映画「るろうに剣心(2012)」が“惜しい”理由。詰め込んだなぁ。斎藤一は必要でしたかね? 100点満点のアクションも“フワッと牙突”で台無しに笑【感想】

映画「るろうに剣心(2012)」が“惜しい”理由。詰め込んだなぁ。斎藤一は必要でしたかね? 100点満点のアクションも“フワッと牙突”で台無しに笑【感想】

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映画「るろうに剣心」を観た。
 
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「るろうに剣心」(2012年)
 
かつて幕末の京都に凄腕の暗殺者がいた。
その名も「人斬り抜刀斎」。
幕末から10年経った今でも“伝説の人斬り”として恐れられる剣客である。
 
 
時は過ぎ、今は明治11年。
東京では「神谷活心流の人斬り抜刀斎」を名乗る辻斬りが横行しており、おかげで本物の神谷活心流は門下生が激減、師範代を務める神谷薫は道場閉鎖の危機に苦しんでいた。
 
 
そんなある日、またしても出現した辻斬りを追いかけ大急ぎで現場に向かう薫。だが、今回もすんでのところで犯人を取り逃がしてしまう。
 
すると、目の前には頬に十字傷のある男が……。
 
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映画「るろうに剣心」初視聴。WOWOWオンデマンドが途中で切れて、思わずDVDを全部買っちゃった

佐藤健主演で2012年に制作・公開された実写版「るろうに剣心」。
 
これまで映画の感想記事を書くたびに何度か今作を引き合いに出してきたわけだが、実は本編を観たことがなく。先日WOWOWオンデマンドで見逃し配信を見つけたのでようやく視聴してみることに。
 
映画「いぬやしき」感想。哀愁ジジイの覚醒。男前陰キャラのメシウマ復讐劇。爽快感とモヤモヤの狭間で
 
ところが……。
配信最終日の22:30頃に視聴をスタートしたところ、午前0:00を回った瞬間画面がブラックアウト。「配信期間が終了しました」の文字が表示され、そのままうんともすんとも言わず。
 
いやいやいやいや。
嘘だろオイ。
 
問答無用で止まっちゃうもんなの?
てっきり再生が終わるまではOKだとばかり思っていたのだが。
 
しかも残りは約1時間。ちょうど物語が佳境に入るところだったおかげで凄まじいフラストレーションである。
 
で、どうにも納得がいかずその場でシリーズすべてのDVDを購入してしまった次第である。

 
普通に配信版をレンタルすりゃあいいじゃねえかという話なのだが、深夜の意味不明なテンションと勢いで思わず“ポチッ”てしまった笑
 
 
というわけで、ここからは何回かに渡って映画「るろうに剣心」の感想が続くことを宣言させていただく。
 

あと一歩足りない“惜しい”映画。説明不足なせいで人間関係が希薄。最後まで感情移入できなかったな

表題の通りなのだが、僕の中での今作はあと一歩足りない“惜しい”映画だった。
 
理由としては「説明不足」
このひと言に尽きる。
 
 
原作「るろうに剣心」はコミックスで全28巻。映画化するには当然エピソードを絞る必要があるわけだが、今作はそれが非常に難しい。続編ありきで企画がスタートしたのならなおさらである。
どこを端折ってどこを重点を置くかに注目していたところ……。
 
案の定、難しかったなぁと。
 
中でも説明不足を感じたのは「相楽左之助との出会い」「剣心が怒りを忘れて人斬りへ立ち戻る件」の2箇所。
 
 
警察に拘留されていた左之助がたまたま剣心と警察官の会話を聞いて剣心を「人斬り抜刀斎」と認識。後日料理屋で食事中の剣心一行に喧嘩をふっかけるのが最初の出会いとなる。
 
ところがそこから両者の絡みはなく、次に左之助が登場するのは高荷恵が単身武田観柳亭に乗り込んだことを知ったとき。
恵を助けに行こうとする剣心に左之助が「俺も一緒に行くぜ」と声をかけるのだが、ここの“ポッと出”感が尋常じゃないのである。
 
いくら人斬り抜刀斎でも悪名高き武田観柳一味相手ではただでは済まない。どつき合いが大好きな喧嘩屋・左之助と言えども簡単に首を突っ込んでいい案件ではない。
要するに料理屋で一度会っただけの剣心や高荷恵のためにそんな簡単に命を張れちゃうの? という話。
 
 
鵜堂刃衛に対する怒りで我を忘れた剣心が「人斬り抜刀斎」に立ち戻りかけた件もそう。
剣心が神谷道場に居座ってどれくらい経ったかは不明だが、とてもじゃないが多くの辛い経験を経てたどり着いた「不殺(ころさず)の誓い」を破るほどの関係には思えない。
 
迫力満点のクライマックスには違いないのだが、言葉は悪いが「コイツのためにここまでキレるか?」的な違和感が消えないせいでいまいち没頭できなかったことをお伝えしておく。
 
全編134分とそれなりに長い作品だが、全体的に人間関係が希薄で各キャラに感情移入しにくいのが残念だった。
 
映画「すばらしき世界」感想。役所広司がすごすぎて僕はいつの間にか三上正夫の人生を生きてたよ。「虎狼の血」とはひと味違う役所広司のジツリキに震えて眠れ笑
 

ラスボスを鵜堂刃衛にしたのはいい判断。でも、なぜここで外印?

申し上げたように実写版「るろうに剣心」は続編ありきでスタートした企画(だと僕は思っている)。なので、初回はある程度人物紹介の役割も担っていたと想像する。
 
 
「るろうに剣心」を実写化する上で最低限押さえておくべきポイントは下記
・剣心ファミリーを勢揃いさせる
・人斬りだった剣心が今では「不殺(ころさず)の誓い」を立てている
・ただ、逆上して我を忘れるとかつての人斬りに戻ってしまう
・剣心の神谷薫への思い
・左頬の十字傷の原因への匂わせ
 
だいたいこんなところだろうか。
 
中でも“不殺(ころさず)”を誓った剣心が怒りで逆上するとかつての「人斬り抜刀斎」に戻ってしまう部分は重要。薫への思いが強過ぎるせいで心のストッパーが外れてしまうというのはもっとも強調すべき要素である。
 
そして、諸々の条件をクリアしつつ原作のエピソードを端折る必要があるのだが。
 
 
まずラスボスを鵜堂刃衛にしたのはなかなかいい判断だったと思う。
 
仮に今作が続編ありきでなく単体で終わるのならそもそも鵜堂刃衛は必要ない。四乃森蒼紫をラスボスにして別の方法で剣心をブチ切れさせればよかっただけの話。
 
だが今作で武田観柳に雇われたのは隠密御庭番衆ではなく鵜堂刃衛、戌亥番神、外印をはじめとしたチンピラ士族たち。
時代が変わって食い扶持を失ったという括りは同じだが、原作で「神谷活心流の人斬り抜刀斎」を名乗って辻斬りを繰り返していた野党連中のエピソードがそのまま流用されている。
 
様するに四乃森蒼紫は次回作以降にとっておこうという腹づもりなのだろうと。
 
 
しかも般若の役割を外印(綾野剛)、式尉の役割を戌亥番神(須藤元気)に改変するという大胆さ。
僕自身、須藤元気の戌亥番神については「へえ、ここで番神を出しちゃうんだ」と思ったものの、外印に関しては完全に「え? 誰コイツ?」状態。雪代縁の取り巻きにあんな金髪のヤツなんていたっけ? とポカンとさせられた。
 
視聴中に片手間でGoogle先生で調べてもまったくピンとこない。
ウィキペディア等を漁ってようやく「ああ、何かそんなヤツいたなあ」程度の印象である。
 
あそこで外印を引っ張り出してきた理由はいまだにわからないのだが、爛れた素顔(般若)や小太刀でのバトル(四乃森蒼紫)等、原作からの流用は随所に見られた。キャラの印象が薄い分改変もしやすかったのだと思うが、なぜ外印? という疑問は最後まで解消されなかった。
 
「日本で一番悪い奴ら」感想。骨太感とポップさのバランスが絶妙。これは観るべき映画じゃない? 綾野剛はやっぱり若いときの浅野忠信だよな
 

武田観柳亭→鵜堂刃衛とのバトルへの以降が目まぐるし過ぎて「ヒロインは神谷薫」をアピールするには少々物足りない

また剣心ファミリーの紹介については、
・神谷薫:しっかりと
・高荷恵:しっかりと
・相楽左之助:料理屋での絡みのみ
・明神弥彦:完全に省略
 
初期の活躍が少ない弥彦が軽んじられるのはある程度仕方ないし、左之助のポッと出感以外はまあまあよかったと思う。
と言っても、剣心が“不殺(ころさず)の近い”を破るほどの人間関係が構築されたとは思えないが。
 
 
ただ「武田観柳亭での高荷恵救出→鵜堂刃衛とのラストバトルへ移行」の流れはだいぶ目まぐるしかった。
時間の関係上やむを得なかったのだと思うが、「今作のヒロインは神谷薫」を印象付けるには少々物足りない。
 
極論、高荷恵を登場させずに神谷薫を武田観柳にさらわせればよかったのでは? という気もするが、そうすると阿片や医学の知識などの部分で整合が取れなくなる。
 
初見の人間に理解できるギリギリを狙った結果、人間関係が希薄で感情移入しにくいという何とも微妙な場所に着地した。
 
脚本担当も相当難しい采配を迫られたのだろうと。
 
「るろうに剣心 京都大火編」感想。イタいストーカーの四乃森蒼紫につかみは任せろな斎藤一。ド派手なバトルと映像のチープさに日本映画の現在地を知る
 

斎藤一は必要? いなくても成立したと思うけど。100点満点のバトルシーンを“フワッと牙突”が台無しに笑

そう考えると、端折るべきは斎藤一(江口洋介)だったのではないか。
 
 
原作で斎藤一が登場するのは石動雷十太編の次。鵜堂刃衛や武田観柳よりもずっと後である。
 
ところが今作では戦乱の世が終わるシーンをオープニングに持ってくる&斎藤一と剣心を絡ませたせいで本編に登場させざるを得なくなった。
 
正直、今作における斎藤一の役割はそこまで重要ではない。剣心が警察に拘留されて阿片の捜査協力を依頼される件も斎藤がいなくても十分成立する。
 
それこそ斎藤との因縁を強調し過ぎたために左頬の十字傷を匂わせる部分の印象が薄くなったほど。
 
江口洋介の起用は間違いなくファインプレーだったと思うが、どちらにしても斎藤一を登場させるのは次回作以降でよかった。
 
「るろうに剣心 伝説の最期編」これは酷い。オリジナル脚本以前にやりたいこととやるべきことのサイズが合ってなくて十本刀がコスプレ軍団化。詰め込みまくって薄々のカオス
 
というか、むしろ斎藤の存在がマイナスになっていたという噂も……。
ど迫力のアクションシーンは今作における最大の見どころだが、斎藤一の牙突だけはちょっといただけない笑
 
佐藤健と綾野剛のスピード感溢れるバトル→青木崇高と須藤元気の無骨な殴り合いからの……ワイヤーアクション丸出しのクソ牙突ww
 
人間関係の希薄さ、強引な改変によるちぐはぐさもバトルシーンですべて補っていたのに。最後の最後にあの“フワッと牙突”がすべてを台無しにしてしまった笑
 
 
鵜堂刃衛を演じた吉川晃司を含め、二枚目担当は全員がんばったんですけどね。
“フワッと牙突”の印象が強過ぎるせいでとっておきの抜刀術がちっとも入ってけえへん笑
 
 
あとはアレか。
武田観柳役の香川照之の演技が大げさ過ぎて安っぽかったのも……。
四六時中しゃくれっぱなしの利根川を眺めているうちに「ああ、コイツはやっぱり歌舞伎役者の血筋なんだなぁ」と思わされましたよね。
 

神谷薫の武井咲ははまり役だった。クソヒロインの神谷薫は謎属性の武井咲にちょうどいい

ちなみに神谷薫を演じた武井咲はかなりのはまり役だったと思っている。
世間の評判はあまりよくないらしいが、僕の中では全然悪くない。
 
そもそも神谷薫自体がクソヒロインなのでね。
快活で爽やかな美少女を装いつつ、実際は自分の気持ちを素直に表現できない不器用女。
しかも、剣心への思いを抱えたままウジウジ悩んで周りに迷惑をかける面倒臭さも兼ね備える。
 
「見た目もいい、演技も下手じゃない、でも1mmも魅力を感じない」武井咲の謎属性に見事にマッチしていた。
 
歴代クソヒロインランキング。総じて僕をイラつかせる歴代ヒロイン5人の発表である。心して聞くがよろし(ん?
 
てか、上戸彩、武井咲、剛力彩芽に受け継がれるこの謎属性は何なんでしょうか。
事務所の絡みもあるとは思うが、分不相応な役を与えられて必要以上にdisられるのが定番というか。
特に剛力彩芽へのdisは酷かったですよね。印象的な苗字とぶっ飛んだ彼氏のせいで見るに耐えないいじられ方をされていた気がする。
 
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