村田諒太の覚醒とコロナによるブランクがもったいなさすぎな件。ブラント、バトラー戦の勢いのまま間髪入れずに次戦に行きたかった

村田諒太の覚醒とコロナによるブランクがもったいなさすぎな件。ブラント、バトラー戦の勢いのまま間髪入れずに次戦に行きたかった

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新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が8都道府県を除く39県で解除され、徐々に経済活動が再開されつつある。
 
また、海外でもUFC249が米・フロリダ州で行われ、ドイツのプロサッカーリーグ、ブンデスリーガが現地時間5月16日の再開(いずれも無観客)が決定するなど、中止・延期が続いていたスポーツ界もだんだんと動き出す気配を感じる。
 
落日のファーガソン。ゲイジーのカウンターに血まみれレフェリーストップ。今回がヌルマゴとのラストチャンスだったんだろうな
 
ニカラグアではすでにサッカー、野球などが観客を入れて開催され、現地時間4月25日にはボクシング興行も再開している。
 
なので、具体的な日程こそ決まっていないが日本のボクシングもそろそろ何らかのアクションがほしい気もする。
個人的にはWBA世界ミドル級レギュラー王者村田諒太の情報があるといいなぁと。
 

日本人世界王者の中でブランクの影響が大きいのは村田諒太と寺地拳四朗かな。もちろん誰にとっても痛いけど

今回の新型コロナウイルス感染拡大によるブランクは村田諒太にとってかなり痛いと思っている。
いや、誰にとっても痛いに決まっている(引退した選手もいる)のだが、現日本人世界王者の中では特に。
 
ビッグマッチ路線の井岡一翔や井上尚弥はある程度インターバルがあってもギリギリ許される。先日、S・バンタム級暫定王座を戴冠した岩佐亮佑は強敵ムロジョン・アフマダリエフを攻略するための時間ができた。
L・フライ級の京口紘人はそろそろ次戦をやりたいところだが、現在26歳なので多少は余裕がある。
 
どの選手も考えようによっては前向きになれる状況ではある。
 
村田諒太vsゴロフキン年末合意? 中谷潤人vsアコスタ入札、清水聡vs森武蔵戦感想。今の日本って海外の選手にとっては旨味がないからな
 
その点、34歳の村田諒太は別。年齢的にも残された時間が多いとは言えず、なおかつミドル級は動く金額がいちいち大きい。
具志堅用高氏の13度防衛超えを目標に掲げるWBC世界L・フライ級王者寺地拳四朗と並び、新型コロナウイルスの影響をもっとも受けている選手な気がする。
 
しかも2019年7月のロブ・ブラント戦、12月23日のスティーブン・バトラー戦と素晴らしい試合が続いている。できればこの勢いのまま間髪入れずに次戦を組みたかったのだが……。
 
 
スティーブン・バトラーの存在を記憶から抹消してるじゃねえかコイツww


 

鬼気迫る表情で前に出る村田。動き回るブラントを執拗に追いかけ連打を浴びせる

繰り返しになるが、直近2戦での村田のパフォーマンスは本当に素晴らしかった。
 
特に前回のスティーブン・バトラー戦での覚醒っぷりは目を見張るものがあり、冗談抜きで現時点のゲンナジー・ゴロフキンになら十分勝てる可能性があると思っている。
 
村田覚醒? 強敵バトラーを壮絶左フックで5RTKO。ついに自分の馬力に気づいちゃったか? 前に出て腕を振れば相手は下がる
 
2018年10月のロブ・ブラントとの初戦に完敗。
それを受けて約9ヶ月後に再戦のリングに立つわけだが。
 
この試合はもう、最初から気合いの入り方がまったく違っていた。
ジミー・レノンの選手紹介を聞く段階で背水の陣であることを隠そうともせず、表情からも鬼気迫るものを感じる。
 
そして、開始直後からグイグイ前に出て腕を振り、前後左右に動くブラントを追いかけ回す。
左右に動くと同時に手を出すブラントの打ち終わりに左ボディを返し、連打の発動を抑え込んでオーバーハンドの右につなぐ。
 
序盤はガードを上げてじっくり相手の出方をうかがうこれまでのスタイルとはまったく違う立ち上がり。プレッシャーをかけながら笑顔を浮かべることもなく、とにかく前に出続けてブラントの進行方向に先回りする。
 
どうにか正面を外して連打を出すブラントだが、右オーバーハンドでそのつど身体を揺らされる。
近い位置で左ボディが突き刺ささり、明らかに戸惑う様子を見せる。
 
さらにこの日の村田はワンツーだけでは終わらない。
1R終了間際に左ボディ→右フック→左フック→右ストレートの連打でブラントの身体を揺らし、追撃の右をテンプルにヒット。
 
マジな話、序盤からこれだけ積極的に腕を振る村田というのは見たことがない。
 

メンタルはやっぱり大事よね。そればっかり強調するのは嫌いだけど

結局2R2分34秒にTKOでブラントを下すのだが、とにかくすごかった。
 
 
僕はもともとスポーツにおいて「メンタル」やら「モチベーション」を強調するのはあまり好きではない。
「ボクシングは究極のメンタルスポーツ」などという意見を見かけたこともあるが、いや違うでしょと。ボクシングに限らずスポーツに重要なのは日々の積み重ねと戦略。
 
内山高志vsジェスレル・コラレス戦やMMAの堀口恭司vs朝倉海戦で番狂わせが起きた際、「モチベーションの低下」云々が盛んに言われていたが、さすがにスポーツ選手を舐めすぎである。
 
そもそも試合を観ればコラレスや朝倉海の戦略が機能していたのは明らかで、それを「メンタル」「モチベーション」などにすり替えるのはあまりに配慮に欠ける。膨大な準備を重ねて試合を迎えた選手への尊敬が足りていない。
 
 
だがロブ・ブラントVol.2での村田の鬼気迫る表情を見ると、メンタルの重要性を山ほど感じられる。
 
やったぜ村田JUST DO IT.マイナビ諒太!! ロブ・ブラントを2Rで葬り王座返り咲き。辞めなくてよかったなオイ
 
「これに勝てば次戦はビッグマッチ実現」という試合で完敗を喫し、「村田の実力は前からわかっていた」と周囲から手のひらを返され、引退を考えるまでに追い込まれた第1戦。
 
しかもロブ・ブラントとの相性が最悪なのは誰が見ても明白で、ポイント勝負では絶対的に分が悪い。勝つとすればKO以外に考えられない。
 
進退をかけた再戦ではあるが、逆に言うと失うものは何もない。
いい意味で開き直れたというか、「勝つにはこれしかない」という一か八かの勝負がしやすい状況でもある。
 
 
スポーツにもっとも重要なのは日々の積み重ねと戦略には違いないが、メンタルの強さ、モチベーションの高さが最後の一押しとなるケースは多々ある。
そういう意味で「メンタル」「モチベーション」が重要であることは間違いない。
 
従来の実力に確固たる決意が上乗せされ、信じられないような試合展開を生み出した。
 
それがもともと備わっているものなのか、鍛錬によって身につくものなのかはともかく、あの試合の村田はメンタルの強さによって一段上にいけたのではないか。
 

バトラー戦で一気に覚醒する。これならゴロフキンにも勝てる可能性はあるんじゃない?

そして、2019年12月のスティーブン・バトラー戦で村田は一気に覚醒する。
 
バトラーはリーチも長く動きも速いタイプで、全体的にバランスのとれたいい選手。近場で勝負したい村田にとっては多少攻めあぐねるのでは? とも思われていた。
 
だが、実際にはほとんど問題にせず。
 
バトラーの長い左にいっさい怯まず前進を続け、1Rの中盤で早くも右オーバーハンドを打ち込む位置まで近づく。
左ジャブの差し合いでバトラーを後退させ、固いガードと強靭なフィジカルでぐいぐい距離を詰める流れ。
 
バトラーはブラントほどは連打が出ず左右への足もない。1発のパンチの危険性は高いが、相性的には悪くない。
 
しかもこの日の村田は前回同様、2発目以降の連打が続く。左ボディから→右オーバーハンドという得意のコンビネーションでは終わらず、追撃の連打で反撃の余裕を与えない。
 
 
ブラントとの再戦で連打と前進を両立するコツを掴み、バトラー戦で馬力を活かしながらのペース配分を覚えた。
最初に申し上げた通り、このコンディションを維持できればゲンナジー・ゴロフキンにも勝てる可能性も十分あると思う。


バトラーも足を使ったり相打ち覚悟で強振したりと懸命に流れを変えようとしていたが、覚醒した村田には通用せず。ラウンドを重ねるごとに消耗していく姿がめちゃくちゃ印象的だった。
 
村田のプロキャリアにおける文句なしのベストバウトである。
 
 
それを踏まえた上で2017年5月のハッサン・ヌジカムVol.1を観直してみると、いや酷いなと。
 
あまりに手数が少なすぎるし、1Rに都合3発などはさすがにあり得ない。実況・解説陣が「いいプレッシャーですね〜」しか言わないのがだんだんおもしろくなってくるというww
 
物議を醸した判定に今さらどうこういう気もないが、これは負けと言われても仕方ないかも? と感じるほど退屈かつ微妙な試合だった。
 

この段階でのブランクは本当に痛い。ちょうど成長曲線に入ったところだったのに

表題の通りだが、今の段階でブランクを作ってしまったのは本当に痛い。
 
ゴロフキンやカネロとのビッグマッチが実現するかはともかく、この成長曲線のまま次戦になだれ込みたいところだったのだが。
 
村田の相手選びにはやたらと慎重な帝拳プロモーションだが、今の村田ならそうそう負けないと思う。ある程度強気のマッチメークでも十分やれるだろうし、WBC王者のジャーマル・チャーロともいい勝負になるのではないか。
 
村田諒太vsゴロフキン正式発表。予想云々はともかく勝つしかねえよ。厳しい試合になると思うけど、最初から攻めるしかないんじゃない?
 
まあでも、村田の扱いが難しいというのも何となく理解できる。
 
2012年のロンドン五輪で金メダルを獲得し、2013年8月のプロデビュー時点で27、28歳。
もう少し若ければどんどん試合を組んで自信をつけさせることもできるが、年齢的にそれは難しい。
 
だが、知名度は抜群で最初から結果と内容を求められる立場。
 
どうしても慎重なマッチメークにならざるを得ず、必要な経験を積めないまま世界戦の舞台でロブ・ブラントのようなタイプに遭遇してしまった。
 
身体能力でブチ抜くだけでよかった初級編から、いきなり上級編に飛び級させられたというか。得手不得手がはっきりしているスタイルなだけに難しい。
 
恐らくだが、今がもっとも重要な“真ん中の時期”に相当するのだろうと。
 
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