田口がデラローサを9Rでストップ!! 採点でリードを許すも中盤以降に流れを変えて勝利を手繰り寄せる!! 強カワイイ王者が苦戦の末に大晦日の防衛を果たす【結果】
WBA世界L・フライ級王者の田口良一が、2015年12月31日に東京・大田区総合体育館で同級7位のルイス・デラローサと防衛戦を行い、9R終了TKOでの勝利を挙げて2度目の防衛に成功した。
立ち上がりからデラローサの圧力に押され気味の田口だったが、的確なパンチをデラローサの顔面にヒットするなど中盤以降ペースを取り戻す。
顔が腫れ、視界が塞がったデラローサがギブアップを申し出て田口が勝利を掴んだものの、前のラウンドまでの採点では85-86、87-84、84-87の1-2でリードを許す苦しい内容での防衛となった。
2013年に井上尚弥との大激戦の末に判定で敗れたものの評価を上げた田口。その甘いマスクから強カワイイと評されるが、たくましさも兼ね備えた強いチャンピオンへと成長できるか、今後に注目である。
デラローサの圧力を完全に持て余す田口。こんなに攻防分離だったか?
試合開始のゴングが鳴るとともにデラローサが頭を振り、両腕を振り回しながら前に出る。圧力に押され気味の田口。打ち返してはいるが、デラローサの突進を止めることができない。
「木村悠防衛失敗!! ガニガン・ロペスの接近戦をさばけずに判定負け」
あれ? 田口ってこんなに攻防分離だったっけ?
確か井上戦ではもっと距離詰めて近場でクネクネ動いてうまくカウンター合わせてた記憶があるけど……。井上の踏み込みに合わせて自分も一歩前に出て、芯で食わないような位置取りが本当にうまかったと思うんだけど……。
「井上尚弥強し!! パレナスをまったく寄せ付けずに2RでのKO勝利!!」
まず、前回の記事でデラローサをかませ犬中のかませ犬の申し上げたが、この選手は実際かませ犬だったと思う。
今回のタイトルマッチを一世一代の大勝負と位置付けていたのだろう。決死の覚悟で田口に向かってきたことは十二分に感じられたが、だからといってあれほど苦戦する相手ではなかったように思う。
ラフに振り回してはいたものの、あれだけフックを大振りしてくるのだから本来なら普通にワンツーをヒットすることができたのではないだろうか。
僕が田口びいきで見ているせいで正常な判断ができなくなっているのか? それともこのデラローサに完封勝ちしたゾウ・シミンは田口よりもはるかに上なのか?
ちょっとわからないが。
「田口vsデラローサ!! 予想必要か? この試合。かませ犬の中のかませ犬じゃねえか」
思うに、田口が後半歩か一歩程度近づいて打ち合えば、デラローサのフックをかいくぐって自分のパンチだけを当てることができたのではないだろうか。
前半押され気味だったとはいえ、要所要所では田口はいいパンチを入れていたのだ。コンパクトにまっすぐ出したジャブや肘をたたんで打った左のフックなど、顔面を捉えてデラローサの前進を寸断するシーンは随所に見られたのである。
3Rの残り40秒あたりの右の打ち下ろしからの左や4R開始直後の左の連打、そして左のボディなどはその典型で、背が低く頭を下げて前に出てくる相手を止めるのに効果的なパンチは出ていたのである。
「田口良一vs宮崎亮予想!! 物足りない世界戦? 全然そんなことはない。絶対おもしろい試合になるから」
ただ、いいパンチが何発か出ても、すぐにデラローサのラフな大振りに巻き込まれ、ガードを固めてパンチを防いだ後に自分も振り回すという攻防分離の雑なボクシングに戻ってしまっていたのだ。
「河野公平vsコンセプシオン予想!! キツいか河野。強敵来襲で激戦必至」
中盤にデラローサが失速。ペースを掴んだ田口が効果的なパンチをヒットする
試合の流れが変わったのは6R。
本人も言っていたように足を使って左回りに動き始めたのと、試合序盤からうまく当たっていた左のボディを増やしたことが効果的だった。
前半飛ばしまくったデラローサが5Rの中盤くらいから失速し始めていたことも相まって、ようやく田口が自分を取り戻し始めたのである。
それまでの頭をくっつけて打ち合うスタイルからの切り替えがうまくできたことでデラローサの顔面を捉えるパンチが増え、試合のペースを握ることができたのだ。
「村田vsガストン・アレハンドロ・ベガ予想!! 上海での村田諒太のプロ9戦目」
今回のデラローサ戦、僕は田口が前回のクワンタイ・シッモーセン戦ほどボディを当てることは難しいと思っていた。
デラローサはクワンタイ・シッモーセンよりも身長が低く、しかもそこからさらに低く構えるタイプである。なので効果的なボディを打つのは難儀するのではないかと予想していたのだ。
だが、田口のボディ打ちは僕の予想よりもはるかにうまかった。
あれだけ胴が短く的が小さい箇所を何度も的確に打ち込めるは相当の反復練習をしてきている証拠なのだろう。さすが努力型の隠れた激闘王である。
距離をとって細かく左を当てることによって、右のフックも当たり始めた田口。
疲れとボディによるダメージで前半の圧力が影をひそめたデラローサは頭を振るだけで前に出ることができない。田口はデラローサをリング中央にはりつけにしたまま、左に回りながらジャブと右フックをどんどんヒットさせていく。
左、右と強振するデラローサだが、踏み込みが甘く田口のバックステップに軽々と避けられてしまう。そしてデラローサの打ち終わりに田口の右がカウンターでヒットする。
田口のパンチがヒットするたびにデラローサの顔面が腫れ、視界を蝕む。
デラローサの大振りのフックをバックステップでかわした田口がシャープな右フックをヒットする。
そうそう、それを最初からやらんかい。
「田口良一vsカニサレス予想!! 安定王者田口が無敗の強敵ファイターと対決。よし田口、力でも技でも圧倒して勝て」
グロッキー気味なデラローサ。9Rに田口がTKO勝利を飾る!!
7R以降は再び頭をくっつけて打ち合う展開になるが、完全に失速したデラローサに対してリズムを掴んだ田口が終始打ち勝つ。
試合序盤はデラローサの腕が一番伸びる位置で打ち合ってしまっていた田口だが、デラローサの圧力が弱まったことでもう一歩近づいた位置での打ち合いが可能になる。おかげでコンパクトなパンチがうまくデラローサを捉えることができるのだ。
失速したデラローサは田口を押し返すこともできず、もともと手数やパンチの正確さでは劣っているので必然的に劣勢の展開に追い込まれてしまう。
そして9R終了後。
デラローサ陣営がギブアップを申し出る。
9R終了時TKOで田口良一の勝利!!
パンチで目が塞がってしまい、視界がゼロに近いために続行不可能と判断したとのことである。
9Rまでの判定では85-86、87-84、84-87の1-2で、リードしていたのはなんとデラローサ。田口にとってはまさしく辛勝防衛といえる内容の試合だった。
今日の田口は気負い過ぎか? KOを狙い過ぎるのはよくないぞ
繰り返しになるが、このデラローサは防衛戦の相手としては安パイのボクサーだったと思う。八重樫との統一戦を希望する田口にとって、できることなら完勝でクリアしたい相手だったはずである。実力的にも中盤以降の内容を見る限り、かなりの差があったのではないだろうか。
「八重樫vsハビエル・メンドサ!! 赤っ恥予想の言い訳をしていくぞww」
では、なぜ田口はここまで苦戦してしまったのだろうか。
報道にも出ていたとおり体調不良によるコンディション不足、調整不足というのは当然あったのだろう。
だが、理由はそれだけではないような気がする。
今回の試合、予想記事でも申し上げたように田口が判定勝ちで防衛する可能性がかなり高いと思っていた。
そして、2日間で世界戦が7試合もあるボクシング祭りで、大晦日開催とはいえ内山のバーター扱いの田口の試合は判定防衛では視聴者の記憶には残らないだろうとも申し上げた。
我ながら失礼極まりないが、2016年も田口は日陰チャンピオンのままなのではないかとまで言ってしまっている。本当に失礼極まりないが。
「内山がフローレスを粉砕!! 誰がゴリラをリングに上げていいって言ったよww」
田口本人も恐らくそのことはわかっていていたのだろう。
「名前を売ろう」「派手に倒してやろう」「統一戦に向けてアピールしよう」と、必要以上に気負っていたのではないかと思う。
確かに大晦日の世界戦という一大イベントで目立てば一気に知名度も上がるし、人気が出る可能性も高い。しかもこれだけの世界戦がある中で目立とうと思ったら、試合内容も相当のインパクトを残さなくてはならない。ましてや同じジムには内山高志というスターがいる。
田口自身、自分を売ろうとするあまり力が入り過ぎたのではないだろうか。
確かにインパクトを残そうという姿勢は大事だし、それをしなくては田口は相変わらず地味なチャンピオンのまま2016年を迎えることになる。
ただこれには一長一短ある。
無理に倒しにいくことで自分のペースを崩し、劣化を早めるという危険性もはらんでいるのだ。
その典型的な例が長谷川穂積で、観客を楽しませようと意識するあまり得意のスタイルを曲げてまでKOを狙う試合が続いた。KO勝利自体は増えたものの、そのせいで本来の自分を見失い、レベルの高い相手にKO負けを喫するという悲劇を招いたのである。
「長谷川穂積辛勝!! カルロス・ルイスに2度のダウンを奪われながら僅差判定勝ち」
KO率を見てもわかるように、田口はもともと粘りのボクシングが信条のボクサーである。相手に絡みつくようにねちっこく粘って、ポイントを奪うというスタイルが持ち味の選手だ。
ところが、前回の防衛戦くらいから多少無理をしてKOを狙いにいっている雰囲気がある。これがちょっと気がかりなのだ。
本来のねちっこく相手にまとわりつくようなボクシングを忘れて、無理に倒しにいく癖がつき始めているのではないかという気がするのである。
実際これはかなり危険な兆候だ。かませ犬相手であれば問題なく勝てるだろうが、統一戦などを見据えるとかなり厳しいと言わざるを得ない。
もしかしたら、再起不能レベルのKO負けを喫してそのまま引退という最悪のパターンすらも考えられるのではないだろうか。
もちろん杞憂であって欲しいのだが。
ただ、倒しにいく姿勢を見せないと人気も出ないし統一戦どころじゃなくなるのも確かで、どちらにしても難しい立場であることは変わりない……。
何度も言うように、僕は田口のファンである。どうにかこの選手が注目される存在になってもらいたいのだが。
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