが割って入るなどあまり観た記憶がない。
先日ウズベキスタンで統一王座戦に挑んだS・バンタム級の岩佐亮佑がこれまた「早いんじゃないか?」というタイミングで試合を止められたが、あの試合は割と早い段階でレフェリーが「いつ止めようか」という仕草を見せていた。
なので、早いか遅いかはともかくセコンドがそれを察知して本人にハッパをかけたりすれば少しは違ったのでは? などと申し上げた記憶がある。
中谷潤人vsアンヘル・アコスタ。「中谷強かったね」しか感想がないんですよね。井上尚弥に次ぐスター候補と言われてもピンとこない
だが今回のストップはあまりに唐突かつ意味不明なタイミング。さすがにアレをセコンドに察知しろというのは不可能に近い。
諸々の意見はあるとは思うが、僕的にはちょっとかわいそうな止められ方だったなと。
あのまま続けても高山の勝機は薄かったから早く止めたとか? でも、この選手の最大の持ち味は回復力なんですよね
まあ、あのまま続けても高山の勝機は薄いという判断だったのかもしれないが。
申し上げたように今回は両者のパワー、フィジカルにかなりの差があり、高山がいくら手を出してもソトの1発ですべてチャラにされてしまう状況が続いていた。
高山本人は「芯を外していた」とコメントしていたが、1発もらうたびに動きが止まったり大きくよろけたりを繰り返していればダメージの蓄積が疑われても不思議はない。
また、8Rまでのポイントが一方的(だとレフェリーが思っていた)+高山のパンチではソトは倒れないことを加味すると、あの局面から逆転するのはまず不可能。無駄にダメージを負う前に試合を終わらせたという可能性も?
クソほど好意的に解釈するとこんな感じになるのだが、どうだろうか。
というか、忘れてたんですけど高山勝成のもっともすごいところって、あの回復力なんですよね。
この試合でも都合5回ほど盛大にグラつかされているのだが、それでも次の瞬間には何ごともなかったように動き回っている。
縦横無尽に動き回るフットワークやスタミナ、手数ばかりが注目されるが、明確に効かされてからのリカバリー能力は他に類を見ないレベルと言える。
さらに「序盤の猛ダッシュ→中盤の中だるみ→後半の巻き返し」というのがこの選手のいつもの流れ。そう考えると、次のラウンドからがまさに見せどころだったのだが。
ちょうど中だるみの時間帯で足が止まったところにソトの右フックを食ったせいで、レフェリーに限界だと思われてしまったのかなと。
王者エルウィン・ソトはまだまだ未成熟で穴も多い。今さらだけど、矢吹正道なら勝てる可能性もあったんじゃない?
一方、王者のエルウィン・ソトについてだが、こちらはまだまだ未成熟な選手という印象である。
ガードも硬いし1発の威力もある。
やや攻防分離気味だが、足のある相手を追い詰める足も持ち合わせる。
何より身体の強さと躊躇のないフルスイングは魅力的。京口紘人とは間違いなく噛み合うタイプだと思う。
だが序盤にぶん回し過ぎてガクッと失速したり、高山の手数にムキになって連打で対抗したりと精神面の粗さも目立つ。
さらにボディへの連打を露骨に嫌がるなど、随所に「あれ?」と思わせる仕草も目についた。
恐らく7万人以上の観客の前で「早いラウンドでカッコよく倒してインパクトを残すぜ」と張り切っていたのだと想像するが、まったくそうはならず。
それどころか、高山の回復力と手数に手を焼きモヤモヤしたまま微妙なストップ勝ち+試合後のシャドーで主役の座を根こそぎ持っていかれる結果に。
僕のスレイマン・シソコ!! 鋭い左と距離感。でもトップレベルと比べて若干バネが足りないかな…。キーロン・コンウェイもがんばってたな
いい選手には違いない上に顔面偏差値も高い。
だが、同時に穴も多い。
何となくだが、高山より先にオファーを受けていた(らしい)日本王者の矢吹正道なら勝てる可能性があったのではないか。
あのL・フライ級離れしたリーチを活かしたカウンターがあれば、普通にいい勝負になった気が……。
詳しい事情がわからないので今さらあれこれ言う気もありませんが。
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