重岡銀次朗vsレネ・クアルト。フィリピン選手攻略のお手本のような試合。ビデオ判定でモロニーvsフランコ戦のクソさを思い出した【結果・感想】

重岡銀次朗vsレネ・クアルト。フィリピン選手攻略のお手本のような試合。ビデオ判定でモロニーvsフランコ戦のクソさを思い出した【結果・感想】

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2023年4月16日に東京・国立代々木第二体育館で行われたIBF世界ミニマム級暫定王座決定戦。同級4位重岡銀次朗が同3位レネ・マーク・クアルト戦に9R2分55秒KOで勝利。初の王座戴冠を果たした試合である。
 
 
今年1月のダニエル・バラダレス戦で不可解なノーコンテストで王座戴冠を逃した重岡銀次朗。
 
それを受けて、暫定ながらも仕切り直しのタイトルマッチが組まれた今回。対戦相手のレネ・マーク・クアルトはペドロ・タデュランやダニエル・バラダレスとも対戦経験のある強豪で、王座戦は2022年7月以来となる。
 
ダニエル・バラダレスの厚かましさ、世界王者への執着を支持する。あのまま続ければ重岡銀次朗が勝ってたっぽいけど。世界王者にはそれくらいの図々しさも必要?
 
試合は1Rに重岡がいきなりダウンを奪われるものの、そこからジャブを駆使して徐々に盛り返す。
さらにクアルトの踏み込みが鈍った中盤以降はボディ、顔面への連打でペースを支配する。
 
そして計3度のダウンを奪った末の9RKO。初回のダウン以外はほぼ流れを掴んだ上での勝利を挙げている。
 

前回のバラダレス戦、初のビデオ判定(VTS)導入によって重岡銀次朗に興味がわいた

前回、王者ダニエル・バラダレスの偶然のバッティングで試合が続行不可能となり、王座戴冠を逃した重岡銀次朗。
すぐさま再戦が計画されたものの、今度はバラダレスが左鼓膜を負傷して長期間試合ができない事態に。
 
これを受けて組まれたのがランキング3位のレネ・マーク・クアルトとの暫定王座決定戦である。
 
 
僕はこれまで重岡銀次朗にもレネ・クアルトにもあまり興味がなかったのだが、前回の不可解な結果やクアルト戦決定までのいきさつがあまりに妙だったせいで逆に興味が出た。
 
また日本で初めてビデオ判定(VTS)が導入されたことも試合を観ようと思ったきっかけである。
 
僕はスポーツの現場におけるビデオ判定がゲロを吐くほど嫌いなのだが、それを含めて視聴意欲がわいたことをお伝えする。
 
ジェイソン・モロニーvsアストロラビオ。え? これモロニー勝ったか? ドローすらあり得たような…。アストロラビオの対策がよかった
 

フィリピン選手攻略のお手本みたいな試合。遠間からの強力な1発、踏み込みの鋭さ、淡白な前半型、攻撃パターンの少なさ…

試合の感想だが、フィリピン選手攻略のお手本のような試合だったなぁと。
 
(僕が思う)レネ・クアルトの特徴は
・遠間からの右がめちゃくちゃ伸びる
・踏み込みの鋭さと1発の威力はトップクラス
・ジャブは少なめ
・完全な前半型で中盤からグダることが多い
・攻撃パターンは少ない
・ボディが微妙に弱い
 
遠い位置から一足飛びで距離を詰め、身体ごとぶつけるように打ち出す右は威力抜群で当て勘もいい。前後の動き、瞬間的な踏み込みの鋭さは目を見張るものがある。
 
その反面、ジャブは少なめで攻撃パターンも多くない。
相手を追い詰めてもそこからフィニッシュまでにモタつき、回復を許すのがお決まりの流れ。
 
メンタル面もやや淡白な部分があり、中盤からグダるシーンが目に付く。
 
爆発力はあるが詰めが甘くムラっけも多い。
体力のある前半をしのげば徐々に流れを掴むことが可能。
 
要するに典型的なフィリピンの選手という印象である。
 
 
だが、仮に前半で飲み込まれるとあっという間に試合が終わる場合も……。
2022年12月のジョン・リエル・カシメロvs赤穂亮戦などはその典型的なパターンと言えるのではないか。
 
カシメロvs赤穂亮が2Rノーコンテスト。内容はカシメロのワンサイドゲームだけど、それ以上に情けない試合過ぎて吐き気が…。何で格下が横綱相撲取ってんだよ
 

クアルトが元気な序盤は猛攻に耐えつつジャブで体力を削る。中盤からボディ、顔面を中心に攻める

そして今回の重岡銀次朗はフィリピン選手攻略における理想的な立ち回りを見せた(気がする)。
 
クアルトが元気いっぱいな序盤は遠間からの猛攻に耐えつつ自ら1歩踏み出し左を強振。
あの踏み込みを攻略するには下がってはダメ、腕を振るスペースを与えてはダメというやり方をそのまま踏襲する。
 
さらにこの選手は基本的に顎が上がらず避ける動作もダッキングが主。頭が当たっても極力低く当たるせいでダメージはほぼゼロ。
一方のクアルトは重岡の頭突き? を顔面にモロに被弾し、早々に目の下から出血する。
 
初回こそクアルトの豪打についていけずにダウンを喫した重岡だが、3Rまでにはほぼ見切っていた印象である。
 
タパレスがアフマダリエフに勝っただと…!? 前で勝負するタパレスをアフマダリエフは攻めきれず。これで亀田和毅vs井上尚弥戦の可能性が?
 
踏み込みのタイミング、距離を把握したあとは前手の右リードで動き出しを狙う。
クアルトが踏み出す瞬間をジャブで挫き、出足が鈍ったところでボディ、顔面に強打を打ち込んでいく。
 
 
5、6Rに入るとすでにクアルトに序盤の勢いはなく。重岡のボディ、ジャブに耐えるだけで精一杯の状態。
ラウンド序盤こそ元気を振り絞るクアルトだが、もはや右の大振り以外にできることはない。
 
これはどこかで重岡が決めるのでは? という時間が続く。
 
カシメロの露骨な失速とンギーチュバの健闘。僕はンギーチュバをまた観たい。伊藤雅雪の未知の強豪を引っ張ってくる能力と謎の喧嘩腰がクセになる笑
 

フィリピン選手の特徴をしっかり把握した試合運び。カシメロに飲み込まれた赤穂亮とは真逆

で、クアルトが疲弊しきった9Rにボディで動きを止める→ジャブで後退させる→ロープを背負わせてから連打を浴びせてフィニッシュ。
 
序盤の猛攻に耐えつつ自ら前に出て腕を振るスペースを与えない。
前に出した右でクアルトの侵入を防ぎ、細かいジャブをついて勢いを止めつつじっくりとガス欠を待つ。
 
中盤からはさらに距離を詰めてボディ、顔面への強打。
たっぷり疲弊させたところでボディからの連打でKOを奪取。
 
遠い間合いが得意な強打者&淡白な前半型というフィリピン選手の長所と短所をしっかり把握した試合運びというヤツ。
また、頭が当たっても首投げを食らっても大げさなアピールはせず、淡々と“仕事”を遂行する姿も好感度が高い。
 
ノーガードの大振り勝負であっさり撃沈した赤穂亮とは何もかもが真逆。
申し上げた通り僕は重岡銀次朗にあまり興味がなかったのだが、今回の試合は文句なしに素晴らしかった。おかげでこの選手に俄然興味が出てきている。
 
ジョー・コーディナvsシャフカッツ・ラヒモフすげえ試合。コーディナはこんなに接近戦がうまいんだな。尾川堅一との再戦あるか?
 

僕はビデオ判定が大嫌い。でも、それをはるかに凌駕する事態が頻発しているなら仕方ないかな

そして、日本で初めて導入されたビデオ判定(VTS)について。
 
僕はスポーツにおけるビデオ判定が大嫌いなのだが、中でもボクシングを含む格闘技との相性は最悪だと思っている。
 
疲労やダメージが勝敗に直結する、流れが重要な競技なだけに、試合を中断してまで導入する必要性を感じない。それをするくらいなら人間が下した裁定に素直に従っておけばいい。
 
そもそも誤審や見えない位置でのゴニョゴニョも競技の一部なわけで。
ビデオ判定等できっちり線引きした結果、生のライブ感が失われてしまうなど本末転倒である。
 
 
だが、前回のダニエル・バラダレスのように「嘘でしょ?」という事態が起きていることも事実。
 
それ以外にも「おいおい」と思うようなレフェリングやジャッジにもちょいちょい遭遇する。
看破できないトンデモが目につく以上、抑止のためのデジタル機器導入もやむを得ないのかもしれない。
 
ホームアドバンテージの存在を現役のジャッジが公式に認めたのはすげえな。コンセイサンがバルデスに勝つにはわずかな希望すら与えちゃダメだった
 

やるならちゃんとやろうぜ。そうじゃないならやらない方がマシ。何で世界戦でぶっつけ本番なんだよ笑

ただ、それならちゃんとやろうぜという話。
 
今回もビデオ判定のために試合を一時中断していたが、あれは本当に必要だったのか。
ラウンド間の確認では何がダメだったのか。
 
有効なパンチかスリップかなど1、2回スロー再生すればわかるもんじゃないの?
その場ではダウンを宣告して、ラウンド間に確認→裁定を変更するとかではダメだったの?
 
疲労困憊のクアルトが中断によって明らかに回復していたし、あの直後に逆転劇が起きていたら?
極論、重岡がそこまで積み上げたものがパーになる危険性もあったわけで。
 
そのリスクを受け入れてでも止めるべき局面だったの?
初のビデオ判定ということで手段が目的化してない?
 
などなど。
 
僕はやるならそこまで踏まえた上でやるべきだと思っているし、レフェリーはあの一瞬でそれだけのことを判断しなくてはならない。
当たり前だが、実戦に耐えるレベルに至るには相応の経験が必要になる。
 
なので、本格導入するならまずは影響の少ない4回戦等でシミュレーションしてから
世界タイトルマッチ&東京進出第1弾という重要な舞台でのぶっつけ本番など言語道断である。


レフェリーが申請するタイミングはもちろん、伝達方法や機材トラブル等、本番でしかわからないことは山ほどあるはず。
 
 
あんな中途半端に試合を中断するならやらない方がマシ。
やるならしっかり準備しようぜ。
 
どう考えてもノウハウを蓄積して洗練させていく類のもので、今回のような意味不明な1発勝負などもってのほかである笑
 
 
亀田プロモーターの早急な対応、初のビデオ判定導入がやたらと絶賛されていたが、僕にはマジで意味がわからなかった。
 

モロニーvsフランコ戦のクソなビデオ検証を思い出した。何だよ? 検証時間26分って。やるならルール整備は急務だよ

以前ジェイソン・モロニーvsジョシュア・フランコ戦でのビデオ検証のクソっぷりにキレ散らかしたことがあるのだが、僕の意見はそのときと変わらない。
 
モロニー弟vsジョシュア・フランコ戦のビデオ検証が思った以上に酷かった件。僕がビデオ検証が嫌いな理由が凝縮されたクソさだったな
 
・試合の流れを止めるビデオ検証はクソ
・観客/視聴者を放置するビデオ検証はクソ
・ペース配分、戦略がパーになるビデオ検証はクソ
・生のライブ感を損なうビデオ検証は大嫌い
・それでもやるならルール整備は急務
・回数制限、1回における時間制限を設けろ
・そもそもノーリスクで何度も申請できるのはおかしい
・設備投資は必須。金はいくらかけてもいい
 
下記はNBAのビデオ検証設備を紹介した動画だが、このくらいやるなら僕もOKだと思っている(それでも嫌いだけど)。

 
繰り返しになるが、僕はスポーツにおけるビデオ検証、ビデオ判定が大嫌い。
それでもやるならまずは影響の少ない試合、環境でシミュレーションしてから。
回数制限、時間制限等のルールを整備し、ある程度ノウハウが蓄積されたところでようやく本番の舞台で採用するべき。
 
てか、モロニーvsフランコ戦はビデオ検証に26分間もかけてますからね。
これならやらない方がはるかにマシだし後日の検証で十分事足りる。
 
今回はさすがにモロニーvsフランコ戦ほど酷くはなかったが、久しぶりにあの悪夢を思い出した次第である。
 
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